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長編1
第1幕 第3場D/1
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第1幕 第3場D/1
第1幕
第3場D 遺言と報復
「…ふう~」
テリカは我が家に着いた途端、気が抜けて安堵した。しばらく放っておいた室内は至る所に変化があり、埃が溜まって舞っていれば、大事にしていた観葉植物は栄養や水分を失い、魂の抜け殻であった。
「………」
テリカがやるべきことは多々あるが、無造作に自身の通信端末に手が伸ばした。試しに電源を入れてみると…
「…♪」
テリカのコンタクターは画面部分が爆破時の落下衝撃でひび割れて、まだ故障していなかったが…
「……え?」
テリカは着信履歴やメールを調べていくが、そこであるものを発見した。それはツバキが彼女に送った一通のメールであった。
「…この時間は!」
メールが届いた時刻は、ツバキが犠牲となって、意識不明のテリカが乗ったエレベーターが降下している時であった。幸い、メールの保存データは破損しておらず、テリカは安心して全文読むことが出来た。
「…あなたにこのメールが届いている頃、私はもうこの世にいないでしょう。あなたもどうなっているか分からないけど、無事に生きていることを祈っています…」
ツバキの最期のメールは、遺書のようなものであった。テリカはそれを読んで自然と涙を流したが…
「…え?」
ツバキの最期の長文メールには、テリカを元気づける内容が記されていたが、彼女は黙読すると次第に表情が一変して、衝撃の事実を知ることとなった。
かくして、テリカの新しい生活が始まろうとしていた。
それから数日後、テリカが所属する劇団班の舞台稽古が始まって、彼女は久々に劇団仲間と顔を合わせて歓喜に沸いた。
それからさらに数日後、忙しいスケジュールの合間を縫って、テリカはツバキの墓参りに訪れていた。
その日のテリカの服装は市販の喪服ではなく、舞台で演じる男役を彷彿とさせるオーダーメイドスーツであった。テリカはツバキの墓前で、立派な<煌花歌劇団>の男役、舞台俳優になると誓うが、それは表向きである。
「…必ず、あなたの敵を討つ!」
テリカは自分のために亡くなった戦友のために、ある野望を抱いていた。そして、彼女は墓前で手を合わせた後、その場を後にした。
それから長い年月が流れた。<煌花歌劇団>は深い歴史と伝統を誇り、記念すべき五十周年の年が近づいたことで、より活気づいていた。
その一方で…
七月某日 東京。
都内の高層オフィスビルの一室で、独りの女性が厚かましく座っていた。その女性が居る部屋は、大手企業CEO専用の大部屋であった。
待っている謎の女性は面会許可をとっておらず、無断で社内へと潜り込んでいた。CEOはそのことに気づき、急いで謎の女性のもとへと向かうのだが…。
「…誰だ、お前は?どうやって入った?」
CEOは部下や警備員を引き連れて自身の部屋に現れるが、〝侵入者の女〟は彼らに一切動じなかった。
侵入者の女は<神女>テリカだった。彼女はオーダーメイドの紫がかったダークジャケットを身に纏《まと》っており、ゆっくりと姿勢よく起立した。
「…ここのセキュリティは完璧だと耳にしたけど、大したことないわね…おたくの社員に化けて、勝手にお邪魔させてもらったわ…本人は無事だから安心して…」
「お前は一体…?」
「…生憎、素性は明かせないの…あなたに訊きたいことがあってね…」
「話すことなどない、とっとと消えろ!」
「そうはいかない…陰でいろいろと悪いことしているでしょう?」
「……ぐ!」
CEOはテリカに弱みを握られて、一気に顔色を悪くしていた。
「はっきり言って、あなたの悪事に興味ない…別件で訪ねてきたの」
「いちいち癇に障る…やかましい女だ!」
「私の質問に答えてくれたら大人しく出て行くわ…」
CEOはテリカの用件に応じる気はなく、部下を使って、力ずくで追いだそうとしていた。だが…
テリカは、向かってくる男たちに強烈な蹴りを浴びせた。
「何している?さっさと始末しろ!!」
