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1巻
1-1
しおりを挟むプロローグ
「私」は誰――?
体中に激痛が走り、私はその痛みに小さく呻き声をあげた。
朦朧とする意識をかき集め、なんとか目を開けたものの、視界がぼやけてよく見えない。
ここ、どこだろう……
自分のいる場所を確かめようと目をこらすと、不意にズキッと頭が痛み意識が遠のきそうになる。
熱を持ってじくじくと疼くこめかみから、体中に「なにか」が巡り、暴れまわっているような感覚に苦鳴が洩れた。同時に体が凄く熱い。
苦しいっ、誰か助けて――
暗闇の中から光へ戻ろうともがいた私は、誰も掴んでくれるはずがないと分かっているのに、救いを求めて手を伸ばす。
すると、私の手を「誰か」がぎゅっと握りしめた。
誰か……いるの?
「――っ‼」
その「誰か」が必死に叫ぶ声が聞こえる。
助けなんて来ないと思っていたのに、その手、その声からは、なにがなんでも私を救おうとする意思を感じた。
必死になって私を繋ぎとめようとする叫びに、「この人なら信じられる」という思いが湧きあがる。私はその力強い手にすがりついた。
手の主が、またなにかを叫んでいる。
「――だ、――から‼」
なに? なにを言っているの……?
荒い息を吐きながら、どうにか意識を集中し、その声に耳を傾けた。
「――しっかりしろ! 大丈夫だ、私がお前を助けるから!」
「誰か」の声がはっきりと耳に届くと同時に、私の手から「誰か」の手へ「なにか」が流れだしていく。
すると、だんだん体が楽になり、徐々に視界が鮮明になっていった。
視線だけを動かし、私を見つめる「誰か」のぼんやりとした輪郭を確かめる。
……小さな、男の子? 変だな。なんだか見覚えがあるような、ないような……
間違いなく初めて会うのに、おぼろげにしか見えない「誰か」に何故か既視感を覚える。
不思議に思って見つめていたからか、彼がほっとした様子で微笑んだ。
「よかった……ユフィリア」
ユフィリア? 誰の名前……?
その名前にも聞き覚えがある。どこで聞いたのか必死に思い出そうとしていると、重要なことに気づいた。
そういえば、私の名前ってなんだっけ――
未だに疼くこめかみに眉をひそめながら必死に考える。そんな私の額に男の子が手をあて囁いた。
「無理に考えようとするな。今はとにかく、ゆっくりと休め」
彼の手からひんやりとした気が伝わってきて気持ちいい。
なにより、私を労るその声が耳に心地よくて、私は訪れた眠気に抗うことなく、ゆっくりと意識を沈めていった。
第一章 前世を思い出しました
――憎々しげに私を見下ろす男がいる。
その鋭い視線に恐怖を感じた。
「お前みたいな疫病神、とっととでていけ!」
散々に暴力を振るわれ、そんな捨て台詞とともに私は家を放りだされた。
ずきずきと痛む体を引き摺りながら、あてもなく町を歩く。
今日はいつになく機嫌が悪かったな……
まあ、あの人たちが私の前で機嫌がよかったことなんてないけど。
アスファルトの道路、高層ビルや電線、街灯、自転車に自動車。すべてが灰色に映る風景を歩く。
志岐森美琴――それが私の名前だ。
私が生まれた家は、代々続く地元の旧家で裕福だった。
でも、それを誇れたことなど一度もない。むしろ、生まれてこなければよかったとさえ思う。
何故かというと、たぶん間違いなく、私は誰からも祝福されることのない存在だからだ。
父親には、『お前のような疫病神が私の娘を名乗るな』と顔を合わせるたびに言われ、暴力を振るわれた。
こういう時、普通は母親が庇ってくれるものなのかもしれないけど、私の母はそうじゃなかった。
『なんで女なのよ? 私はあの人似の息子が欲しかったのに。そうすればあんな女……!』なんて言葉と共に父と一緒になって暴力を振るってくる。
