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50.繋がりだした世界の水面下。
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「クソガキ。ちょっと来い」
扉が開き、ギャムシアの姿が見えた。何故か車いすに乗っている。彼はそのまま部屋の中に入ってくる。
「お前宛に客が来ている」
「客?」
「ギャムシアちょっとその車いすって……」
「そこのクソガキに脚逆向きにされたからな。安心しろ、明日になりゃ治る。医療なめんな」
絶対にそういう問題ではないと思うが。
シャイネは「俺宛、とは」とギャムシアに問う。彼は頭を捻るようにしてシャイネを見上げた。
「……実際会いに行った方が早い。行け。玄関口で待たせてある」
訝し気にしながらも、シャイネは頷いた。名残惜し気にラチカを見ながら、部屋を出る。
モシェロイであれば、恐らくラチカを指名するはずだ。それに時間で言っても、恐らくまだ時間がかかる。しかもギャムシアのあの様子からして……ラチカに知らせない方がいい、という配慮か。
玄関口に到着した。その瞬間見えた馬車の紋に、すぐ気付く。急いで馬車に駆け寄ると、人影が揺らいだ。
「おお、シャイネ。久しいな」
老人のような、若いような。特定しきれない声質こそが彼の武器だと聞いた事がある。実際彼はレヂェマシュトルの島に所属を残したままでありながら、その影を大陸中に忍ばせて潜入捜査などを行う重鎮だ。
「……元帥どの。まさか、こちらに来られるとは」
レヂェマシュトル総本山の元帥。大元帥の次に絶大な権力を持つ男だ。
彼は馬車から一歩踏み出す。小柄なシャイネよりほんの少し勝る程度の身長で、深くローブを被っていた。彼の顔など、誰も今まで見た事がないはずだ。
「何、本当は先にエヴァイアンへ行ったんだよ。すると何故かポシャロの方がいてな、そこで察したわけだ」
つまり、ポシャロは無事エヴァイアンに入れたのか。その事に少し安堵しながらも、目の前の男の存在には一切気を抜けない。
元帥はぐるりと周囲を見渡した。
「国主殿に、すべて話したらしいな」
「はっ……」
そうする事が、いいという判断だった。ラチカに聞かれたくないがために、彼女が数日姿を消していた間にすべて打ち明けた。彼の反応自体は冷めたもので、それを疑問として提示すると彼は笑った。
「……『予測はしていた』『コーマス殿も勘付いている』そう、仰っていました」
「ならいいだろう。下手にあれこれ推測されるくらいなら、すべて知られておく方がこちらとしても都合がいい」
思いのほか穏やかな返答で拍子抜けしたが、安堵もした。
言葉は続く。
「まあ、今となっては構わんよ。すべて終わった。先の集会で」
……ラチカの陰ですべては完了した。
知られても、きっとラチカなら理解はしてくれるだろう。レヂェマシュトルとして、そして世界を救う為の下準備として。しかしやはり、シャイネからすれば知られて心地いいものでは決してない。
汚い自分を、これ以上さらけ出したくない。
「葬儀は滞りなく行われた。今はもう、墓の下だ。骨もすべて凝固させ厳重封印を施した」
「亡霊になることを防止するための封印、ですか」
「そうだ。あれが亡霊として出てこようものなら、我らレヂェマシュトルやエクソシストども総員でかかってもかなわんだろう」
……ようやくつながった。
「ディグレオは現在、レヂェマシュトルの島に潜入を試みている可能性が高い」
「……!」
「まあ、道理ではある。アスパロロク前国主を召喚したのは、あくまでディグレオの私情からだろう。そこに追加で、巨大戦力として……奴の事も召喚しようと考えていてもおかしくはない」
