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第一章 リーチェ編
第三十一話 神の名を叫べ聖女よ
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「ディスタード!」
「やかましいガキだ、耳障りだな、寝てろ」
うるさげにメビウスは、蔓でディスタードの顔面を叩いてから、太めの蔓で腹へ攻撃し、貫く。
ディスタードは吐血し、気絶した。
蔓は次に俺を狙う。
一気に死の恐怖が過る、二度死ぬのはつらい、痛みの種類が違えど。
やばいが、怖いが。
だが、キャロラインが本気を出せば、勝ち確定なのはわかっている。
キャロラインは、運命を宿した姫様なのだから。
偉大なる光属性かつ強力な技をお持ちだ。
しかし、シルビアの予定外行動で、徐々に自信はなくなる。
でももしかしたら死ぬかもしれない? ここで全員? 一気に血の気が引き、ぞっとする。
ばっか、馬鹿か、おれ。
怯えてどうする、きちんと導くて決めたろ! 俺がやらないで、誰がやるんだ!
火薬はつきたので、ディスタードが持てなくなった剣を手にする。
そうだ、あのイベント通りに台詞を。俺がヴァスティの正規ルートに戻すんだ。そこから先の未来や物語はわかんねーんだけど、今死なずにすむ。誰一人死なないはずだ!
ヤンデレ属性だったな、確か。
紹介文が変わったから、有効かは解らねえけど、やらないよりはましだ。
一花咲かせてやる! ディスタードの持っていた剣を構えてみるものの、重いのなんのって。
身体ががちがちと震え、メビウスはそれを見つめ楽しげだった。
「キャロライン、逃げな」
「嫌だよ、置いていけない!」
「キャロライン」
そっと一回剣をおろし頭を撫でて、手の平に口づける。出来れば騎士や紳士をイメージした動きになるよう努力する。
キャロラインは、真面目に驚き、それから可愛らしく照れてぼうっとする。見蕩れてくれる? ほっとした。
「お願いだ、俺の女神。あんたは生き延び、あとはこの世界を救う勇者になって仇をうってくれよ。俺が死んだら、その血は全てあんたにくれてやる、捧げてやる。だから、頼んだ」
言った、言ってやった、キャロライン覚醒確定台詞。一番親しい奴がこんな死亡フラグたてることで、キャロラインは自分の中の感情と闘う――はずだ。
さあ走って逃げろ、と突き放したタイミングで蔓は俺を貫く。
野郎が二人でおねんねとか、情けないな。蔓は俺を貫いたことで、血液から魔力を貰い、活き活きとしている。
キャロラインは。
キャロラインは泣き叫び、震える。
シルビアは俺を好きだと主張していたのに、傍観している。
愉快な笑みでにやにやとメビウスは、見つめてキャロラインに近づく。
「さあ、ピュアクリスタルの乙女、ともに……」
「貴方を、私は許さない」
「ゆるさないからどうする、神にでも祈るか?非力な神に!」
「非力じゃないわ、私の神様は世界一強くて、私の味方なの」
キャロラインはメビウスをはたき、俺を抱きしめながら、唱えた。
俺にだけしか聞こえない声量で、神の名を。
キャロラインの涙がぽたりと頬に当たる、そこだけは暖かい。神の名を唱えた瞬間、一気に温かみが波紋のように広がった!
「ルートヴィッヒ・サンチェルド・モートルダム=ヴァステルデ」
最上位の神の名だ、俺の現世の知識内では。
この世界で一番祈る人々が多くて、祈りが報われにくい名前。
奇跡を起こせるなら、それは聖女。
キャロラインは間違いなく、れっきとした聖女であるぞと、空が叫ぶように光の亀裂が空から注ぎ込み、俺やディスタードを回復する。
回復しながら、……攻撃もしていた。光の槍が男に降り注ぐ。
メビウスは、大きい仕草で顔を抑え、苛立ちながら叫ぶ。
「くそ、行くぞシルビア!不利である、退却だ! 次はこうはいかぬぞ!」
「…………リーチェ、ごめんなさいましね」
「シルビア、早く行くぞ、我らの城に!」
「ええ…………覚悟していた、ことだわ」
シルビアを止めたかった、しかし彼女が悪役を降りたらそれはそれで、ヴァスティルートが叶えられない。
キャロラインは、俺の言葉をきっかけに、世界征服を阻止する聖女に名乗り上げるのだから。
命をとして未来を託し逃げさせようとしたヒーロー。
なんか、少し情けないけど、俺では勇者にはなれないから。
これはだって、キャロラインのための世界だ。
キャロラインはぜいぜいと息をあげ、珠の肌に汗をかきながら、俺へ声をかける。
「死んじゃ嫌だよ、リーチェ、死んじゃ嫌だよ!」
「キャロラインのお陰で生き延びたよ……すごいな、今のは?」
「聖女の祈り、だ……リーチェくん、君は凄い御方に想われているのかも」
「ディスタード様! ディスタード様も無事ですか?!」
「中々に新鮮な暖かみだ、この光魔法は。何にせよ皆が待っている、ザーラを手にして、オリエンテーリングを終わらせ、終わり次第話し合おう。キャロラインくんも、いいね?」
「はい…………あ、ザーラが」
「どうした?」
「一個しか…………」
「構わないよ、君が優勝したまえ!
