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第二話
解明と出会い
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「マジか……」
杏介はカルテを何度も見ながら、首を捻る。総吾郎はベッドで眠り続ける男性の様子を眺め続けていた。
「やっぱりこいつ、『neo-J』の手先や」
その事実は、予想出来ていた。それでも、複雑な気持ちになる。
狼を回収してから、十二時間が経つ。研究棟のとあるラボでずっと付きっきりで看病、観察をしていた杏介はぐったりとして様子でパイプ椅子に腰掛けた。コーヒーを差し出すと、「ありがと」と力なく受け取ってくれた。
目の前の毛布に包まるようにして眠っている狼の顔は、穏やかだった。あの凶暴性は消え、いつもの飼い犬然とした無防備さだ。しかし、問題はその姿だった。
「推定二十代から三十代の男性、ってとこやな」
あの、灰色の毛並みはなくなっていた。骨格や皮膚、何もかもが成人男性のものへと変化していた。灰色の、少し癖の強いミディアムヘアにすらりとした長身。彼はどう見ても、人間だった。
「田中くんも疲れたんちゃうん? ずっと本部で尋問やったらしいやんか」
「それが……ほとんどアキラさんがフォローしてくれたんで、俺はそんなに何もしてないっていうか。すぐ開放されました」
「なるほどな。でも、ここおっても犬くさいだけやで。麻酔かけてるから、まだ目さまさんし」
それでも、ここにいなければならない気がした。
たった数週間とはいえ、確かに触れ合っていた。狼と自分の間に、確かに何かが芽生えていた気がしたのだ。放っては、おけない。
杏介は一つ伸びをすると、「食堂行こう」と言ってきた。さすがに、主のいないここにはいられない。渋々ラボを出ると、先を歩く杏介についていく。
「架根は?」
「まだ、本部にいます」
まるで身代わりにしてきたようで、内心罪悪感を抱いていた。しかし彼女は何も気にしていないかのように、総吾郎を外へと押し出した。大丈夫だろうか。
食堂につくと、二人で軽食を注文する。すぐ出てきた料理をテーブルへと運びながら、杏介は深い溜息を吐いた。
「『neo-J』、『ドリフェ』に直接来たんやってな」
「はい。でも俺、あれから何も聞いてないんです。あの、あいつのことで考えがいっぱいいっぱいで」
「事務の方にもう報告書あがっててな、俺さっきちらっと見てきたんやけど」
サンドイッチを頬張りながら、杏介は思い出すかのように上を向いた。
「『neo-J』、もう執権使って『ドリフェ』 攻め込んだらしいな。最悪未知の研究してる疑惑がある、って押収する手回しまでしてたらしい」
強引だ。重手のことを思い出し、唇を噛み締める。
「店長もそれに気付いたから、あの誘発剤使ったんやろ」
「誘発剤?」
「あの狼人間とのこと、バレてたで。だから、早い内ケリつけようとしたんやろ。架根が店長に連絡取ってるって証拠も見つけた。ほとんどが、架根の作戦やな。わざと『ドリフェ』で作った種持ってたり、凶器とか言って都合よくフォークなんか持ってたのが証拠や」
「アキラさんが……」
「まあ架根のことやから、現場慣れさせたいってのもあったんちゃう? 早く終わらせたいってのも本音やろけどな、性格からして」
やはり、あの液体はそういうことだったのか。しかし、アキラがそんなことまでしていたとは。あのせいで、あの狼は……。
総吾郎の不信感を感じ取ったのか、杏介は苦笑した。
「架根は架根なりに、ここの任務を優先させたってことや。それに実際、狼人間は生かせてくれたやろ? あいつ不器用やからなあ、仕事出来るくせして要領悪いし」
だから誤解するな、とでも言いたいようだった。しかし、確かにあの件を思い出すとそんな気もする。
アキラの能力は、初対面の時に見た。総吾郎をさらおうとした男をあっという間にのした程だ、きっと彼女は強い。そんな彼女が、あの狼を捕縛するのに抑えてくれた。
「ん、悪い」
杏介が、懐から携帯電話を取り出す。耳にあて、数言かわすとすぐに切った。
「狼、目覚ましたらしい。戻ろか」
「あ、はいっ」
残っていた料理を急いで飲み込み、食器をさげると早足で食堂を出た。
ラボに戻ると、一人の助手職員が頭を下げてくる。その奥には、不安げにこちらを見てくる男性がいた。かなり人間に近づいてはいるが、直感でわかる。あの狼だ。
「あ……えっと、おはようございます」
恐らく彼も何を言えばいいのか分からないのだろう、困ったように笑いながら、頭を下げてきた。
