25 / 101
長編1
第2幕 第1場B/2
しおりを挟む
第2幕 第1場B/2
第2幕
第1場B 危機迫る境遇
「…ドゥガガガ…ドド…ドドン」
武装集団の一人は弾が尽きるまで連射した。テリカは外からの攻撃を防ぐ車両に守られているが、丸腰のため、恐怖心や絶望感が植えつけられた。奴は諦めようとせず、すぐさま装填作業に取り掛かるが…
「…!」
その時、テリカは武装集団の一人の異変に気づいた。奴はヨーコの攻撃を受けて、静かに倒れた。
「これで片付いた…その情けない顔、劇団仲間には見せられないわね」
「お見事です、裏の世界から離れたのでは?」
「なかなか抜け出せなくてね…それより気づかなかった?」
「え?」
「あんたはずっと尾けられていたのよ、この連中は雇われただけみたいだけど…頑固で口を割らないわ」
「そうでしたか、勘が鈍っていました」
「…後のことは任せて、私たちは退散しましょうか」
ヨーコはパトカーのサイレン音を気にして、逃げるようにその場を後にした。テリカはヨーコに送ってもらい、無事に自宅へと辿り着くが…
「本当に助かりました、借りを作ってばかりですね」
「これはあんたの問題だから、もう加担しないわ」
「ええ、甘えてばかりいられません」
「公演までまだ時間はある、それまでに決着をつけるのね」
「はい、お休みなさい」
テリカは正気を取り戻して、ヨーコと別れて帰還した。彼女たちを襲った者は何者なのか、答えは徐々に紐解かれていった。
テリカは翌朝のニュース番組を観て、思わず絶句した。
〝堀江エイジ〟は、テリカが追っている犯罪組織とつながりがある人物だったが…
死亡した。
堀江一家の住居で爆発事故が発生、彼らは悲惨な死を遂げることに。警察組織はガス漏れの事故死として処理したが、どうもきな臭かった。
テリカは堀江の突然の死を悔やんだが、プロとして気持ちの整理をつけなければならない。その日、彼女はスケジュールが埋まっていて、急いで出掛ける支度をしていた。大量の荷物からして遠方のようだ。
テリカはトップお披露目公演の稽古、打ち合わせに参加するため、<煌花歌劇団>の本拠地、神戸市<アクア・アイランド>まで足を運んだ。
<煌花歌劇団劇場>
テリカは舞台俳優の顔で稽古場へと向かうが…
「やあ、お疲れ様~」
テリカに優しく声をかけたのは<煌花歌劇団>の中堅舞台俳優のヒロであった。彼女は当劇団が誇る高身長の実力派スターとして注目されて、トップに就任したばかりの後輩テリカを支える立場だった。
外見は大柄で近寄りがたいが、中身は純粋な乙女である。
「お疲れ様です、今日はよろしくお願いします」
「以前より表情が柔らかくなったね、何かあった?」
「ええまあ、座長としての自覚を持たないと…」
テリカは迷いのない端正な顔立ちをしていた。ヨーコの説教が良い刺激になったようだ。
テリカが稽古場に現れると、彼女率いる劇団班の劇団員や演出家が一斉に注目した。
テリカのトップスターお披露目公演の演目は、中世のフランスの歴史、貴族社会を題材にしたもので、彼女は作中の重要人物である〝麗人〟を演じるのであった。当劇団の原点回帰を目指した作品で、劇団側は尽力して、独特の緊張感があった。
テリカはしばらく、ツバキの敵討ちや<神女>のことを忘れて、本業に神経を集中させた。
第2幕
第1場B 危機迫る境遇
「…ドゥガガガ…ドド…ドドン」
武装集団の一人は弾が尽きるまで連射した。テリカは外からの攻撃を防ぐ車両に守られているが、丸腰のため、恐怖心や絶望感が植えつけられた。奴は諦めようとせず、すぐさま装填作業に取り掛かるが…
「…!」
その時、テリカは武装集団の一人の異変に気づいた。奴はヨーコの攻撃を受けて、静かに倒れた。
「これで片付いた…その情けない顔、劇団仲間には見せられないわね」
「お見事です、裏の世界から離れたのでは?」
「なかなか抜け出せなくてね…それより気づかなかった?」
「え?」
「あんたはずっと尾けられていたのよ、この連中は雇われただけみたいだけど…頑固で口を割らないわ」
「そうでしたか、勘が鈍っていました」
「…後のことは任せて、私たちは退散しましょうか」
ヨーコはパトカーのサイレン音を気にして、逃げるようにその場を後にした。テリカはヨーコに送ってもらい、無事に自宅へと辿り着くが…
「本当に助かりました、借りを作ってばかりですね」
「これはあんたの問題だから、もう加担しないわ」
「ええ、甘えてばかりいられません」
「公演までまだ時間はある、それまでに決着をつけるのね」
「はい、お休みなさい」
テリカは正気を取り戻して、ヨーコと別れて帰還した。彼女たちを襲った者は何者なのか、答えは徐々に紐解かれていった。
テリカは翌朝のニュース番組を観て、思わず絶句した。
〝堀江エイジ〟は、テリカが追っている犯罪組織とつながりがある人物だったが…
死亡した。
堀江一家の住居で爆発事故が発生、彼らは悲惨な死を遂げることに。警察組織はガス漏れの事故死として処理したが、どうもきな臭かった。
テリカは堀江の突然の死を悔やんだが、プロとして気持ちの整理をつけなければならない。その日、彼女はスケジュールが埋まっていて、急いで出掛ける支度をしていた。大量の荷物からして遠方のようだ。
テリカはトップお披露目公演の稽古、打ち合わせに参加するため、<煌花歌劇団>の本拠地、神戸市<アクア・アイランド>まで足を運んだ。
<煌花歌劇団劇場>
テリカは舞台俳優の顔で稽古場へと向かうが…
「やあ、お疲れ様~」
テリカに優しく声をかけたのは<煌花歌劇団>の中堅舞台俳優のヒロであった。彼女は当劇団が誇る高身長の実力派スターとして注目されて、トップに就任したばかりの後輩テリカを支える立場だった。
外見は大柄で近寄りがたいが、中身は純粋な乙女である。
「お疲れ様です、今日はよろしくお願いします」
「以前より表情が柔らかくなったね、何かあった?」
「ええまあ、座長としての自覚を持たないと…」
テリカは迷いのない端正な顔立ちをしていた。ヨーコの説教が良い刺激になったようだ。
テリカが稽古場に現れると、彼女率いる劇団班の劇団員や演出家が一斉に注目した。
テリカのトップスターお披露目公演の演目は、中世のフランスの歴史、貴族社会を題材にしたもので、彼女は作中の重要人物である〝麗人〟を演じるのであった。当劇団の原点回帰を目指した作品で、劇団側は尽力して、独特の緊張感があった。
テリカはしばらく、ツバキの敵討ちや<神女>のことを忘れて、本業に神経を集中させた。
1
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
婚約者に裏切られた女騎士は皇帝の側妃になれと命じられた
ミカン♬
恋愛
小国クライン国に帝国から<妖精姫>と名高いマリエッタ王女を側妃として差し出すよう命令が来た。
マリエッタ王女の侍女兼護衛のミーティアは嘆く王女の監視を命ぜられるが、ある日王女は失踪してしまった。
義兄と婚約者に裏切られたと知ったミーティアに「マリエッタとして帝国に嫁ぐように」と国王に命じられた。母を人質にされて仕方なく受け入れたミーティアを帝国のベルクール第二皇子が迎えに来た。
二人の出会いが帝国の運命を変えていく。
ふわっとした世界観です。サクッと終わります。他サイトにも投稿。完結後にリカルドとベルクールの閑話を入れました、宜しくお願いします。
2024/01/19
閑話リカルド少し加筆しました。
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
声の響く洋館
葉羽
ミステリー
神藤葉羽と望月彩由美は、友人の失踪をきっかけに不気味な洋館を訪れる。そこで彼らは、過去の住人たちの声を聞き、その悲劇に導かれる。失踪した友人たちの影を追い、葉羽と彩由美は声の正体を探りながら、過去の未練に囚われた人々の思いを解放するための儀式を行うことを決意する。
彼らは古びた日記を手掛かりに、恐れや不安を乗り越えながら、解放の儀式を成功させる。過去の住人たちが解放される中で、葉羽と彩由美は自らの成長を実感し、新たな未来へと歩み出す。物語は、過去の悲劇を乗り越え、希望に満ちた未来を切り開く二人の姿を描く。
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる