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長編1
第3幕 第2場/1
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第3幕 第2場/1
第3幕
第2場 道筋
神戸ハーバーシティは兵庫県神戸市中央区に拠点が置かれ、第二次世界大戦後、神戸市の中心街になった地域。山と海に囲まれ、公共交通機関はJRや関西私鉄、神戸市営地下鉄、<ペルセウス>などが利用可能。海に面した商業施設が立ち並ぶ繁華街がある。
テリカたちは目的地に着き、まず情報収集をしようと中華街へと向かった。そこは単なる飲食街ではなく、異国情緒があり、外国人との異文化コミュニティが築き上げられ、あらゆる情報が入手できる場所でもあった。
「…いいニオイがするね~」「そうですね」
テリカたちは中華街に足を踏み入れた途端、鼻の穴をぴくぴくさせ、ヨダレが出そうになっていた。二人は昼ご飯を食べずに出発したため、お腹を空かしていた。
「…どっか入ろうか?」
テリカたちは、美味しそうで懐かしいニオイが漂う中華料理店を見つけて、腹ごしらえをしようとした。
「へい、らっしゃい!」
テリカたちは威勢のいい年老いた男性店主の挨拶で迎えられ、空いている席を見つけて適当に座った。
「私は中華盛り合わせ定食にするわ~」「私は酢豚セットにします…炒飯大盛りで…」
テリカたちは好きなメニューを注文し、行儀よく待っていた。
「へい、らっしゃい!」
テリカたちに続いて、新たな客が訪れた。男二人、彼らは強面でガラが悪く、近寄りがたい連中であった。問題の〝不逞な輩たち〟は、テリカたちの近くの席に座ろうとしていた。
「よっ姉ちゃん、美人さんやな~どっから来たんや?」
不逞な輩Aは厚かましくテリカたちに声を掛けた。彼女たちはそれに対し、愛想笑いで返した。
「お~い、早よ注文訊ききに来いや!アホンダラ!」
不逞な輩Aは、テーブルに足を掛けて店主に高圧的な態度を取った。
「すみません、お待たせしました…」
店主は腰を低くして、不逞な輩たちの前に現れた。
「ビールが飲みたい!ツマミは適当に持ってこいや!」
不逞な輩たちは偉そうに注文して、店主は逃げるように去って行った。
不逞な輩たちが現れたことによって、店内に嫌な空気が流れた。数人の客は脅えて早く店を出ようと、食事のペースを上げていた。
テリカたちはといえば、何も気にせず楽しく雑談していたが…
「よ~姉ちゃんたち、こっちで一緒に食事せえへんか~お酌してや~」
また不逞な輩たちがテリカたちに声を掛け、割って入ろうとしていた。彼女たちは無視したが、彼らのナンパはしつこかった。不逞な輩Bがテリカたちに強引に迫ろうとしていた。
「こっち来いや!」
不逞な輩はテリカの腕を引っ張り、無理やりに自分たちの席に連れて行こうとしていた。
「…ちょっと止めて下さい!」
テリカは大声を発して抵抗したが、不逞な輩Bは彼女の腕を放そうとしなかった。周りの客は、店内の騒ぎを見て見ぬふりをして食事を続けていた。そして、このまま彼らの嫌がらせが続くと思いきや…
不逞な輩たちの表情が一変した。不逞な輩Aは顔色が悪くなり、大量の脂汗を流していた。彼らの目線の先にはエリがいた。彼女は鬼の形相で、不逞な輩たちを睨み付けていた。
エリは言葉を発さず黙ったまま、不逞な輩たちを威嚇していた。さらに…
テリカは不逞な輩Bの腕を握り返しているのだが、とてつもない力で握っているため、彼の腕がみしみしと音を立てていた。
「いてて!…何や…こいつ?」
不逞な輩Bは握られた腕を払おうとするが、ビクともしなかった。
「もう嫌がらせを止めると約束するなら放しますよ…」
テリカは平然とした顔で不逞な輩Bに告げた。
「く……悪かったよ、もう放してくれ…!」
テリカが不逞な輩Bの腕を放すと、エリの怖い表情が和らいだ。
「…何やねん、こいつら?おっかないわ~」
テリカが握った不逞な輩Bの腕の部分は、赤紫色に変色、彼女の手の跡がはっきりついていた。
