51 / 70
第五章 これまでの決着をつけます
学院際・三日目 その三・緊急事態です!~???視点~
しおりを挟む
「ふぅ。こんなものでしょうか」
走り去るウィアナ・キューレにトドメとばかりに追い討ちをかけて、姿が見えなくなるまで注意深く視ていました。
あれがヒロイン?冗談じゃないです。
この国の方にあの情報を知っている人はいなさそうですね。ユフィリア様本人に然り気無く聞いてみましたが、私の忠告の裏の意味までは分からなかったようでしたし。ゲームの知識を悪用はしてないみたいで、ほっとしました。──ウィアナ・キューレは違うようですが。彼女も間違いなく転生者でしょうしね。それもかなり質の悪い部類の。何をやっても“ご都合主義”で帳尻が合うとか思ってますよね、あれ。
この国を舞台に物語が進行していたゲーム、『スピリチュアル・シンフォニー~宝珠の神子は真実の愛を知る~』略して『スピ愛』──前世でこのゲームにドはまりしていた知り合いがそう呼んでいた──は、ユーザーから賛否両論な意見の出ていた作品でした。
ユフィリアの末路は自業自得の結果だ、と言う人と、ユフィリアの結末が不幸過ぎる、と言う人。
まあ、全てのルートにおいて悪役として必ず死ぬのですから─幽閉の結末もあったけど、あれ間違いなく永くは生きられなかったと断言できる──、いくら我儘放題の挙げ句に親共々裁かれるほどの罪を犯したとはいえ、死なせ過ぎじゃ?救済措置もないのか!という意見が大多数だったようです。
ちなみにゲームの類いは知り合いに薦められたからやっていただけで、そこまでハマっていた訳ではありませんでしたね、私は。
真相解明ルートにおいて、そうなるまで──ユフィリアが我儘放題な歪んだ性格になった理由です──の経緯が明らかになったのを知った後の知り合いが、追放エンドくらい作れよ!と、あれこれifストーリーを自作しては熱弁していましたね。こっちがドン引する勢いで。
私自身がこの世界に転生するとは思いもしませんでしたが、それならば、とユフィリア様を悪役にしないように暗躍するか、と決め、早二年。私が邪魔をしなくても攻略対象者の皆様が破滅フラグを片っ端から叩き潰してましたけどね。───そう私が思考の波に身を任せていた時に、脳天に衝撃が。
「痛いっ!」
「お・ま・え・は!あれほど大人しくしていろと言っただろうが!!」
誰が、とは聞かなくても分かります。やったのは我が主です。さらにこめかみに両拳をあて、ぐりぐりされました。
「痛たたたたた!?主、酷い!」
「黙れ、馬鹿者!!」
そんなに怒ることないじゃないですか。あと主、痛覚を遮断してないんで、もうそろそろやめて欲しい。地味に痛いです、これ。
「(お前、オレたち──我々が留学生だということを忘れてないか!?)」
小声で怒鳴るという器用なことをしながら、主はぐりぐりをやめてくれました。対外的には“私”という一人称なのに、うっかり素の方でいいかけたのはスルーすべきですか?………指摘したらまた仕置きが始まりそうなので、ここはスルー一択ですね。
「(ですが、主。さすがにアレは看過できませんでしたよ。明らかにユフィリア様を嵌めようとしてたじゃないですか、あの電波)」
「(他にやりようがあっただろう!あの“クナイ”はお前が自作している特注品なのだから、類似品など在りはしないんだからな?確実に疑われるぞ、我が国が関わっているんじゃないか、と!この国の王太子殿下がこの場にいたらどう言い繕っても追求は逃れられないからな!?)」
我が国を含めた諸外国から完璧王太子と呼ばれているあの王子殿下ですか。この学院に来てからユフィリア様を遠目に見ていましたが、王太子殿下の視線がこちらに向いてくる時があったんですよね。あの時、一瞬背筋が凍ったのは気のせいだと思いたいです。
王太子殿下は、ユフィリア様を溺愛しているのが態度から滲み出ているので、あの電波──ウィアナ・キューレが何をしようとも揺らがないだろう、と確信してますけどね。
この一年、陰からこっそり見守ってきましたが、魔王が復活した辺りから、やや後手に回っている感がありますね。
本来なら、魔王はユフィリア様やハルディオン公爵家を唆してこの学院に侵攻してくるはずだったのですが………必ずしもゲーム通りにはならないとはいえ、ゲームとは真逆の立場ですよね、彼女たち。
言わずもがな、ユフィリア様とあの電波です。
「(とにかく!お前、これ以上目立つ行動は控えろ。留学先でトラブルを起こしたとあっては、兄上からなんて言われるか───)」
「(分かっています。これまで通りに、陰からこっそり見てます)」
「(ルティウスにもバレたら恐いことになりそうなんだが?)」
「(大丈夫ですよ、今のところ気がついた人なんていないので───?)」
あれ?ユフィリア様は?
