22 / 88
勇者参列編
第二十二話 大事な隠し物
しおりを挟む
ゼロは辺りに炎をまき散らし、水を蒸散させるが、アルギスは余計に水を多く流し込んでくる。ゼロが蒸散させればさせるほどに。
それだけで、自分はこの男に負けたくない、という意思が透けて見えた。
ゼロは場に炎をまき散らしたまま、アルギスへ幾らか槍でなぎ倒すように攻撃をしかけるが、交わされる。
サキやリデルにも炎の槍で向かうが、交わされ続ける。
サキやリデルは攻撃を流すのがとてもうまくて、だけどたまにぎこちない姿勢を取る。
アルギスが今度は、二人を攻撃してる間にゼロを攻撃しようとし、ゼロは炎で視界を邪魔し攻撃を受けずに済んでいる。
サキやリデルから交わされてるというのに、ゼロは嗤った。
こんな状況でも嗤ったのだ。
「項の、いや、背中の真ん中といったところか」
「ッな?!」
最初に反応したのはサキ。自分の背中を振り返った瞬間に油断を生み、間合いに踏み込んだゼロから頭をあっという間に鷲づかみにされる。
宙で足を藻掻かせるサキは涙目で、ゼロを睨み付ける。
「勇者よ、確か核を壊すのだったな? 宝石を」
「そ、そうだ」
「嗚呼、人間よ。お前は些か調子に乗り、情報を出し過ぎた。邪魔なのだよ、何処に核があるかすぐに分かった。さようなら、もう二度と会わないだろう」
サキの背中に金属の剣を生み出すと、ゼロはそれであっという間にサキの背中を貫き、宝石を壊す。
サキの異様だったオーラは消え、異形の怨念が詰まったような何重もの声が悲鳴をあげ、サキは黒い吐血をした。
サキの身体はだらりと、人形のように力を無くし、興味をなくしたゼロがミディ団長に向かって放り投げるものだからミディ団長は慌てて受け止め抱き留めてえ治療する。
「次はお前か。お前は左の腕の肘裏だな?」
「そんなに分かりやすかったか……!?」
「いいや、先ほどの女と違って貴様はとても旨かったよ。攻撃を躱すことで、何処が弱味になるのか情報を与えてしまうという意味合いにさえ気づいていれば、お前は隠し切れていただろう。綺麗に少し、隠しすぎたな」
ゼロはリデルに歩み寄り、リデルが怯えながら繰り広げる攻撃にものともせず、退屈そうに欠伸さえするものだからリデルは完全に恐怖に支配された。
逃げだそうとした刹那、リデルはヴァルシュア自身に核となる宝石を水で射貫かれ、先ほどのように悲鳴があがるとリデルは気絶し倒れた。
リデルの身体をヴァルシュアは引き寄せ、四方八方から飛ぶ水を氷にし、八つ裂きにした。
うっとりとヴァルシュアは微笑みかける。
「アルギス、この感じだと貴方の核もばれてるわア。一旦退かない? 頭のわるうい男嫌いなの」
「……分かりました、貴方様が仰せになるのなら。だけど、僕はウルを諦めませんよ」
「ああ、そのことなら任せて。あたしも、ゼロを諦めないものぉ♡ というわけで、ゼロ、今度仕切り直ししましょう? 式自体はもう邪魔はしないわ、今度違う機会に奇襲するわあ。今回あまりに奇襲タイミングが分かりやすくて、貴方にとって有利すぎてつまらなかったわあ。でもやっぱり期待に応えないとーって思ったしー。勇者とまで組んじゃって、少しつまんなあい」
ヴァルシュアが色香を全開にし、魅了技を使うが、私のバリアのお陰で誰一人心を動かさない。
その分私に負担が来る、魔力が一気に吸い取られて、徐々に意識が朦朧とする。
駄目よ、まだ、起きていないと。
「ふふ、中々強い魔王が誕生しそうね? あたしのチャームを全て押さえ込むなんて、中々やるじゃない。少しは。式をやるだけのことは、認めてあげてもいいわあ。じゃあね、ゼロ。あたし、これからエステもあるから。いくわよ、アルギス」
「おい、待てよ、オレ達は無視か、ヴァルシュア! テメエを倒すのはオレ達なんだよ!」
「ギルバートちゃん、あのね、今日は虫けらの相手はしたくないのお。もうちょっと強くなってから、出直してね? ああ、作戦は悪くなかったと思うから頭脳は褒めてあげるわ」
食ってかかっていった勇者のパーティをヴァルシュアは弾き飛ばすと、アルギスと二人で虚空に産まれた水疱に消えていった。
場に残されたのは、リデルの死体と、気を失って人として戻ったサキ。
それから弾き飛ばされ大けがを受けた勇者パーティだった。
ゼロは最後までヴァルシュアの気配を睨み付けていて、ラクスターの声で我に返ったようだった。
「おい、魔王! 奥様の様子が変だ!」
「何だと!? 下りてこい!」
命令通りラクスターが地上に降りる頃には、私の魔力は尽きて意識を失っていた。
それだけで、自分はこの男に負けたくない、という意思が透けて見えた。
ゼロは場に炎をまき散らしたまま、アルギスへ幾らか槍でなぎ倒すように攻撃をしかけるが、交わされる。
サキやリデルにも炎の槍で向かうが、交わされ続ける。
サキやリデルは攻撃を流すのがとてもうまくて、だけどたまにぎこちない姿勢を取る。
アルギスが今度は、二人を攻撃してる間にゼロを攻撃しようとし、ゼロは炎で視界を邪魔し攻撃を受けずに済んでいる。
サキやリデルから交わされてるというのに、ゼロは嗤った。
こんな状況でも嗤ったのだ。
「項の、いや、背中の真ん中といったところか」
「ッな?!」
最初に反応したのはサキ。自分の背中を振り返った瞬間に油断を生み、間合いに踏み込んだゼロから頭をあっという間に鷲づかみにされる。
宙で足を藻掻かせるサキは涙目で、ゼロを睨み付ける。
「勇者よ、確か核を壊すのだったな? 宝石を」
「そ、そうだ」
「嗚呼、人間よ。お前は些か調子に乗り、情報を出し過ぎた。邪魔なのだよ、何処に核があるかすぐに分かった。さようなら、もう二度と会わないだろう」
サキの背中に金属の剣を生み出すと、ゼロはそれであっという間にサキの背中を貫き、宝石を壊す。
サキの異様だったオーラは消え、異形の怨念が詰まったような何重もの声が悲鳴をあげ、サキは黒い吐血をした。
