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10.家賃は部屋によっては3桁いくらしい。
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とりあえず、結構飲まされたのは覚えている。そして、あるお酒を飲んだ時点で急激に意識を失ったのも目覚めた瞬間に理解した。
「……どこここ」
見慣れない、コンクリートを打ちっぱなしの天井。少なくとも、自分の一人暮らしの家ではない。その事に、とんでもない冷や汗をかきだした。
慌てて体を起こす。服は、男物のパジャマだった。その事実に、余計に混乱する。
やってしまった。もし、こんな状況を撮られでもしていたら。その事実に脳みそが沸騰する程にまでパニックになる。
まず、自分が眠っているのはベッドだ。感触からして、相当いい。そして慌てて、服の中身を確認した。
「……やっては、ない」
何となく、感覚で分かった。その事に安心するも、それどころではない。一体、ここは誰の家なのか。
あの飲み会には、自分とTaka、玲雅とタクヤ、そして15人程のライブスタッフがいた。その中で、男性は10人程。
まずい。あまりにも状況がまずい。やっていようがやっていまいが、本当にまずい。
辺りを見渡しても、部屋の主人らしき存在は見えない。しかし枕元には、自分のバッグが置かれていた。中のスマートフォンを確認すると、とくに問題らしき内容は無かった。この業界ではスクープが出たらスピード勝負なので、何かあればもうすでに連絡が来ていてもおかしくない。
「Takaは……あ、そうだあいつ終電で先帰ったんだ……」
確か自分は、Hijiriのファンを豪語する女性スタッフに頼まれて二次会へ向かった。問題は、その後だ。一旦お手洗いに出て、戻った酒を飲んだら……ここ、だった。
意を決して、部屋を出る。どうやら、部屋数のあるデザイナーズマンションのようだった。
部屋を出ると、広いリビングだった。奥から、何か調理をする音が聞こえる。緊張しながら、歩く。すると、足音が聞こえてきた。
顔を出したのは、玲雅だった。
「起きたんだ」
「……え?」
素で、そんな声が出た。玲雅はマグカップを二つ持っていて、それをテーブルに置いた。目でソファをすすめられて、ソファに座る。脳は思考を停止していた。
「ここ、俺の家」
その内容に、一気に脳みそが砕かれた。そんなひじりに、彼女の気も知らず玲雅は「コーヒー大丈夫?」と声をかける。
……わけが、分からない。自分は夢でも見ているのだろうか。そんなひじりに、玲雅は説明を始めた。
「薬仕込んだやつがいて、そいつは今警察」
「え?」
予想外の内容に、さすがに顔を上げる。すると、玲雅はいつもと変わらない無表情のままだった。
「これは完全に俺が悪い。よく考えたらHijiriチャンみたいな女性アイドルを手篭めにしたい奴なんて、ごまんといるわけだし。警戒が足りなかった」
「あ、あの。話が全然見えないんでしゅが……」
混乱のあまり噛んでしまうも、玲雅は全然気にしていない様子だった。
「バーテン買収して、薬入れさせた奴がいた。そいつ常習だったらしくて、スタッフの子がすぐ気付いてさ。実際Hijiriチャン全然目を覚まさないし、とりあえず一番近い俺の家に連れてきた。ここセキュリティ強いからカメラも張れないし」
理解は出来た。しかし、追いつかない。呆然としていたが、やっと追いついた頃。ひじりは飛び跳ねて土下座した。
「ほんっとうにすみません……!!」
そんなひじりの前に屈むと、玲雅は「別に」と返す。
「あ、言っておくけど何もしてないから。その、着替えだけはちょっとさせてもらったけど」
「あわわわわわわわわ」
「……いやだったよね、ごめんね」
恥ずかしいやら申し訳ないやらで、顔から火が出そうだった。そんなひじりに、玲雅はマグカップを差し出す。落ち着け、という事だろう。ひとまず一口もらうと、苦味が脳を突き抜けた。
「多分あいつは解雇になるよ。もしストーカーとかになりそうなら、俺が責任をもってどうにかする」
「そ、そそそんな!そういうのの対応は慣れてるので大丈夫です!」
「慣れてるの?女の子のアイドルって大変だね」
実際、ストーカー被害は何度か遭っている。Izumiが結婚してからはとくに増えたが、男性メンバーが多いのもあって大きな事件には未だ繋がった事がない。
それに、かつてあった事件を考えればあれくらい些事だ。
「まあ、何かあったらいつでも相談して」
その表情は、どこか歪んでいた。心配そうな、悲しそうな。そんな、表情。
それを見て……何か、糸が切れた気がした。
「……ご迷惑おかけして、すみませんでした」
「Hijiriチャン?」
「も、もう出ますね。着替えって……」
「部屋に置いてる、けど」
先を聞かずして、ひじりは寝室へ戻った。そして、てきぱきとすぐに着替える。玲雅のパジャマは、丁寧に畳んでベッドの上に置いた。
バッグを持って、変装の用意もして。寝室を出る。すると、扉のそばに玲雅が立っていた。
「……ロビーの警備員に言えば、地下からタクシー乗れるから」
「ありがとうございます。すみません、ご迷惑をお掛けして」
「大丈夫?」
顔を、見れない。そのままひじりは頷いた。
玄関扉を開ける。玲雅は、何も言わなかった。そのまま通路に出て、ロビーへ向かう。警備員に話を通すと、数十分でタクシーが来るとの事だった。