私はさっきまで壇上にいたはずの彼女の姿を探して、きょろきょろと辺りを見回しました。
「どうした?」
「主、ユフィリア様がいらっしゃいません」
「ああ、優勝商品はウェディングドレスだっただろう?それを着て皆に披露するまでがこのコンテストの流れだろうが。お前、一応出場していたのだから、覚えておけよ」
「優勝する気がなかったもので………聞き流しちゃってたんですよね。大体、結婚の予定もないのにそんなもの……………ん?ウェディングドレスを着る………?─────!!」
「おい!?」
しまった!!主のお説教の間にユフィリア様、一人きりの状況になってた………!!
主をその場に置いて、私は出せる限りのスピードで、出場者の待機ブースへ走りました。
近くの生徒を捕まえて、ユフィリア様が入った部屋を聞き出し、ノックも忘れて勢いよく扉を開け放つ。そこには─────
「────ッ!やられた……………!!」
そこには誰もいませんでした。いいえ、これでは言葉に語弊がありますね。正確には直前まで人がいた形跡がある───ユフィリア様は間違いなくここにいた。注意深く見れば、争ったような痕跡もありますしね………!
今日に限って、生徒会が出張らなければならないトラブルが起きたとかで、皆様、ユフィリア様のお側を離れていた───いや、離されていたと見るべきですね。
主にはこれ以上目立つ行動は控えろと言われたけど………そんなこと言っている場合ではないでしょう。要は、目立たずに接触すればいいのです。そういえば、ユフィリア様の双子のお兄様、会場にいらっしゃいましたね─────
急いでもと来た道を走っていると、曲がり角で人とぶつかりそうになったので、蹴飛ばしてあげました。
「ぷぎゃぁあああ!!」
というか、何でここにいるんですか、電波。もとい、ウィアナ・キューレ。
……………何か知ってそうですね、これ。一刻も早くシルディオ様と会わなければ。そう思って私はとりあえず、電波をぐるぐるに縛り上げて、気を付けて引き摺りながら走りました。
そうして会場に戻ってくると。
何故だか絶対零度の微笑みに晒され、固まる主を発見。その相手はこの国の王太子殿下、エルフィン様でした。あ、ルティウス様からは胸ぐら掴まれてますね、主。この場に主だった方々が勢揃いしてますし。
「……………王太子殿下、実は──「おい!私の心配は!?」なんですか、主。報告を先にさせてくださいよ」
そうでなくても緊急事態なんですから。
「───お前は?クルシェット殿下の連れか?」
先程からにこりともしない冷たい空気を纏ったまま、王太子殿下が私に尋ねてくる。あー………身分、完全にバレてますね、これ。
「主?」
「──私が言ったんじゃない。どうやらこの国にも、随分優秀な諜報員がいるようだな」
「ああ、やっぱりですか」
そうして、王太子殿下に向き直り、騎士としての礼をとる。
「事情があったとはいえ、貴方方を欺いた形となり、誠に申し訳ありませんでした。私はパルヴァンの第二王子、クルシェット殿下を主とし、護衛の任に着いています、リュミエル・フォーレリクスと申します」
「………リュミエル?隣国パルヴァン最強の騎士と言われている?」
私の名乗りに真っ先に反応したのは、シルディオ様でした。
「私はあくまで、クルシェット殿下専属の護衛騎士なだけです。最強など、過ぎた評価です」
「………リュミィ、というのは偽名か」
「いえ、どちらかといえば愛称ですね。そう呼ぶのはごく限られた方のみでしたが」
「報告というのを聞かせて貰おうか?………まぁ、言わずともある程度は察しているがな」
そうでしょうとも。最愛の婚約者が拐かされたとあっては、平静ではいられないだろうとは思っていたのですが。さすが、時期国王というか、冷静さは失っておられないようですね。
「もうお分かりかと思いますが、ユフィリア様が連れ去られました。犯人はこれが知っているはずです」
そう言いつつ、電波を王太子殿下たちの前に放りました。途端に、彼女に向けて殺気やら嫌悪感やらが向けられます。やはりというか、すっかり嫌われものですね?ウィアナ・キューレ。
さて、これからどうやって囚われのお姫様──ユフィリア様をお助けしましょうか。
エルフィン王太子殿下、頼みましたよ。緊急を要するとはいっても、私と主はあまり好き勝手には動けませんから。
走り去るウィアナ・キューレにトドメとばかりに追い討ちをかけて、姿が見えなくなるまで注意深く視ていました。
