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6.お嬢様の熱。
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……体も脳も、心も。すべてがぼうっとする。
ギャムシアの歩む揺れが、もはや心地いい。額や首を汗が伝っていくのがこそばゆくて、身をよじる。その度に「暴れるな」と冷たい声で言われ、心の奥が詰まる。
ラチカの寝室に到着し、彼はまたあの時のように内鍵をかけた。ベッドにラチカをおろし、すぐさま覆いかぶさる。
「んん……」
熱い。彼の指も、再び絞められる喉も。何もかもが熱くて、体の中で暴発してしまいそうだ。
こめかみの血管が膨らんでいく感触。脳が、分厚い絵の具で塗りつぶされていくような圧迫感を感じている。それでもギャムシアは、止める事はなかった。ひたすら、ラチカの顔を見つめている。
……その瞳は、透き通った氷のような色なのに。それでも、こんなに、熱い。
「ラチカ」
ああ。初めて、呼ばれた。応えたいのに、声を発せない。
ぱくぱくと、口を動かす。その隙間に、彼の……とろけるような、熱い舌がねじ込まれる。
「あ、ふぅん……っ」
ほんの少しだけ、首元が緩んだ。その隙に深く息を吸う。そのせいで、彼の舌がより深くまで伸びてきた。喉の手前を舌で嘗め回され、未体験の快感にラチカの体が過剰に反応する。びくつくその肢体を、ギャムシアは己の体でしかとベッドに抑え込んだ。
重い。けれど。それでも、ラチカの手が、ギャムシアの背に絡んだ。自分へと、もっと引き寄せるように。
「ラチ、カ。離せ」
離れた唇が、熱い声を零す。手の力を緩めると、彼の体が浮いた。部屋は暗いはずなのに、窓から零れる花火の明かりがギャムシアを照らす。
……カーニバルの花火。ああ、視たかったはずなのに。それでも、今はギャムシアから目が離せない。
ギャムシアはラチカのドレスをはだけさせた。熱のせいで汗が谷間に溜まっている。あらわになったその谷間に、彼はそっと舌を滑らせた。
「あっ……やぁあ……」
熱の中の、ぬめり。まるで生き物のように、ラチカの胸の谷間をすべる。彼の舌は、まるでラチカの汗を掃除しているような動きだった。その発想にいきつき、恥ずかしさが一気に噴出する。
「ギャム、シア……」
「ん、そうだ」
彼の舌が、ラチカの乳輪に移動する。ああ、また。
そっとなぞられ、背筋が浮くような……快感。ぞくぞくっと粟立つような感触からは、逃げられなかった。ギャムシアに強く腰を掴まれ、ひたすらねぶられる。その度、ラチカの口から何度も甘い声がこぼれる。その度に、彼の唇が膨らみ始めた突起を吸った。それだけでも、……達してしまいそうだ。
「やだっ……こんな、のっ……」
漏れ出した、言葉。それは、無意識だったのに。
――パシッ、と空気を裂く音がラチカの頬を叩いた。さっきまでとは違う、痛みを伴った熱。右頬に、じんわりと広がる痛み。ギャムシアを見ると、彼の顔は……あの、冷たく粗暴な顔。まるで、さっきまでと別人のような。
「やだ、じゃねえだろ。俺の女のくせに」
……怖い。一瞬にして、熱が冷めていくのを感じる。それでも未だに、頬は熱いまま。ギャムシアはそんなラチカの頬に舌を這わせた。急な感触に、体全体が脈打つ。それが、拒否反応なのか快感なのかもはや分からない。
「俺の物になるんだよ、お前は」
そのまま、唇は耳元へと移動する。耳の軟骨部分を唇でくわえこまれ、「あんっ」と声が漏れてしまう。
駄目だ、これは。いけない。