「お、おう。おはよう」
杏介も少し予想外だったのか、戸惑った様子で頭を下げる。
「……様子どない? しんどい?」
「ちょっとまだぼんやりしますけど……起きれます、何とか」
よし、といつもの調子で杏介は頷いた。
「本格的な調査は明日に回そう。今日はゆっくりしててくれ、ここで。すまんが」
「あ、いえ。ありがとうございます」
そこまで言うと、男ははっとしたように総吾郎を見た。戸惑いながらもとりあえず首を傾げる総吾郎を見て、杏介は助手を手招きした。察したらしい助手は、杏介とラボを出る。
二人きりになった。とりあえず、男に近付いてみる。彼はそわそわした雰囲気で、総吾郎を待った。やがて、止まる。
「あ……あの」
何を言えばいいのか、分からない。とりあえず、男の隣に直座りした。男はそれを確認すると、土下座のように勢いよく頭を下げてきた。
「あの時は、どうもありがとうっ!」
「えっ!?」
わけが分からずびくつくと、男は手をせわしなく動かした。
「あの、初めて会った時! あの時俺、『neo-J』にいきなりほったらかされてさ。そのまま何日も放置されて、腹減っててマジ死ぬかと思ってて」
「あ、そ、そのことですか」
やはり、そういう事情があったのか。
「でもあの姿じゃ人間の言葉話せないしお礼言えないし、でも毎晩お菓子くれるしでよかったやっとお礼言えげほげほげほっ!」
「お、落ち着いてください! 大丈夫ですから!」
荒い息を整えながら、男は心底嬉しそうに笑った。まるで、褒められた犬のようだ。
「えっと、総吾郎だっけ」
「あ、はい」
「俺、安西栄佑って言うんだ。純血だよな、そんな匂いがする」
その言葉に、ハッとした。
「あ、あの、『neo-J』なんですよね?」
「うん、そうだよ」
すごくあっさりとした答えだった。少し拍子抜けしていると、それで思い出したのか栄佑はぶんぶんと頭を振り始めた。
「そ、そそそうだ! ここどこ!? 俺任務あったのに! え、ていうか今いつ!? 何にっうえっほえほげほっ!」
「み、水どうぞ」
近くにあったウォーターサーバーから水をくむと、栄佑に差し出す。彼は手の平で「ありがとう」と示しながら、受け取ったそれを一瞬で飲み干した。それを見ながら、とりあえず分かる範囲で説明してやる。
すべてを聞き終えた栄佑は、顔を真っ青にさせて俯いた。
「マ、マジか……任務失敗か……そっかあ……」
「し、失敗なんですか?」
「今回の任務っていうのが『ドリフェ』の研究物をまるごと奪うことだったんだ。で、抵抗されたら俺が投入される、って。でも俺みたいな規格外がいなかったら、成功するわけないし……『卍』張ってたんだったら」
ということは、やはりあの誘発剤による暴走は『neo-J』側からすると完全に想定外のアクシデントだったということなのだろう。そこまで見越して、アキラはあれを使わせたのか。
げんなりとしている栄佑をどうすればいいか分からず、とりあえず背中をさすってやる。どうやら、泣いているらしかった。
「俺もさあ、純血種なんだよ」
「え!?」
栄佑は自分の灰色の髪を揺らし、「見えないだろ」と呟いた。
「『neo-J』に買われたんだよ、昔。そっからもう実験の毎日でさ。気付いたら俺、半分狼になっちゃってた。そっから『neo-J』の仕事に狩り出されて、……しんどい毎日で」
つまり、あの時もし自分もあのまま連れていかれていたらこうなっていたということなのだろうか。少し、ぞっとした。
「そんで、『ドリフェ』の任務が決まってさ。何かね、今回当たった上司がひどくってさあ。『いつ突撃するか分からないから』って狼化解けない薬撃たれて、放置。殺す気かお前ら! って。で、そんな時にあのパンケーキだよ」
初めて出会った、あの晩を思いだす。彼は幸せそうに笑った。
「すんげえうまかったんだ。俺、あんなもん初めて食ったんだよ。そしたら毎日、総吾郎が来てくれた。命の恩人だなって」
物言いがストレート過ぎて、照れくさくなる。しかし、当の本人はうっとりとした様子で続けた。
「任務なんてどうでもいいやって。でも、もう待ちくたびれたって上司が突っ込むとか言い出して。そしたら総吾郎がくれたパンケーキ食って、……あれ? ああ、そっか。さっき言ってたやつか」
納得したのか、手の平を合わせる。総吾郎が気まずそうに目を伏せると、慌てて抱きついてきた。
「い、いやっ、大丈夫! 俺気にしてないよ!? それに美味しかったし! 初めて焼いたって言ってたけど、本当に美味しかった! 大丈夫!」
「あ、あの、ありが、苦し」
「また焼いてよあれ! また食いたい!」