あれがヒロイン?冗談じゃないです。
この国の方にあの情報を知っている人はいなさそうですね。ユフィリア様本人に然り気無く聞いてみましたが、私の忠告の裏の意味までは分からなかったようでしたし。ゲームの知識を悪用はしてないみたいで、ほっとしました。──ウィアナ・キューレは違うようですが。彼女も間違いなく転生者でしょうしね。それもかなり質の悪い部類の。何をやっても“ご都合主義”で帳尻が合うとか思ってますよね、あれ。
この国を舞台に物語が進行していたゲーム、『スピリチュアル・シンフォニー~宝珠の神子は真実の愛を知る~』略して『スピ愛』──前世でこのゲームにドはまりしていた知り合いがそう呼んでいた──は、ユーザーから賛否両論な意見の出ていた作品でした。
ユフィリアの末路は自業自得の結果だ、と言う人と、ユフィリアの結末が不幸過ぎる、と言う人。
まあ、全てのルートにおいて悪役として必ず死ぬのですから─幽閉の結末もあったけど、あれ間違いなく永くは生きられなかったと断言できる──、いくら我儘放題の挙げ句に親共々裁かれるほどの罪を犯したとはいえ、死なせ過ぎじゃ?救済措置もないのか!という意見が大多数だったようです。
ちなみにゲームの類いは知り合いに薦められたからやっていただけで、そこまでハマっていた訳ではありませんでしたね、私は。
真相解明ルートにおいて、そうなるまで──ユフィリアが我儘放題な歪んだ性格になった理由です──の経緯が明らかになったのを知った後の知り合いが、追放エンドくらい作れよ!と、あれこれifストーリーを自作しては熱弁していましたね。こっちがドン引する勢いで。
私自身がこの世界に転生するとは思いもしませんでしたが、それならば、とユフィリア様を悪役にしないように暗躍するか、と決め、早二年。私が邪魔をしなくても攻略対象者の皆様が破滅フラグを片っ端から叩き潰してましたけどね。───そう私が思考の波に身を任せていた時に、脳天に衝撃が。
「痛いっ!」
「お・ま・え・は!あれほど大人しくしていろと言っただろうが!!」
誰が、とは聞かなくても分かります。やったのは我が主です。さらにこめかみに両拳をあて、ぐりぐりされました。
「痛たたたたた!?主、酷い!」
「黙れ、馬鹿者!!」
そんなに怒ることないじゃないですか。あと主、痛覚を遮断してないんで、もうそろそろやめて欲しい。地味に痛いです、これ。
「(お前、オレたち──我々が留学生だということを忘れてないか!?)」
小声で怒鳴るという器用なことをしながら、主はぐりぐりをやめてくれました。対外的には“私”という一人称なのに、うっかり素の方でいいかけたのはスルーすべきですか?………指摘したらまた仕置きが始まりそうなので、ここはスルー一択ですね。
「(ですが、主。さすがにアレは看過できませんでしたよ。明らかにユフィリア様を嵌めようとしてたじゃないですか、あの電波)」
「(他にやりようがあっただろう!あの“クナイ”はお前が自作している特注品なのだから、類似品など在りはしないんだからな?確実に疑われるぞ、我が国が関わっているんじゃないか、と!この国の王太子殿下がこの場にいたらどう言い繕っても追求は逃れられないからな!?)」
我が国を含めた諸外国から完璧王太子と呼ばれているあの王子殿下ですか。この学院に来てからユフィリア様を遠目に見ていましたが、王太子殿下の視線がこちらに向いてくる時があったんですよね。あの時、一瞬背筋が凍ったのは気のせいだと思いたいです。
王太子殿下は、ユフィリア様を溺愛しているのが態度から滲み出ているので、あの電波──ウィアナ・キューレが何をしようとも揺らがないだろう、と確信してますけどね。
この一年、陰からこっそり見守ってきましたが、魔王が復活した辺りから、やや後手に回っている感がありますね。
本来なら、魔王はユフィリア様やハルディオン公爵家を唆してこの学院に侵攻してくるはずだったのですが………必ずしもゲーム通りにはならないとはいえ、ゲームとは真逆の立場ですよね、彼女たち。
言わずもがな、ユフィリア様とあの電波です。
「(とにかく!お前、これ以上目立つ行動は控えろ。留学先でトラブルを起こしたとあっては、兄上からなんて言われるか───)」
「(分かっています。これまで通りに、陰からこっそり見てます)」
「(ルティウスにもバレたら恐いことになりそうなんだが?)」
「(大丈夫ですよ、今のところ気がついた人なんていないので───?)」
あれ?ユフィリア様は?
