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付録・短編
第20話 後編
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44 けがれた黄金
最終章 結締めの雫
2
〈市内の港湾道路で複数の不審車両が制限速度を無視して走行中…被害多数…〉
達洋たちの争いは警察組織にも伝わり…
「係長…」
「ああ、間違いないな」
斗真と史也は管轄署に帰る最中、覆面パトカーでの無線通信を耳にして、興味深い情報を入手した。
〈…黒の69年型フォード・マスタングが数台のベンツとジープに追われている模様…〉
「あいつの仕業だ、行くぞ」
斗真たちは達洋の行方が分かり、現場に向かおうと強引に引き返した。警察隊は本部の命令で急行、お祭り騒ぎは倍増していった。
「ちと重いか…」
達洋は追手の車に追いつかれそうになり、直ちに対策を練った。
「ささやかながら、俺からのプレゼントだ」
達洋は愛車を軽くしようと、車内の荷物を減らしていった。銃火器の他、ウォルターから頂いた金が処分されていき…
「わぁ…金だ…!」
錯乱状態の車道で札束が散らばっていた。一般市民は車両から降りて、達洋がバラ撒いた金を拾い始めた。雨でびしょ濡れの紙幣を必死に拾う姿は醜くて、実に哀れだ。その場は欲望に駆られた者たちと恐怖に怯える者で溢れて混沌化した。パトカー隊も駆けつけて、ウォルターの手下は行く手を阻まれた。達洋はその隙に逃げるのだが…
「………」
一台のジープの運転手が達洋《えもの》を捉えていた。ウォルターの手先の魔の手が達洋に忍び寄っていた。
悪天候は続き、滝のように降る猛烈な雨が地面を叩きつける。警報級の風が吹いて、絶頂期に達していた。あまりの雨量で視界は悪くなり、ワイパーが欠かせない。達洋は注意深く運転して、自身の事務所を目指すのだが…
一台のジープが達洋の愛車に接近していった。達洋は車影に気づき、速度を上げた。ジープもまた速度を上げて、達洋の愛車に追いつこうとした。
「ちっふざけた真似を…」
追手のジープは達洋の愛車後部に軽くぶつかって、煽る態度を取った。追手の嫌がらせはエスカレートしていき、達洋は危険な目に遭った。濡れた車道は滑りやすく、達洋の愛車はカーブで曲がり切れず、スリップ事故を起こした。達洋の愛車は制御不能となり、車体が回転、歩道側に放り出されて、ガードレールに激突した。
達洋の愛車は事故の衝撃で変形して、一部破損していた。達洋の安否は…
「…つ…いてて」
達洋はかすり傷程度で済んで無事だった。ただ、彼は軽度の脳震盪の状態でふらふらであった。そして…
…ゴツ…ゴツ
意識が朦朧としている達洋に不吉な足音が近づいていた。ジープから一人の男が降りてきた。
男の特徴は黒長髪で痩せ型の長身、古風なダークレッドのマントを身に纏って、履き物は中世の革ブーツ、マントの色と同色のバンダナを額に巻き、首元に巻かれたスカーフで口元が隠れていた。さらには…
…スチャ
追手の男は装飾銃という珍しい得物を所持しており、達洋に接近しながら、それを抜いた。そして、追手の男は標的の達洋に向けて構え、自身のタイミングで引き金を引いた。豪雨の街道で銃声が鳴り響いた。
最終章 結締めの雫
2
〈市内の港湾道路で複数の不審車両が制限速度を無視して走行中…被害多数…〉
達洋たちの争いは警察組織にも伝わり…
「係長…」
「ああ、間違いないな」
斗真と史也は管轄署に帰る最中、覆面パトカーでの無線通信を耳にして、興味深い情報を入手した。
〈…黒の69年型フォード・マスタングが数台のベンツとジープに追われている模様…〉
「あいつの仕業だ、行くぞ」
斗真たちは達洋の行方が分かり、現場に向かおうと強引に引き返した。警察隊は本部の命令で急行、お祭り騒ぎは倍増していった。
「ちと重いか…」
達洋は追手の車に追いつかれそうになり、直ちに対策を練った。
「ささやかながら、俺からのプレゼントだ」
達洋は愛車を軽くしようと、車内の荷物を減らしていった。銃火器の他、ウォルターから頂いた金が処分されていき…
「わぁ…金だ…!」
錯乱状態の車道で札束が散らばっていた。一般市民は車両から降りて、達洋がバラ撒いた金を拾い始めた。雨でびしょ濡れの紙幣を必死に拾う姿は醜くて、実に哀れだ。その場は欲望に駆られた者たちと恐怖に怯える者で溢れて混沌化した。パトカー隊も駆けつけて、ウォルターの手下は行く手を阻まれた。達洋はその隙に逃げるのだが…
「………」
一台のジープの運転手が達洋《えもの》を捉えていた。ウォルターの手先の魔の手が達洋に忍び寄っていた。
悪天候は続き、滝のように降る猛烈な雨が地面を叩きつける。警報級の風が吹いて、絶頂期に達していた。あまりの雨量で視界は悪くなり、ワイパーが欠かせない。達洋は注意深く運転して、自身の事務所を目指すのだが…
一台のジープが達洋の愛車に接近していった。達洋は車影に気づき、速度を上げた。ジープもまた速度を上げて、達洋の愛車に追いつこうとした。
「ちっふざけた真似を…」
追手のジープは達洋の愛車後部に軽くぶつかって、煽る態度を取った。追手の嫌がらせはエスカレートしていき、達洋は危険な目に遭った。濡れた車道は滑りやすく、達洋の愛車はカーブで曲がり切れず、スリップ事故を起こした。達洋の愛車は制御不能となり、車体が回転、歩道側に放り出されて、ガードレールに激突した。
達洋の愛車は事故の衝撃で変形して、一部破損していた。達洋の安否は…
「…つ…いてて」
達洋はかすり傷程度で済んで無事だった。ただ、彼は軽度の脳震盪の状態でふらふらであった。そして…
…ゴツ…ゴツ
意識が朦朧としている達洋に不吉な足音が近づいていた。ジープから一人の男が降りてきた。
男の特徴は黒長髪で痩せ型の長身、古風なダークレッドのマントを身に纏って、履き物は中世の革ブーツ、マントの色と同色のバンダナを額に巻き、首元に巻かれたスカーフで口元が隠れていた。さらには…
…スチャ
追手の男は装飾銃という珍しい得物を所持しており、達洋に接近しながら、それを抜いた。そして、追手の男は標的の達洋に向けて構え、自身のタイミングで引き金を引いた。豪雨の街道で銃声が鳴り響いた。
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