味をしめたのか、ギャムシアの舌がラチカの耳を丁寧に嘗め回し始めた。熱のせいか自制心が効かず、声がだだ漏れになる。そんな時、秘所を……ギャムシアの、硬い指がなぞった。
「ふああっ!」
ひと際大きな声が出てしまう。そんなラチカの入り口を、ギャムシアは下着越しにひたすら指でなぞり続ける。そして、ついに。彼の指は、痛い程熱く膨らんだ箇所に辿り着いた。
「や、やぁっ! や、やだっ、そこはっ」
「何だ、何かあるのか」
彼の親指と人差し指が、膨らみを摘まもうと細かく動く。実際は下着の布がぴんと張られているせいで布をかすめるだけなのだが、それでもラチカの快感を煽るには十分だった。
「あっ……あ、あうぁっ……はぅう……っ」
熱でとろけきった口元から、涎が垂れる感触。それをギャムシアはすかさず舐めとった。味わうように、しつこく舌を口元に這わせる。その行為がどこかむず痒く、ラチカは身をぷるぷると震わせる。しかしギャムシアはそれをよがっていると勘違いしたのか、にやりと笑った。
彼はラチカを綺麗に仰向けさせると、下着をずらした。柔らかな陰毛が、愛液でしっとりと濡れている。それをかき分けながら、……肉に、触れた。
「~~~~っ!!」
声にならない、声。熱い。全身の毛穴から、一気に汗が噴き出す。しかしそれは蜜壺の方もだったらしく、一気にギャムシアの中指がラチカの中へ滑り込んだ。
「や、やだっ……やぁああっ!!」
ごりっ、とねじられる。それだけでも気が触れてしまいそうな衝撃だったが、そのまま彼は……充血しきった膨らみを、親指と人差し指でぎゅっと摘まんだ。
「ああぁああっ!?」
目の前が、ちかちかする。何故、ここまで。今朝や彼との初めての時は、ここまでじゃなかったのに。
ラチカの疑問など察してくれるわけもなく、ギャムシアは何度も膨らみを指同士擦り合わせるように摘まむ。その度に、世界の主線が細かくぶれる。愛液が何度もぬめりながら秘所全体を行きわたって、まるでこれでは……ただの、淫乱だ。
「ラチカ」
さっきとは打って変わって、熱くて甘い声。ああ、彼の地とは結局どちらなのだろう。
「来い」
腕を引かれる。ギャムシアを押し倒す形にさせられ、頭の奥がふらつく。しかし先程に比べれば、体調を揺らすような嫌な熱は減っていた。今自分を温めるのは、もっと違うものだ。
彼は手際よく、自身の下半身に纏っていたズボンと下着を脱いだ。憤った自身を、ラチカの蜜壺に宛がう。その感触だけで、また達しそうになる。……自身の体は、おかしくなっていた。
ギャムシアの手が、ラチカの腰を掴んだ。そのまま、一気に……自身を、ラチカの中に突き込んだ。
「やっ……」
脳が、びりびりする。ギャムシアもまた眉根を締め、ラチカの腰を支える手を震わせている。
本能が、腰を動かす。上下に、少しずつ。ギャムシアの肉棒を擦るように、ゆっくりと上下に。しかしその度に、口元をだらしなく緩めてしまうような快感が全身を撃つ。それでも、止まらない。
「あっ……ああ、あっ……すご、いっ……」
淫乱のような声。まさか自分から、そんな声が出るとは思わなかった。これでは、まるで兄の奥方のようだ。あの女性は、いつも兄に抱かれながらはしたない声を上げていた。結局、女の本能なのか。
ギャムシアもまた息を荒げ、額に汗を浮かべていた。その息は、荒い。
「ラチカっ……あ、やめろ、動くなっ」
……その声は。判別が、つかなかった。
「ご、ごめ、なさっ」
……また、叩かれる。そう思った瞬間。全身の熱が引いた。腰の動きも、止まる。
しかしそんなラチカの体はつながったままベッドに倒された。一瞬事態が分からずまばたくも、すぐにギャムシアの腰が動き出す。
「っく、ぅあっ、あっ、っ」
