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第五章 これまでの決着をつけます
決戦前夜
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魔王・ケルニオからの果たし状を受け取った後。明日に備えるため、今日は解散、となりました。
ミラにマクスウェルへやフォルティガへの連絡をしてもらい、何があってもいいように対策をしておく、との返信が返ってきました。
当然のことながら、マクスウェルたちもシャウドの様子は不審に思ったみたい。
不思議と嘘を言っているようには感じなかったのも、私たちと同じだったようだけど。
私はというと、エルフィンの勝利を疑いはしていないものの、やっぱり不安な気持ちはあるもので。「添い寝くらいはいいですか?」と聞いてみた。というか、おねだりしてみた。それを聞いたエルフィンが壁に手をついて、何やら堪えるような仕草をしていたのが気にはなったけど。
この時の私は、どうしようもなく鈍かった。彼が自身の中で燻る熱を何とか抑えていたことを気づけないくらいに。
「───っ!!(耐えろ、私の理性──!!)」
「???あの、エルフィン………?」
「───は……」
「エルフィン!?どうしました、まさか体調が良くないのですか!?」
「ぁ………──!いや、お前から“添い寝”を言われるとは思っていなかったから………その……、抑えるのに、苦労しそうだな、と」
「あ、もしかして、魔力喰いが発動しないように抑えていたのですか?そうと早く言ってくれたら──」
「………いや、まあ……違うんだが…………もう今日はその理由でいくか──」
「え?」
というやり取りのあと。
添い寝の許可が下りたので、明日はそれこそ命懸けなのだから英気を養ってもらうためと、魔力補充をしたのだけど。その密度が濃かった。お陰で、腰が抜けて力が入らなかった──「……っは………、………!すまない………!喰いすぎた──」「ぅ………だい、じょうぶ……あなたの、ため……なら………私は………」「~~~!!頼むから、これ以上煽らないでくれ………」「ぇ………?」という会話もあったのは余談──ので、エルフィンに姫抱きで運ばれた。
ベッドに横たえられ、その側にエルフィンが沈み込む。
「………エルフィン」
「……なんだ、ユフィ」
「貴方は必ず勝つとは言いましたが……決して無理はしないで下さいね」
「無茶なことはするつもりはない。ただ、多少の無理は押し通さざるを得ないだろうな」
「………」
「お前が心配してくれるのは分かる。だがこれは、私と魔王──ケルニオの互いの信念をかけた決闘だ」
「……エルフィン………手紙の内容はなんだったんですか?」
「だから、一対一の真剣勝負だと──」
「そんな一言で済むのなら、わざわざ手紙にする必要はないですよね?シャウドが口頭で言えばいい話です。そうしなかったのは、彼らは貴方だけに気づかせたい意図があったのではないですか?」
「──さすがに誤魔化せなかったか……」
みんなも疑問には思っていたとは思う。あの場の空気では、聞くに聞けなかっただけで。
「私への決闘の申し込みには違いなかったんだ。ただ、勝敗の有無に関わらず、今後ラピスフィアを狙うことはしない、この国への侵攻もしない、ましてや決闘で私の命を奪う気もない、といったことが書かれていたんだ」
「!?ど……どういうことです───?」
あれだけの犠牲者や混乱を招いてまで私を付け狙っていた魔王が、勝ち負け以前に、私を狙うのを諦めると───?それに、エルフィンを殺す気もない?