元帥には、いちはやく情報がいっているとは思っていた。大陸中には、シャイネのようにきちんと買われ従ずる者以外にも一般人に紛れてレヂェマシュトルが島から派遣され潜んでいる。ある種の、大陸の監視だ。しかし彼らはあくまで諜報員なので、買われる者程の戦闘能力は持たない。言わば、試合で見初められなかった者の結末である。
……そもそも、『奴』の暗殺は唐突に計画された。つまり。
「……ディグレオが裏で糸を引いていたのですか」
シャイネの震えた問いに、元帥は首を振った。
「お前の解釈で言うなら、間違いだ。逆だよ。ディグレオと組みそうになったから、あの計画は始動した」
「じゃあ、ディグレオが今こうやって活動しようとしているっていうのは」
「奴が生きている時点で活動していようがいまいが随時暗殺はするべきだった。巧妙だったよ、隠れ方が。ここで偽名で執事長をやっていると分かったのは、それこそ集会の直前だ」
やっと合点がいった。そのために、集会の日がずれたのか。
元帥は溜息を吐く。
「……正直、今のこの世界で大戦などそうそう起きない。レヂェマシュトルという組織自体がぬるま湯状態だった。それに関しては反省している」
「そんな事、誰望んではいないでしょう」
シャイネが生まれる数十年も前、この世界は何度も大戦を行っていた。勿論大陸も巻き込まれていた。その様々な因果が組み合わさっての現在だ。
「少し体制を見直そう、という事になった。奴は消え、それが可能となった。礼を言う」
「……何も、とくにはしていません」
ほんの少し、協力しただけだ。それを言うならポシャロも一枚噛んでいる。それどころか、事情を知り納得した上で参加したレヂェマシュトルの数は多い。あの集会は、水面下である種の革命を引き起こしたのだ。ただそれを、レヂェマシュトル以外に知らせる必要が無いだけで。
「ディグレオに関してはこちらで引き続き追う。もし島に乗り込もうものなら、その時はレヂェマシュトルの地獄というものを見せてやるさ」
結局レヂェマシュトルの目的は……大陸の平定維持だ。レヂェマシュトルの創立自体が、本来それに起因する。
シャイネは恭しく頭を下げた。元帥は口元だけ見せて、穏やかに微笑んだ。
レヂェマシュトルにまで知れてしまった以上、ディグレオはこの大陸のほぼ全員を敵に回したといっても過言ではない。そんな状況下で、一体どう攻め込んでくるつもりなのか。それが単純に、不気味だった。
「ところで、ラチカ・エヴァイアンは元気か」
唐突な問いに面食らうも、頷く。
「お前が他の権力者への引き抜きをすべて断った上で付いている、というのもなかなかすごいと思ってな」
「お嬢様は、その事をご存知ありません」
「ふむ、となるとアルダルト手ずから断っていたのか。お前の気概を汲んだ上か」
アルダルトには、しばらく会っていない。たまに来る手紙を見る限りでは息災そうではあるが。
元帥の問いは続く。
「エクソシストなのだろう。戦わせるのか」
頷く。それは、従者としての頷きだった。
「今回の戦いには、お嬢様の力が不可欠です。必ずやお守りし、敵を討ちます」
主だから、といって戦わせない理由には出来ない。実際、彼女はネクロマンサー相手には確実な戦力である。だからこそ。
「……俺は、あの方を守るために参ります」
それが従者として、そして彼女を愛する男としての矜持だ。
元帥は尚、穏やかな微笑みを崩さずに口を開く。
「それでこそ、レヂェマシュトルだ。主君を守るため、しかと励め。その力、余すなよ」
「はっ」
その奥に、元帥はほんの少しの寂しさを滲ませながら呟く。
「……まあ私には、その主君すら消えてしまったわけだがな」
元帥……次期総帥の言葉を、シャイネはあえて拾わなかった。
翌日の晩は、嵐のような吹雪だった。風が吹き荒れ、収まりつつあったはずの雪が再び猛威を奮いだしている。
「不気味だな。ラチカ、ネクロマンサーの影響かこれは」
ギャムシアの言葉に、ラチカは難しそうな顔をして首を捻る。
「分からないけど、まったく無いとは言い切れない。でもこれが自然であれ人為的であれ、危ないかもしれない」
