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長編1

第2幕 第2場D/1

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第2幕 第2場D/1

第2幕

第2場D 追いつめられる神女

<アクア・アイランド>高架道路

 夜が更けて、テリカとチェオンは陰謀渦巻く<海都学園かいとがくえん>に向かおうとするが、行く手を阻もうとする者が迫っていた。



「尾けられてるな…怪しい車両が二台…」

 チェオンが言った通り、テリカが運転するアルファロメオ8Cの後に、メルセデスベンツGクラス二台が距離を取って走行していた。

「…どうします、撒きますか?」

「それしかないな…被害は最小限に…」

 テリカたちは意見が一致して、尾行車から遠ざかることを企てた。

「標的を包囲しろ…抵抗すれば殺しても構わない」

 尾行車の主犯格は仲間に指示をして、夜の狩りを始めようとした。

 テリカはアクセルを深く踏んでスピードを上げると、尾行車はそれに合わせて動き出した。テリカの愛車は二台の尾行車に挟まれて、逃げ場は塞がれてしまった。



「チエ(チェオン)さん、ちょっと乱暴に行きます!」

 テリカはそう言って、鋭い眼つきで運転した。尾行車は脅すように彼女の愛車に迫ってきた。三台の車は何度もぶつかり合い、車道上で断末魔の叫びのような衝撃音を奏でていた。



「威勢が良いな、何とかなりそうかいな?」

「ドイツ車は頑丈ですね、軽やかなイタリア車だと歯が立たないかも…」

「私の車を使えばよかったな…アメ車ならイチコロやで」

 テリカたちは窮地に追い込まれていたが、まだ余裕の表情を浮かべていた。二人に反撃する気力は残っており、形勢逆転の機会を密かに狙っていた。
 

 激しいカーチェイスの末、三台の損傷は酷く、テリカの愛車は限界に達していた。


「チエさん、頼みます」

 テリカはしばし、チェオンに愛車のハンドルを預けて、愛銃グロック26をそっと抜いた。

「…あんまり無茶すんなよ」

 チェオンが心配する中、テリカは運転席のパワーウインドウを全開、そこから自身の上半身を出して、しっかり愛銃を構えた。そして…

「ドン…ドド」

 それは一瞬の出来事であった。尾行車の前後輪タイヤは、テリカの撃った銃弾で破裂パンク、そのまま走行不能となった。

「お見事…」

 チェオンはハンドル操作しながら、テリカの銃さばきを褒めた。尾行車ベンツを撒いて、二人はほっとしていたが…

「ふ…」

 テリカたちの逃げる姿を見て、不敵な笑みを浮かべる者が一人たことで、戦いはまだ始まったばかりだと頷けた。



神女ジャンヌ>二人を尾行する者たちは車を棄すてて、次の行動に出た。  

 尾行者は銃火器を装備しており、走行中の一般車両に構わず、得物の引き金を引いた。テリカの愛車は彼らの攻撃を掻い潜って、前進することに集中したが…


「いちいち相手してられませんが…一般市民のことが気になります」

「目的地は目と鼻の先や、これ以上騒ぎを大きくしたくないしな…」

 このまま車橋を越えれば、<アクア・アイランド>第三地区<海都学園>へとたどり着く、しかし… 

 高架道路がテリカたちの戦いで錯乱パニック状態となる中、妙なものが忍び寄っていた。

「フォン…」

 高架道路に一台の黒い車が走っており、それはテリカたちに追いつこうとしていた。だが、互いの距離は一キロメートル近く離れており、接触することは容易ではないと思われたが…

 高架道路であるものが暴走していた。一般車両は謎の黒い悪魔に体当たりされて、次々と破壊されていった。

 謎の黒い悪魔は、時速一〇〇キロに達するのに必要な加速は僅か二.八秒、最高速度は三九五キロ。価格は日本円でおよそ四億円、世界に七台しかない、油田大国産のスポーツカー、〝ライカン ハイパースポーツ〟であった。

 ライカンは障害物に衝突しても全くの無傷で、前方のアルファロメオとの距離を詰めようとした。

「…!」

 テリカたちはライカンの存在に気づき、慌てて振り返った。

「もしかして…新手?」

 テリカたちが困惑する中、モンスターマシンは獲物を狙うかのように走行した。

「やばい…避けろ!」

 その時、アルファロメオはライカンの突撃を回避した。チエの咄嗟の判断であった。もし、突撃を避けなかったら、テリカの愛車はひとたまりもなかっただろう。そして…
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