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長編1
第2幕 第1場A/1
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第2幕 第1場A/1
第2幕
第1場A 報復者の序曲
舞台となる時期は、テリカが<煌花歌劇団>の舞台俳優トップスターに就任して間もない頃、彼女は陰である標的を追っていた。
未明の都内某所ビジネス街。終電に間に合わず、独りでタクシーを待つビジネスマンがいたが…
「………」
脇道に、シルバーのアルファロメオ159が駐車されていた。その運転手はビジネスマンを監視している様子で、彼がタクシーを拾う前に接触を試みた。
「…キィ!」
ビジネスマンの前にアルファロメオ159が停まり、状況は一変しつつあった。
アルファロメオ159の運転手は、自車のパワーウインドウを作動させて、ビジネスマンの顔を拝もうとした。
「こんばんは~今、お帰りですか?」
愛想よく、ビジネスマンに声を掛けたのは、テリカであった。
「…誰だ、君は…?」
ビジネスマンが突然のことで驚く中、テリカは獲物をずっと睨んでいた。
「失礼は承知の上です…生憎、身分は明かせないの…名刺も切らしているしね…」
「…何の用だ?」
ビジネスマンは動揺して声を震わせていたが、テリカの容赦ない猛攻が続く…
「…あなたは今、別の企業に勤めているけど、かつて、〝闇の仲介役〟として暗躍していたわね?」
「何のことだか、人違いだろう?」
「とぼけても無駄よ…時間を掛けて、あなたに辿り着いたわ…色々と訊きたいことがある、協力して…」
「…断る!もう足を洗ったんだ、そっとしておいてくれ!」
「罪悪感はあるのね、知っていることを全て吐いてもらうわ」
「何が訊きたいんだ?」
「あなたは…一つの民間企業をある組織に紹介した…〝NIB〟について教えて…」
ビジネスマンはテリカの質問で青ざめていき、咄嗟に逃げる素振りを見せたが…
「…ぐぉ…え!!」
テリカは左腕を伸ばして、ビジネスマンのネクタイを力強くつかんだ。そして、彼女の暴走は止まらなかった。
「質問に答えないと放さないわよ!」
テリカはそう警告して、ビジネスマンのネクタイをつかんだまま、愛車を発進させた。
「…や…やめろ!お前…イカれてるぞ!!」
テリカは冷酷な表情を浮かべて、獲物を窮地に追い込んだ。彼女の愛車の速度は徐々に上がっていき、ビジネスマンは身動きが取れず、まともに歩ける状態ではなかった。そして…
「わ…分かった、教えるから…停めてくれ!」
ビジネスマンは観念して、地獄からの解放を訴えた。
「キィィィ!!!」
テリカが急ブレーキを掛けて、ビジネスマンのネクタイを放すが、無事では済まなかった。ビジネスマンは体のバランスが崩れて、その結果、前方の街路樹に衝突するのであった。
「…あっごめんなさい~」
テリカはビジネスマンを愛車の助手席に乗せて、気持ちを落ち着かせた。ここから<神女>の尋問が始まる。
ビジネスマンの名前は、堀江エイジ(五三)。彼は恵まれた家庭で育ち、名門大学卒業後、一流企業に就職するが、長続きせず、職を転々とすることとなり…
堀江は何不自由しない人生を送っていたが、満足感を得ることはなかった。そして、彼はスリルを求めて、大胆な行動に出ようとする。
堀江は所属企業の秘密情報をライバル企業に売りつけたり、産業スパイ活動を行ったりと、悪行を続けていく一方であった。
やがて、堀江は悪徳企業のパイプ役となるのだが、彼の運命を変える出来事は突然訪れた。
堀江はある日、身元不明者の依頼を引き受けることになった。彼はその後、改心して堅気の世界に戻り、今では幸せな家庭を築き、大手企業の役員職に就いていた。
「…本当に依頼主が何者か分からないの?」
「ああ…突然、メールが送られてきて、指示通りに仲介役を担ったんだ…」
「依頼人とは直接会ってないのね?」
「ああ、指定口座に報酬が振り込まれていた…あまりにも多すぎたんで返そうとしたが…結局、音信不通の状態で…」
「貰ったお金はどうしたの?」
「恐くなって…全く手をつけていない、私を捕まえに来たのか?」
「管轄じゃないし、あなたの悪事に興味がないわ、話がしたかっただけ…標的はもっと大物でね…」
「君のようなお嬢さんが何故こんなことを?」
「いろいろと事情があってね、余計な詮索をしない方が身のためよ」
「忠告どうも…もうこりごりだ、もう少し頑張れば退職金が入って、のんびりと過ごせるからな…」
堀江はテリカに洗いざらい情報を提供して、安堵の表情を浮かべた。
「…もう二度と会うことはないでしょう、私のことは忘れて」