声が漏れる。それは甘く、湿り気を帯びた嬌声だった。少しずつ、ギャムシアとの性交に体が馴染んでいっているのが分かる。
ギャムシアはラチカを強く抱きしめながら、何度も腰を突き動かす。ラチカの内部の形を変えてしまうかのように、その動きは激しい。
「ラチカ、俺の……俺の、ラチカっ……」
呻くように、彼は囁く。その声は独り言なのかどうかは分からないが、ラチカは喘ぐことしかできない。
駄目だ、頭が……とろけてしまう。まるで異次元に突き飛ばされてしまいそうな、快感。何も考えられなくなる。
「っ……出す!」
ギャムシアの宣言より早く、内部に広がる脈打ち。ああ、まただ。また、この感触。
ギャムシアの体が、倒れこんでくる。熱い。いつの間にか、自身の体は普段の通りに戻っていた。結局、何だったのだろう。
「……ラチカ」
「あ、は、はい」
彼の体が、ラチカを強く抱きしめた。何故だか急に恥ずかしくなり、ばたばたと身をよじろうとするも彼は離してくれない。彼の唇が、耳元に寄る。そしてそのまま。
「結婚するぞ、俺達」
その、囁き。顔が、ぼっと熱くなる。彼の体が、少しだけ離れた。その目は、ラチカをじっと見つめている。
その目にどこか気圧されるような気配を感じ、しかし、それでも。
「まだ、ちょっと待ってくれたりは」
「嫌だ」
「即答」
ギャムシアの手が、ラチカの両肩を掴む。その勢いが強すぎて、びくっとなる。
「何でだよ! 顔はいいし声もいいし医者だし国ひとつ持ってるし! お前に求婚してくる他の男達なんかより、余程ふさわしいだろ!?」
ああ、成程。こういう人間か。何となく、分かった。彼の地が。結局自信の塊なのか。しかも、当たっているだけに質が悪い。
彼の目をキッと見る。ああ、確かに。確かに、顔はいい。とんでもなく。周囲にこそこそ熱を浮かばせているシャイネとはまた違うが、どちらかといえばギャムシアの顔の方が断然ラチカにとっては好みというか惹かれる造形だ。声も、思い返せば確かに脳にじかに触れるくらいには威力のあるものを持っている。おまけにロドハルトは新興国ではあるが、確かに国とハッキリと呼称出来る。
しかし。
「……なんか色々とヤバい予感がする! さっきなんか私叩かれたし!」
言った。言ってやった。まあ、もしここで何か更に行為を重ねられようものなら……そうだ、兄に告げ口をすればいい。これもこれでどこか性格が悪い気がするが、そうも言っていられない。新興国の主であるギャムシアからすれば、大陸一の領土を持つコーマスは敵に回したくないはずだ。
ギャムシアはぐ、と口を噤んだ。しかし彼の手は肩から外れない。
「せっかく契ったのに」
「いや貴方が最初私の寝込みを襲ったわけで」
えぐられてしまいそうな程の力で、肩を握られている。しまった、煽り過ぎたか。
ギャムシアは溜息をつくと、手を外した。そして、改めてラチカを視る。
「……気持ちよくなかったか」
それを聞き、今度はラチカが口を噤む。いや、気持ちよかった。それも、とんでもなく。
ギャムシアはがっくりとうなだれながら、ぶつぶつと何かを呟き始めた。
「せっかく媚薬を使ったのに……量が足りなかったのか……クソが……」
「ちょっと待って今なんて」
ギャムシアは開き直ったかのように薄ら笑いながら、こちらを見た。そして自信ありげに口を開く。
「俺は医者かつ調剤学士だからな。催淫効果のある薬なんか」
「あれかぁああああああ!」
あの時手渡された飲み物。そうだ、そうに決まっている。よく考えればあの流れはすべて彼が事前に組んでいたものか。そう考えればすべて納得がいく。
というかそんなものが作れるのか。もはや魔法薬の域だとは思う。しかしもう今となっては熱気は消えているので、本気で害のあるものではなかったのだろう。恐らく、この状況に導くためだけに用意されたのだ。
