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長編1
第1幕 第4場B/1
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第1幕 第4場B/1
第1幕
第4場B 美石の魔力
舞台となるのは、兵庫県、<ホテル ラ・スイート神戸ハーバーランド>。その夜、ホテル内で盛大なパーティーが開かれ、続々と各界のトップ、大富豪が訪れていた。
大企業家の白谷フミアキ は、一代で築いた貿易会社の経営を息子たちに任せようとしていた。白谷親子が主催するパーティーは順調に開かれていたが…
ホテル駐車場に一台のピンクのポルシェが停まり、車内からは煌びやかなパーティードレスを身に纏った〝二人の令嬢〟が現れた。
「…何か恥ずかしいな、こういうの慣れてないんだよね~」
「お似合いですよ、そういう役も演じた経験あるでしょ?」
「…あまりないな~なんか体がスースーする…落ち着かないよ~」
「じき慣れますよ、私たちがタキシード着たら余計怪しまれますから…」
二人の令嬢の正体は、テリカとマミコであった。
テリカは大胆に背中を魅せる白いドレスを、マミコは気品溢れるワインレッド、ワンピースタイプのドレスを着こなしていた。
また、ウイッグをつけて髪型を変えたりと、華やかな化粧メイクなどで麗しさを強調していた。潜入する<神女>二人の変装は完璧であったが…
テリカはまだブツブツと文句を言っていて、マミコはそんな先輩を説得して、パーティーの招待IDカードを手渡した。
「…偽の名刺ね、職業は記者か…」
「マスコミ関係者が多いので、怪しまれずに済みますよ」
「彼は女好き?」
「…かなりね、知人の資産家の令嬢とも頻繁に遊んでいるようですから…誘惑して情報を聞きだしますか?」
「騙し打ちなんて専門外よ、拷問の方が得意かも…」
「暴れないで下さいよ、今夜は偵察みたいなものですから…」
「分かってるって…」
テリカたちは緊張感を持ちつつ、潜入捜査を始めようとしていた。会場に入ると、千人近くの招待客が集結しており、既に賑やかな催しが始まっていた。
「わ~これ、全部食べていいの~?」
テリカは会場の豪華な料理に目がくらみ、皿に盛って行った。彼女はもう本来の目的を忘れそうになり、マミコはそんな先輩の姿を見て、頭を抱えて呆れていた。
「…さてと」
マミコは自然体で、標的に近づこうとしていた。会場内にはテレビや電子ネット媒体で見たことがある人物で溢れており、パーティーの豪華さが際立っている中…
パーティー会場では、大勢の招待客が集まって拍手していた。その中心には主催者の白谷(父)の姿があった。彼は多くの友人、知人に見守られながら演説を行っていた。
「…皆さん、我々のためにわざわざ集まってくれてありがとう」
「…今回の辞任式を機に、引退をお考えですか?」
一人の記者が白谷(父)に質問した。
「…いやいや、一つの会社から離れるだけで引退はまだ考えていません、仕事は好きですから…息子たちには負けませんよ!」
「…では、ご子息に一社の跡を継がせた真意は?」
「他に優秀な社員が在いますが、やはり、身内の方が安全だ…はは」
白谷(父)は記者たちの質問に対して、素直な姿勢で答えて、その場は和やかな空気に包まれていた。その一方で、息子は別の場所で友人や知人と楽しく雑談をしており、マミコは接触を試みた。
「…ドン」
マミコは、わざと白谷にぶつかり倒れ込んだ。
「…大丈夫ですか?」
白谷は優しくマミコに声を掛けて、自然と手を差し伸べた。
「すみません、私ったらドジで~…」
「お気になさらず…あの、初対面ですよね?」
「ええ、記者をしております…丁度、あなたを取材しようと思っていて…あの、少しお時間よろしいですか?」
「生憎、今は挨拶回りなどで忙しくて…終わった後でも構いませんか?」
「はい、時間と場所はそちらで指定して下さい…」
マミコは白谷の取材アポを取り、ひとまず彼の前から去って行った。
そして…
「…もぐもぐ……が…が…!!」
テリカは料理を口の中に詰めすぎて、苦しい表情を浮かべていた。
「…ちょっと大丈夫ですか?」
マミコは、水が入ったコップをテリカに差し出した。
「…はあはあ…あ~死ぬかと思った~」
「先輩、遊びに来たんじゃないんだから…目的忘れていませんか?」
