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長編1

第2幕 第1場B/2

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第2幕 第1場B/2

第2幕



第1場B 危機迫る境遇



「…ドゥガガガ…ドド…ドドン」

 武装集団の一人は弾が尽きるまで連射した。テリカは外からの攻撃を防ぐ車両たてに守られているが、丸腰のため、恐怖心や絶望感が植えつけられた。奴は諦めようとせず、すぐさま装填作業に取り掛かるが…

「…!」

 その時、テリカは武装集団の一人の異変に気づいた。奴はヨーコの攻撃を受けて、静かに倒れた。

「これで片付いた…その情けない顔、劇団仲間には見せられないわね」

「お見事です、裏の世界から離れたのでは?」

「なかなか抜け出せなくてね…それより気づかなかった?」

「え?」

「あんたはずっとけられていたのよ、この連中は雇われただけみたいだけど…頑固で口を割らないわ」

「そうでしたか、勘が鈍っていました」

「…後のことは任せて、私たちは退散しましょうか」

 ヨーコはパトカーのサイレン音を気にして、逃げるようにその場を後にした。テリカはヨーコに送ってもらい、無事に自宅へと辿り着くが…



「本当に助かりました、借りを作ってばかりですね」

「これはあんたの問題だから、もう加担しないわ」

「ええ、甘えてばかりいられません」

「公演までまだ時間はある、それまでに決着ケリをつけるのね」

「はい、お休みなさい」

 テリカは正気を取り戻して、ヨーコと別れて帰還した。彼女たちを襲った者は何者なのか、答えは徐々に紐解かれていった。



 テリカは翌朝のニュース番組を観て、思わず絶句した。



堀江ほりえエイジ〟は、テリカが追っている犯罪組織とつながりがある人物だったが…


 死亡した。

 堀江一家の住居で爆発事故が発生、彼らは悲惨な死を遂げることに。警察組織はガス漏れの事故死として処理したが、どうもきな臭かった。



 テリカは堀江の突然の死を悔やんだが、プロとして気持ちの整理をつけなければならない。その日、彼女はスケジュールが埋まっていて、急いで出掛ける支度をしていた。大量の荷物からして遠方のようだ。

 テリカはトップお披露目公演の稽古、打ち合わせに参加するため、<煌花歌劇団おうかかげきだん>の本拠地、神戸市<アクア・アイランド>まで足を運んだ。



煌花歌劇団劇場おうかかげきだんげきじょう

 テリカは舞台俳優の顔で稽古場へと向かうが…



「やあ、お疲れ様~」

 テリカに優しく声をかけたのは<煌花歌劇団>の中堅舞台俳優のヒロであった。彼女は当劇団が誇る高身長の実力派スターとして注目されて、トップに就任したばかりの後輩テリカを支える立場だった。

 外見は大柄で近寄りがたいが、中身は純粋な乙女である。



「お疲れ様です、今日はよろしくお願いします」

「以前より表情が柔らかくなったね、何かあった?」

「ええまあ、座長としての自覚を持たないと…」

 テリカは迷いのない端正な顔立ちをしていた。ヨーコの説教が良い刺激になったようだ。

 テリカが稽古場に現れると、彼女率いる劇団班の劇団員や演出家が一斉に注目した。

 

 テリカのトップスターお披露目公演の演目は、中世のフランスの歴史、貴族社会を題材にしたもので、彼女は作中の重要人物である〝麗人〟を演じるのであった。当劇団の原点回帰を目指した作品で、劇団側は尽力して、独特の緊張感があった。

 テリカはしばらく、ツバキの敵討ちや<神女ジャンヌ>のことを忘れて、本業に神経を集中させた。
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