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羽根を持たない天使編
第四話 死に神のような天使
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お城にてシラユキから簡単な魔法を教わろうとする。
術の仕組みや、説明は普通に聞けるのに、実践となるとどうしても倒れてしまう。
今日も最後の試しだとばかりに、実践に挑んでみる。
炎を少しだけ指に点す魔法なんだけれど――。
「駄目、くらくらしはじめてきたわ」
「奥様、無理なさらないで! 蒼い顔してらっしゃいます!」
シラユキが慌てて私を支えてくれて、木陰に座らせてくれた。
飲み水を竹の筒にいれて持ってきてくれたので、私は礼を告げ受け取り飲む。
「何がいけないのかしら」
「うーん、魔物の中でも目に金色を授けられたのなら、才能はあると思いますわ。何か目覚めのきっかけがいるのかもしれませんわね」
シラユキは真面目に考えてああでもないこうでもないと唸る。
二人してうんうんと悩んでいると、何かの気配を察して振り返れば、そこには金髪の少年のような青年のような人が立っていた。
年頃は私と同じくらいに見えるけれど、気迫がこの男の人をただの少年だとは認知できなかった。
睨んでくる目は凄みがあるし、何より何もかもに諦観してる眼差しが気になった。
私はシラユキの服を引っ張ると、シラユキは少年に気づくなり気易く声をかけた。
「あら、ラクスター。お元気でして? 久しぶりですわね」
「魔王いるか、うちのカシラからの急用でな」
「何のご用? 急用があるような事態なんて予想できませんわね。神様はお元気? 大天使様」
「え?! 天使様なの、この人」
私が騒いでラクスターを見やるとラクスターは舌打ちをして、つかつかと歩み寄り、私の胸ぐらを掴んだ。
「テメェもなる予定だったんだよ!」
*
ゼロと一緒に話を聞くこととして、私はシラユキに隠れながらラクスターと一緒にゼロのもとへ向かった。
さっきの言葉……私が、なる予定だったってどういうことかしら。
また魔物達が聖なる属性と噂の天使達と気易い関係っぽいのも気になるところではあった。
書類整理をしているゼロが執務室にはいて、私の姿を見れば微笑んでくれて私はそれだけで胸が高鳴った。
「いちゃつくなよ、こっちはアンタの所為で残業だらけだ!」
ラクスターは改めて嘆息をつくと、ゼロは目を細めて笑った。
「ウルがもしや、天使になって天界を生きる予定だったとはな。その文句でも大方言いにきたのだろう? そうであれば、もっと早くに迎えにくればよかったのだ、皆ウルを惜しむ者共はタイミングが遅い」
「五月蠅い。お陰で、うちのカシラは毎日毎日泣いてるンだよ。あの子が欲しかったのに、って騒ぐし、オレらの仕事は増えるし沢山だ」
「まあ労い代わりにシラユキの菓子でも食っていけ」
「菓子なんかじゃ収まらない程には忙しい!」
私が口げんかしあう二人をよそにシラユキに説明を求めると、シラユキは簡単に分かりやすく教えてくれた。
「人を殺しすぎたら注意が天からくるようになってましてね、そこからの使いですの。神様に逆らうこと自体は怖くはないのですけれども、その所為で失うのが残念なものもありますわ、天才的なアートや食べ物を生み出せる人材とかね? だから大人しく、天界からの使者、大天使であるラクスターの話はきくことにはしてますのよ」
「オレたちゃ特別やべえ時以外にはあまりこねえんだが、今回ばかりはまずったな、魔王。この小娘は、神様のお気に入りだ。天使になるのを大層楽しみにしてらっしゃった。そいつが死ぬ前からこっちはそいつが死んだ後に天使になれるよう調整していたんだ」
横からラクスターが説明を被せてくるもんだから、私はシラユキの後ろに隠れる。
ラクスターは怖い眼差しなんだもの。
ゼロは哄笑し、愉快なものでも見るような眼差しをラクスターに送る。
「神に伝えとけ、ウルは余の物だ」
「そうはいかねえ。そいつは、アンタが手をつける前からオレらの……」
「所有物とは言うわけないよな? 人の魂は、個人の物だ。意思に任せる物だろう」
「じゃあ何だ、アンタは小娘が望んで化け物みたいな魔王の嫁になりたいとでも?」