ボクの雇い主はもう深淵に染まった」
ディスタードは明るく励ますように笑い、グリフォンへと乗り、上空で待つ。
キャロラインはドラゴンを呼び、俺と一緒に載る。
飛んだところで、人食い花がまた甦る、キャロラインはうまく逃げようとするが、ばさばさとドラゴンに蔓は追い付き。
俺は足を捕らわれ、湖に。
「リーチェ!」
「二人とも行け、はやく! 大丈夫あとでオリエンテーリング後に落ち合おう! こっちには……」
「お前様!」
イミテちゃんがいるから。いつまでもこなくて心配になってやってきたのだろう。
イミテとキャロラインの視線が交わる。
「リーチェも連名にし、優勝してこい!こちらは、なんとかする!」
「任せてもいい?!」
「私を誰だと? 大賢者のむすめぞ!」
その口上便利だな、二人とも信じた顔していなくなった!
「心配したぞ、お前様、何百年ぶりに肝を冷やした!」
「必要事項だからなあ、なんとかキャロラインはこれで運命に真剣になるはずだ、好きな野郎がかかってる」
「計算はうまくいってるのであるな? ひとまずは、湖から出ようぞ! しっかり、私に捕まれ!」
湖の中で蔓と戦っていると、イミテが蔓を引きちぎり、俺を担いで宙へ浮き、地面へ降りる。
地面に降りるなり、イミテは蔓を燃やしきり、追手を完全に消滅させた!
「助かった、イミテ」
「何か起きたのか、学園中あの強き光で噂になっていたぞ!」
「学園に戻ったら、説明するよ。とりあえず帰ろう、街へ。学園へ」
「やかましいガキだ、耳障りだな、寝てろ」
うるさげにメビウスは、蔓でディスタードの顔面を叩いてから、太めの蔓で腹へ攻撃し、貫く。
ディスタードは吐血し、気絶した。
蔓は次に俺を狙う。
一気に死の恐怖が過る、二度死ぬのはつらい、痛みの種類が違えど。
やばいが、怖いが。
だが、キャロラインが本気を出せば、勝ち確定なのはわかっている。
キャロラインは、運命を宿した姫様なのだから。
偉大なる光属性かつ強力な技をお持ちだ。
しかし、シルビアの予定外行動で、徐々に自信はなくなる。
でももしかしたら死ぬかもしれない? ここで全員? 一気に血の気が引き、ぞっとする。
ばっか、馬鹿か、おれ。
怯えてどうする、きちんと導くて決めたろ! 俺がやらないで、誰がやるんだ!
火薬はつきたので、ディスタードが持てなくなった剣を手にする。
そうだ、あのイベント通りに台詞を。俺がヴァスティの正規ルートに戻すんだ。そこから先の未来や物語はわかんねーんだけど、今死なずにすむ。誰一人死なないはずだ!
