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12.元林清斗のお仕事受注。

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「というわけで入籍した」
『いやいやいや急展開にも程があるだろ!!』

 あらゆる人と同じ反応で、もはや笑いすらこみ上げてくる。そもそも三崎くんが相手という事でこの反応は何となく察してはいた。
 三崎くんたちとバルに行った帰り、僕は結局猫さんに「したい」と告げた。あまりの流れの強さに、本音を漏らしたという形だ。すると、猫さんは「じゃあしよっか」と返してくれた。

「というか驚愕の事実があるんだけど」
『お?』
「僕たち高校の卒業式からもう付き合ってたらしい」
『馬鹿じゃねーのお前ら二人とも』

 何でも。卒業式に僕が言った「これからも一緒にいてくれますか」という言葉が僕からの告白だったという解釈だったらしい。つまり猫さんからすれば真っ当に付き合って、同棲をしていた事になっていたそうだ。僕からすれば付き合ってと言っていないのにそうなるものなのか、と驚いた。
 ちなみに僕と猫さんの関係は一時期同じ母を持っていたというすごく複雑な立ち位置ではあるのだけど、その辺りは法律上問題ないと猫さんのお父さんは言っていた。ちなみに彼は「やっとかぁ」と嬉しそうにしていた。

『でもまあ、よかったんじゃん? うまくまとまって』
「うん。本当にお世話かけました」
『また飯行こうぜ、今度はお祝いとして』
「ありがとう」

 ふと、三崎くんが『そういや』と口にした。

『なあ、お前仕事探偵系なんだよな?』
「ああ、うん。っていっても下請けというか。上から送られてきた細々した依頼受ける感じ。普段は在宅で資料作成とかばかりだよ、今もやってる」

 これも、猫さんのお父さんから斡旋してもらった仕事だ。ありがたい事に向いているのか不便さを感じた事はない。
 三崎くんは一拍おいて、続けた。

『浮気調査とか出来たりする?』

 三崎くんの声は、真剣だった。不意に息を呑んだけれど、「案件としてはたまに受けるよ」と返す。

「凪野さん? 何かあるの?」

 どくり、どくり、と心臓が鳴る。もしかして浅田くんが、何か動いたのだろうか。

『んー、何というか勘。でも何かモヤモヤするというかさ』
「じゃあ特に目星のある人とかはいないんだね?」
『……ああ』

 妙に濁すなあとは思ったけれど、もし正式な依頼になるのであればその時どちらにせよ探る事にはなる。だから今は黙殺した。

「とりあえず一回うちの詳しい資料とか送るよ。メッセージでいい?」
『ああ、悪いな』

 一旦電話を切り、パソコン経由でうちの事務所のサイトURLを送信した。事務所といっても僕と、猫さんのお父さんの部下数人が兼任で所属してくれているくらいだけれど。
 ……絶対浅田くんだ。だとしたら、猫さんの優しさとか全て三崎くんを裏切っていたことになる。そう考えると少し胸が痛んだ。けれど依頼として来たら、いずれはそれすらも利用する事になるのだろう。少し気が重いけれど、仕方ない。
 時計を見ると、そろそろ晩ご飯を仕込んだ方が良い事に気付く。僕は愛する奥さんの好物を作るために、立ち上がった。


 三崎くんから正式な依頼と前金が振り込まれたのは、その日の深夜だった。
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