母がどうしてこんなことを口にするのかというと、彼女は父の愛人だからである。
母は見目がいいので、元々はモデル活動をしており、たまたま仕事先で父に見初められたらしい。
物語なんかだと、「運命的な出会い」とか言われる場面だっただろう――父が既婚者でなかったならば。
父は自分の妻が二人目の子を身ごもっている時に母と関係を持った。そのため、母は正妻から目の敵にされている。
ちなみに、正妻の子供は二人とも女の子だった。
母からすれば、この時跡継ぎである男の子を産めていれば、自分が正妻に取って代われると考えたのだろう。そして、父の愛を独り占めできるとも。
ところが母の願いも虚しく、生まれた私は女だった。そして残酷なことに、そのあと母は大病を患い二度と子供は望めない体になってしまったのだ。
そこに追い討ちをかけるように、正妻が三人目を身ごもる。生まれたのは、父にとっても正妻にとっても待望の跡継ぎ――長男だった。
母は用済みもいいところだ。むしろ、ほんの遊びのつもりが本気になられた父にとっては、厄介者以外の何者でもない。ましてや、そんな女との子供に愛情を持てるはずがなかった。
腹違いの姉二人も私の存在が気にくわなかったらしい。彼女たちは、私が視界に入るだけで嫌悪の眼差しを向け、暴力を振るう。弟だけは年が離れていたのもあって、遠巻きにするだけだったが。
そんな環境なのだから、私に対する使用人の目だってもちろん冷たい。
なにせ、主人とその子供たちが率先して嫌がらせをしているのだ。
ストレス発散とばかりに、食事を抜かれるのは当たり前、時にはわざと失敗した料理をだされる。
自分たちがサボった仕事を押しつけてくるのなんて日常茶飯事だった。
近所の人も「あの子供を庇うと不幸になる」とでも思っているのか、私に助けの手を差し伸べてくれることはない。
いつもお腹を空かせガリガリで、ほつれだらけの服を着ていた私は、学校でもイジメの対象だ。
水をかけられたり、トイレに閉じ込められたり、教科書を破かれたり、机に落書きされたり。子供が考えつくイジメはあらかた経験した。
教師に相談しても、『だらしのない格好をしているから目をつけられるんだ』と相手にもしてもらえない。
だから、私は親を含め周囲になにも期待していなかった。できなくなった、が正しいかもしれないけど。
そんなある日のこと。
中学校から帰宅すると、殊更、機嫌が悪かった父と正妻に言いがかりをつけられた。いつも以上に痛めつけられ、家の敷地から追いだされたのだ。
仕方がないので、彼らが寝静まった頃にでも戻ろうと薄暗くなり始めた街をあてもなくさまよい、時間を潰す。
すれ違う人たちから向けられる白い目を無視して私は歩き続けた。
そうして交差点に着く。信号が赤になり、私はぼんやりと立ち止まって青に変わるのを待っていた。
すると、突然後ろで誰かが叫ぶ。
「危ない、美琴!」
なんだか聞き覚えのある声だなと思ったのと同時に、大型トラックが猛スピードで自分に迫っていることに気づく。
「っ!!」
避けられない――
トラックのクラクションが鳴り響いた次の瞬間、体に強い衝撃を感じ、私の意識はそこで途切れた。
◇ ◆ ◇
――瞼越しに感じる眩しい光に、私は目を開いた。
その刺激に思わず顔をしかめながら、ゆっくりと体を起こす。なんだかこめかみが痛い。
あれ? 私、トラックにひかれたんじゃ……
死んだと思ったけど、どうやらしぶとく生き長らえてしまったようだ。
いっそ死んでしまえたら楽だったのにと思い、私はふっと自嘲的に笑う。
そういえば、トラックに突っ込まれる直前、誰かが私を呼んでいたような気がしたけど、きっと気のせいだよね。
だってその声、いつもいじわるをしてきた二歳上の姉に似てたし。
そこまで考えたところで、私はふと頭をあげた。
すると、見たこともない豪華な部屋が目に映る。
ここは……?