「わ、分かったから、倒れ」
「田中くん、私のは終わったけど」
ガチャリ、と扉が開いたのが後だった。その一瞬前に、総吾郎は床へと倒れ込んでいた。裸の栄佑に抱きしめられたまま。
沈黙が、流れる。
「……邪魔したわ」
扉が、閉まった。
「安西栄佑、三十歳。ニホンオオカミのDNAが四十パーセント程混合されています」
荒い息をしたまま椅子に深く腰掛け、淡々と答える彼を見て胸が締まる。自白剤を投与されることに彼は抵抗しなかった。それでも、苦しそうだ。それも、体には幾重にも重なる鎖を巻かれている。
アキラの誤解を何とか解いた総吾郎は、彼女と共に栄佑の尋問を見守っていた。檻の中にいる栄佑は、時折総吾郎に目配せしてくる。大丈夫、とでも言いたげだった。
「『neo-J』には二十歳に来ました。純潔種売買で」
「ふむ」
杏介の上司である研究員が、メモを取っていく。それを、杏介が隣で見守っていた。
「『合成人間』か……ついに、堂々と出してくるとはね」
「『合成人間?』」
アキラは何かを思い出すように、上を見上げる。
「『neo-J』がうちの研究成果を盗んだのは、未遂も含めたら何度もある。『種』を人間に組み込む研究を奪われた後、あっちではDNAを組み込む研究をしたらしくて。同時に、『旧』時代の生物の復元とかもやってたみたい」
「じゃあ、その成果が」
「安西栄佑ってところでしょうね。それに、彼だけではないわ」
こんなやり取りをしている間にも、尋問は続いていた。研究員達の表情を見る限り、順調らしい。
やがて一度休憩を挟むこととなり、杏介がこちらへとやってきた。ほとんど休憩無しなせいか、疲労困憊しているのがよく分かる。
「栄佑さん、どうなるんですか?」
総吾郎の不安気な問いに、杏介は深い溜息を吐いた。
「正直、ボス次第やな。うちの自白剤、効力は相当きついから奴の話に信憑性はある。『neo-J』を抜けたいらしい」
「スパイの可能性はないの?」
「ないやろ、あったとしてもその時は餌として使うまでや」
その言葉の真意が何となく分かって、気持ちが沈む。まともに言葉をかわしたのは少ないが、狼の頃から彼が『neo-J』とは思えない程敵意を見せていないのを知っている分辛い。
栄佑は、こちらを見ていた。目が合うと、力なく笑いながら手を振ってくる。自分もまた緩く振ってやると、その様子を見ていた杏介が苦笑した。
「お前ら、めっちゃ仲良くなっとるな」
「いや、まあ」
「あいつがもし『卍』に入ることになったら、多分相当弄繰り回されるで。なんせ、『neo-J』の貴重な手がかりや」
それは、分かっている。そして、栄佑も恐らく承知の上なのだろう。それでもそう決意させるということは、やはり『neo-J』がそれ程の組織だということなのだろうか。
尋問が再開され、一時間が経過した。「また何かあれば」と一言を残し、研究員が解散を命じた。解放された栄佑はぐったりとしたまま力なく、椅子から動かない。そんな彼に慌てて駆け寄ると、後ろにアキラもついてきた。
「だ、大丈夫ですか」
「何とか……いやあ、マジ疲れた……」
汗だくの彼を抱き起こすと、「ありがと」と囁きが聞こえる。しかし、一瞬彼の体が固まった。
「どうしたの」
背後から、アキラの声がする。栄佑が、首を傾げるのが分かった。
「もしかして、あんたがアキラ?」
「そうだけど」
栄佑は「大丈夫」と総吾郎に囁くと、彼をゆっくり離した。自力で立ちながら、アキラを凝視する。その鼻は、小刻みに動いていた。
「……似てる、な。やっぱ」
「誰かに?」
アキラの問いに、「うん、まあ」とだけ言って栄佑は言葉を切った。そして、すぐにうめくように口を開く。
「パンケーキ食いたい……総吾郎のパンケーキ食いたい……」
そうぐずる栄佑は、まるで子どもだった。アキラは呆れたように首を傾げると、「まずは部屋に行ってから」とだけ返した。栄佑も頷き、総吾郎に引きずられるようにして尋問室を出た。
寮の、新しくあつらえられた部屋にたどりつく。彼をベッドに寝かせると、彼は物欲しげな目でこちらを見てくる。
仕方ないので、材料をそろえ供え付きのキッチンでパンケーキを焼いてやると、彼は目を輝かせて食べ始めた。
「何かさ、やっぱ狼の時より人間の時に食った方がこういうのって美味いわ。つーか、総吾郎のパンケーキって本当美味い」
「あ……ありがとうございます」
「そういや、総吾郎ってもう『ドリフェ』やめたのか?」
「いえ、今は少し店の調整が必要らしくて休みなんです。また来週から働かせてもらうことになってます」
