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シーズン1
第22話 前編
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キケンなバディ! 第一期
第四章 凍てついた過去
1
降り続ける雪で白く染まっていく山岳地帯。そこには有名小説家や富豪、財界人の豪邸が建ち並んでいた。普段は安らぐ土地であったが、ある夜、一変した。
一軒の豪邸付近にある足跡を辿っていくと、その先には十歳の少年と五歳になったばかりの幼女の姿があった。彼らは何かに怯えた表情を浮かべて、逃げるように自分の家から出てきた。
そして…
「…ドダーン!!ガシャン!!」
その時、豪邸から銃声と窓ガラスが割れる音がした。すると、少年は足を止めることなく、泣きじゃくる妹を連れて、目的地を目指すのであった。
この出来事は、ある雪山の惨劇として世の中に知れ渡った。
それから三十年の月日が流れて…
秋晴れの朝、真部たちはいつものように朝食をとっていたが、どうも異様な光景であった。余計なのが一人紛れ込んでいるが、真部と夏女は気にせず朝の時間を過ごしていた。
小霧岳太郎(通称ハブ)、元舞台俳優で現在は情報屋兼ホームレス。彼は真部の世話になり、春になるまでアパートに住ませてもらっていた。
夏女は徐々に小霧との生活に慣れていき、今では家族のように仲が良かった。
「すみません、掃除や買い物までしてもらって…」
「構わんよ、働かざるもの食うべからず…だ、今日は仕事あるのか?」
「ああ、昼から依頼人がやってくる予定だ」
「お茶汲みでも何でもするぞ~」
三人の会話が弾んでいき、彼らは午前中、それぞれの時間を過ごした。
真部は趣味のガーデニング、夏女は事務作業、小霧は庭で黙々とゴルフパターを握って、パットの練習をしていた。
「…ハブさん、ゴルフ好きだよな~」
「ああ、劇団にいた頃、主催者や演出家の先生によく連れて行ってもらったよ、このパタークラブも先輩から貰ったものだ」
「金がかかる遊びだからな、俺は打ちっぱなしで充分だ」
「最近は遊ぶ場所じゃなくて、仕事をする場所だ、偉そうな取引先にぺこぺこしている営業マンをよく眼にするぞ」
「…接待ってやつか、そういえば、ゴルフ場増えてきたな~」
真部と小霧は庭で世間話をして、夏女は仕事をしながら嬉しそうにその光景を見ていた。そして…
気づけば昼頃となり、真部たちは気持ちを切り替えて、依頼人を待つのであった。
「♪~」
アパート兼事務所のインターホンが鳴り、夏女が依頼来訪者を迎えた。
「…どうぞ、そちらにお掛けになって下さい」
今回の依頼人は、四十代で今どきの男性アイドルのような端正な顔立ちをしていた。
「成本杜夫さん…ご職業は不動産屋ですか…早速、依頼の話をしますか」
「僕は営業担当で…実は、担当物件に問題がありまして…」
「どういった物件なんですか?」
「兵庫県北部に位置する別荘です…」
成本が言う問題の物件は、関西有数の財閥〝三友邸〟、現在、そこは一般人専用の貸別荘となっているが…
「三友財閥…確かそこは…」
「ええ、三十年前に経営破綻しました、家は売りに出されて…今は空き家です」
「なんでそんな話をうちに?」
真部が首を傾げる中、成本は真剣な眼差しで事情を話し出した。
成本の話によると、三友邸が貸別荘になってから契約者からの苦情が多くなり、解体することが決定したわけだが、工事が進められない原因を調査してほしいとのことであった。
「もっと具体的に話してくれませんか?何故、苦情が?」
「…いざ住みだすと、不慮の事故や災難に遭ったそうです、それで何度も所有者が変わって、悪い噂が流れて、解体する結果に…」
「解体工事が進められないというのは?」
「先日、重機が急に誤作動を起こして、それで作業員が怪我を負いました…それにうちの社員も事故に巻き込まれて入院することに…」
「偶然ではないんですか?」
「違うと思います…どうも、あの家は不思議な力があるような気がして…」
「…祟りとか?ホラー映画じゃあるまいし…」
「とにかく調べて下さい、別荘まで案内しますので…」
真部は成本の依頼にあまり乗り気ではなかった。が…
「面白そうじゃん、助けてあげなよ」
「そうだ、最近ろくに仕事してないだろう?」
真部は外野の言葉で仕方なく、成本の依頼を引き受けることにした。
真部は成本の車に乗り込み、問題の別荘に向かうこととなった。残った夏女たちは留守番をするわけだが…
「ハブさん、何処行くの?」
「所長から小遣い貰ったことだし…ちょっと遊んでくるよ」
「あらそう、お土産忘れないでね~」
夏女はゴルフバッグを持った小霧を見送って、独りとなったが…
「これでしばらく羽を伸ばせるわ~」
夏女はむさ苦しい野獣たちが消えたことで、つい笑みを浮かべ、自分の時間を満喫するのであった。
その一方で、真部たちは、移動中の車内で適当に言葉を交わしていた。
