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第十話 デートの約束

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 その日から盗聴も盗撮もされているのは分かるのだが、メッセージアプリ通知の数が極端に減った。
 今、きっと旋風は本当にオレを信じて良いのか半分疑心暗鬼なのだろう。

 結構効率的なんだけどな、あくまで「連絡先全部消してオレだけね」って言葉に「じゃあ貴方も」とノリノリで返しただけで。
 相手と似てるだけで「頭おかしい」って言われるのは、解せない。
 ただ、旋風は人に対して純粋で、された反応をそのまま受け入れる人だから。
 沢山、旋風なりの永遠を見せて断られてきて否定されてきた人生なのだと分かる。

 オレと旋風で違う点があるとすれば、永遠を諦めたかどうか。

 オレはずっと永遠を持つものなどいないと諦め続けてきたから、誰かに内容を話す行為もした覚えが無かった。そしてそれはやはり合っていて、同類の旋風ですら否定する。
 だけど、旋風は諦めずに永遠を見せ続けて表現し続けてきて、その際に沢山傷つけられてきたのだろう。
 可哀想な旋風、そんな愛情はたった一人、オレにだけ向けていればいいのに。
 オレとお前なら永遠を作れるって早く気づけばいい。
 その為にだったら、どんな手段だってとるし、いつまでも待つ行為だって出来る。

 旋風に甘い水でもそろそろ吸わせないと、嫌われてしまうかなと思った。
 だから、沢山くる通知を全て読み終えてから、「デートしよう」と誘ってみれば通知は復活する。

「“何が狙い?”ってそんな簡単に教えるわけねえじゃん、バカで可愛いな」

 旋風は、聞けば返答は全て素直に返ってくるとでも思ってるとしたら、とんでもないバカで愛らしい。
 世の中はもっと怖いんだから、閉じ込めておきたいなとも思う。
 世界中を信じられない目をしながらも、世界の表面的な言葉だけは素直に受け入れるんだから。ねじ曲がってるのか素直なのか分からない。

「思い出が作りたいと言えば、お前は嫌がって現在進行形にしたがるでしょう?」
「よく分かりましたね、思い出なんて許さない。僕のことこんなに掻き乱して……」

 盗聴器の先の機械と繋がってるらしいイヤホンを外しながら、旋風は現れた。
 目を真っ赤に腫らして、今まで泣きじゃくっていたらしく、ぐす、と鼻水を啜った。

「もう、何が何だか分からないんです」
「何故?」
「否定ばかりされてきたから。受け入れられたら、どうすればいいかなんて。恋が結ばれましたの続きがあるなんて知らない。どうすればいいか分からないんです」
「そのまま幸せのままでいればいい」
「そんなの!! そんなのあり得ない! だってみんな、みんなそういって僕を……」
「旋風、他は知らないよ。オレとお前の間にあるのは、オレとお前の関係で体験したことだけだ。オレはお前の永遠を否定しない」
「何で?! 何でそんな肯定を……」
「それを知る為にもデートしよう、ね、きっとそれがいい。ショッピングにでもいって買い物して、そのあと映画でも見よう。で、お茶しようよ」
「そ、それくらいなら……」
「じゃあ決まりだ、着替えるから少し出て。それとも生着替え見ちゃう?」
「へ、部屋の外でお待ちしてます!!」

 真っ赤に顔を染めちゃって可愛いんだから。
 そうやって絆されれば良い、じわじわと絆されて、オレしかもういないんだと思い知ってオレから逃げられなくなれば良い。
 オレだけがお前を肯定するのなら、幸せな世界だね。
 幸せな世界で生きていこうよ、旋風。

 オレにはお前しか要らないよ。


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