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34.気まずさ満点道中。

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 結局Naokiは、自分の番組の撮影班との予定があるとの事でこの後は別行動ということになった。しかし全員分のプレゼントは喜んでくれたようで、「総重量30キロ超えかよ」とよく分からないことを言いつつ持ち帰ってくれた。

「いやあでもよかった、喜んでくれて。というかIzumiちゃんとタクヤくんが選んだかりゆし可愛かったねえ」
「ひじり達の選んだぬいぐるみも可愛かったよ。というかあれどこに売ってたの?」

 ……現在。車に乗るメンバーは入れ替えが行われていて、ひじりの後部座席に乗る車は玲雅が運転している。そして、助手席には雪斗がいる。

「というか日差し強いね、玲雅日焼け止め塗った?」
「雪斗のやつ借りた」
「え、いつの間に」

 ……仲良さそうには見える。しかし、ひじりからすればこの組み合わせは気まずい以外この上無い。しかし、この組み合わせを指定したのは他でもない玲雅だ。

「ひじりは日焼け止め塗った?」
「う、うん。Izumiちゃんが宣伝してるやつ」
「あー、俺と一緒だ」

 雪斗からは、確かにあれから毒っ気は消えている。それは分かっていても、どこか気まずい。
 玲雅は思い出したように、口を開いた。

「そういえば、ひじりの卒アル見たよ」
「へっ」
「ごめん、改めて全部話したんだよね。俺達のこと」

 雪斗もまた、どこか気まずそうだった。しかしそれ以上に、全部知られてしまった事に心臓がバクバクいいだす。
 さすがに玲雅には、『有野雪斗』と陥った関係とそれに至る理由が「二人が同級生だった」くらいしか話していなかった。それは聞いてこなかったから、というのが大きいのだが。

「あ、あの……その……知っちゃった、んですか……」
「うん。めちゃくちゃびっくりした」

 本当にびっくりしているように見えないのが、この男の恐ろしいところだ。しかし、玲雅は続ける。

「納得はいったよ。そもそも雪斗とひじりの接点すら、俺はちょっとしか知らなかったわけだしね」
「……は、はい」
「それに、折り合いはつけたしね」

 そう言って、玲雅は雪斗を見る。雪斗も頷いた。

「おかげで鼻やり直しだったよ。ダウンタイムきつかった」
「あっ折り合いってそういうタイプの!?」

 そういえば、確かに一時期雪斗はテレビ出演をしていなかった。その時はファンクラブにも「顔面のメンテナンス中です」と載せていたのを見た記憶がある。

「整形も大変だよね。維持とか」
「まあね。というか、『SIX RED』って誰かいじってたりする?皆顔面偏差値高いよね」
「……一回その話題にはなったけど、『いざという時情報売りそう』って事で全員黙りました」
「なんかそういうところ『SR』っぽいよね」

 雪斗はペットボトルの水を口に含んだ。やはり、本土とは比べものにならない程暑い。

「雪斗、俺も」
「はいはい」

 ……こういうのを見ると、やはりうずいてしまう。どう見ても目の前の二人は、今まで憧れてきた『IC Guys』のメンバーだ。恋人だとか元同級生とか抜きにしても、その二人が、目の前で。

「眼福っ……」
「ヲタクってすごいね、過去まで忘れられるんだから」
「もう俺は諦めたよ」

 信号で、車が停まった。

「……まあ何せ俺は、雪斗相手でもひじりを渡す気はないから」
「俺も。まあ二人は恋人って公表してるだけで、俺としては全然諦めたつもりはないからね?」

 二人の視線が、一気に向いてくる。それぞれの圧を感じて、ひじりは「ひゃい……」と縮こまるしかなかった。




 待ち合わせ場所にしていた海辺は、観光客で賑わっていた。そのおかげか、意外にもバレることはなかった。
 全員水着に着替えて、海辺で落ち合う。まだ春だというのに、早くも夏のような熱気である。

「Hijiriの水着可愛い!」

 集合するなり、Izumiは目を輝かせながら歓声をあげた。それを聞き、Reoが得意げに鼻を鳴らす。

「俺が選んだからな!Hijiriのボディラインを活かした上で変なグラビア感が出ないように気を配りました!褒めろ!」

 『SIX RED』はアイドルという路線上、やはり女性メンバーである二人にいわゆるそういったアイコン的な仕事も誘われていた。しかし、NaokiやReoの手によって、そういった仕事はほぼすべて排除されていた。当人達いわく、「親心」との事だった。

「まあそのせいで俺の女装仕事が増えたんだけどね……」
「Souくん何か言った?」

 その後は、全員が自由に過ごした。この後『SIX RED』は飛行機に乗って帰るので、それまでに全力を費やすことを目標に。
 しかし玲雅は、そんな彼らをベンチから眺めていた。ひじりは何だか気になって、ひたひた歩きながら彼の元へ向かった。

「あ、あの……玲雅くんは、入らないんですか?」

 ひじりに気付いた玲雅は、サングラスを外した。その目は、いつも通り涼やかだった。

「単純に、皆が楽しそうにしてるのを見てるのが楽しいなって。ひじりはもういいの?」
「ちょっと疲れちゃって……ReoくんとTakaのボートすごいんですよ、振り落とされちゃいました」
「ずぶ濡れだもんね、乾かしにいこうか」

 そう言うと、玲雅はひじりの手を取った。それにつられて、歩き出す。
 そう言えば、玲雅とこうやって外を歩くのはあの『ギジデート』の収録以来かもしれない。そう考えると、どきどきしてきた。
 連れられてきた場所は、人けの無い岩場だった。メンバーや観光客達の姿がよく見えるが、このあたりは誰もいなかった。
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