不逞な輩たちはテリカたちの迫力に押されて引き下がり、大人しくなった。よって、居づらい空気は去って行き、周りの客はほっとしていた。店主もそのことに気づき、テリカたちに頭を下げた。
「…あれ?餃子なんて頼んだっけ?」
「それはサービス…さっきのお礼です、お気になさらず…」
店主は不逞な輩たちに聞こえないよう、テリカたちに囁いて去って行った。
「ほな、頂きますか~」
テリカたちはようやく食事にありつけ、嬉しそうに頬張っていた。不逞な輩たちはその姿を面白くない顔で見ていた。それから彼らにも注文していたビールが運ばれて、適当に飲もうとしていた。
「…今日はついてないな~稼ぎは少ないし…仲間も一人パクられたし…」
「最近、サツの取り締まりが厳しくなったな…今月は何人目かな…?」
不逞な輩たちは、何やらキナ臭い話を始めていた。
「………」
食事をするテリカたちは、密かに彼らの怪しい会話を耳にして気にかけていた。
それから半時間後、頼まれたメニューを完食したテリカたちは一息つき、勘定の準備をしていた。
「割り勘で良いよね~?」「大丈夫です」
「…経費で落ちないもんかね~」
エリはブツブツ文句を言って、財布からお札を抜き出した。
「…さて、もう出るか」「…支払いはどうする?」
「この店、カードとか電子マネーは無理やし…現金も小銭しか…お前は?」
「…たいして持ってねえ…ただ…」
不逞な輩たちは何やらひそひそと話して、勘定を済ませようとしていた。彼らの後ろには、鋭い眼つきをしたテリカたちが並んでいた。
「八四五〇円頂きます…」
「じゃあ、これで…」
店主が勘定金額を告げると、不逞な輩Aは汚い折り畳み財布から一万円札を一枚取り出した。店主は渡されたお札を見た途端、目の色が変わった。
「…ん?どうした?」
不逞な輩Aが店主に尋ねると、彼は払われたお札を黙って返した。
「お客さん、冗談はよして下さい…そんな玩具は受け取れませんよ…」
店主はにこやかに答えたが、少々怒りの感情がこもっていた。
「…な…何やワレ!これが偽札とでも言いたいんか?」
不逞な輩たちが逆上し始めるが、店主は全く怯むことがなかった。
第3幕
第2場 道筋
神戸ハーバーシティは兵庫県神戸市中央区に拠点が置かれ、第二次世界大戦後、神戸市の中心街になった地域。山と海に囲まれ、公共交通機関はJRや関西私鉄、神戸市営地下鉄、<ペルセウス>などが利用可能。海に面した商業施設が立ち並ぶ繁華街がある。
テリカたちは目的地に着き、まず情報収集をしようと中華街へと向かった。そこは単なる飲食街ではなく、異国情緒があり、外国人との異文化コミュニティが築き上げられ、あらゆる情報が入手できる場所でもあった。
「…いいニオイがするね~」「そうですね」
テリカたちは中華街に足を踏み入れた途端、鼻の穴をぴくぴくさせ、ヨダレが出そうになっていた。二人は昼ご飯を食べずに出発したため、お腹を空かしていた。
「…どっか入ろうか?」
テリカたちは、美味しそうで懐かしいニオイが漂う中華料理店を見つけて、腹ごしらえをしようとした。
「へい、らっしゃい!」
テリカたちは威勢のいい年老いた男性店主の挨拶で迎えられ、空いている席を見つけて適当に座った。
「私は中華盛り合わせ定食にするわ~」「私は酢豚セットにします…炒飯大盛りで…」
テリカたちは好きなメニューを注文し、行儀よく待っていた。
「へい、らっしゃい!」
テリカたちに続いて、新たな客が訪れた。男二人、彼らは強面でガラが悪く、近寄りがたい連中であった。問題の〝不逞な輩たち〟は、テリカたちの近くの席に座ろうとしていた。
「よっ姉ちゃん、美人さんやな~どっから来たんや?」
不逞な輩Aは厚かましくテリカたちに声を掛けた。彼女たちはそれに対し、愛想笑いで返した。
「お~い、早よ注文訊ききに来いや!アホンダラ!」
不逞な輩Aは、テーブルに足を掛けて店主に高圧的な態度を取った。
「すみません、お待たせしました…」
店主は腰を低くして、不逞な輩たちの前に現れた。
「ビールが飲みたい!ツマミは適当に持ってこいや!」
