キケンなバディ!

daidai

文字の大きさ
上 下
45 / 148
シーズン1

第22話 前編

しおりを挟む
キケンなバディ! 第一期
第四章 凍てついた過去

   1

 降り続ける雪で白く染まっていく山岳地帯。そこには有名小説家や富豪、財界人の豪邸が建ち並んでいた。普段は安らぐ土地であったが、ある夜、一変した。
 一軒の豪邸付近にある足跡を辿っていくと、その先には十歳の少年と五歳になったばかりの幼女の姿があった。彼らは何かに怯えた表情を浮かべて、逃げるように自分の家から出てきた。
そして…

「…ドダーン!!ガシャン!!」
 その時、豪邸から銃声と窓ガラスが割れる音がした。すると、少年は足を止めることなく、泣きじゃくる妹を連れて、目的地を目指すのであった。
この出来事は、ある雪山の惨劇として世の中に知れ渡った。
 
 それから三十年の月日が流れて…

 秋晴れの朝、真部たちはいつものように朝食をとっていたが、どうも異様な光景であった。余計なのが一人紛れ込んでいるが、真部と夏女は気にせず朝の時間を過ごしていた。
 小霧岳太郎こきりがくたろう(通称ハブ)、元舞台俳優で現在は情報屋兼ホームレス。彼は真部の世話になり、春になるまでアパートに住ませてもらっていた。
夏女は徐々に小霧との生活に慣れていき、今では家族のように仲が良かった。

「すみません、掃除や買い物までしてもらって…」
「構わんよ、働かざるもの食うべからず…だ、今日は仕事あるのか?」
「ああ、昼から依頼人がやってくる予定だ」
「お茶汲みでも何でもするぞ~」
 三人の会話が弾んでいき、彼らは午前中、それぞれの時間を過ごした。
真部は趣味のガーデニング、夏女は事務作業、小霧は庭で黙々とゴルフパターを握って、パットの練習をしていた。

「…ハブさん、ゴルフ好きだよな~」
「ああ、劇団にいた頃、主催者や演出家の先生によく連れて行ってもらったよ、このパタークラブも先輩から貰ったものだ」
「金がかかる遊びだからな、俺は打ちっぱなしで充分だ」
「最近は遊ぶ場所じゃなくて、仕事ビジネスをする場所だ、偉そうな取引先にぺこぺこしている営業マンをよくにするぞ」
「…接待ってやつか、そういえば、ゴルフ場増えてきたな~」
 真部と小霧は庭で世間話をして、夏女は仕事をしながら嬉しそうにその光景を見ていた。そして…
 
気づけば昼頃となり、真部たちは気持ちを切り替えて、依頼人を待つのであった。

「♪~」
 アパート兼事務所のインターホンが鳴り、夏女が依頼来訪者を迎えた。
「…どうぞ、そちらにお掛けになって下さい」
 今回の依頼人は、四十代で今どきの男性アイドルのような端正な顔立ちをしていた。

成本杜夫なりもともりおさん…ご職業は不動産屋ですか…早速、依頼の話をしますか」
「僕は営業担当で…実は、担当物件に問題がありまして…」
「どういった物件なんですか?」
「兵庫県北部に位置する別荘です…」
 成本が言う問題の物件は、関西有数の財閥〝三友みつとも邸〟、現在、そこは一般人専用の貸別荘となっているが…

三友みつとも財閥…確かそこは…」
「ええ、三十年前に経営破綻しました、家は売りに出されて…今は空き家です」
「なんでそんな話をうちに?」
 真部が首を傾げる中、成本は真剣な眼差しで事情を話し出した。

 成本の話によると、三友邸が貸別荘になってから契約者からの苦情クレームが多くなり、解体することが決定したわけだが、工事が進められない原因を調査してほしいとのことであった。

「もっと具体的に話してくれませんか?何故、苦情が?」
「…いざ住みだすと、不慮の事故や災難に遭ったそうです、それで何度も所有者オーナーが変わって、悪い噂が流れて、解体する結果に…」
「解体工事が進められないというのは?」
「先日、重機が急に誤作動を起こして、それで作業員スタッフが怪我を負いました…それにうちの社員も事故に巻き込まれて入院することに…」
「偶然ではないんですか?」
「違うと思います…どうも、あの家は不思議な力があるような気がして…」
「…祟りとか?ホラー映画じゃあるまいし…」
「とにかく調べて下さい、別荘まで案内しますので…」
 真部は成本の依頼にあまり乗り気ではなかった。が…

「面白そうじゃん、助けてあげなよ」
「そうだ、最近ろくに仕事してないだろう?」
 真部は外野の言葉ヤジで仕方なく、成本の依頼を引き受けることにした。
 
 真部は成本の車に乗り込み、問題の別荘に向かうこととなった。残った夏女たちは留守番をするわけだが…

「ハブさん、何処行くの?」
所長ボスから小遣い貰ったことだし…ちょっと遊んでくるよ」
「あらそう、お土産忘れないでね~」
 夏女はゴルフバッグを持った小霧を見送って、独りとなったが…

「これでしばらく羽を伸ばせるわ~」
 夏女はむさ苦しい野獣おとこたちが消えたことで、つい笑みを浮かべ、自分の時間を満喫するのであった。
 
 その一方で、真部たちは、移動中の車内で適当に言葉を交わしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

友よ、お前は何故死んだのか?

河内三比呂
ミステリー
「僕は、近いうちに死ぬかもしれない」 幼い頃からの悪友であり親友である久川洋壱(くがわよういち)から突如告げられた不穏な言葉に、私立探偵を営む進藤識(しんどうしき)は困惑し嫌な予感を覚えつつもつい流してしまう。 だが……しばらく経った頃、仕事終わりの識のもとへ連絡が入る。 それは洋壱の死の報せであった。 朝倉康平(あさくらこうへい)刑事から事情を訊かれた識はそこで洋壱の死が不可解である事、そして自分宛の手紙が発見された事を伝えられる。 悲しみの最中、朝倉から提案をされる。 ──それは、捜査協力の要請。 ただの民間人である自分に何ができるのか?悩みながらも承諾した識は、朝倉とともに洋壱の死の真相を探る事になる。 ──果たして、洋壱の死の真相とは一体……?

ファクト ~真実~

華ノ月
ミステリー
 主人公、水無月 奏(みなづき かなで)はひょんな事件から警察の特殊捜査官に任命される。  そして、同じ特殊捜査班である、透(とおる)、紅蓮(ぐれん)、槙(しん)、そして、室長の冴子(さえこ)と共に、事件の「真実」を暴き出す。  その事件がなぜ起こったのか?  本当の「悪」は誰なのか?  そして、その事件と別で最終章に繋がるある真実……。  こちらは全部で第七章で構成されています。第七章が最終章となりますので、どうぞ、最後までお読みいただけると嬉しいです!  よろしくお願いいたしますm(__)m

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

学園ミステリ~桐木純架

よなぷー
ミステリー
・絶世の美貌で探偵を自称する高校生、桐木純架。しかし彼は重度の奇行癖の持ち主だった! 相棒・朱雀楼路は彼に振り回されつつ毎日を過ごす。 そんな二人の前に立ち塞がる数々の謎。 血の涙を流す肖像画、何者かに折られるチョーク、喫茶店で奇怪な行動を示す老人……。 新感覚学園ミステリ風コメディ、ここに開幕。 『小説家になろう』でも公開されています――が、検索除外設定です。

パラダイス・ロスト

真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。 ※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...