それは、重手じきじきの誘いだった。誘発剤の件もあって少し彼女への不信感はあったものの、まだ大して『卍』の戦力になれていない内は、と引き受けることに決めたのだ。
栄佑は、あの尋問から二日程経つとけろりと回復していた。動物とのDNAが混ざった、純粋な人間より進化した彼は体が常人離れしているらしい。
あれから、栄佑には『卍』への正式な加入許可がおりた。それでもしばらくは研究対象扱いらしい。それでもいい、と彼は言っていた。それ程、『neo-J』を抜けたかったのだろうか。
「DNAで一番影響が出てくるのって、身体能力よりも『本能』らしくてさ。『neo-J』が気に食わなかったのは多分そこだろうな。あいつらは、俺にとって良いリーダーじゃなかった」
「ニホンオオカミ、でしたっけ。『旧』時代でも、早い内に絶滅したっていう」
栄佑は、頷く。人間の姿なためか、食べるスピードが遅い。
「さすがに生物自体は無理だけど、DNAとか成分単位での復元が『neo-J』で成功したんだってよ。ここでの、ほら、『種』だっけ。あれの要領らしい。詳しくは分かんねえけど」
自分の知らない世界の内側が、こんなにも肥大していたとは。孤児院こもりだったせいもあるが、自分の無知が恥ずかしくなってくる。
「そういや、ここにもう一人いたんだな。『合成人間」
「え?」
「ここのボスについてる、あのでかい奴。多分猫科のやつだな」
それを聞いて、アーデルの傍らにいた男を思い出す。杏介はあの時聞かせてはくれなかったが、確かに合点はいく。栄佑は首をひねりながら、「でもなあ」と呟いた。
「『卍』入るかどうかって話の時に初めて会ったんだけど、どうもあいつおかしいな」
「おかしいって?」
「いやあ、何か感情なくなってるみたいというか、人形みたいというか。何かやられてるぞ、あれ」
そういえば初めての謁見以来、アーデルとは会っていない。本部への用事がない以上は当たり前なのだが、少し気になってきた。そもそも、「neo-J」の技術である「合成人間」が何故ここにいるのだろう。そして何故、皆何も言わないのだろう。今度会ったら、何か聞いてみようか。どうも、掴めない点が多すぎる。
そして、一つ思い出した。
「そういえば、さっきアキラさんに言ってたのって何だったんですか? 誰に、似てるんですか?」
アキラはとくに気に留めていないようだったが、総吾郎の方が何故か気になっていた。栄佑は「ああ」と思い出すように漏らすと、すぐに苦笑に変えた。
「……悪い、あれ多分俺の勘違いだわ。よく考えれば、あんな感じの顔の奴結構いるしな。日系に見えるけどよく見たら中華系だろ、多分。まあ、美人だから言ってみたってのはある」
ふざけた物言いだが、本気らしかった。とりあえず納得すると、総吾郎は二枚目のパンケーキを焼くために立ち上がった。
まだ真昼である。空には、憎いほどの晴天が広がっていた。そこへ向かって煙を伸ばしながら、男はぼんやりとくわえた煙草の灰を見つめる。年は、二十歳そこそこといったところだろうか。
男は、その凛とした美しい顔から覇気を抜いていた。その気になれば数百の猛者を一蹴出来るその腕を、だらりと下げている。少し伸びてきたかと思われる黒髪が、ゆるい風に吹かれてなびいた。同時に、灰が散る。
「安西の奴、脱走したんだって?」
背後に立つ中年の男の問いに、彼は「らしいな」と返す。その顔は、振り向いてはいない。ただ、空を見上げている。
「別に、あのわんこがどこ行こうと俺は知ったこっちゃないんだけど」
「ほう……お前があいつを今回の作戦に推したと聞いたが」
「まあ、うん。『合成人間』としてのあのわんこの能力は凄まじいし、そういう意味の期待はあったよ」
灰が、また伸びてきた。携帯灰皿を取り出すと、そこへ軽く落とす。一瞬強く吹いた風が、『neo-J』の制服の赤いジャケットを撃った。
地上から数百メートルの高さに立つ彼は、まるで世界を見渡す神の姿に似ていた。
「でもまあ、あいつは『卍』にくれてやる。口実にでもなってもらうさ」
「口実?」
中年の男の問いに、彼は今日初めて笑った。その顔は、無邪気なものだった。完璧と呼べる程に、整った笑み。
「あのババアのせいで俺は『門番』を降りられない。ババアを納得させる程の、口実だよ」
「ババアババアって……お前、総帥相手にそんな」
「まあとりあえず、俺は俺のやりたいことをやれるように伏線を張るだけだ」
まるで歌うように、機嫌がよくなっていっているのが分かる。
「俺の運命。俺の運命。俺の運命」
思い描く、彼女。自分の、ひとつ。
「取り戻すんだ、絶対。あんな不憫な生活から、俺が救いだす。絶対に」