「何かよく分からんが、幸運を祈るよ…さようなら」
テリカは恫喝したお詫びとして、堀江を自宅まで送り届けた。
第2幕
第1場A 報復者の序曲
舞台となる時期は、テリカが<煌花歌劇団>の舞台俳優トップスターに就任して間もない頃、彼女は陰である標的を追っていた。
未明の都内某所ビジネス街。終電に間に合わず、独りでタクシーを待つビジネスマンがいたが…
「………」
脇道に、シルバーのアルファロメオ159が駐車されていた。その運転手はビジネスマンを監視している様子で、彼がタクシーを拾う前に接触を試みた。
「…キィ!」
ビジネスマンの前にアルファロメオ159が停まり、状況は一変しつつあった。
アルファロメオ159の運転手は、自車のパワーウインドウを作動させて、ビジネスマンの顔を拝もうとした。
「こんばんは~今、お帰りですか?」
愛想よく、ビジネスマンに声を掛けたのは、テリカであった。
「…誰だ、君は…?」
ビジネスマンが突然のことで驚く中、テリカは獲物をずっと睨んでいた。
「失礼は承知の上です…生憎、身分は明かせないの…名刺も切らしているしね…」
「…何の用だ?」
ビジネスマンは動揺して声を震わせていたが、テリカの容赦ない猛攻が続く…
「…あなたは今、別の企業に勤めているけど、かつて、〝闇の仲介役〟として暗躍していたわね?」
「何のことだか、人違いだろう?」
「とぼけても無駄よ…時間を掛けて、あなたに辿り着いたわ…色々と訊きたいことがある、協力して…」
「…断る!もう足を洗ったんだ、そっとしておいてくれ!」
「罪悪感はあるのね、知っていることを全て吐いてもらうわ」
「何が訊きたいんだ?」
「あなたは…一つの民間企業をある組織に紹介した…〝NIB〟について教えて…」
ビジネスマンはテリカの質問で青ざめていき、咄嗟に逃げる素振りを見せたが…
「…ぐぉ…え!!」
テリカは左腕を伸ばして、ビジネスマンのネクタイを力強くつかんだ。そして、彼女の暴走は止まらなかった。
「質問に答えないと放さないわよ!」
テリカはそう警告して、ビジネスマンのネクタイをつかんだまま、愛車を発進させた。
「…や…やめろ!お前…イカれてるぞ!!」
テリカは冷酷な表情を浮かべて、獲物を窮地に追い込んだ。彼女の愛車の速度は徐々に上がっていき、ビジネスマンは身動きが取れず、まともに歩ける状態ではなかった。そして…
「わ…分かった、教えるから…停めてくれ!」
ビジネスマンは観念して、地獄からの解放を訴えた。
「キィィィ!!!」
テリカが急ブレーキを掛けて、ビジネスマンのネクタイを放すが、無事では済まなかった。ビジネスマンは体のバランスが崩れて、その結果、前方の街路樹に衝突するのであった。
「…あっごめんなさい~」
テリカはビジネスマンを愛車の助手席に乗せて、気持ちを落ち着かせた。ここから<神女>の尋問が始まる。
ビジネスマンの名前は、堀江エイジ(五三)。彼は恵まれた家庭で育ち、名門大学卒業後、一流企業に就職するが、長続きせず、職を転々とすることとなり…
堀江は何不自由しない人生を送っていたが、満足感を得ることはなかった。そして、彼はスリルを求めて、大胆な行動に出ようとする。
堀江は所属企業の秘密情報をライバル企業に売りつけたり、産業スパイ活動を行ったりと、悪行を続けていく一方であった。
やがて、堀江は悪徳企業のパイプ役となるのだが、彼の運命を変える出来事は突然訪れた。
堀江はある日、身元不明者の依頼を引き受けることになった。彼はその後、改心して堅気の世界に戻り、今では幸せな家庭を築き、大手企業の役員職に就いていた。
「…本当に依頼主が何者か分からないの?」
「ああ…突然、メールが送られてきて、指示通りに仲介役を担ったんだ…」
「依頼人とは直接会ってないのね?」
「ああ、指定口座に報酬が振り込まれていた…あまりにも多すぎたんで返そうとしたが…結局、音信不通の状態で…」
「貰ったお金はどうしたの?」
「恐くなって…全く手をつけていない、私を捕まえに来たのか?」
「管轄じゃないし、あなたの悪事に興味がないわ、話がしたかっただけ…標的はもっと大物でね…」
「君のようなお嬢さんが何故こんなことを?」
「いろいろと事情があってね、余計な詮索をしない方が身のためよ」
「忠告どうも…もうこりごりだ、もう少し頑張れば退職金が入って、のんびりと過ごせるからな…」
堀江はテリカに洗いざらい情報を提供して、安堵の表情を浮かべた。
「…もう二度と会うことはないでしょう、私のことは忘れて」
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