「これに乗じて来る可能性はありますね」
シャイネが淹れた温かい紅茶をすすりながら、三人は揃って外を見る。サガリオットは結界内でそわそわとその巨体を揺らしていた。その様子が気にかかり、ラチカは結界へと歩み寄る。
「サガリオット様、大丈夫ですか」
『うむ。しかし……何故だか、胸騒ぎのようなものが……』
それを聞き、ハッとする。結界の陣を造っている石が一つ、震えている。これは、まずい。
ラチカはシャイネとギャムシアを見、声を放った。
「国主邸周囲、警戒した方がいい! 近付いてきてるかも!」
ギャムシアとシャイネは紅茶を置いて立ち上がった。シャイネが一足先に部屋を飛び出す。彼には腕の立つ使用人やギャムシアの生徒の統率を任せているとのことだった。
ギャムシアはラチカに歩み寄る。そのまま、結界を見つめた。中にいるサガリオットのことは見えないはずだが、それでもギャムシアは口を開く。
「貴方が、基盤として作り上げてくださった国です。必ず、守ります」
サガリオットの靄が、上下に揺らめく。
ラチカは懐から、大粒の赤い石を革ひもにくくりつけた首飾りをギャムシアに差し出した。
「これか、言ってたやつ」
「うん、結界石。シャイネも持ってる。弱い亡霊程度ならこれで弾き飛ばせるから。強い亡霊がきても、侵食をだいぶ抑えられるよ」
「助かる」
結界石を首から下げ、ギャムシアは歩き出した。そのまま、ラチカに向かって声を飛ばす。
「国主様の事は任せた。すぐに何人か人を寄越す、何かあったら言え」
「分かった、ありがとう」
ギャムシアはそっと微笑んで、扉から出て行った。
改めて、サガリオットと向き合う。彼には顔は無いが、忙しなく空中をたゆたい続けている。きっと辛いのだろう。
シャイネとギャムシアは、エクソシストではない。モシェロイもまだ到着していない。つまり、今攻められたらラチカにしか対処が出来ないという事だ。サガリオットの覚醒が完全になると、それこそ大変な事になる。
深く、息を吸う。目の前の結界を強く睨みつけた。
扉が開き、ギャムシアの姿が見えた。何故か車いすに乗っている。彼はそのまま部屋の中に入ってくる。
「お前宛に客が来ている」
「客?」
「ギャムシアちょっとその車いすって……」
「そこのクソガキに脚逆向きにされたからな。安心しろ、明日になりゃ治る。医療なめんな」
絶対にそういう問題ではないと思うが。
シャイネは「俺宛、とは」とギャムシアに問う。彼は頭を捻るようにしてシャイネを見上げた。
「……実際会いに行った方が早い。行け。玄関口で待たせてある」
訝し気にしながらも、シャイネは頷いた。名残惜し気にラチカを見ながら、部屋を出る。
モシェロイであれば、恐らくラチカを指名するはずだ。それに時間で言っても、恐らくまだ時間がかかる。しかもギャムシアのあの様子からして……ラチカに知らせない方がいい、という配慮か。
玄関口に到着した。その瞬間見えた馬車の紋に、すぐ気付く。急いで馬車に駆け寄ると、人影が揺らいだ。
「おお、シャイネ。久しいな」
老人のような、若いような。特定しきれない声質こそが彼の武器だと聞いた事がある。実際彼はレヂェマシュトルの島に所属を残したままでありながら、その影を大陸中に忍ばせて潜入捜査などを行う重鎮だ。
「……元帥どの。まさか、こちらに来られるとは」
レヂェマシュトル総本山の元帥。大元帥の次に絶大な権力を持つ男だ。
彼は馬車から一歩踏み出す。小柄なシャイネよりほんの少し勝る程度の身長で、深くローブを被っていた。彼の顔など、誰も今まで見た事がないはずだ。
「何、本当は先にエヴァイアンへ行ったんだよ。すると何故かポシャロの方がいてな、そこで察したわけだ」
つまり、ポシャロは無事エヴァイアンに入れたのか。その事に少し安堵しながらも、目の前の男の存在には一切気を抜けない。
元帥はぐるりと周囲を見渡した。
「国主殿に、すべて話したらしいな」