描くプランは、全て彼女のため。そのためならば、何だって犠牲に出来る。この世界すらも。
杏介はカルテを何度も見ながら、首を捻る。総吾郎はベッドで眠り続ける男性の様子を眺め続けていた。
「やっぱりこいつ、『neo-J』の手先や」
その事実は、予想出来ていた。それでも、複雑な気持ちになる。
狼を回収してから、十二時間が経つ。研究棟のとあるラボでずっと付きっきりで看病、観察をしていた杏介はぐったりとして様子でパイプ椅子に腰掛けた。コーヒーを差し出すと、「ありがと」と力なく受け取ってくれた。
目の前の毛布に包まるようにして眠っている狼の顔は、穏やかだった。あの凶暴性は消え、いつもの飼い犬然とした無防備さだ。しかし、問題はその姿だった。
「推定二十代から三十代の男性、ってとこやな」
あの、灰色の毛並みはなくなっていた。骨格や皮膚、何もかもが成人男性のものへと変化していた。灰色の、少し癖の強いミディアムヘアにすらりとした長身。彼はどう見ても、人間だった。
「田中くんも疲れたんちゃうん? ずっと本部で尋問やったらしいやんか」
「それが……ほとんどアキラさんがフォローしてくれたんで、俺はそんなに何もしてないっていうか。すぐ開放されました」
「なるほどな。でも、ここおっても犬くさいだけやで。麻酔かけてるから、まだ目さまさんし」
それでも、ここにいなければならない気がした。
たった数週間とはいえ、確かに触れ合っていた。狼と自分の間に、確かに何かが芽生えていた気がしたのだ。放っては、おけない。
杏介は一つ伸びをすると、「食堂行こう」と言ってきた。さすがに、主のいないここにはいられない。渋々ラボを出ると、先を歩く杏介についていく。
「架根は?」
「まだ、本部にいます」
まるで身代わりにしてきたようで、内心罪悪感を抱いていた。しかし彼女は何も気にしていないかのように、総吾郎を外へと押し出した。大丈夫だろうか。
食堂につくと、二人で軽食を注文する。すぐ出てきた料理をテーブルへと運びながら、杏介は深い溜息を吐いた。
「『neo-J』、『ドリフェ』に直接来たんやってな」
「はい。でも俺、あれから何も聞いてないんです。あの、あいつのことで考えがいっぱいいっぱいで」
「事務の方にもう報告書あがっててな、俺さっきちらっと見てきたんやけど」
サンドイッチを頬張りながら、杏介は思い出すかのように上を向いた。
「『neo-J』、もう執権使って『ドリフェ』 攻め込んだらしいな。最悪未知の研究してる疑惑がある、って押収する手回しまでしてたらしい」
強引だ。重手のことを思い出し、唇を噛み締める。
「店長もそれに気付いたから、あの誘発剤使ったんやろ」
「誘発剤?」
「あの狼人間とのこと、バレてたで。だから、早い内ケリつけようとしたんやろ。架根が店長に連絡取ってるって証拠も見つけた。ほとんどが、架根の作戦やな。わざと『ドリフェ』で作った種持ってたり、凶器とか言って都合よくフォークなんか持ってたのが証拠や」
「アキラさんが……」
「まあ架根のことやから、現場慣れさせたいってのもあったんちゃう? 早く終わらせたいってのも本音やろけどな、性格からして」
やはり、あの液体はそういうことだったのか。しかし、アキラがそんなことまでしていたとは。あのせいで、あの狼は……。
総吾郎の不信感を感じ取ったのか、杏介は苦笑した。
「架根は架根なりに、ここの任務を優先させたってことや。それに実際、狼人間は生かせてくれたやろ? あいつ不器用やからなあ、仕事出来るくせして要領悪いし」
だから誤解するな、とでも言いたいようだった。しかし、確かにあの件を思い出すとそんな気もする。
アキラの能力は、初対面の時に見た。総吾郎をさらおうとした男をあっという間にのした程だ、きっと彼女は強い。そんな彼女が、あの狼を捕縛するのに抑えてくれた。
「ん、悪い」
杏介が、懐から携帯電話を取り出す。耳にあて、数言かわすとすぐに切った。
「狼、目覚ましたらしい。戻ろか」
「あ、はいっ」
残っていた料理を急いで飲み込み、食器をさげると早足で食堂を出た。
ラボに戻ると、一人の助手職員が頭を下げてくる。その奥には、不安げにこちらを見てくる男性がいた。かなり人間に近づいてはいるが、直感でわかる。あの狼だ。
「あ……えっと、おはようございます」
恐らく彼も何を言えばいいのか分からないのだろう、困ったように笑いながら、頭を下げてきた。
「お、おう。おはよう」
杏介も少し予想外だったのか、戸惑った様子で頭を下げる。
「……様子どない? しんどい?」
「ちょっとまだぼんやりしますけど……起きれます、何とか」