「あっていうか事前堕胎薬!」
「いやいらないだろ」
「いるよ!? 無いと私も貴方も兄さんに殺される!」
そうだ、本当にこれだけは死守しなければ。
もしここで、以前ギャムシアが言っていた言い訳を使えばコーマスの真意はともかく彼と結婚せざるをえなくなる可能性が急上昇だ。それだけは、まだ避けたい。
ギャムシアは溜息を吐くと、脱ぎ捨てていたズボンのポケットから一つの包み紙を取り出した。幾重にも上部にくるまれたそれの中身は、粉末だった。
「これだ、用意しておいた。168時間前までのものなら殺精作用が働く。水で溶いて、中に入れるんだ」
「……本物?」
「無理に結婚して一生恨まれるくらいなら、今回くらいは遠慮するさ」
最終的には結果は同じだけどな、と彼は面白くなさそうに言った。一応、信じるしかないだろう。
ひとまず受け取り、彼を見る。……彼を、知れたのだろうか。いや、まだだ。
そっと、叩かれた頬をなでる。あの痛みは、確かに現実の中で弾けた。確か最初襲われた時も、彼はその暴力性をすでに示唆していた。本来は、完全に突っぱねるべきだろうに。
……なぜか、切れない。それは果たして、三度も契ってしまったせいなのか。
「というかそっちこそ、縁談とかものすごく来てそうなのに。いい歳でしょ」
「全部断ってる」
「何で」
「……好きでもない女娶るのも勿体ないから」
ああもう、またそういう事を。
ラチカは額を押さえる。ああ、熱い。
「なら、ちょっと待ってよ。私だって……好きな人と、結婚したいもの」
その言葉の真意はどうやら伝わってくれたらしい。ギャムシアは一度だけ、にやりと笑う。
「ああ。俺じゃないと駄目だって絶対言わせてやる」
まだきっと、恋じゃない。恋だとしても、まだ進めない。まだ、彼を知れていない。どれが、地なのか。
「……お嬢様」
唇から、血が滲んだ。痛い。
ギャムシアの歩む揺れが、もはや心地いい。額や首を汗が伝っていくのがこそばゆくて、身をよじる。その度に「暴れるな」と冷たい声で言われ、心の奥が詰まる。
ラチカの寝室に到着し、彼はまたあの時のように内鍵をかけた。ベッドにラチカをおろし、すぐさま覆いかぶさる。
「んん……」
熱い。彼の指も、再び絞められる喉も。何もかもが熱くて、体の中で暴発してしまいそうだ。
こめかみの血管が膨らんでいく感触。脳が、分厚い絵の具で塗りつぶされていくような圧迫感を感じている。それでもギャムシアは、止める事はなかった。ひたすら、ラチカの顔を見つめている。
……その瞳は、透き通った氷のような色なのに。それでも、こんなに、熱い。
「ラチカ」
ああ。初めて、呼ばれた。応えたいのに、声を発せない。
ぱくぱくと、口を動かす。その隙間に、彼の……とろけるような、熱い舌がねじ込まれる。
「あ、ふぅん……っ」
ほんの少しだけ、首元が緩んだ。その隙に深く息を吸う。そのせいで、彼の舌がより深くまで伸びてきた。喉の手前を舌で嘗め回され、未体験の快感にラチカの体が過剰に反応する。びくつくその肢体を、ギャムシアは己の体でしかとベッドに抑え込んだ。
重い。けれど。それでも、ラチカの手が、ギャムシアの背に絡んだ。自分へと、もっと引き寄せるように。
「ラチ、カ。離せ」
離れた唇が、熱い声を零す。手の力を緩めると、彼の体が浮いた。部屋は暗いはずなのに、窓から零れる花火の明かりがギャムシアを照らす。
……カーニバルの花火。ああ、視たかったはずなのに。それでも、今はギャムシアから目が離せない。
ギャムシアはラチカのドレスをはだけさせた。熱のせいで汗が谷間に溜まっている。あらわになったその谷間に、彼はそっと舌を滑らせた。
