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第二章

──第83話──

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俺、ネロ、ラルフ、そしてセシルとテトの五人での食事を終え、セシルとテトと別れた俺達は部屋に戻る。

ちなみに、ショーンは俺が連れていかれた後、セシルとテトの二人が家まで送って行ってくれたらしい。

俺達は部屋に戻ると、それぞれのベッドに腰掛け、ネロが口を開く。

「ルディ、お前なぁ。人間には人間の基準があって、里とは また違うんだから気を付けろよ。」

「ただ吹っ飛ばしただけだぞ?」

「目立つなっつってんの!!」

「目立つ様な事なんて」
ゴチンっ!
「──っぃてぇ!!」

ネロの鉄拳が俺の頭に降り注ぐ。

これは良いのか!?
この暴力は良いんですかっ!?

俺は精一杯ネロを睨み付けるが、ネロに鼻で笑われてしまった。

「はっ。ルディのせいでエヴァンから色々と聞かれたぞ?こっちの情報はあんま与えたくねーっつーのに。ルディのバカのせいでな。」

「ルディはバカー!」

「おい、ラルフ!そこ肯定すんなよ!!」

ネロの言葉にラルフが続き、俺はそれを否定した。

俺は咳払いをしてからネロに問い掛ける。

「何でそんなに情報を与えたくねーんだよ。一応、協力してんだろ?」

「ルディ、脳ミソ入ってるか?」

「あぁ??」

喧嘩売ってる?
まぁ、ネロのこれは いつもの事だから良いけどさ。

ネロは持って上がってきた飲み物を飲み、一呼吸置いてから話を続けた。

「人間っつーのはよ、強いヤツに助けを求めるんだ。」

「だから?」

そりゃそうだろ。

訳が分からずに聞くと、ネロはため息を溢す。

「はぁ……だから……人間は自分より強いヤツが身近にいると、すぐに助けを求めてくるんだ。俺達には関係の無い敵でもな。」

「…………。」

「俺達は〈闇落〉しか殺さない。それ以外のヤツはどーでもいい。そんな事、人間は知らない。」

「あぁ、なるほど。」

つまり、人間に助けを求められても助けられない状況もあるって事か。
なら、最初から助けを求められない様にしたい、と。

「助けを求めたのに助けなかったら人間は怒り狂う。そんな面倒は避けたいんだよ。」

「だな。」

「だから、次からは気を付けろ。」

「はいはい。分かったよ。」

俺はネロに降参のポーズをとる。
ネロはその後も何か言いたそうだったが、ひとつため息を溢すと魔法鞄から数枚の紙を渡してきた。

俺はそれを受け取ると、ラルフが横から覗き込む。

「ネロー?これはー??」

ラルフの問いに、ネロは飲み物を片手に答える。

「それは、この国の見取り図だ。」

紙は国を上からみた地図の様になっている ものや、何かの配線の様なものが数枚あった。

やっぱり、この国は丸い形をしてたんだな。

「ネロ、こっちは分かるがこれは何だ?」

俺は国の地図を見せてから、配線の方を見せネロに聞くと、ネロは飲み物を飲みながら気だるそうに答えた。

「あぁ?そっちはあんまり関係ねーよ。新旧の下水道の配管と水道の配管だ。」

「ネロー!この印はなーにー?」

今度はラルフが国の地図をネロに見せる。

「それは“もどき”が目撃された場所だ。大体、目撃情報も取れたから、今、エヴァン達が“もどき”が現れた場所に何か無いかって探してる最中なんだよ。」

「あぁ、だからエヴァンがあそこにいたのか。」

なるほど、確かにギルドの近くにも印があるな。
タイミング悪っ!!

俺が納得していると、ネロは飲み物を飲み終え、ゴミ箱に捨てながら言葉を放つ。

「そういう事だ。まー、エヴァンだけにやらせるつもり無ぇーから、エヴァンとは別で俺も調べるけどな。」

「俺も一緒に行って良いか?」

俺が軽く言うと、ネロはすごく怪訝けげんそうな顔をされた。

そんなに不思議がる事じゃ無くないか? 

「なんでだ?ルディもやる事あんだろ?」

「まー、そーなんだけどさ。……えー、と気分転換?」

本当は、ネロがこれだけの情報を集めるのに苦労しているのを知っているからだ。

俺がついていけば 見る範囲は減るだろうし、ネロにも気分転換してほしい。

ネロは、ずっと一人で動きっぱなしだしな。
少しは楽して欲しい。

……なんて、ネロに言えないけど。

そんな俺の様子を見て、ネロは片方の口の端を持ち上げる。

「へぇ……気分転換ね。……まー、良いか。たまには、な。」

「えー!?ネロもルディも行くなら僕も行くー!!」

俺達の様子を見ていたラルフは勢い良く手を上げた。
それを見た俺とネロは顔を見合せ、お互いに笑い合う。

「じゃ、久しぶりに三人で街に行くか。」

「そうだな。」

「わーい!やったー!!」

子供の様にはしゃぐラルフに、俺まで楽しみな気持ちになる。

「あぁ、そうだ。」

ネロは何かを思い出すと魔法鞄から“もどき”が着ていたローブを取り出した。

「ルディ、これと同じモン作れるか?」

「……は?いや、無理。」

縫製なんてやった事もねーよ。
家庭科なんてマトモに受けた記憶もねーし。

ネロは全く期待してなかった様で、さほど気にも留めていなかった。

「……だよな。だったら、あの店にも寄るか。」

ネロの言葉にラルフは首を傾げながら問う。

「ルディのローブを買ったお店?」

「そう。あそこ、オーダーメイドも出来るからな。……ルディが出来れば少ない出費で済むんだけどな。」

「俺に出来ると思ったのか?」

「いや、思ってねぇ。」

即答かよ!?
なら何故聞いた!?
めっちゃネロ意地悪な笑いしてるし!
からかったんだな!
くそぉ……

それからも俺達は雑談を交え、明日の段取りを決めてから眠りについた。





















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