「勿論、初めは罠や謀略の類いか、と疑ったんだが………シャウドのあの様子をみる限り、嘘偽りを述べた、ということはないように思えた」
「相手を弄んで絶望の淵に落とすことを喜んでいるのがシャウドという精霊でしたからね。でも──」
「ああ。昼間のシャウドは、何やら憑き物が落ちたような様子だった。まるで、もう目的は達成できたとでも言えるような」
でも、私はエルフィンの浄化とリュミィさんの(規格外の)力のお陰で何ともないし、国内を見ても魔物の異常繁殖以外の混乱は無かった。
「考えれば考えるほど謎が増えていくのでな………とにかく明日奴に勝てば分かるだろうと思ったから、みんなにはあえて言わなかったんだ」
「そうだったんですか。すみません、私──」
「ユフィが気に病むことはない。あちらの真意を計りかねている、というのもあるが………だからと言って、負けるつもりはないからな。お前は私の勝利を信じていてくれ。みんなが信じてくれる──それだけでも、私を支える力になる」
「はい………!」
確かに、ケルニオが何を意図してそんなことをエルフィンだけに伝えたのかは分からない。けれど、何が待ち受けているとしても、私はエルフィンを信じる。彼が困難を打ち破り、私を守って来てくれていたように、私の想いで彼を守れるのなら───
ミラにマクスウェルへやフォルティガへの連絡をしてもらい、何があってもいいように対策をしておく、との返信が返ってきました。
当然のことながら、マクスウェルたちもシャウドの様子は不審に思ったみたい。
不思議と嘘を言っているようには感じなかったのも、私たちと同じだったようだけど。
私はというと、エルフィンの勝利を疑いはしていないものの、やっぱり不安な気持ちはあるもので。「添い寝くらいはいいですか?」と聞いてみた。というか、おねだりしてみた。それを聞いたエルフィンが壁に手をついて、何やら堪えるような仕草をしていたのが気にはなったけど。
この時の私は、どうしようもなく鈍かった。彼が自身の中で燻る熱を何とか抑えていたことを気づけないくらいに。
「───っ!!(耐えろ、私の理性──!!)」
「???あの、エルフィン………?」
「───は……」
「エルフィン!?どうしました、まさか体調が良くないのですか!?」
「ぁ………──!いや、お前から“添い寝”を言われるとは思っていなかったから………その……、抑えるのに、苦労しそうだな、と」
「あ、もしかして、魔力喰いが発動しないように抑えていたのですか?そうと早く言ってくれたら──」
「………いや、まあ……違うんだが…………もう今日はその理由でいくか──」
「え?」
というやり取りのあと。
添い寝の許可が下りたので、明日はそれこそ命懸けなのだから英気を養ってもらうためと、魔力補充をしたのだけど。その密度が濃かった。お陰で、腰が抜けて力が入らなかった──「……っは………、………!すまない………!喰いすぎた──」「ぅ………だい、じょうぶ……あなたの、ため……なら………私は………」「~~~!!頼むから、これ以上煽らないでくれ………」「ぇ………?」という会話もあったのは余談──ので、エルフィンに姫抱きで運ばれた。
ベッドに横たえられ、その側にエルフィンが沈み込む。
「………エルフィン」
「……なんだ、ユフィ」
「貴方は必ず勝つとは言いましたが……決して無理はしないで下さいね」
「無茶なことはするつもりはない。ただ、多少の無理は押し通さざるを得ないだろうな」
「………」
「お前が心配してくれるのは分かる。だがこれは、私と魔王──ケルニオの互いの信念をかけた決闘だ」
「……エルフィン………手紙の内容はなんだったんですか?」
「だから、一対一の真剣勝負だと──」
「そんな一言で済むのなら、わざわざ手紙にする必要はないですよね?シャウドが口頭で言えばいい話です。そうしなかったのは、彼らは貴方だけに気づかせたい意図があったのではないですか?」
「──さすがに誤魔化せなかったか……」
みんなも疑問には思っていたとは思う。あの場の空気では、聞くに聞けなかっただけで。
「私への決闘の申し込みには違いなかったんだ。ただ、勝敗の有無に関わらず、今後ラピスフィアを狙うことはしない、この国への侵攻もしない、ましてや決闘で私の命を奪う気もない、といったことが書かれていたんだ」
「!?ど……どういうことです───?」
あれだけの犠牲者や混乱を招いてまで私を付け狙っていた魔王が、勝ち負け以前に、私を狙うのを諦めると───?それに、エルフィンを殺す気もない?
「勿論、初めは罠や謀略の類いか、と疑ったんだが………シャウドのあの様子をみる限り、嘘偽りを述べた、ということはないように思えた」
「相手を弄んで絶望の淵に落とすことを喜んでいるのがシャウドという精霊でしたからね。でも──」
「ああ。昼間のシャウドは、何やら憑き物が落ちたような様子だった。まるで、もう目的は達成できたとでも言えるような」
でも、私はエルフィンの浄化とリュミィさんの(規格外の)力のお陰で何ともないし、国内を見ても魔物の異常繁殖以外の混乱は無かった。
「考えれば考えるほど謎が増えていくのでな………とにかく明日奴に勝てば分かるだろうと思ったから、みんなにはあえて言わなかったんだ」
「そうだったんですか。すみません、私──」
「ユフィが気に病むことはない。あちらの真意を計りかねている、というのもあるが………だからと言って、負けるつもりはないからな。お前は私の勝利を信じていてくれ。みんなが信じてくれる──それだけでも、私を支える力になる」
「はい………!」
確かに、ケルニオが何を意図してそんなことをエルフィンだけに伝えたのかは分からない。けれど、何が待ち受けているとしても、私はエルフィンを信じる。彼が困難を打ち破り、私を守って来てくれていたように、私の想いで彼を守れるのなら───
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