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付録・短編
第25話 後編
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44 けがれた黄金
最終章 結締めの雫
7
「……う……うがぁぁぁ…ぐぇ」
達洋は夏女に治療してもらった銃創の傷口が開いて、苦痛の表情を滲ませた。さらに…
マーヴェリックは、鋼の義手で達洋の開いた傷口を抉ろうとした。
「ぎぃあああああぁぁぁぁあああああああぅああああ…」
達洋はマーヴェリックの惨たらしい攻撃で思わず発狂して、全身の力が抜けそうになりつつも抗った。すると、彼は鋼の義手はどうにか引き抜くことができて、反撃が開始された。彼らの体格は同じくらいで、二人の大男は取っ組み合い、壁や床に体をぶつけても気にせず、お互い動きを封じて止めを刺すことだけを考えていた。
やがて、達洋たちの決闘はエスカレートしていき、階段の方へと吸い寄せられていた。そして…
「……!…!!」
気づけば、二人は足を踏み外して階段を転げ落ちていった。
「……つ…いてえな…もう」
達洋は転げ落ちて、体中を強く打ったが、幸い無事であった。一方、マーヴェリックは打ち所が悪かったのか、意識がはっきりせず、身動きが取れず、仰向けで倒れたままであった。
「…!?」
夏女は急に降って来た達洋たちを見て、愕然とした反応をした。達洋もまた、一階の現状が目に入ると驚きが隠せず…
「これは…お前がやったのか?」
「………」
達洋は倒れている武装隊員が気になり、夏女に訊ねるが彼女は答えようとしなかった。
「おい。どうしたんだ、何があった?」
「……た…た…つ…ひ……あああああぁぁぁ」
夏女は達洋を顔を合わすと、頭を抱えて葛藤しているようであった。そして…
ドドド…ドパララ…
事務所内に新手が現れた。待機していた武装部隊がマーヴェリックたちを救出しにきたようであった。
「夏女!!」
その時、達洋は隙だらけの夏女を助けようと、思いっきり飛び掛かった。そして…
〈…マーヴェリックとの合流、救出に成功、直ちに帰還します〉
「了解…」
ウォルターは無線で部下の声を聴いて、安堵の表情を浮かべた。瀕死状態のマーヴェリックを乗せたヘリは事務所を離れて、ウォルターが待つクルーザーの方へと向かった。
一瞬時が停まったように思えたが、夏女が正気に戻ると、悲劇の画が描かれていた。
「た…達洋!!」
夏女の眼前には、静かに横たわっている達洋の姿があった。彼は夏女を庇って重傷を負っていた。
「……な…な…夏……め…だい…じょう…ぶ…か?」
「自分のことを心配しなさいよ!何故こんなことに…?」
夏女は自身が覚醒していた時のことを憶えておらず、一時的に錯乱状態に陥っていた。そして…
「こりゃひでえな…あいつら引き揚げていったけど…」
斗真・史也が事務所に足を踏み入れていた。
「夏女ちゃん!」
史也は夏女たちを発見して、声をかけてみたが…「
「史也さん、達洋が……」
「…な…タツ…お前…」
「先輩!!」
斗真・史也は達洋の変わり果てた姿を見て、目が点になって動揺していた。
「…タツさん!!…ちょっと何ボケっとしているの?早く救急車を!」
玲子が駆けつけて瞬時に状況を把握すると、彼女は史也たちに的確な指示をした。夏女は達洋を元気づけようと、ずっと彼の近くにいた。こういう時、女性の方がしっかりしている。その一方で…
マーヴェリックはウォルターのもとに戻れたが、容体が悪化していき、クルーザーの医療室に緊急搬送された。
ウォルターの船は神戸を、日本領海から離れて退散した。同時に雨嵐は去っていき、達洋とウォルターの争いは幕を下ろすのであった。
最終章 結締めの雫
7
「……う……うがぁぁぁ…ぐぇ」
達洋は夏女に治療してもらった銃創の傷口が開いて、苦痛の表情を滲ませた。さらに…
マーヴェリックは、鋼の義手で達洋の開いた傷口を抉ろうとした。
「ぎぃあああああぁぁぁぁあああああああぅああああ…」
達洋はマーヴェリックの惨たらしい攻撃で思わず発狂して、全身の力が抜けそうになりつつも抗った。すると、彼は鋼の義手はどうにか引き抜くことができて、反撃が開始された。彼らの体格は同じくらいで、二人の大男は取っ組み合い、壁や床に体をぶつけても気にせず、お互い動きを封じて止めを刺すことだけを考えていた。
やがて、達洋たちの決闘はエスカレートしていき、階段の方へと吸い寄せられていた。そして…
「……!…!!」
気づけば、二人は足を踏み外して階段を転げ落ちていった。
「……つ…いてえな…もう」
達洋は転げ落ちて、体中を強く打ったが、幸い無事であった。一方、マーヴェリックは打ち所が悪かったのか、意識がはっきりせず、身動きが取れず、仰向けで倒れたままであった。
「…!?」
夏女は急に降って来た達洋たちを見て、愕然とした反応をした。達洋もまた、一階の現状が目に入ると驚きが隠せず…
「これは…お前がやったのか?」
「………」
達洋は倒れている武装隊員が気になり、夏女に訊ねるが彼女は答えようとしなかった。
「おい。どうしたんだ、何があった?」
「……た…た…つ…ひ……あああああぁぁぁ」
夏女は達洋を顔を合わすと、頭を抱えて葛藤しているようであった。そして…
ドドド…ドパララ…
事務所内に新手が現れた。待機していた武装部隊がマーヴェリックたちを救出しにきたようであった。
「夏女!!」
その時、達洋は隙だらけの夏女を助けようと、思いっきり飛び掛かった。そして…
〈…マーヴェリックとの合流、救出に成功、直ちに帰還します〉
「了解…」
ウォルターは無線で部下の声を聴いて、安堵の表情を浮かべた。瀕死状態のマーヴェリックを乗せたヘリは事務所を離れて、ウォルターが待つクルーザーの方へと向かった。
一瞬時が停まったように思えたが、夏女が正気に戻ると、悲劇の画が描かれていた。
「た…達洋!!」
夏女の眼前には、静かに横たわっている達洋の姿があった。彼は夏女を庇って重傷を負っていた。
「……な…な…夏……め…だい…じょう…ぶ…か?」
「自分のことを心配しなさいよ!何故こんなことに…?」
夏女は自身が覚醒していた時のことを憶えておらず、一時的に錯乱状態に陥っていた。そして…
「こりゃひでえな…あいつら引き揚げていったけど…」
斗真・史也が事務所に足を踏み入れていた。
「夏女ちゃん!」
史也は夏女たちを発見して、声をかけてみたが…「
「史也さん、達洋が……」
「…な…タツ…お前…」
「先輩!!」
斗真・史也は達洋の変わり果てた姿を見て、目が点になって動揺していた。
「…タツさん!!…ちょっと何ボケっとしているの?早く救急車を!」
玲子が駆けつけて瞬時に状況を把握すると、彼女は史也たちに的確な指示をした。夏女は達洋を元気づけようと、ずっと彼の近くにいた。こういう時、女性の方がしっかりしている。その一方で…
マーヴェリックはウォルターのもとに戻れたが、容体が悪化していき、クルーザーの医療室に緊急搬送された。
ウォルターの船は神戸を、日本領海から離れて退散した。同時に雨嵐は去っていき、達洋とウォルターの争いは幕を下ろすのであった。
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