私はさっきまで壇上にいたはずの彼女の姿を探して、きょろきょろと辺りを見回しました。
「どうした?」
「主、ユフィリア様がいらっしゃいません」
「ああ、優勝商品はウェディングドレスだっただろう?それを着て皆に披露するまでがこのコンテストの流れだろうが。お前、一応出場していたのだから、覚えておけよ」
「優勝する気がなかったもので………聞き流しちゃってたんですよね。大体、結婚の予定もないのにそんなもの……………ん?ウェディングドレスを着る………?─────!!」
「おい!?」
しまった!!主のお説教の間にユフィリア様、一人きりの状況になってた………!!
主をその場に置いて、私は出せる限りのスピードで、出場者の待機ブースへ走りました。
近くの生徒を捕まえて、ユフィリア様が入った部屋を聞き出し、ノックも忘れて勢いよく扉を開け放つ。そこには─────
「────ッ!やられた……………!!」
そこには誰もいませんでした。いいえ、これでは言葉に語弊がありますね。正確には直前まで人がいた形跡がある───ユフィリア様は間違いなくここにいた。注意深く見れば、争ったような痕跡もありますしね………!
今日に限って、生徒会が出張らなければならないトラブルが起きたとかで、皆様、ユフィリア様のお側を離れていた───いや、離されていたと見るべきですね。
主にはこれ以上目立つ行動は控えろと言われたけど………そんなこと言っている場合ではないでしょう。要は、目立たずに接触すればいいのです。そういえば、ユフィリア様の双子のお兄様、会場にいらっしゃいましたね─────
急いでもと来た道を走っていると、曲がり角で人とぶつかりそうになったので、蹴飛ばしてあげました。
「ぷぎゃぁあああ!!」
というか、何でここにいるんですか、電波。もとい、ウィアナ・キューレ。
……………何か知ってそうですね、これ。一刻も早くシルディオ様と会わなければ。そう思って私はとりあえず、電波をぐるぐるに縛り上げて、気を付けて引き摺りながら走りました。
そうして会場に戻ってくると。
何故だか絶対零度の微笑みに晒され、固まる主を発見。その相手はこの国の王太子殿下、エルフィン様でした。あ、ルティウス様からは胸ぐら掴まれてますね、主。この場に主だった方々が勢揃いしてますし。
「……………王太子殿下、実は──「おい!私の心配は!?」なんですか、主。報告を先にさせてくださいよ」
そうでなくても緊急事態なんですから。
「───お前は?クルシェット殿下の連れか?」
先程からにこりともしない冷たい空気を纏ったまま、王太子殿下が私に尋ねてくる。あー………身分、完全にバレてますね、これ。
「主?」
「──私が言ったんじゃない。どうやらこの国にも、随分優秀な諜報員がいるようだな」
「ああ、やっぱりですか」
そうして、王太子殿下に向き直り、騎士としての礼をとる。
「事情があったとはいえ、貴方方を欺いた形となり、誠に申し訳ありませんでした。私はパルヴァンの第二王子、クルシェット殿下を主とし、護衛の任に着いています、リュミエル・フォーレリクスと申します」
「………リュミエル?隣国パルヴァン最強の騎士と言われている?」
私の名乗りに真っ先に反応したのは、シルディオ様でした。
「私はあくまで、クルシェット殿下専属の護衛騎士なだけです。最強など、過ぎた評価です」
「………リュミィ、というのは偽名か」
「いえ、どちらかといえば愛称ですね。そう呼ぶのはごく限られた方のみでしたが」
「報告というのを聞かせて貰おうか?………まぁ、言わずともある程度は察しているがな」
そうでしょうとも。最愛の婚約者が拐かされたとあっては、平静ではいられないだろうとは思っていたのですが。さすが、時期国王というか、冷静さは失っておられないようですね。
「もうお分かりかと思いますが、ユフィリア様が連れ去られました。犯人はこれが知っているはずです」
そう言いつつ、電波を王太子殿下たちの前に放りました。途端に、彼女に向けて殺気やら嫌悪感やらが向けられます。やはりというか、すっかり嫌われものですね?ウィアナ・キューレ。