「はっ……」
そうする事が、いいという判断だった。ラチカに聞かれたくないがために、彼女が数日姿を消していた間にすべて打ち明けた。彼の反応自体は冷めたもので、それを疑問として提示すると彼は笑った。
「……『予測はしていた』『コーマス殿も勘付いている』そう、仰っていました」
「ならいいだろう。下手にあれこれ推測されるくらいなら、すべて知られておく方がこちらとしても都合がいい」
思いのほか穏やかな返答で拍子抜けしたが、安堵もした。
言葉は続く。
「まあ、今となっては構わんよ。すべて終わった。先の集会で」
……ラチカの陰ですべては完了した。
知られても、きっとラチカなら理解はしてくれるだろう。レヂェマシュトルとして、そして世界を救う為の下準備として。しかしやはり、シャイネからすれば知られて心地いいものでは決してない。
汚い自分を、これ以上さらけ出したくない。
「葬儀は滞りなく行われた。今はもう、墓の下だ。骨もすべて凝固させ厳重封印を施した」
「亡霊になることを防止するための封印、ですか」
「そうだ。あれが亡霊として出てこようものなら、我らレヂェマシュトルやエクソシストども総員でかかってもかなわんだろう」
……ようやくつながった。
「ディグレオは現在、レヂェマシュトルの島に潜入を試みている可能性が高い」
「……!」
「まあ、道理ではある。アスパロロク前国主を召喚したのは、あくまでディグレオの私情からだろう。そこに追加で、巨大戦力として……奴の事も召喚しようと考えていてもおかしくはない」
元帥には、いちはやく情報がいっているとは思っていた。大陸中には、シャイネのようにきちんと買われ従ずる者以外にも一般人に紛れてレヂェマシュトルが島から派遣され潜んでいる。ある種の、大陸の監視だ。しかし彼らはあくまで諜報員なので、買われる者程の戦闘能力は持たない。言わば、試合で見初められなかった者の結末である。
……そもそも、『奴』の暗殺は唐突に計画された。つまり。
「……ディグレオが裏で糸を引いていたのですか」
シャイネの震えた問いに、元帥は首を振った。
「お前の解釈で言うなら、間違いだ。逆だよ。ディグレオと組みそうになったから、あの計画は始動した」
「じゃあ、ディグレオが今こうやって活動しようとしているっていうのは」
「奴が生きている時点で活動していようがいまいが随時暗殺はするべきだった。巧妙だったよ、隠れ方が。ここで偽名で執事長をやっていると分かったのは、それこそ集会の直前だ」
やっと合点がいった。そのために、集会の日がずれたのか。
元帥は溜息を吐く。
「……正直、今のこの世界で大戦などそうそう起きない。レヂェマシュトルという組織自体がぬるま湯状態だった。それに関しては反省している」
「そんな事、誰望んではいないでしょう」
シャイネが生まれる数十年も前、この世界は何度も大戦を行っていた。勿論大陸も巻き込まれていた。その様々な因果が組み合わさっての現在だ。
「少し体制を見直そう、という事になった。奴は消え、それが可能となった。礼を言う」
「……何も、とくにはしていません」
ほんの少し、協力しただけだ。それを言うならポシャロも一枚噛んでいる。それどころか、事情を知り納得した上で参加したレヂェマシュトルの数は多い。あの集会は、水面下である種の革命を引き起こしたのだ。ただそれを、レヂェマシュトル以外に知らせる必要が無いだけで。
「ディグレオに関してはこちらで引き続き追う。もし島に乗り込もうものなら、その時はレヂェマシュトルの地獄というものを見せてやるさ」
結局レヂェマシュトルの目的は……大陸の平定維持だ。レヂェマシュトルの創立自体が、本来それに起因する。
シャイネは恭しく頭を下げた。元帥は口元だけ見せて、穏やかに微笑んだ。
レヂェマシュトルにまで知れてしまった以上、ディグレオはこの大陸のほぼ全員を敵に回したといっても過言ではない。そんな状況下で、一体どう攻め込んでくるつもりなのか。それが単純に、不気味だった。