私は呆然としながら、ぐるりと室内を見回した。まるで、以前本で見たヨーロッパ貴族のお屋敷みたいだ。
夢でも見ているのだろうかと思いながら、ふと部屋の窓に目を向けた。
「えっ!」
そこには、自分とは似ても似つかない小さくて儚げな女の子が映っている。
頭に包帯が巻かれた痛々しい姿ではあるが、腰まである水色がかった銀髪と、薄いオレンジ色のぱっちりとした瞳が印象的な美少女だ。年は四、五歳くらいだろうか。
だ、誰?
驚きのあまり口元に手を当てると、窓に映る女の子も同様の仕草をした。
こ、これ、もしかして私なの!?
驚きとともにじいっと眺めると、またしても女の子が同じ行動をする。その姿はたしかに私ではないのに、どういうわけか見覚えがあった。
なんだかこの子、以前プレイした乙女ゲームの登場人物に似ているような。
そこまで考えた私は、ある一つの可能性に辿り着いた。
もしかして、これって私が好きなラノベやゲームのテンプレ――「異世界転生」というやつなんじゃ……
トラックにひかれて意識を失ったあと、こめかみが痛くて一度意識が戻ったことも思い出す。
その時、小さな男の子からユフィリアって呼ばれたような……
ユフィリアって名前、聞いたことがある。
どこでその名前を聞いたのか必死に記憶を呼び起こそうとするけれど、頭の中に霞がかかり上手く思い出せない。
その代わり、何故か自分が今いる世界の基本的な知識が次々と頭の中に浮かんだのだった。
この世界は「美琴」が生きてきた世界における「科学」なんてものはなくて、もちろんビルや車も存在しない。文明レベルはそんなに高くないけれど、「魔法」や精霊や妖精といった「人を超越した存在」がいる。
精霊や妖精から、力を借りることで様々な現象を起こせる人もいて、そんな彼らが持つ「精霊術」は特にレアな能力だ。
また、王家や貴族など、特権階級の中には魔力を操る人間が多い。稀に平民の中にも魔力を持つ者が生まれる。
しかし国の保護が行き届かない辺境などでは、その能力を制御できず暴走させることがほとんどで、子供は忌み児とされ、教会に押しつけられるか、適当な場所に捨てられた。
人々の生活を脅かす魔物や魔族も存在し、それらのものから街や市民を護り、治安を維持する組織――騎士団なんかもある。
そんな、この世界の基礎的な情報が頭に浮かんだ。けれど、肝心な自分のことに関してはほとんど分からない。
私は必死で自分について思い出そうとして、背筋が冷たくなった。
なんだろう、この感じ……。何故かは知らないけど、思い出すのが怖い――
美琴のことはいくらでも思い出せるのだから、彼女が私の前世なのだろう。けれど、今世の自分が誰なのか、どうして傷だらけなのかがはっきり分からない。
思い出そうとすればするほど、恐怖に身がすくむ。まるで、そこから先を思い出すのを心が拒んでいるようだ。
「もう起きても大丈夫なのか?」
他にもなにか思い出せないか頭を捻っていると、扉が開く音と共に、意識を失う前に聞こえた男の子の声が部屋に響いた。