第四章 凍てついた過去
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降り続ける雪で白く染まっていく山岳地帯。そこには有名小説家や富豪、財界人の豪邸が建ち並んでいた。普段は安らぐ土地であったが、ある夜、一変した。
一軒の豪邸付近にある足跡を辿っていくと、その先には十歳の少年と五歳になったばかりの幼女の姿があった。彼らは何かに怯えた表情を浮かべて、逃げるように自分の家から出てきた。
そして…
「…ドダーン!!ガシャン!!」
その時、豪邸から銃声と窓ガラスが割れる音がした。すると、少年は足を止めることなく、泣きじゃくる妹を連れて、目的地を目指すのであった。
この出来事は、ある雪山の惨劇として世の中に知れ渡った。
それから三十年の月日が流れて…
秋晴れの朝、真部たちはいつものように朝食をとっていたが、どうも異様な光景であった。余計なのが一人紛れ込んでいるが、真部と夏女は気にせず朝の時間を過ごしていた。
小霧岳太郎(通称ハブ)、元舞台俳優で現在は情報屋兼ホームレス。彼は真部の世話になり、春になるまでアパートに住ませてもらっていた。
夏女は徐々に小霧との生活に慣れていき、今では家族のように仲が良かった。
「すみません、掃除や買い物までしてもらって…」
「構わんよ、働かざるもの食うべからず…だ、今日は仕事あるのか?」
「ああ、昼から依頼人がやってくる予定だ」
「お茶汲みでも何でもするぞ~」
三人の会話が弾んでいき、彼らは午前中、それぞれの時間を過ごした。
真部は趣味のガーデニング、夏女は事務作業、小霧は庭で黙々とゴルフパターを握って、パットの練習をしていた。
「…ハブさん、ゴルフ好きだよな~」
「ああ、劇団にいた頃、主催者や演出家の先生によく連れて行ってもらったよ、このパタークラブも先輩から貰ったものだ」
「金がかかる遊びだからな、俺は打ちっぱなしで充分だ」
「最近は遊ぶ場所じゃなくて、仕事をする場所だ、偉そうな取引先にぺこぺこしている営業マンをよく眼にするぞ」
「…接待ってやつか、そういえば、ゴルフ場増えてきたな~」
真部と小霧は庭で世間話をして、夏女は仕事をしながら嬉しそうにその光景を見ていた。そして…
気づけば昼頃となり、真部たちは気持ちを切り替えて、依頼人を待つのであった。
「♪~」
アパート兼事務所のインターホンが鳴り、夏女が依頼来訪者を迎えた。
「…どうぞ、そちらにお掛けになって下さい」
今回の依頼人は、四十代で今どきの男性アイドルのような端正な顔立ちをしていた。
「成本杜夫さん…ご職業は不動産屋ですか…早速、依頼の話をしますか」
「僕は営業担当で…実は、担当物件に問題がありまして…」
「どういった物件なんですか?」
「兵庫県北部に位置する別荘です…」
成本が言う問題の物件は、関西有数の財閥〝三友邸〟、現在、そこは一般人専用の貸別荘となっているが…
「三友財閥…確かそこは…」
「ええ、三十年前に経営破綻しました、家は売りに出されて…今は空き家です」
「なんでそんな話をうちに?」
真部が首を傾げる中、成本は真剣な眼差しで事情を話し出した。
成本の話によると、三友邸が貸別荘になってから契約者からの苦情が多くなり、解体することが決定したわけだが、工事が進められない原因を調査してほしいとのことであった。
「もっと具体的に話してくれませんか?何故、苦情が?」
「…いざ住みだすと、不慮の事故や災難に遭ったそうです、それで何度も所有者が変わって、悪い噂が流れて、解体する結果に…」
「解体工事が進められないというのは?」
「先日、重機が急に誤作動を起こして、それで作業員が怪我を負いました…それにうちの社員も事故に巻き込まれて入院することに…」
「偶然ではないんですか?」
「違うと思います…どうも、あの家は不思議な力があるような気がして…」
「…祟りとか?ホラー映画じゃあるまいし…」
「とにかく調べて下さい、別荘まで案内しますので…」
真部は成本の依頼にあまり乗り気ではなかった。が…
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「そうだ、最近ろくに仕事してないだろう?」
真部は外野の言葉で仕方なく、成本の依頼を引き受けることにした。
真部は成本の車に乗り込み、問題の別荘に向かうこととなった。残った夏女たちは留守番をするわけだが…
「ハブさん、何処行くの?」
「所長から小遣い貰ったことだし…ちょっと遊んでくるよ」
「あらそう、お土産忘れないでね~」
夏女はゴルフバッグを持った小霧を見送って、独りとなったが…
「これでしばらく羽を伸ばせるわ~」
夏女はむさ苦しい野獣たちが消えたことで、つい笑みを浮かべ、自分の時間を満喫するのであった。
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