ヤンデレ属性だったな、確か。
紹介文が変わったから、有効かは解らねえけど、やらないよりはましだ。
一花咲かせてやる! ディスタードの持っていた剣を構えてみるものの、重いのなんのって。
身体ががちがちと震え、メビウスはそれを見つめ楽しげだった。
「キャロライン、逃げな」
「嫌だよ、置いていけない!」
「キャロライン」
そっと一回剣をおろし頭を撫でて、手の平に口づける。出来れば騎士や紳士をイメージした動きになるよう努力する。
キャロラインは、真面目に驚き、それから可愛らしく照れてぼうっとする。見蕩れてくれる? ほっとした。
「お願いだ、俺の女神。あんたは生き延び、あとはこの世界を救う勇者になって仇をうってくれよ。俺が死んだら、その血は全てあんたにくれてやる、捧げてやる。だから、頼んだ」
言った、言ってやった、キャロライン覚醒確定台詞。一番親しい奴がこんな死亡フラグたてることで、キャロラインは自分の中の感情と闘う――はずだ。
さあ走って逃げろ、と突き放したタイミングで蔓は俺を貫く。
野郎が二人でおねんねとか、情けないな。蔓は俺を貫いたことで、血液から魔力を貰い、活き活きとしている。
キャロラインは。
キャロラインは泣き叫び、震える。
シルビアは俺を好きだと主張していたのに、傍観している。
愉快な笑みでにやにやとメビウスは、見つめてキャロラインに近づく。
「さあ、ピュアクリスタルの乙女、ともに……」
「貴方を、私は許さない」
「ゆるさないからどうする、神にでも祈るか?非力な神に!」
「非力じゃないわ、私の神様は世界一強くて、私の味方なの」
キャロラインはメビウスをはたき、俺を抱きしめながら、唱えた。
俺にだけしか聞こえない声量で、神の名を。
キャロラインの涙がぽたりと頬に当たる、そこだけは暖かい。神の名を唱えた瞬間、一気に温かみが波紋のように広がった!
「ルートヴィッヒ・サンチェルド・モートルダム=ヴァステルデ」
最上位の神の名だ、俺の現世の知識内では。
この世界で一番祈る人々が多くて、祈りが報われにくい名前。
奇跡を起こせるなら、それは聖女。
キャロラインは間違いなく、れっきとした聖女であるぞと、空が叫ぶように光の亀裂が空から注ぎ込み、俺やディスタードを回復する。
回復しながら、……攻撃もしていた。光の槍が男に降り注ぐ。
メビウスは、大きい仕草で顔を抑え、苛立ちながら叫ぶ。
「くそ、行くぞシルビア!不利である、退却だ! 次はこうはいかぬぞ!」
「…………リーチェ、ごめんなさいましね」
「シルビア、早く行くぞ、我らの城に!」
「ええ…………覚悟していた、ことだわ」
シルビアを止めたかった、しかし彼女が悪役を降りたらそれはそれで、ヴァスティルートが叶えられない。
キャロラインは、俺の言葉をきっかけに、世界征服を阻止する聖女に名乗り上げるのだから。
命をとして未来を託し逃げさせようとしたヒーロー。
なんか、少し情けないけど、俺では勇者にはなれないから。
これはだって、キャロラインのための世界だ。
キャロラインはぜいぜいと息をあげ、珠の肌に汗をかきながら、俺へ声をかける。
「死んじゃ嫌だよ、リーチェ、死んじゃ嫌だよ!」
「キャロラインのお陰で生き延びたよ……すごいな、今のは?」
「聖女の祈り、だ……リーチェくん、君は凄い御方に想われているのかも」
「ディスタード様! ディスタード様も無事ですか?!」
「中々に新鮮な暖かみだ、この光魔法は。何にせよ皆が待っている、ザーラを手にして、オリエンテーリングを終わらせ、終わり次第話し合おう。キャロラインくんも、いいね?」
「はい…………あ、ザーラが」
「どうした?」
「一個しか…………」
「構わないよ、君が優勝したまえ!
ボクの雇い主はもう深淵に染まった」
ディスタードは明るく励ますように笑い、グリフォンへと乗り、上空で待つ。
キャロラインはドラゴンを呼び、俺と一緒に載る。
飛んだところで、人食い花がまた甦る、キャロラインはうまく逃げようとするが、ばさばさとドラゴンに蔓は追い付き。
俺は足を捕らわれ、湖に。
「リーチェ!」
「二人とも行け、はやく! 大丈夫あとでオリエンテーリング後に落ち合おう! こっちには……」
「お前様!」
イミテちゃんがいるから。いつまでもこなくて心配になってやってきたのだろう。
イミテとキャロラインの視線が交わる。
「リーチェも連名にし、優勝してこい!こちらは、なんとかする!」
「任せてもいい?!」
「私を誰だと? 大賢者のむすめぞ!」
その口上便利だな、二人とも信じた顔していなくなった!
「心配したぞ、お前様、何百年ぶりに肝を冷やした!」
「必要事項だからなあ、なんとかキャロラインはこれで運命に真剣になるはずだ、好きな野郎がかかってる」
「計算はうまくいってるのであるな? ひとまずは、湖から出ようぞ! しっかり、私に捕まれ!」
湖の中で蔓と戦っていると、イミテが蔓を引きちぎり、俺を担いで宙へ浮き、地面へ降りる。
地面に降りるなり、イミテは蔓を燃やしきり、追手を完全に消滅させた!
「助かった、イミテ」
「何か起きたのか、学園中あの強き光で噂になっていたぞ!」
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