よし、といつもの調子で杏介は頷いた。
「本格的な調査は明日に回そう。今日はゆっくりしててくれ、ここで。すまんが」
「あ、いえ。ありがとうございます」
そこまで言うと、男ははっとしたように総吾郎を見た。戸惑いながらもとりあえず首を傾げる総吾郎を見て、杏介は助手を手招きした。察したらしい助手は、杏介とラボを出る。
二人きりになった。とりあえず、男に近付いてみる。彼はそわそわした雰囲気で、総吾郎を待った。やがて、止まる。
「あ……あの」
何を言えばいいのか、分からない。とりあえず、男の隣に直座りした。男はそれを確認すると、土下座のように勢いよく頭を下げてきた。
「あの時は、どうもありがとうっ!」
「えっ!?」
わけが分からずびくつくと、男は手をせわしなく動かした。
「あの、初めて会った時! あの時俺、『neo-J』にいきなりほったらかされてさ。そのまま何日も放置されて、腹減っててマジ死ぬかと思ってて」
「あ、そ、そのことですか」
やはり、そういう事情があったのか。
「でもあの姿じゃ人間の言葉話せないしお礼言えないし、でも毎晩お菓子くれるしでよかったやっとお礼言えげほげほげほっ!」
「お、落ち着いてください! 大丈夫ですから!」
荒い息を整えながら、男は心底嬉しそうに笑った。まるで、褒められた犬のようだ。
「えっと、総吾郎だっけ」
「あ、はい」
「俺、安西栄佑って言うんだ。純血だよな、そんな匂いがする」
その言葉に、ハッとした。
「あ、あの、『neo-J』なんですよね?」
「うん、そうだよ」
すごくあっさりとした答えだった。少し拍子抜けしていると、それで思い出したのか栄佑はぶんぶんと頭を振り始めた。
「そ、そそそうだ! ここどこ!? 俺任務あったのに! え、ていうか今いつ!? 何にっうえっほえほげほっ!」
「み、水どうぞ」
近くにあったウォーターサーバーから水をくむと、栄佑に差し出す。彼は手の平で「ありがとう」と示しながら、受け取ったそれを一瞬で飲み干した。それを見ながら、とりあえず分かる範囲で説明してやる。
すべてを聞き終えた栄佑は、顔を真っ青にさせて俯いた。
「マ、マジか……任務失敗か……そっかあ……」
「し、失敗なんですか?」
「今回の任務っていうのが『ドリフェ』の研究物をまるごと奪うことだったんだ。で、抵抗されたら俺が投入される、って。でも俺みたいな規格外がいなかったら、成功するわけないし……『卍』張ってたんだったら」
ということは、やはりあの誘発剤による暴走は『neo-J』側からすると完全に想定外のアクシデントだったということなのだろう。そこまで見越して、アキラはあれを使わせたのか。
げんなりとしている栄佑をどうすればいいか分からず、とりあえず背中をさすってやる。どうやら、泣いているらしかった。
「俺もさあ、純血種なんだよ」
「え!?」
栄佑は自分の灰色の髪を揺らし、「見えないだろ」と呟いた。
「『neo-J』に買われたんだよ、昔。そっからもう実験の毎日でさ。気付いたら俺、半分狼になっちゃってた。そっから『neo-J』の仕事に狩り出されて、……しんどい毎日で」
つまり、あの時もし自分もあのまま連れていかれていたらこうなっていたということなのだろうか。少し、ぞっとした。
「そんで、『ドリフェ』の任務が決まってさ。何かね、今回当たった上司がひどくってさあ。『いつ突撃するか分からないから』って狼化解けない薬撃たれて、放置。殺す気かお前ら! って。で、そんな時にあのパンケーキだよ」
初めて出会った、あの晩を思いだす。彼は幸せそうに笑った。
「すんげえうまかったんだ。俺、あんなもん初めて食ったんだよ。そしたら毎日、総吾郎が来てくれた。命の恩人だなって」
物言いがストレート過ぎて、照れくさくなる。しかし、当の本人はうっとりとした様子で続けた。
「任務なんてどうでもいいやって。でも、もう待ちくたびれたって上司が突っ込むとか言い出して。そしたら総吾郎がくれたパンケーキ食って、……あれ? ああ、そっか。さっき言ってたやつか」
納得したのか、手の平を合わせる。総吾郎が気まずそうに目を伏せると、慌てて抱きついてきた。
「い、いやっ、大丈夫! 俺気にしてないよ!? それに美味しかったし! 初めて焼いたって言ってたけど、本当に美味しかった! 大丈夫!」
「あ、あの、ありが、苦し」
「また焼いてよあれ! また食いたい!」
「わ、分かったから、倒れ」
「田中くん、私のは終わったけど」
ガチャリ、と扉が開いたのが後だった。その一瞬前に、総吾郎は床へと倒れ込んでいた。裸の栄佑に抱きしめられたまま。
沈黙が、流れる。
「……邪魔したわ」
扉が、閉まった。
「安西栄佑、三十歳。ニホンオオカミのDNAが四十パーセント程混合されています」
荒い息をしたまま椅子に深く腰掛け、淡々と答える彼を見て胸が締まる。自白剤を投与されることに彼は抵抗しなかった。それでも、苦しそうだ。それも、体には幾重にも重なる鎖を巻かれている。
アキラの誤解を何とか解いた総吾郎は、彼女と共に栄佑の尋問を見守っていた。檻の中にいる栄佑は、時折総吾郎に目配せしてくる。大丈夫、とでも言いたげだった。
「『neo-J』には二十歳に来ました。純潔種売買で」
「ふむ」
杏介の上司である研究員が、メモを取っていく。それを、杏介が隣で見守っていた。
「『合成人間』か……ついに、堂々と出してくるとはね」
「『合成人間?』」
アキラは何かを思い出すように、上を見上げる。
「『neo-J』がうちの研究成果を盗んだのは、未遂も含めたら何度もある。『種』を人間に組み込む研究を奪われた後、あっちではDNAを組み込む研究をしたらしくて。同時に、『旧』時代の生物の復元とかもやってたみたい」
「じゃあ、その成果が」
「安西栄佑ってところでしょうね。それに、彼だけではないわ」
こんなやり取りをしている間にも、尋問は続いていた。研究員達の表情を見る限り、順調らしい。
やがて一度休憩を挟むこととなり、杏介がこちらへとやってきた。ほとんど休憩無しなせいか、疲労困憊しているのがよく分かる。
「栄佑さん、どうなるんですか?」
総吾郎の不安気な問いに、杏介は深い溜息を吐いた。
「正直、ボス次第やな。うちの自白剤、効力は相当きついから奴の話に信憑性はある。『neo-J』を抜けたいらしい」
「スパイの可能性はないの?」
「ないやろ、あったとしてもその時は餌として使うまでや」
その言葉の真意が何となく分かって、気持ちが沈む。まともに言葉をかわしたのは少ないが、狼の頃から彼が『neo-J』とは思えない程敵意を見せていないのを知っている分辛い。
栄佑は、こちらを見ていた。目が合うと、力なく笑いながら手を振ってくる。自分もまた緩く振ってやると、その様子を見ていた杏介が苦笑した。
「お前ら、めっちゃ仲良くなっとるな」
「いや、まあ」
「あいつがもし『卍』に入ることになったら、多分相当弄繰り回されるで。なんせ、『neo-J』の貴重な手がかりや」
それは、分かっている。そして、栄佑も恐らく承知の上なのだろう。それでもそう決意させるということは、やはり『neo-J』がそれ程の組織だということなのだろうか。
尋問が再開され、一時間が経過した。「また何かあれば」と一言を残し、研究員が解散を命じた。解放された栄佑はぐったりとしたまま力なく、椅子から動かない。そんな彼に慌てて駆け寄ると、後ろにアキラもついてきた。
「だ、大丈夫ですか」
「何とか……いやあ、マジ疲れた……」
汗だくの彼を抱き起こすと、「ありがと」と囁きが聞こえる。しかし、一瞬彼の体が固まった。
「どうしたの」
背後から、アキラの声がする。栄佑が、首を傾げるのが分かった。
「もしかして、あんたがアキラ?」
「そうだけど」
栄佑は「大丈夫」と総吾郎に囁くと、彼をゆっくり離した。自力で立ちながら、アキラを凝視する。その鼻は、小刻みに動いていた。
「……似てる、な。やっぱ」
「誰かに?」
アキラの問いに、「うん、まあ」とだけ言って栄佑は言葉を切った。そして、すぐにうめくように口を開く。
「パンケーキ食いたい……総吾郎のパンケーキ食いたい……」
そうぐずる栄佑は、まるで子どもだった。アキラは呆れたように首を傾げると、「まずは部屋に行ってから」とだけ返した。栄佑も頷き、総吾郎に引きずられるようにして尋問室を出た。
寮の、新しくあつらえられた部屋にたどりつく。彼をベッドに寝かせると、彼は物欲しげな目でこちらを見てくる。
仕方ないので、材料をそろえ供え付きのキッチンでパンケーキを焼いてやると、彼は目を輝かせて食べ始めた。
「何かさ、やっぱ狼の時より人間の時に食った方がこういうのって美味いわ。つーか、総吾郎のパンケーキって本当美味い」
「あ……ありがとうございます」
「そういや、総吾郎ってもう『ドリフェ』やめたのか?」
「いえ、今は少し店の調整が必要らしくて休みなんです。また来週から働かせてもらうことになってます」
それは、重手じきじきの誘いだった。誘発剤の件もあって少し彼女への不信感はあったものの、まだ大して『卍』の戦力になれていない内は、と引き受けることに決めたのだ。
栄佑は、あの尋問から二日程経つとけろりと回復していた。動物とのDNAが混ざった、純粋な人間より進化した彼は体が常人離れしているらしい。
あれから、栄佑には『卍』への正式な加入許可がおりた。それでもしばらくは研究対象扱いらしい。それでもいい、と彼は言っていた。それ程、『neo-J』を抜けたかったのだろうか。
「DNAで一番影響が出てくるのって、身体能力よりも『本能』らしくてさ。『neo-J』が気に食わなかったのは多分そこだろうな。あいつらは、俺にとって良いリーダーじゃなかった」
「ニホンオオカミ、でしたっけ。『旧』時代でも、早い内に絶滅したっていう」
栄佑は、頷く。人間の姿なためか、食べるスピードが遅い。
「さすがに生物自体は無理だけど、DNAとか成分単位での復元が『neo-J』で成功したんだってよ。ここでの、ほら、『種』だっけ。あれの要領らしい。詳しくは分かんねえけど」
自分の知らない世界の内側が、こんなにも肥大していたとは。孤児院こもりだったせいもあるが、自分の無知が恥ずかしくなってくる。
「そういや、ここにもう一人いたんだな。『合成人間」
「え?」
「ここのボスについてる、あのでかい奴。多分猫科のやつだな」
それを聞いて、アーデルの傍らにいた男を思い出す。杏介はあの時聞かせてはくれなかったが、確かに合点はいく。栄佑は首をひねりながら、「でもなあ」と呟いた。
「『卍』入るかどうかって話の時に初めて会ったんだけど、どうもあいつおかしいな」
「おかしいって?」
「いやあ、何か感情なくなってるみたいというか、人形みたいというか。何かやられてるぞ、あれ」
そういえば初めての謁見以来、アーデルとは会っていない。本部への用事がない以上は当たり前なのだが、少し気になってきた。そもそも、「neo-J」の技術である「合成人間」が何故ここにいるのだろう。そして何故、皆何も言わないのだろう。今度会ったら、何か聞いてみようか。どうも、掴めない点が多すぎる。
そして、一つ思い出した。
「そういえば、さっきアキラさんに言ってたのって何だったんですか? 誰に、似てるんですか?」
アキラはとくに気に留めていないようだったが、総吾郎の方が何故か気になっていた。栄佑は「ああ」と思い出すように漏らすと、すぐに苦笑に変えた。
「……悪い、あれ多分俺の勘違いだわ。よく考えれば、あんな感じの顔の奴結構いるしな。日系に見えるけどよく見たら中華系だろ、多分。まあ、美人だから言ってみたってのはある」
ふざけた物言いだが、本気らしかった。とりあえず納得すると、総吾郎は二枚目のパンケーキを焼くために立ち上がった。
まだ真昼である。空には、憎いほどの晴天が広がっていた。そこへ向かって煙を伸ばしながら、男はぼんやりとくわえた煙草の灰を見つめる。年は、二十歳そこそこといったところだろうか。
男は、その凛とした美しい顔から覇気を抜いていた。その気になれば数百の猛者を一蹴出来るその腕を、だらりと下げている。少し伸びてきたかと思われる黒髪が、ゆるい風に吹かれてなびいた。同時に、灰が散る。
「安西の奴、脱走したんだって?」
背後に立つ中年の男の問いに、彼は「らしいな」と返す。その顔は、振り向いてはいない。ただ、空を見上げている。
「別に、あのわんこがどこ行こうと俺は知ったこっちゃないんだけど」
「ほう……お前があいつを今回の作戦に推したと聞いたが」
「まあ、うん。『合成人間』としてのあのわんこの能力は凄まじいし、そういう意味の期待はあったよ」
灰が、また伸びてきた。携帯灰皿を取り出すと、そこへ軽く落とす。一瞬強く吹いた風が、『neo-J』の制服の赤いジャケットを撃った。
地上から数百メートルの高さに立つ彼は、まるで世界を見渡す神の姿に似ていた。
「でもまあ、あいつは『卍』にくれてやる。口実にでもなってもらうさ」
「口実?」
中年の男の問いに、彼は今日初めて笑った。その顔は、無邪気なものだった。完璧と呼べる程に、整った笑み。
「あのババアのせいで俺は『門番』を降りられない。ババアを納得させる程の、口実だよ」
「ババアババアって……お前、総帥相手にそんな」
「まあとりあえず、俺は俺のやりたいことをやれるように伏線を張るだけだ」
まるで歌うように、機嫌がよくなっていっているのが分かる。
「俺の運命。俺の運命。俺の運命」
思い描く、彼女。自分の、ひとつ。
「取り戻すんだ、絶対。あんな不憫な生活から、俺が救いだす。絶対に」
描くプランは、全て彼女のため。そのためならば、何だって犠牲に出来る。この世界すらも。
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