「……意思に任せる、それも。まあ、勿論望むだろうけどな?」
ゼロがシラユキの後ろに隠れてる私にも睨み付けてくるもんだから、吃驚したけれどラクスターみたいに怖くはない。
どちらかと言えば、オモチャをとられそうで悲しむ子供みたいな目つきに見えて、分かりやすく拗ねていた。
「私はッ、ここに、いたい、です。生きるの、とても楽しいの。魔物の身体だけれど」
「……天界だともっと良い暮らしや、楽しいこともあると思うぜ? それでも断るのか」
「はい、私はそれにまだしなくちゃいけないことがあるんです」
「しなくちゃいけないこと?」
「ゼロとの結婚式と、アルギスを人間に戻すこと」
「……正気か、本気でこの牛に嫁ぐと?」
ラクスターが呆れた表情でゼロを指さし。ゼロは感極まったのか、いきなり牛姿になっていて鼻息荒く私を見つめていた。よっぽど驚いていたのね。
「聞いたか。聞いたか、シラユキ、ラクスター! これが我が乙女だ!」
「よかったですわね、魔王様! 私は、ウル様との結婚を支持致しますわ! さあさあお引き取りを、ラクスター! クッキーあげるから!」
「子供扱いすんじゃねえよ、シラユキ姐! ……オレは忠告したぞ。ああ、そうだ、この前テメェんとこの幹部が勇者に負けて消えたっつってたな?」
「それがどうした?」
「オレを幹部にしろ。嬢ちゃんの気分が変わるまで待っててやる」
「て、天使を魔王軍幹部に?!!!」
驚く一同をおいてけぼりに、ラクスターは段取りを一人で導き出す。
「奥の部屋が空いていたよな、確か二階の日当たりがいい部屋。あそこオレの部屋な」
「な、なんでまた……ラクスター、何かあったのか」
「何があったかってこれ見てくれよ」
ラクスターは衣服の上着を脱いで背中を露わにする。
背中から生み出されたのは白い羽根なんて一切無い、骨であった。
「ついにクビにされそうだよ、これの所為で」
「それ、もしかして私の所為で……」
「ン? いや、これ自体は生まれながらだった。罰とかでもないンだが……羽根のない天使は、天使じゃねえってクレームが集ってな。言われたよ、一番最近迎えに行った奴に」
ラクスターは苦しみを表情に露わにしながら笑った。
「まるで死に神だって」
術の仕組みや、説明は普通に聞けるのに、実践となるとどうしても倒れてしまう。
今日も最後の試しだとばかりに、実践に挑んでみる。
炎を少しだけ指に点す魔法なんだけれど――。
「駄目、くらくらしはじめてきたわ」
「奥様、無理なさらないで! 蒼い顔してらっしゃいます!」
シラユキが慌てて私を支えてくれて、木陰に座らせてくれた。
飲み水を竹の筒にいれて持ってきてくれたので、私は礼を告げ受け取り飲む。
「何がいけないのかしら」
「うーん、魔物の中でも目に金色を授けられたのなら、才能はあると思いますわ。何か目覚めのきっかけがいるのかもしれませんわね」
シラユキは真面目に考えてああでもないこうでもないと唸る。
二人してうんうんと悩んでいると、何かの気配を察して振り返れば、そこには金髪の少年のような青年のような人が立っていた。
年頃は私と同じくらいに見えるけれど、気迫がこの男の人をただの少年だとは認知できなかった。
睨んでくる目は凄みがあるし、何より何もかもに諦観してる眼差しが気になった。
私はシラユキの服を引っ張ると、シラユキは少年に気づくなり気易く声をかけた。
「あら、ラクスター。お元気でして? 久しぶりですわね」
「魔王いるか、うちのカシラからの急用でな」
「何のご用? 急用があるような事態なんて予想できませんわね。神様はお元気? 大天使様」
「え?! 天使様なの、この人」
私が騒いでラクスターを見やるとラクスターは舌打ちをして、つかつかと歩み寄り、私の胸ぐらを掴んだ。
「テメェもなる予定だったんだよ!」
*
ゼロと一緒に話を聞くこととして、私はシラユキに隠れながらラクスターと一緒にゼロのもとへ向かった。
さっきの言葉……私が、なる予定だったってどういうことかしら。
また魔物達が聖なる属性と噂の天使達と気易い関係っぽいのも気になるところではあった。
書類整理をしているゼロが執務室にはいて、私の姿を見れば微笑んでくれて私はそれだけで胸が高鳴った。