声のした方を見ると、窓に映る私の姿とそう変わらない年頃の男の子が、腕に抱えていた書類の束を近くのテーブルに置き、こちらにやって来るところだった。
彼がノックをしなかったのは、私が起きているとは思わなかったからだろう。
男の子はベッドの側までやってくると、心配そうな表情で私の額に手を伸ばした。
しかしその瞬間、前世で暴力を振るわれていた記憶がよみがえり、びくっと体が震えてしまう。
「っ!」
「あ……すまない。不躾だったな。熱がないか確認したかっただけなんだ。先ほど確認した時はまだ微熱があったからな」
私の態度に気を悪くすることはなく、その子は申し訳なさげに突然手を伸ばしてきた理由を話した。
「い、いえ……」
さっき、ということは、彼は眠っている私の容態を診にきてくれたのだろうか。
もしかして、私の目が覚めるまでずっと側にいてくれたのかな……
私は恐々と首を横に振り、そっと彼に目を向けた。
輝くような金色の髪と明るいオレンジ色の瞳をしたきれいな男の子だ。肩にかかるくらいのやわらかな髪を、うなじあたりでまとめ、リボンで結っている。
――あれ? なんだかこの子、見覚えがある? 今世のことはほとんど思い出せないのだから、前世で会ったことがあるのかな……
「――い、おい、大丈夫か?」
「――っ! あ、ごめんなさい」
自分を凝視したまま反応しなくなった私の顔を彼は覗き込む。私ははっと我に返った。
「いや、あれだけのことをされたんだ。不安定になってしまうのも仕方がないだろう」
「え?」
あれだけのことって、なんの話?
「ああ、心配するな。我がストランディスタ王家で保護すると決めた以上、お前の父親がどれだけ騒ごうが、ハルディオン公爵家へ帰すことはしない」
彼の言葉を聞いて、私はピシリと体を硬直させた。
待って。
……今、ストランディスタ王家って言った?
その名前、聞き覚えがあるよ!? 主に前世で!
まさか目の前の男の子――いやいや、目の前の方は……
そこまで考えて、私はゆっくりと首を横に振った。
いや、この男の子のことはとりあえず置いておこう。想像どおりだったらいろいろな意味で怖すぎる。
というか、私の父親の家名がハルディオンで、爵位は公爵!? ユフィリアって名前と「ハルディオン」という家名といえば、やっぱり……
私は心の中でぶんぶんと手を振った。
いやいや、まさか……
認めたくはない現実に混乱している私をよそに、目の前の男の子は話し続ける。
「そういえば、まだ名乗っていなかったな。私の名はエルフィン。エルフィン・カイセル・ストランディスタだ」
彼の名前を聞いて、私は凍りついた。
「どうした? やっぱりまだ気分が悪いか?」
気遣わしげに話しかけてくる彼の声に返答する余裕など、私にはない。
エルフィン・カイセル・ストランディスタといえば、乙女ゲーム「スピリチュアル・シンフォニー ~宝珠の神子は真実の愛を知る~」にでてくる攻略対象の王太子殿下の名前だ。
そして悪行の限りを尽くして断罪される悪役令嬢の名前が「ユフィリア・ラピス・ハルディオン」。
ってことは、転生は転生でも乙女ゲームの世界に転生しちゃったってこと!?