地下の駐車場に到着する。一気に、力が抜けた。そのまま、へたりこむ。
「……本当に最低、私」
その言葉の真意は、悲痛さでにじんでいた。
「……どこここ」
見慣れない、コンクリートを打ちっぱなしの天井。少なくとも、自分の一人暮らしの家ではない。その事に、とんでもない冷や汗をかきだした。
慌てて体を起こす。服は、男物のパジャマだった。その事実に、余計に混乱する。
やってしまった。もし、こんな状況を撮られでもしていたら。その事実に脳みそが沸騰する程にまでパニックになる。
まず、自分が眠っているのはベッドだ。感触からして、相当いい。そして慌てて、服の中身を確認した。
「……やっては、ない」
何となく、感覚で分かった。その事に安心するも、それどころではない。一体、ここは誰の家なのか。
あの飲み会には、自分とTaka、玲雅とタクヤ、そして15人程のライブスタッフがいた。その中で、男性は10人程。
まずい。あまりにも状況がまずい。やっていようがやっていまいが、本当にまずい。
辺りを見渡しても、部屋の主人らしき存在は見えない。しかし枕元には、自分のバッグが置かれていた。中のスマートフォンを確認すると、とくに問題らしき内容は無かった。この業界ではスクープが出たらスピード勝負なので、何かあればもうすでに連絡が来ていてもおかしくない。
「Takaは……あ、そうだあいつ終電で先帰ったんだ……」
確か自分は、Hijiriのファンを豪語する女性スタッフに頼まれて二次会へ向かった。問題は、その後だ。一旦お手洗いに出て、戻った酒を飲んだら……ここ、だった。
意を決して、部屋を出る。どうやら、部屋数のあるデザイナーズマンションのようだった。
部屋を出ると、広いリビングだった。奥から、何か調理をする音が聞こえる。緊張しながら、歩く。すると、足音が聞こえてきた。
顔を出したのは、玲雅だった。
「起きたんだ」
「……え?」
素で、そんな声が出た。玲雅はマグカップを二つ持っていて、それをテーブルに置いた。目でソファをすすめられて、ソファに座る。脳は思考を停止していた。
「ここ、俺の家」
その内容に、一気に脳みそが砕かれた。そんなひじりに、彼女の気も知らず玲雅は「コーヒー大丈夫?」と声をかける。
……わけが、分からない。自分は夢でも見ているのだろうか。そんなひじりに、玲雅は説明を始めた。
「薬仕込んだやつがいて、そいつは今警察」
「え?」
予想外の内容に、さすがに顔を上げる。すると、玲雅はいつもと変わらない無表情のままだった。
「これは完全に俺が悪い。よく考えたらHijiriチャンみたいな女性アイドルを手篭めにしたい奴なんて、ごまんといるわけだし。警戒が足りなかった」
「あ、あの。話が全然見えないんでしゅが……」
混乱のあまり噛んでしまうも、玲雅は全然気にしていない様子だった。
「バーテン買収して、薬入れさせた奴がいた。そいつ常習だったらしくて、スタッフの子がすぐ気付いてさ。実際Hijiriチャン全然目を覚まさないし、とりあえず一番近い俺の家に連れてきた。ここセキュリティ強いからカメラも張れないし」
理解は出来た。しかし、追いつかない。呆然としていたが、やっと追いついた頃。ひじりは飛び跳ねて土下座した。
「ほんっとうにすみません……!!」
そんなひじりの前に屈むと、玲雅は「別に」と返す。
「あ、言っておくけど何もしてないから。その、着替えだけはちょっとさせてもらったけど」
「あわわわわわわわわ」
「……いやだったよね、ごめんね」
恥ずかしいやら申し訳ないやらで、顔から火が出そうだった。そんなひじりに、玲雅はマグカップを差し出す。落ち着け、という事だろう。ひとまず一口もらうと、苦味が脳を突き抜けた。
「多分あいつは解雇になるよ。もしストーカーとかになりそうなら、俺が責任をもってどうにかする」
「そ、そそそんな!そういうのの対応は慣れてるので大丈夫です!」
「慣れてるの?女の子のアイドルって大変だね」
実際、ストーカー被害は何度か遭っている。Izumiが結婚してからはとくに増えたが、男性メンバーが多いのもあって大きな事件には未だ繋がった事がない。
それに、かつてあった事件を考えればあれくらい些事だ。
「まあ、何かあったらいつでも相談して」
その表情は、どこか歪んでいた。心配そうな、悲しそうな。そんな、表情。
それを見て……何か、糸が切れた気がした。
「……ご迷惑おかけして、すみませんでした」
「Hijiriチャン?」
「も、もう出ますね。着替えって……」
「部屋に置いてる、けど」
先を聞かずして、ひじりは寝室へ戻った。そして、てきぱきとすぐに着替える。玲雅のパジャマは、丁寧に畳んでベッドの上に置いた。
バッグを持って、変装の用意もして。寝室を出る。すると、扉のそばに玲雅が立っていた。
「……ロビーの警備員に言えば、地下からタクシー乗れるから」
「ありがとうございます。すみません、ご迷惑をお掛けして」
「大丈夫?」
顔を、見れない。そのままひじりは頷いた。
玄関扉を開ける。玲雅は、何も言わなかった。そのまま通路に出て、ロビーへ向かう。警備員に話を通すと、数十分でタクシーが来るとの事だった。
地下の駐車場に到着する。一気に、力が抜けた。そのまま、へたりこむ。
「……本当に最低、私」
その言葉の真意は、悲痛さでにじんでいた。
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