「あっ……やぁあ……」
熱の中の、ぬめり。まるで生き物のように、ラチカの胸の谷間をすべる。彼の舌は、まるでラチカの汗を掃除しているような動きだった。その発想にいきつき、恥ずかしさが一気に噴出する。
「ギャム、シア……」
「ん、そうだ」
彼の舌が、ラチカの乳輪に移動する。ああ、また。
そっとなぞられ、背筋が浮くような……快感。ぞくぞくっと粟立つような感触からは、逃げられなかった。ギャムシアに強く腰を掴まれ、ひたすらねぶられる。その度、ラチカの口から何度も甘い声がこぼれる。その度に、彼の唇が膨らみ始めた突起を吸った。それだけでも、……達してしまいそうだ。
「やだっ……こんな、のっ……」
漏れ出した、言葉。それは、無意識だったのに。
――パシッ、と空気を裂く音がラチカの頬を叩いた。さっきまでとは違う、痛みを伴った熱。右頬に、じんわりと広がる痛み。ギャムシアを見ると、彼の顔は……あの、冷たく粗暴な顔。まるで、さっきまでと別人のような。
「やだ、じゃねえだろ。俺の女のくせに」
……怖い。一瞬にして、熱が冷めていくのを感じる。それでも未だに、頬は熱いまま。ギャムシアはそんなラチカの頬に舌を這わせた。急な感触に、体全体が脈打つ。それが、拒否反応なのか快感なのかもはや分からない。
「俺の物になるんだよ、お前は」
そのまま、唇は耳元へと移動する。耳の軟骨部分を唇でくわえこまれ、「あんっ」と声が漏れてしまう。
駄目だ、これは。いけない。
味をしめたのか、ギャムシアの舌がラチカの耳を丁寧に嘗め回し始めた。熱のせいか自制心が効かず、声がだだ漏れになる。そんな時、秘所を……ギャムシアの、硬い指がなぞった。
「ふああっ!」
ひと際大きな声が出てしまう。そんなラチカの入り口を、ギャムシアは下着越しにひたすら指でなぞり続ける。そして、ついに。彼の指は、痛い程熱く膨らんだ箇所に辿り着いた。
「や、やぁっ! や、やだっ、そこはっ」
「何だ、何かあるのか」
彼の親指と人差し指が、膨らみを摘まもうと細かく動く。実際は下着の布がぴんと張られているせいで布をかすめるだけなのだが、それでもラチカの快感を煽るには十分だった。
「あっ……あ、あうぁっ……はぅう……っ」
熱でとろけきった口元から、涎が垂れる感触。それをギャムシアはすかさず舐めとった。味わうように、しつこく舌を口元に這わせる。その行為がどこかむず痒く、ラチカは身をぷるぷると震わせる。しかしギャムシアはそれをよがっていると勘違いしたのか、にやりと笑った。
彼はラチカを綺麗に仰向けさせると、下着をずらした。柔らかな陰毛が、愛液でしっとりと濡れている。それをかき分けながら、……肉に、触れた。
「~~~~っ!!」
声にならない、声。熱い。全身の毛穴から、一気に汗が噴き出す。しかしそれは蜜壺の方もだったらしく、一気にギャムシアの中指がラチカの中へ滑り込んだ。
「や、やだっ……やぁああっ!!」
ごりっ、とねじられる。それだけでも気が触れてしまいそうな衝撃だったが、そのまま彼は……充血しきった膨らみを、親指と人差し指でぎゅっと摘まんだ。
「ああぁああっ!?」
目の前が、ちかちかする。何故、ここまで。今朝や彼との初めての時は、ここまでじゃなかったのに。
ラチカの疑問など察してくれるわけもなく、ギャムシアは何度も膨らみを指同士擦り合わせるように摘まむ。その度に、世界の主線が細かくぶれる。愛液が何度もぬめりながら秘所全体を行きわたって、まるでこれでは……ただの、淫乱だ。
「ラチカ」
さっきとは打って変わって、熱くて甘い声。ああ、彼の地とは結局どちらなのだろう。
「来い」
腕を引かれる。ギャムシアを押し倒す形にさせられ、頭の奥がふらつく。しかし先程に比べれば、体調を揺らすような嫌な熱は減っていた。今自分を温めるのは、もっと違うものだ。
彼は手際よく、自身の下半身に纏っていたズボンと下着を脱いだ。憤った自身を、ラチカの蜜壺に宛がう。その感触だけで、また達しそうになる。……自身の体は、おかしくなっていた。
ギャムシアの手が、ラチカの腰を掴んだ。そのまま、一気に……自身を、ラチカの中に突き込んだ。
「やっ……」
脳が、びりびりする。ギャムシアもまた眉根を締め、ラチカの腰を支える手を震わせている。
本能が、腰を動かす。上下に、少しずつ。ギャムシアの肉棒を擦るように、ゆっくりと上下に。しかしその度に、口元をだらしなく緩めてしまうような快感が全身を撃つ。それでも、止まらない。
「あっ……ああ、あっ……すご、いっ……」
淫乱のような声。まさか自分から、そんな声が出るとは思わなかった。これでは、まるで兄の奥方のようだ。あの女性は、いつも兄に抱かれながらはしたない声を上げていた。結局、女の本能なのか。
ギャムシアもまた息を荒げ、額に汗を浮かべていた。その息は、荒い。
「ラチカっ……あ、やめろ、動くなっ」
……その声は。判別が、つかなかった。
「ご、ごめ、なさっ」
……また、叩かれる。そう思った瞬間。全身の熱が引いた。腰の動きも、止まる。
しかしそんなラチカの体はつながったままベッドに倒された。一瞬事態が分からずまばたくも、すぐにギャムシアの腰が動き出す。
「っく、ぅあっ、あっ、っ」
声が漏れる。それは甘く、湿り気を帯びた嬌声だった。少しずつ、ギャムシアとの性交に体が馴染んでいっているのが分かる。
ギャムシアはラチカを強く抱きしめながら、何度も腰を突き動かす。ラチカの内部の形を変えてしまうかのように、その動きは激しい。
「ラチカ、俺の……俺の、ラチカっ……」
呻くように、彼は囁く。その声は独り言なのかどうかは分からないが、ラチカは喘ぐことしかできない。
駄目だ、頭が……とろけてしまう。まるで異次元に突き飛ばされてしまいそうな、快感。何も考えられなくなる。
「っ……出す!」
ギャムシアの宣言より早く、内部に広がる脈打ち。ああ、まただ。また、この感触。
ギャムシアの体が、倒れこんでくる。熱い。いつの間にか、自身の体は普段の通りに戻っていた。結局、何だったのだろう。
「……ラチカ」
「あ、は、はい」
彼の体が、ラチカを強く抱きしめた。何故だか急に恥ずかしくなり、ばたばたと身をよじろうとするも彼は離してくれない。彼の唇が、耳元に寄る。そしてそのまま。
「結婚するぞ、俺達」
その、囁き。顔が、ぼっと熱くなる。彼の体が、少しだけ離れた。その目は、ラチカをじっと見つめている。
その目にどこか気圧されるような気配を感じ、しかし、それでも。
「まだ、ちょっと待ってくれたりは」
「嫌だ」
「即答」
ギャムシアの手が、ラチカの両肩を掴む。その勢いが強すぎて、びくっとなる。
「何でだよ! 顔はいいし声もいいし医者だし国ひとつ持ってるし! お前に求婚してくる他の男達なんかより、余程ふさわしいだろ!?」
ああ、成程。こういう人間か。何となく、分かった。彼の地が。結局自信の塊なのか。しかも、当たっているだけに質が悪い。
彼の目をキッと見る。ああ、確かに。確かに、顔はいい。とんでもなく。周囲にこそこそ熱を浮かばせているシャイネとはまた違うが、どちらかといえばギャムシアの顔の方が断然ラチカにとっては好みというか惹かれる造形だ。声も、思い返せば確かに脳にじかに触れるくらいには威力のあるものを持っている。おまけにロドハルトは新興国ではあるが、確かに国とハッキリと呼称出来る。
しかし。
「……なんか色々とヤバい予感がする! さっきなんか私叩かれたし!」
言った。言ってやった。まあ、もしここで何か更に行為を重ねられようものなら……そうだ、兄に告げ口をすればいい。これもこれでどこか性格が悪い気がするが、そうも言っていられない。新興国の主であるギャムシアからすれば、大陸一の領土を持つコーマスは敵に回したくないはずだ。
ギャムシアはぐ、と口を噤んだ。しかし彼の手は肩から外れない。
「せっかく契ったのに」
「いや貴方が最初私の寝込みを襲ったわけで」
えぐられてしまいそうな程の力で、肩を握られている。しまった、煽り過ぎたか。
ギャムシアは溜息をつくと、手を外した。そして、改めてラチカを視る。
「……気持ちよくなかったか」
それを聞き、今度はラチカが口を噤む。いや、気持ちよかった。それも、とんでもなく。
ギャムシアはがっくりとうなだれながら、ぶつぶつと何かを呟き始めた。
「せっかく媚薬を使ったのに……量が足りなかったのか……クソが……」
「ちょっと待って今なんて」
ギャムシアは開き直ったかのように薄ら笑いながら、こちらを見た。そして自信ありげに口を開く。
「俺は医者かつ調剤学士だからな。催淫効果のある薬なんか」
「あれかぁああああああ!」
あの時手渡された飲み物。そうだ、そうに決まっている。よく考えればあの流れはすべて彼が事前に組んでいたものか。そう考えればすべて納得がいく。
というかそんなものが作れるのか。もはや魔法薬の域だとは思う。しかしもう今となっては熱気は消えているので、本気で害のあるものではなかったのだろう。恐らく、この状況に導くためだけに用意されたのだ。
「あっていうか事前堕胎薬!」
「いやいらないだろ」
「いるよ!? 無いと私も貴方も兄さんに殺される!」
そうだ、本当にこれだけは死守しなければ。
もしここで、以前ギャムシアが言っていた言い訳を使えばコーマスの真意はともかく彼と結婚せざるをえなくなる可能性が急上昇だ。それだけは、まだ避けたい。
ギャムシアは溜息を吐くと、脱ぎ捨てていたズボンのポケットから一つの包み紙を取り出した。幾重にも上部にくるまれたそれの中身は、粉末だった。
「これだ、用意しておいた。168時間前までのものなら殺精作用が働く。水で溶いて、中に入れるんだ」
「……本物?」
「無理に結婚して一生恨まれるくらいなら、今回くらいは遠慮するさ」
最終的には結果は同じだけどな、と彼は面白くなさそうに言った。一応、信じるしかないだろう。
ひとまず受け取り、彼を見る。……彼を、知れたのだろうか。いや、まだだ。
そっと、叩かれた頬をなでる。あの痛みは、確かに現実の中で弾けた。確か最初襲われた時も、彼はその暴力性をすでに示唆していた。本来は、完全に突っぱねるべきだろうに。
……なぜか、切れない。それは果たして、三度も契ってしまったせいなのか。
「というかそっちこそ、縁談とかものすごく来てそうなのに。いい歳でしょ」
「全部断ってる」
「何で」
「……好きでもない女娶るのも勿体ないから」
ああもう、またそういう事を。
ラチカは額を押さえる。ああ、熱い。
「なら、ちょっと待ってよ。私だって……好きな人と、結婚したいもの」
その言葉の真意はどうやら伝わってくれたらしい。ギャムシアは一度だけ、にやりと笑う。
「ああ。俺じゃないと駄目だって絶対言わせてやる」
まだきっと、恋じゃない。恋だとしても、まだ進めない。まだ、彼を知れていない。どれが、地なのか。
「……お嬢様」
唇から、血が滲んだ。痛い。
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