まさかの自分の状況に、私はまた気を失いたくなったのだった。
「――大丈夫か? すまない、もう少し配慮した名乗り方をすべきだったな」
彼――エルフィン王太子殿下は、彼の名前を聞いて私が固まったのを、自分が王族だったせいだと思ったようだ。気遣わしげな表情になる。
エルフィン・カイセル・ストランディスタは、私が転生したらしい乙女ゲームの世界――フェアリティアにある大国、ストランディスタ王国の王位継承権第一位の王子だ。
そしてその乙女ゲームの攻略対象者の一人でもある。
「ああ、もしかして緊張しているのか? その必要はないぞ」
エルフィン殿下はそう口にすると、心配そうに私を見つめてくる。
その言葉に、私は気がつく。「知らなかったんです」ではすまされない態度を王太子殿下へ取っていることに。
「前世の記憶にも、転生先がお気に入りの乙女ゲームの悪役令嬢になった現実にも、本当にビックリしたとはいえ、王族から声をかけられて返事もしないなんて。不敬も甚だしいよ……! 曲がりなりにもユフィリアは公爵令嬢なのに、それに相応しい態度とは言えないっ!」
思いあまってばっと自分の顔を両手で覆う。
「そこまで悲壮な顔をしなくても、幼い子供に厳罰など与えないぞ?」
軽くパニック状態の私は、殿下と会話していることになんの疑問も抱かず、思いを駄々漏れにし続ける。
「外見は今の私と同じくらいに見えるんだけど……大人対応すぎない? 殿下」
「つい先日五歳になったばかりなんだが………そう言われると面映ゆいものがあるな」
そう言って殿下はうっすらと染めた頬を、指先で軽く掻いた。
「ということは、私も五歳ってこと? たしかゲームではユフィリアと殿下って同い歳だったもんね。って、いやいや、気にするのはそこじゃないよ! 照れている場合ではないです、殿下! むしろ、末恐ろしいと周囲に警戒されるレベルですよ……!」
私はぐいっと顔をあげて、前のめりになりながら主張した。
「そうか?」
「そうです! 『出る杭は打たれる』と言いますし、幼い頃から優秀すぎても不幸しかありません」
「そう、だな」
私の勢いに押された殿下は、少し後ずさりをして頷く。
「そうでなくても、ゲーム内で殿下は稀少な光属性の魔力を持つ平民育ちのヒロインと仲よくなり、それを妬んだ婚約者のユフィリアが、ヒロインに嫌がらせをしまくるのです。そのせいで、エルフィン殿下も被害をこうむり、学院でもご苦労されるのに……!」
「ふむ、話が長くなりそうだな。先に喉を潤した方がいいぞ、ユフィリア」
殿下はそう言って、早口で呟き続ける私に紅茶の入ったティーカップを差しだした。
「あ。ありがとうございます、殿下」
それを受け取って口に含み、ほっと一息ついたところで、私はぴしり、と固まった。
今、「緩んだ顔のまま固まる」という、奇妙な面相をしている自覚はある。
あれ? 私、殿下に名乗ったかな。ううん、名乗ってないよね?
よくよく考えると殿下から名前を呼ばれたのって、今が初めてじゃない。記憶違いじゃなければ、意識が朦朧としていた時も呼ばれていた。
私が自分の名前を認識したのって、その時殿下に呼ばれたからだし。
彼と会話を交わした記憶なんてないから、殿下があらかじめ知っていたとしか考えられない。
何故、彼は私の名前を知っているのだろう。
「あの……私、殿下にお名前をお教えした記憶がないのですが……」
「ああ、それは、傷ついたお前を私のもとに連れてきた奴が、言い置いていったんだ。『この子はハルディオン公爵家のユフィリア。お願い、彼女を助けて。あなたにしか頼めない』とな」
「私を? 誰が?」
頭の中に大量の疑問符を浮かべる私に、今度は殿下がぐいっと距離を縮める。
「まあ、その話は追々するとして。先にお前が言っていたことで、聞かなければならないことがあるんだ」
「え? 私、なにか話していました?」
「気がついていなかったのか? お前、私が名乗ったあたりからブツブツと小声でなにやら呟いていたぞ?」
「っ!」
殿下の言葉に、私は大きく目を見開き頭を抱えた。
まさかうっかり声にだしていたとは。
いつも一人ぼっちだったから、ゲームや本の感想を独りで呟いていたけれど、今世でもその癖がでてしまうなんて思いもしなかった!
……と、いうことは。
私は、内心だらだらと冷や汗を掻いた。
そして油の切れた機械のように、ぎぎぎ、とぎこちない動作で顔をあげる。
「できれば詳しく聞かせてもらいたいな? お前が今言っていた『げーむ』だとか、『悪役令嬢』とかの部分を特に、な?」
顔は微笑んでいるはずなのに、まったく笑っていない殿下の目が「素直にキリキリ吐け」と無言の圧力を放っている。
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