不逞な輩たちは偉そうに注文して、店主は逃げるように去って行った。
不逞な輩たちが現れたことによって、店内に嫌な空気が流れた。数人の客は脅えて早く店を出ようと、食事のペースを上げていた。
テリカたちはといえば、何も気にせず楽しく雑談していたが…
「よ~姉ちゃんたち、こっちで一緒に食事せえへんか~お酌してや~」
また不逞な輩たちがテリカたちに声を掛け、割って入ろうとしていた。彼女たちは無視したが、彼らのナンパはしつこかった。不逞な輩Bがテリカたちに強引に迫ろうとしていた。
「こっち来いや!」
不逞な輩はテリカの腕を引っ張り、無理やりに自分たちの席に連れて行こうとしていた。
「…ちょっと止めて下さい!」
テリカは大声を発して抵抗したが、不逞な輩Bは彼女の腕を放そうとしなかった。周りの客は、店内の騒ぎを見て見ぬふりをして食事を続けていた。そして、このまま彼らの嫌がらせが続くと思いきや…
不逞な輩たちの表情が一変した。不逞な輩Aは顔色が悪くなり、大量の脂汗を流していた。彼らの目線の先にはエリがいた。彼女は鬼の形相で、不逞な輩たちを睨み付けていた。
エリは言葉を発さず黙ったまま、不逞な輩たちを威嚇していた。さらに…
テリカは不逞な輩Bの腕を握り返しているのだが、とてつもない力で握っているため、彼の腕がみしみしと音を立てていた。
「いてて!…何や…こいつ?」
不逞な輩Bは握られた腕を払おうとするが、ビクともしなかった。
「もう嫌がらせを止めると約束するなら放しますよ…」
テリカは平然とした顔で不逞な輩Bに告げた。
「く……悪かったよ、もう放してくれ…!」
テリカが不逞な輩Bの腕を放すと、エリの怖い表情が和らいだ。
「…何やねん、こいつら?おっかないわ~」
テリカが握った不逞な輩Bの腕の部分は、赤紫色に変色、彼女の手の跡がはっきりついていた。
不逞な輩たちはテリカたちの迫力に押されて引き下がり、大人しくなった。よって、居づらい空気は去って行き、周りの客はほっとしていた。店主もそのことに気づき、テリカたちに頭を下げた。
「…あれ?餃子なんて頼んだっけ?」
「それはサービス…さっきのお礼です、お気になさらず…」
店主は不逞な輩たちに聞こえないよう、テリカたちに囁いて去って行った。
「ほな、頂きますか~」
テリカたちはようやく食事にありつけ、嬉しそうに頬張っていた。不逞な輩たちはその姿を面白くない顔で見ていた。それから彼らにも注文していたビールが運ばれて、適当に飲もうとしていた。
「…今日はついてないな~稼ぎは少ないし…仲間も一人パクられたし…」
「最近、サツの取り締まりが厳しくなったな…今月は何人目かな…?」
不逞な輩たちは、何やらキナ臭い話を始めていた。
「………」
食事をするテリカたちは、密かに彼らの怪しい会話を耳にして気にかけていた。
それから半時間後、頼まれたメニューを完食したテリカたちは一息つき、勘定の準備をしていた。
「割り勘で良いよね~?」「大丈夫です」
「…経費で落ちないもんかね~」
エリはブツブツ文句を言って、財布からお札を抜き出した。
「…さて、もう出るか」「…支払いはどうする?」
「この店、カードとか電子マネーは無理やし…現金も小銭しか…お前は?」
「…たいして持ってねえ…ただ…」
不逞な輩たちは何やらひそひそと話して、勘定を済ませようとしていた。彼らの後ろには、鋭い眼つきをしたテリカたちが並んでいた。
「八四五〇円頂きます…」
「じゃあ、これで…」
店主が勘定金額を告げると、不逞な輩Aは汚い折り畳み財布から一万円札を一枚取り出した。店主は渡されたお札を見た途端、目の色が変わった。
「…ん?どうした?」
不逞な輩Aが店主に尋ねると、彼は払われたお札を黙って返した。
「お客さん、冗談はよして下さい…そんな玩具は受け取れませんよ…」
店主はにこやかに答えたが、少々怒りの感情がこもっていた。
「…な…何やワレ!これが偽札とでも言いたいんか?」
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