屈強な男たちは一斉に攻めたが、テリカには全く敵わず、ことごとく全員倒されていった。
第1幕
第3場D 遺言と報復
「…ふう~」
テリカは我が家に着いた途端、気が抜けて安堵した。しばらく放っておいた室内は至る所に変化があり、埃が溜まって舞っていれば、大事にしていた観葉植物は栄養や水分を失い、魂の抜け殻であった。
「………」
テリカがやるべきことは多々あるが、無造作に自身の通信端末に手が伸ばした。試しに電源を入れてみると…
「…♪」
テリカのコンタクターは画面部分が爆破時の落下衝撃でひび割れて、まだ故障していなかったが…
「……え?」
テリカは着信履歴やメールを調べていくが、そこであるものを発見した。それはツバキが彼女に送った一通のメールであった。
「…この時間は!」
メールが届いた時刻は、ツバキが犠牲となって、意識不明のテリカが乗ったエレベーターが降下している時であった。幸い、メールの保存データは破損しておらず、テリカは安心して全文読むことが出来た。
「…あなたにこのメールが届いている頃、私はもうこの世にいないでしょう。あなたもどうなっているか分からないけど、無事に生きていることを祈っています…」
ツバキの最期のメールは、遺書のようなものであった。テリカはそれを読んで自然と涙を流したが…
「…え?」
ツバキの最期の長文メールには、テリカを元気づける内容が記されていたが、彼女は黙読すると次第に表情が一変して、衝撃の事実を知ることとなった。
かくして、テリカの新しい生活が始まろうとしていた。
それから数日後、テリカが所属する劇団班の舞台稽古が始まって、彼女は久々に劇団仲間と顔を合わせて歓喜に沸いた。
それからさらに数日後、忙しいスケジュールの合間を縫って、テリカはツバキの墓参りに訪れていた。
その日のテリカの服装は市販の喪服ではなく、舞台で演じる男役を彷彿とさせるオーダーメイドスーツであった。テリカはツバキの墓前で、立派な<煌花歌劇団>の男役、舞台俳優になると誓うが、それは表向きである。
「…必ず、あなたの敵を討つ!」
テリカは自分のために亡くなった戦友のために、ある野望を抱いていた。そして、彼女は墓前で手を合わせた後、その場を後にした。
それから長い年月が流れた。<煌花歌劇団>は深い歴史と伝統を誇り、記念すべき五十周年の年が近づいたことで、より活気づいていた。
その一方で…
七月某日 東京。
都内の高層オフィスビルの一室で、独りの女性が厚かましく座っていた。その女性が居る部屋は、大手企業CEO専用の大部屋であった。
待っている謎の女性は面会許可をとっておらず、無断で社内へと潜り込んでいた。CEOはそのことに気づき、急いで謎の女性のもとへと向かうのだが…。
「…誰だ、お前は?どうやって入った?」
CEOは部下や警備員を引き連れて自身の部屋に現れるが、〝侵入者の女〟は彼らに一切動じなかった。
侵入者の女は<神女>テリカだった。彼女はオーダーメイドの紫がかったダークジャケットを身に纏《まと》っており、ゆっくりと姿勢よく起立した。
「…ここのセキュリティは完璧だと耳にしたけど、大したことないわね…おたくの社員に化けて、勝手にお邪魔させてもらったわ…本人は無事だから安心して…」
「お前は一体…?」
「…生憎、素性は明かせないの…あなたに訊きたいことがあってね…」
「話すことなどない、とっとと消えろ!」
「そうはいかない…陰でいろいろと悪いことしているでしょう?」
「……ぐ!」
CEOはテリカに弱みを握られて、一気に顔色を悪くしていた。
「はっきり言って、あなたの悪事に興味ない…別件で訪ねてきたの」
「いちいち癇に障る…やかましい女だ!」
「私の質問に答えてくれたら大人しく出て行くわ…」
CEOはテリカの用件に応じる気はなく、部下を使って、力ずくで追いだそうとしていた。だが…
テリカは、向かってくる男たちに強烈な蹴りを浴びせた。
「何している?さっさと始末しろ!!」
屈強な男たちは一斉に攻めたが、テリカには全く敵わず、ことごとく全員倒されていった。
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