「いちゃつくなよ、こっちはアンタの所為で残業だらけだ!」
ラクスターは改めて嘆息をつくと、ゼロは目を細めて笑った。
「ウルがもしや、天使になって天界を生きる予定だったとはな。その文句でも大方言いにきたのだろう? そうであれば、もっと早くに迎えにくればよかったのだ、皆ウルを惜しむ者共はタイミングが遅い」
「五月蠅い。お陰で、うちのカシラは毎日毎日泣いてるンだよ。あの子が欲しかったのに、って騒ぐし、オレらの仕事は増えるし沢山だ」
「まあ労い代わりにシラユキの菓子でも食っていけ」
「菓子なんかじゃ収まらない程には忙しい!」
私が口げんかしあう二人をよそにシラユキに説明を求めると、シラユキは簡単に分かりやすく教えてくれた。
「人を殺しすぎたら注意が天からくるようになってましてね、そこからの使いですの。神様に逆らうこと自体は怖くはないのですけれども、その所為で失うのが残念なものもありますわ、天才的なアートや食べ物を生み出せる人材とかね? だから大人しく、天界からの使者、大天使であるラクスターの話はきくことにはしてますのよ」
「オレたちゃ特別やべえ時以外にはあまりこねえんだが、今回ばかりはまずったな、魔王。この小娘は、神様のお気に入りだ。天使になるのを大層楽しみにしてらっしゃった。そいつが死ぬ前からこっちはそいつが死んだ後に天使になれるよう調整していたんだ」
横からラクスターが説明を被せてくるもんだから、私はシラユキの後ろに隠れる。
ラクスターは怖い眼差しなんだもの。
ゼロは哄笑し、愉快なものでも見るような眼差しをラクスターに送る。
「神に伝えとけ、ウルは余の物だ」
「そうはいかねえ。そいつは、アンタが手をつける前からオレらの……」
「所有物とは言うわけないよな? 人の魂は、個人の物だ。意思に任せる物だろう」
「じゃあ何だ、アンタは小娘が望んで化け物みたいな魔王の嫁になりたいとでも?」
「……意思に任せる、それも。まあ、勿論望むだろうけどな?」
ゼロがシラユキの後ろに隠れてる私にも睨み付けてくるもんだから、吃驚したけれどラクスターみたいに怖くはない。
どちらかと言えば、オモチャをとられそうで悲しむ子供みたいな目つきに見えて、分かりやすく拗ねていた。
「私はッ、ここに、いたい、です。生きるの、とても楽しいの。魔物の身体だけれど」
「……天界だともっと良い暮らしや、楽しいこともあると思うぜ? それでも断るのか」
「はい、私はそれにまだしなくちゃいけないことがあるんです」
「しなくちゃいけないこと?」
「ゼロとの結婚式と、アルギスを人間に戻すこと」
「……正気か、本気でこの牛に嫁ぐと?」
ラクスターが呆れた表情でゼロを指さし。ゼロは感極まったのか、いきなり牛姿になっていて鼻息荒く私を見つめていた。よっぽど驚いていたのね。
「聞いたか。聞いたか、シラユキ、ラクスター! これが我が乙女だ!」
「よかったですわね、魔王様! 私は、ウル様との結婚を支持致しますわ! さあさあお引き取りを、ラクスター! クッキーあげるから!」
「子供扱いすんじゃねえよ、シラユキ姐! ……オレは忠告したぞ。ああ、そうだ、この前テメェんとこの幹部が勇者に負けて消えたっつってたな?」
「それがどうした?」
「オレを幹部にしろ。嬢ちゃんの気分が変わるまで待っててやる」
「て、天使を魔王軍幹部に?!!!」
驚く一同をおいてけぼりに、ラクスターは段取りを一人で導き出す。
「奥の部屋が空いていたよな、確か二階の日当たりがいい部屋。あそこオレの部屋な」
「な、なんでまた……ラクスター、何かあったのか」
「何があったかってこれ見てくれよ」
ラクスターは衣服の上着を脱いで背中を露わにする。
背中から生み出されたのは白い羽根なんて一切無い、骨であった。
「ついにクビにされそうだよ、これの所為で」
「それ、もしかして私の所為で……」
「ン? いや、これ自体は生まれながらだった。罰とかでもないンだが……羽根のない天使は、天使じゃねえってクレームが集ってな。言われたよ、一番最近迎えに行った奴に」
ラクスターは苦しみを表情に露わにしながら笑った。
「まるで死に神だって」
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