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第3週

WEEKLY 3rd 「ポカ研って何?」(17)

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年鑑 フューチャー・ウォーカー
WEEKLY 3rd 「ポカ研って何?」

≪17≪

 初秋の清々しい朝、その日は日曜日だった。このまま問題が起こらず、時間が過ぎていくのを願うが、、そうはいかなかった。
 一刻かずときは起床後、住居下階の親戚夫婦が経営する喫茶店<mii>で朝食を取ることが日課だが…

「は?」
 一刻がいつものように店扉を開けると、店内の様子が違っていた。彼の叔母である<mii>のマドンナ、美衣みいが迎えるはずだが…

「いらっしゃいませ~」
 何故か、店内にはウエイトレス姿のナギが立っていた。
「おい、何やってんだ?」
「見て分からない?今日から働かせてもらっているの」
「叔母さん、本当なんですか?」
「ええ、バイトで雇ったわ、注文を訊いてあげて」
「じゃあ…いつものモーニングセットで…」
「かしこまりました~オーダー入ります~!」
 ナギがオーダー内容を発すると、一刻の叔父、隼人はやとが顔を赤くして静かに頷いた。

「彼女、働き者ね、うちの看板娘になれるわ」
「あんまり褒めない方が良いですよ、すぐ調子に乗るから…」
 一刻の心配をよそに、<mii>は常連客や新規の利用客が続々と来店していき、一気に賑やかになった。そんな中…

「…初日だから勤務時間は午前中だけなの、バイトが終わった後、私の部屋に来てね」
「え?何で?」
「ちょっと忘れたの?ほら、大学祭のことよ」
 
 時間は数日前に遡る。場所は一刻が在学している大学。

 ポカ研ことポップカルチャー研究部の部員、一刻、兼正かねまさ剛志つよし英雄ひでお・ナギは大学祭映画について話し合っていた。

「うちの部の紅一点、音代おとしろ(ナギ)さんの主役抜擢に異議がある人は?」
「異議なし!」
 ポカ研部長の英雄がそう言うと、兼正・剛志コンビが口を揃えた。一刻は無言のままであったが…

「主演は決まって、エキストラは友人、知人にお願いするとして…問題はストーリーだね」
 ポカ研男性部員は腕を組んで、ナギ主演作のストーリーを考えるのだが…

「やっぱり恋愛ものでしょう、相手役は勿論、僕だ!」
「バーカ、俺に決まっているだろう、派手なアクションものが良いな」
 自分の欲望を満たすための意見が多く、企画会議は難航していた。

「できるだけ筋がある作品にしたいな、野比坂君、何か案はない?」
「うーん、そうだな…」
「彼は中学・高校時代に演劇部の脚本を担当していたそうよ」
「ああ、確かそうだったね、今作の脚本・演出は野比坂君に任せようか」
「え?」
「一刻で大丈夫なのか?桧木ひのき君の方が向いてるでしょう」
「いやいや、僕ばかりがやるとマンネリ化するからね、新鮮味を出さないと…どうかな?」
 一刻は気が進まなかったが、英雄の推薦で自信を持ち始めた。

「じゃあ…やってみるよ」
 一刻は大学祭映画の脚本を引き受けた。
「ちぇ…」
 兼正・剛志コンビは不満げな表情を浮かべていたが、多数決で一刻の脚本担当が正式に決定した。ここで一歩前進したが…

「では、野比坂君に脚本を任せるとして…音代さんと協力して、あらすじを考えてきてよ」
「何で彼女と?」
主演俳優ヒロインの意見を尊重しないとね…お隣同士なんでしょ?気軽に話せる仲だったら上手くまとまるでしょう」
「分かりました、よろしくね~野比坂君~」

 一刻は英雄との約束事を思い出した。彼はそれで億劫になっていた。
「演劇部で使用した脚本を持ってきてね」
「へいへい」
 一刻はバイト中のナギと会う約束をして、<mii>の会計を済ました。彼の足取りは重く、上階の自宅に帰るのに時間を要した。そして…

 一刻は自宅に戻ると、押し入れや収納棚に触れて、ナギに言われた通り、自身が創作した脚本を探そうとした。

 それから時間が経ち、一刻はナギの部屋を訪ねるのだが…

「いらっしゃい~鍵は開いてるから勝手に入って~」
 一刻はナギの指示に従って、部屋扉を開けようとするが…

「あれ?…わわ、どうなってんだ!?」
 一刻がナギ宅の玄関で違和感を覚えた。彼の体はふわっと宙を浮いていき、不思議な現象が起きていき…

「あっごめんなさい、忘れてた」
 ナギはひょこっと顔を出して、異様な空間を
「また妙な道具を使ったな」
 一刻は体の自由が利かず、無様な姿を披露していた。
「はい、これで元通り!」
 ナギは専用端末を操作、それで室内に変化が起きた。
「え…いで…!」
 宙に浮いた一刻は突然、地面に吸い寄せられていき、そのままうつ伏せ状態で倒れ込んだ。
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