「…忘れてないよ!お坊ちゃんとはもう会ったの?」
「ええ、快く会う約束をしてくれました…手筈は整いましたよ…」
「さすが、仕事が早いね」
テリカたちは身を引き締めて、標的と会うのを待ちわびた。
第1幕
第4場B 美石の魔力
舞台となるのは、兵庫県、<ホテル ラ・スイート神戸ハーバーランド>。その夜、ホテル内で盛大なパーティーが開かれ、続々と各界のトップ、大富豪が訪れていた。
大企業家の白谷フミアキ は、一代で築いた貿易会社の経営を息子たちに任せようとしていた。白谷親子が主催するパーティーは順調に開かれていたが…
ホテル駐車場に一台のピンクのポルシェが停まり、車内からは煌びやかなパーティードレスを身に纏った〝二人の令嬢〟が現れた。
「…何か恥ずかしいな、こういうの慣れてないんだよね~」
「お似合いですよ、そういう役も演じた経験あるでしょ?」
「…あまりないな~なんか体がスースーする…落ち着かないよ~」
「じき慣れますよ、私たちがタキシード着たら余計怪しまれますから…」
二人の令嬢の正体は、テリカとマミコであった。
テリカは大胆に背中を魅せる白いドレスを、マミコは気品溢れるワインレッド、ワンピースタイプのドレスを着こなしていた。
また、ウイッグをつけて髪型を変えたりと、華やかな化粧メイクなどで麗しさを強調していた。潜入する<神女>二人の変装は完璧であったが…
テリカはまだブツブツと文句を言っていて、マミコはそんな先輩を説得して、パーティーの招待IDカードを手渡した。
「…偽の名刺ね、職業は記者か…」
「マスコミ関係者が多いので、怪しまれずに済みますよ」
「彼は女好き?」
「…かなりね、知人の資産家の令嬢とも頻繁に遊んでいるようですから…誘惑して情報を聞きだしますか?」
「騙し打ちなんて専門外よ、拷問の方が得意かも…」
「暴れないで下さいよ、今夜は偵察みたいなものですから…」
「分かってるって…」
テリカたちは緊張感を持ちつつ、潜入捜査を始めようとしていた。会場に入ると、千人近くの招待客が集結しており、既に賑やかな催しが始まっていた。
「わ~これ、全部食べていいの~?」
テリカは会場の豪華な料理に目がくらみ、皿に盛って行った。彼女はもう本来の目的を忘れそうになり、マミコはそんな先輩の姿を見て、頭を抱えて呆れていた。
「…さてと」
マミコは自然体で、標的に近づこうとしていた。会場内にはテレビや電子ネット媒体で見たことがある人物で溢れており、パーティーの豪華さが際立っている中…
パーティー会場では、大勢の招待客が集まって拍手していた。その中心には主催者の白谷(父)の姿があった。彼は多くの友人、知人に見守られながら演説を行っていた。
「…皆さん、我々のためにわざわざ集まってくれてありがとう」
「…今回の辞任式を機に、引退をお考えですか?」
一人の記者が白谷(父)に質問した。
「…いやいや、一つの会社から離れるだけで引退はまだ考えていません、仕事は好きですから…息子たちには負けませんよ!」
「…では、ご子息に一社の跡を継がせた真意は?」
「他に優秀な社員が在いますが、やはり、身内の方が安全だ…はは」
白谷(父)は記者たちの質問に対して、素直な姿勢で答えて、その場は和やかな空気に包まれていた。その一方で、息子は別の場所で友人や知人と楽しく雑談をしており、マミコは接触を試みた。
「…ドン」
マミコは、わざと白谷にぶつかり倒れ込んだ。
「…大丈夫ですか?」
白谷は優しくマミコに声を掛けて、自然と手を差し伸べた。
「すみません、私ったらドジで~…」
「お気になさらず…あの、初対面ですよね?」
「ええ、記者をしております…丁度、あなたを取材しようと思っていて…あの、少しお時間よろしいですか?」
「生憎、今は挨拶回りなどで忙しくて…終わった後でも構いませんか?」
「はい、時間と場所はそちらで指定して下さい…」
マミコは白谷の取材アポを取り、ひとまず彼の前から去って行った。
そして…
「…もぐもぐ……が…が…!!」
テリカは料理を口の中に詰めすぎて、苦しい表情を浮かべていた。
「…ちょっと大丈夫ですか?」
マミコは、水が入ったコップをテリカに差し出した。
「…はあはあ…あ~死ぬかと思った~」
「先輩、遊びに来たんじゃないんだから…目的忘れていませんか?」
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