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第二章

──第47話──

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ネロの事を呼び止めた獣人の二人は、ネロの肩と腕を掴むとくるりと反転し、俺とラルフに背を向ける。

なんなんだろう、一体。

『ラルフは知ってるヤツか?』

『僕も分かんない!』

小声で俺とラルフは話しているが、向こうも向こうで何やら会話している。

「おい、ネロ!何でお前〈神の子〉と一緒にいるんだ!?」

「……はぁ??」

「セシルの言う通りだよ!ネロはいつ知り合ったの!?」

「アイツとは同郷のよしみなだけで」
「なんだと!?聞いてないぞ!?」

「うるさいセシル。聞かれても無いのに一々いちいち言う事も無いだろ……。」

「いや、まぁ、そうなんだけど……ネロは本当に何も教えてくれないよねー。」

「テト、話を逸らすなよ。なあ、ネロ。俺達にも紹介してくれよ!」

「はあ!?なんで俺が……」
「〈神の子〉と知り合いになったって自慢出来るんだぜ!?」

「〈神の子〉は伝説的な存在だからね。僕にも紹介してよ!」

「……あいつが伝説的、ねぇ……?」

「だってよ!魔物の大群を一人でやっつけられる力を持ってるって言われてんだぞ!?しかも、心も優しく、民の事を考えて……まるで神から生まれた子じゃないかって言われる、すげー存在なんだぜ!?」

「……あいつが優しい?……──~っ。」

「あれ、ネロ、何で笑ってんの?」

「いや、何でもない。つーか、そんなに気になるならお前らが声をかけろよ。」

「見ず知らずが声を掛けたら驚いちゃうだろ!!」

「アイツはそんな繊細に出来てないって。」

ネロと獣人二人が会話しているんだけど。

全部聞こえてるんだよなー……。
もう少し声を落としてくれよ……。
ラルフまで笑っちゃってるし。
ネロもネロで俺の事、結構ヒドく言ってない?
俺は優しいし、繊細だぜ!?

『ラルフ、言いたい事あるなら言えよ……』

『あははははは!もう、本当に、人間の価値観って面白いよねー!ルディはルディなのに……あははははは!』

それは誉めてるのか?
それとも、遠回しにけなされてる?

いつまでも足を止めている訳にもいかないので、ネロに声を掛ける事にした。

「ネロ!俺達先に行っても良いか?」

「んぁ?ちょっと待……」
ガシッ!
「なんだよ……。はぁ……。」

ネロが振り向き、俺の方へ足を踏み出した瞬間ネロの両肩が獣人二人に押さえつけられていた。

ネロよりも歳上に見えるせいか、ネロがいじめられてる様にも見える。

ネロは一瞬、獣人をにらんだが、二人の期待の眼差しに耐えられず大きなため息を溢した後、獣人を指し示して俺に説明をしてきた。

「ルディ……あー、こいつらは前に助けた事があって、それから話し掛けてくる様になった奴らだ。」

これで良いだろ、とばかりにネロは二人の手を払いのけると俺達の元に戻ってきた。
ネロの説明が気に入らなかったのか、獣人が声を上げる。

「ネロ!その通りだが、他にも説明のしようがあっただろ!?」

「まるで僕達が凄く弱いみたいじゃないか。」

肩をすくめる獣人二人は心なしか耳まで垂れている様に見える。

こう、あからさまに落ち込まれると何か罪悪感が……。

細マッチョな男だとしても、何か罪悪感を感じる。
これが、ケモミミの効果か。

だが、獣人はすぐに気を取り直し俺に声を掛けてきた。

「俺はセシル。ネロとは酒飲み仲間だ!よく上手い店とか連れてってやってんだぜ!ちなみに、俺は虎の獣人だ!よろしくなっ!!」

「僕はテト。ほとんどセシルが言っちゃったけど、ネロは僕達が駆け出しの頃から知ってるんだ!僕は狐の獣人、よろしくね。」

「え、と?よろしく、俺はルディ。こっちはラルフ。」

「よろしくーっ!!」

自己紹介ってどうしたら良いんだろう……?
今まで俺の事知ってる人としか会った事が無いから何を言ったら良いのかわからん!!
神狼族の事を言うわけにもいかないし……

「ルディ……様はネロと同郷なんだよな?」

タメ口なのに俺に『様』をつけるセシル。
言葉が違和感だらけなんだけど。

「うん、そうだけど……──様、はいらないよ?」

「それは有難い。あんま、慣れてないもんで、な。」

「ルディ達はどこ出身?ネロに聞いても僕達に教えてくれないんだよ!」

テトが心底不思議そうに俺に尋ねてくる。
が……

説明出来ねぇ。

俺が困っていると、ネロが口を挟んだ。

「お前ら、いつも聞いてくるけどさ……別に知らなくても良いだろ?」

「もし、その場所で何かあった時助けに行けるだろ!?」

「そうそう!僕達はネロの友達だからね!」

「ぜってぇ……教えねぇ。冒険者ならそれくらい自分で見付けろ。」

「言ったなっ!見付けたら何かくれよ!!」

「なら頑張らないとな!!」

ネロは盛大なため息をつくと、セシルとテトは了承と取ったのか、笑いながら別れの挨拶をし、去って行った。

「ま、あいつらのはほとんど冗談だから気にするな。本気で里を探そうとはしてねぇからな。」

「仲が良いなら教えても良いんじゃねぇの?」

ネロが獣人の後ろ姿を見ながら肩を竦めて言う。

俺は仲が良いなら言っても良いと思っていたが、ネロの瞳は心なしかどこか雲って見えた。

「里の事は言えねぇだろ。それに……人間も獣人も短命だからな。あんまり仲良くするつもりも無い。」

そう言うネロは少し寂しそうに見えた。

ネロは俺よりも長生きしている。
里の中で若いと言っても、ネロはネロの出会いや別れがあったんだろう。

俺達が黙るとラルフの陽気な声で、少し重苦しくなった空気が霧散した。

「ねぇ!早くルディの服を買いにいこーよー!」

「そうだな。」

「ああ、行くか。」

ネロの先導の元、俺とラルフは歩いて行く。














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