「ところで、ラチカ・エヴァイアンは元気か」
唐突な問いに面食らうも、頷く。
「お前が他の権力者への引き抜きをすべて断った上で付いている、というのもなかなかすごいと思ってな」
「お嬢様は、その事をご存知ありません」
「ふむ、となるとアルダルト手ずから断っていたのか。お前の気概を汲んだ上か」
アルダルトには、しばらく会っていない。たまに来る手紙を見る限りでは息災そうではあるが。
元帥の問いは続く。
「エクソシストなのだろう。戦わせるのか」
頷く。それは、従者としての頷きだった。
「今回の戦いには、お嬢様の力が不可欠です。必ずやお守りし、敵を討ちます」
主だから、といって戦わせない理由には出来ない。実際、彼女はネクロマンサー相手には確実な戦力である。だからこそ。
「……俺は、あの方を守るために参ります」
それが従者として、そして彼女を愛する男としての矜持だ。
元帥は尚、穏やかな微笑みを崩さずに口を開く。
「それでこそ、レヂェマシュトルだ。主君を守るため、しかと励め。その力、余すなよ」
「はっ」
その奥に、元帥はほんの少しの寂しさを滲ませながら呟く。
「……まあ私には、その主君すら消えてしまったわけだがな」
元帥……次期総帥の言葉を、シャイネはあえて拾わなかった。
翌日の晩は、嵐のような吹雪だった。風が吹き荒れ、収まりつつあったはずの雪が再び猛威を奮いだしている。
「不気味だな。ラチカ、ネクロマンサーの影響かこれは」
ギャムシアの言葉に、ラチカは難しそうな顔をして首を捻る。
「分からないけど、まったく無いとは言い切れない。でもこれが自然であれ人為的であれ、危ないかもしれない」
「これに乗じて来る可能性はありますね」
シャイネが淹れた温かい紅茶をすすりながら、三人は揃って外を見る。サガリオットは結界内でそわそわとその巨体を揺らしていた。その様子が気にかかり、ラチカは結界へと歩み寄る。
「サガリオット様、大丈夫ですか」
『うむ。しかし……何故だか、胸騒ぎのようなものが……』
それを聞き、ハッとする。結界の陣を造っている石が一つ、震えている。これは、まずい。
ラチカはシャイネとギャムシアを見、声を放った。
「国主邸周囲、警戒した方がいい! 近付いてきてるかも!」
ギャムシアとシャイネは紅茶を置いて立ち上がった。シャイネが一足先に部屋を飛び出す。彼には腕の立つ使用人やギャムシアの生徒の統率を任せているとのことだった。
ギャムシアはラチカに歩み寄る。そのまま、結界を見つめた。中にいるサガリオットのことは見えないはずだが、それでもギャムシアは口を開く。
「貴方が、基盤として作り上げてくださった国です。必ず、守ります」
サガリオットの靄が、上下に揺らめく。
ラチカは懐から、大粒の赤い石を革ひもにくくりつけた首飾りをギャムシアに差し出した。
「これか、言ってたやつ」
「うん、結界石。シャイネも持ってる。弱い亡霊程度ならこれで弾き飛ばせるから。強い亡霊がきても、侵食をだいぶ抑えられるよ」
「助かる」
結界石を首から下げ、ギャムシアは歩き出した。そのまま、ラチカに向かって声を飛ばす。
「国主様の事は任せた。すぐに何人か人を寄越す、何かあったら言え」
「分かった、ありがとう」
ギャムシアはそっと微笑んで、扉から出て行った。
改めて、サガリオットと向き合う。彼には顔は無いが、忙しなく空中をたゆたい続けている。きっと辛いのだろう。
シャイネとギャムシアは、エクソシストではない。モシェロイもまだ到着していない。つまり、今攻められたらラチカにしか対処が出来ないという事だ。サガリオットの覚醒が完全になると、それこそ大変な事になる。
深く、息を吸う。目の前の結界を強く睨みつけた。
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