サキの身体はだらりと、人形のように力を無くし、興味をなくしたゼロがミディ団長に向かって放り投げるものだからミディ団長は慌てて受け止め抱き留めてえ治療する。
「次はお前か。お前は左の腕の肘裏だな?」
「そんなに分かりやすかったか……!?」
「いいや、先ほどの女と違って貴様はとても旨かったよ。攻撃を躱すことで、何処が弱味になるのか情報を与えてしまうという意味合いにさえ気づいていれば、お前は隠し切れていただろう。綺麗に少し、隠しすぎたな」
ゼロはリデルに歩み寄り、リデルが怯えながら繰り広げる攻撃にものともせず、退屈そうに欠伸さえするものだからリデルは完全に恐怖に支配された。
逃げだそうとした刹那、リデルはヴァルシュア自身に核となる宝石を水で射貫かれ、先ほどのように悲鳴があがるとリデルは気絶し倒れた。
リデルの身体をヴァルシュアは引き寄せ、四方八方から飛ぶ水を氷にし、八つ裂きにした。
うっとりとヴァルシュアは微笑みかける。
「アルギス、この感じだと貴方の核もばれてるわア。一旦退かない? 頭のわるうい男嫌いなの」
「……分かりました、貴方様が仰せになるのなら。だけど、僕はウルを諦めませんよ」
「ああ、そのことなら任せて。あたしも、ゼロを諦めないものぉ♡ というわけで、ゼロ、今度仕切り直ししましょう? 式自体はもう邪魔はしないわ、今度違う機会に奇襲するわあ。今回あまりに奇襲タイミングが分かりやすくて、貴方にとって有利すぎてつまらなかったわあ。でもやっぱり期待に応えないとーって思ったしー。勇者とまで組んじゃって、少しつまんなあい」
ヴァルシュアが色香を全開にし、魅了技を使うが、私のバリアのお陰で誰一人心を動かさない。
その分私に負担が来る、魔力が一気に吸い取られて、徐々に意識が朦朧とする。
駄目よ、まだ、起きていないと。
「ふふ、中々強い魔王が誕生しそうね? あたしのチャームを全て押さえ込むなんて、中々やるじゃない。少しは。式をやるだけのことは、認めてあげてもいいわあ。じゃあね、ゼロ。あたし、これからエステもあるから。いくわよ、アルギス」
「おい、待てよ、オレ達は無視か、ヴァルシュア! テメエを倒すのはオレ達なんだよ!」
「ギルバートちゃん、あのね、今日は虫けらの相手はしたくないのお。もうちょっと強くなってから、出直してね? ああ、作戦は悪くなかったと思うから頭脳は褒めてあげるわ」
食ってかかっていった勇者のパーティをヴァルシュアは弾き飛ばすと、アルギスと二人で虚空に産まれた水疱に消えていった。
場に残されたのは、リデルの死体と、気を失って人として戻ったサキ。
それから弾き飛ばされ大けがを受けた勇者パーティだった。
ゼロは最後までヴァルシュアの気配を睨み付けていて、ラクスターの声で我に返ったようだった。
「おい、魔王! 奥様の様子が変だ!」
「何だと!? 下りてこい!」
命令通りラクスターが地上に降りる頃には、私の魔力は尽きて意識を失っていた。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜
七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。
ある日突然、兄がそう言った。
魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。
しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。
そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。
ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。
前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。
これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。
※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です
運命の歯車が壊れるとき
和泉鷹央
恋愛
戦争に行くから、君とは結婚できない。
恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。
他の投稿サイトでも掲載しております。
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜
よどら文鳥
恋愛
フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。
フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。
だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。
侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。
金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。
父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。
だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。
いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。
さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。
お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる