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短編1
第1幕 第2場
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ジャンヌコード 女神の挑戦 レッドナンバー 疑惑の硝塔
第1幕
第2場 接触
ある夜、問題のタワーマンションの東塔エントランスに人影が一つあった。
その人影の両手は大量の荷物で塞がっていた。
「あ~しんど」
人影の正体はテリカであった。その時間、コンシェルジュの姿はなく、受付ロビーのフロアは静けさが漂っていたが…
「…!」
テリカがマンションに入った直後、再度オートロックの開錠音がした。
彼女は後方の気配に気づき、咄嗟に振り向くが…。
「…あっどうも、こんばんは」
夜遅くテリカの前に現れたのは、オーナーの平松アキラであった。
「見ない顔ですね、新しい入居者さん?」
「…そうです、引っ越ししてきたばかりで…住人の方ですよね?」
「はい、最上階に住んでいます、ここのオーナーをしていまして…」
「…オーナーさんですか?凄い!こんな所で会えるなんて…」
「平松です、よろしく…」
「…○○です、二十六階に住んでいます、よろしく」
テリカは偽名を名乗って、平松に自己紹介した。
「え?煌花劇場で仕事を…まさか劇団員?」
「いえ、歌劇団の専門誌の記者です」
「そうですか、てっきり役者さんかと思いましたよ~」
テリカと平松は何気ない会話ですぐに打ち解けていった。
「凄い荷物の量だ…少し、持ちましょうか?」
「いえ、そんな…大丈夫ですよ…」
「顔は正直ですよ、かなりお疲れのようだ…」
「すみません、ではお言葉に甘えて…」
平松はテリカを気遣って、彼女の荷物を半分ほど持った。
「…いつもこんなに遅くまで仕事を…?」
「ええまあ、残業が多いですね…」
「…何か困ったことがあれば言って下さい…買い物するなら駅前のは止めておいた方がいい…値段が高くて品揃えが悪い…そこより良いスーパーあるんで教えますよ」
「そうなんですか、助かります」
テリカは平松の心遣いに甘えて、気づけば彼女の住居フロアに着いていた。
「…部屋の前までお持ちしましょうか?」
「…いえ、大丈夫です、本当にありがとうございました」
テリカは丁重に礼を述べて、平松と別れようとしたが…
「………」
二人は別れた途端、表情が一変し、それぞれ何かを考えているようであった。
テリカは標的の平松との接触を成功させた。また、平松が彼女に好意を持ったことは好都合であった。
「……ふう」
テリカは荷物を置いた後、リビングのソファーに飛び乗り、行儀の悪い姿で一息つこうとしていた。彼女の住居エリアからは美しい夜景を眺めることが出来て、神々しい光に包まれた<煌花劇場>を見ることが出来たが…
「………」
その時、テリカしかいないはずの部屋で妙な現象が起きていた。まるで誰かがそっと彼女の姿を覗き見しているようであった。
疲れ果てたテリカはその視線に全く気付いていないようで、特に何も起きないまま、夜は更けていくのであった。
第1幕
第2場 接触
ある夜、問題のタワーマンションの東塔エントランスに人影が一つあった。
その人影の両手は大量の荷物で塞がっていた。
「あ~しんど」
人影の正体はテリカであった。その時間、コンシェルジュの姿はなく、受付ロビーのフロアは静けさが漂っていたが…
「…!」
テリカがマンションに入った直後、再度オートロックの開錠音がした。
彼女は後方の気配に気づき、咄嗟に振り向くが…。
「…あっどうも、こんばんは」
夜遅くテリカの前に現れたのは、オーナーの平松アキラであった。
「見ない顔ですね、新しい入居者さん?」
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「はい、最上階に住んでいます、ここのオーナーをしていまして…」
「…オーナーさんですか?凄い!こんな所で会えるなんて…」
「平松です、よろしく…」
「…○○です、二十六階に住んでいます、よろしく」
テリカは偽名を名乗って、平松に自己紹介した。
「え?煌花劇場で仕事を…まさか劇団員?」
「いえ、歌劇団の専門誌の記者です」
「そうですか、てっきり役者さんかと思いましたよ~」
テリカと平松は何気ない会話ですぐに打ち解けていった。
「凄い荷物の量だ…少し、持ちましょうか?」
「いえ、そんな…大丈夫ですよ…」
「顔は正直ですよ、かなりお疲れのようだ…」
「すみません、ではお言葉に甘えて…」
平松はテリカを気遣って、彼女の荷物を半分ほど持った。
「…いつもこんなに遅くまで仕事を…?」
「ええまあ、残業が多いですね…」
「…何か困ったことがあれば言って下さい…買い物するなら駅前のは止めておいた方がいい…値段が高くて品揃えが悪い…そこより良いスーパーあるんで教えますよ」
「そうなんですか、助かります」
テリカは平松の心遣いに甘えて、気づけば彼女の住居フロアに着いていた。
「…部屋の前までお持ちしましょうか?」
「…いえ、大丈夫です、本当にありがとうございました」
テリカは丁重に礼を述べて、平松と別れようとしたが…
「………」
二人は別れた途端、表情が一変し、それぞれ何かを考えているようであった。
テリカは標的の平松との接触を成功させた。また、平松が彼女に好意を持ったことは好都合であった。
「……ふう」
テリカは荷物を置いた後、リビングのソファーに飛び乗り、行儀の悪い姿で一息つこうとしていた。彼女の住居エリアからは美しい夜景を眺めることが出来て、神々しい光に包まれた<煌花劇場>を見ることが出来たが…
「………」
その時、テリカしかいないはずの部屋で妙な現象が起きていた。まるで誰かがそっと彼女の姿を覗き見しているようであった。
疲れ果てたテリカはその視線に全く気付いていないようで、特に何も起きないまま、夜は更けていくのであった。
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