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雪景色に天恵編
第六十三話 本来は冷酷無比な雪の女王
しおりを挟む屋敷中の人間を凍らせ、傭兵ですら凍らせる。
メイドも、執事も凍らせ、命乞いをする輩に対してでさえ慈悲もない。
それが本来のシラユキの、対人間への姿なのかもしれない。
私や兄様と出会ってから優しくなったり丸くなったりしたのだろう。
でも今だけは非常に怒り、屋敷全てが雪で覆われた。
寒さに震えながらジェネットが出てきた。
あと少しで屋敷の外に出ようという、エントランスにまで辿り着いたところで、ジェネットが身を震わせながら鼻水を鼻に垂らし、そんなものさえシラユキは凍らせる。
「あら失礼、帰ること告げてませんでしたわね。貴方は用なしとなりましたわ、なので私帰ります」
「精霊に認めさせないようにするぞ!!」
「ふふ、先ほどね、愉快な話を聞いたの。アルギスという魔崩れ、お前とは因縁があるんだって?」
「な、なぜそれを……」
「アルギスは此度から、こちら側に着いたからもう朝昼夜の精霊の心配はしなくても宜しいの。四季の精霊だって、魔王様と花嫁であられるウル様なら絶対に認めさせるに決まっている。ということで、お前は用なしよ」
ほほほほほ、と口元に手を当てシラユキは大笑い――いや、哄笑した。
悔しげにジェネットはシラユキに手を伸ばしたが、その手を兄様が払いのける。
「今回のこと、陛下に告げ口させてもらいますね」
「ゆ、勇者よ、待ってくれ。少しお互い大人になろうじゃあないか」
「テメエの女に手ェ出されて黙ってたら男じゃあねーんだよ、殴られないだけ有難く思え、自分の身分に感謝しな」
ジェネットは最後にシラユキに足下から氷漬けにされていく。
「い、嫌だ、しにたくないい!!!」
「呼吸はできるようにしておきますからご安心を。二時間ほどの生き地獄、お楽しみくださいな。素敵な屋敷に招待してくださった、私からのお礼ですわ」
ほほほほほとまた哄笑するシラユキと、兄様を見て私はゼロにそっと手を繋いだ。
「私ってもしかして、一番怒らせたら怖い人達を味方にしていたの?」
「何を今更。あいつはうちの陣営で一番慈悲深く、一番残酷であるよ」
屋敷を出ると兄様は伸びをしてからポケットから指輪を取り出し、またシラユキの手に嵌めるとシラユキは軽く兄様を小突いてから笑った。
「城にはこないの?」
「あの王子の処理はオレに任せておくとイイ。こういうとき、頼れる人間がいたら利用するといいよ」
「……また危ない目にあっても、助けてくれますの?」
「今度は白馬つきで出て行くよ、ステーキ食いながらってしまらねえし、かっこつかねえな!」
シラユキと兄様が笑い合ってから私達は、兄様とさよならをし、馬を走らせ城に戻った。
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