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10.浅田光と協力者。

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「久し振りやなぁほんまに」
「ですね。奥さんの方とはこの間の同窓会で会いましたけど」

 とある日曜日、俺はかつての生物担当の教師である浦見先生の家へと訪れていた。ちなみに浦見先生……というより奥さんの方の連絡先はまた元林から聞いた。もはや何も訊かれる事はなかった。世話になり過ぎているという自覚は一応ある。
 浦見先生と会うのは、卒業以来だ。それでも依然として童顔を保っている。

「はい、お茶」
「ごめん、ありがとう」

 奥さんである仙崎さんと会うのは、同窓会以来だ。改めて見ても、いい意味で落ち着いたように見える。穏やかで……彩とは、真逆だ。

「大事な話だろうし、私あっちの部屋いるね」

 浦見先生の家にわざわざお邪魔させてもらっているのは、まだ子どもが小さくていざという時のために家にいたいというところからだった。何でも、奥さんが一度育児ノイローゼを起こしてしまいその後遺症が未だ残っているらしい。先程双子の息子たちと会わせてもらったが、驚く程そっくりだった。
 奥さんが隣の部屋へ向かうのを見送って、浦見先生は口を開いた。

「結婚したんやって? 例の彼女と。今日大丈夫やったんか」

 確かに普段なら、どさくさならともかくこうやって知人に会う事すら本来は難しい。しかし今日は彩は親戚一同の集まりに顔を出している。そこに修治と……恐らく葵も顔を出す事から、俺は無事自由時間を手に入れていた。万が一今日の事を突っ込まれたとしても、かつての男の教師……なら、何とか丸め込める気がする。修治の知り合いでもあるわけだし。

「今日だけは一日大丈夫です」
「そか。じゃあ晩飯食うてく? 今日俺が晩飯作る日やから」
「あ、ありがとうございます」
「で、や。何があったんや今回」

 この人は、高三の時ずっと相談に乗ってくれていた。当時唯一俺の気持ちを知っていた人だった。それに……公平だ。
 葵と再会した事、気持ちが再燃している事、そして彩の疑惑の事……すべてを話した。先生はずっと黙って聞いてくれていた。用意されたお茶が半分減ったくらいで話がひと段落し、浦見先生も頷いた。

「まあ今すぐ何か突っ込めるとしたら……嫁さんの疑惑どうこうってとこか」
「ですね。でもいまいち尻尾出さないし……そもそも本当にやってるかっていう段階なんで」
「相手に聞くのは難しいわな」

 そもそも俺と雅治さんの接点は一切無い。互いに存在を認知している程度だ。
 ふと、浦見先生が顔つきを変えた。

「……待てよ。なあ、それって三崎の兄貴なんよな?」
「あっはい」
「いくつ? あと下の名前」
「えっと、確か今30か31のはずです。名前は、雅治」

 それを聞き、浦見先生はスマートフォンを取り出した。そして、一枚の画像を差し出す。

「こいつか」

 全員が白衣を着ている、何かの集合写真だった。拡大された箇所にいたのは……確かに、雅治さんだった。

「そうです。え、知り合いなんですか」
「知り合いというか、大学での生徒やな。俺大学の非常勤講師もやってたから」
「初耳なんですがそれ」
「いやでも世間狭過ぎやろこれ」

 世間が狭いのは、彩と修治の繋がりが発覚したあの時から知っている。恐ろしい話だ。
 スマートフォンを消し、浦見先生は「どうする」

「何やったらこっち側から探り入れれるで、これなら。やろか?」
「いいんですか。というか、まだ繋がってるんですか?」
「こいつと特別ってわけではないけど、当時のクラスで同窓会開けば多分こいつは来るんちゃうかな」

 改めて思うが、同窓会ってとてつもなく便利な口実だと思う。
 俺の答えは決まっていた。

「お願いします」

 それを聞き、浦見先生はにやりと笑った。
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