さて、これからどうやって囚われのお姫様──ユフィリア様をお助けしましょうか。
エルフィン王太子殿下、頼みましたよ。緊急を要するとはいっても、私と主はあまり好き勝手には動けませんから。
0
お気に入りに追加
8,152
あなたにおすすめの小説
あなたがわたしを本気で愛せない理由は知っていましたが、まさかここまでとは思っていませんでした。
ふまさ
恋愛
「……き、きみのこと、嫌いになったわけじゃないんだ」
オーブリーが申し訳なさそうに切り出すと、待ってましたと言わんばかりに、マルヴィナが言葉を繋ぎはじめた。
「オーブリー様は、決してミラベル様を嫌っているわけではありません。それだけは、誤解なきよう」
ミラベルが、当然のように頭に大量の疑問符を浮かべる。けれど、ミラベルが待ったをかける暇を与えず、オーブリーが勢いのまま、続ける。
「そう、そうなんだ。だから、きみとの婚約を解消する気はないし、結婚する意思は変わらない。ただ、その……」
「……婚約を解消? なにを言っているの?」
「いや、だから。婚約を解消する気はなくて……っ」
オーブリーは一呼吸置いてから、意を決したように、マルヴィナの肩を抱き寄せた。
「子爵令嬢のマルヴィナ嬢を、あ、愛人としてぼくの傍に置くことを許してほしい」
ミラベルが愕然としたように、目を見開く。なんの冗談。口にしたいのに、声が出なかった。
婚約破棄された公爵令嬢は、真実の愛を証明したい
香月文香
恋愛
「リリィ、僕は真実の愛を見つけたんだ!」
王太子エリックの婚約者であるリリアーナ・ミュラーは、舞踏会で婚約破棄される。エリックは男爵令嬢を愛してしまい、彼女以外考えられないというのだ。
リリアーナの脳裏をよぎったのは、十年前、借金のかたに商人に嫁いだ姉の言葉。
『リリィ、私は真実の愛を見つけたわ。どんなことがあったって大丈夫よ』
そう笑って消えた姉は、五年前、首なし死体となって娼館で見つかった。
真実の愛に浮かれる王太子と男爵令嬢を前に、リリアーナは決意する。
——私はこの二人を利用する。
ありとあらゆる苦難を与え、そして、二人が愛によって結ばれるハッピーエンドを見届けてやる。
——それこそが真実の愛の証明になるから。
これは、婚約破棄された公爵令嬢が真実の愛を見つけるお話。
※6/15 20:37に一部改稿しました。
彼女を妃にした理由
つくも茄子
恋愛
ファブラ王国の若き王が結婚する。
相手はカルーニャ王国のエルビラ王女。
そのエルビラ王女(王妃)付きの侍女「ニラ」は、実は王女の異母姉。本当の名前は「ペトロニラ」。庶子の王女でありながら母親の出自が低いこと、またペトロニラの容貌が他の姉妹に比べて劣っていたことで自国では蔑ろにされてきた。今回も何らかの意図があって異母妹に侍女として付き従ってきていた。
王妃付きの侍女長が彼女に告げる。
「幼い王女様に代わって、王の夜伽をせよ」と。
拒むことは許されない。
かくして「ニラ」は、ファブラ王国で王の夜伽をすることとなった。
冷徹女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女に呪われ国を奪われた私ですが、復讐とか面倒なのでのんびりセカンドライフを目指します~
日之影ソラ
ファンタジー
タイトル統一しました!
小説家になろうにて先行公開中
https://ncode.syosetu.com/n5925iz/
残虐非道の鬼女王。若くして女王になったアリエルは、自国を導き反映させるため、あらゆる手段を尽くした。時に非道とも言える手段を使ったことから、一部の人間からは情の通じない王として恐れられている。しかし彼女のおかげで王国は繁栄し、王国の人々に支持されていた。
だが、そんな彼女の内心は、女王になんてなりたくなかったと嘆いている。前世では一般人だった彼女は、ぐーたらと自由に生きることが夢だった。そんな夢は叶わず、人々に求められるまま女王として振る舞う。
そんなある日、目が覚めると彼女は少女になっていた。
実の姉が魔女と結託し、アリエルを陥れようとしたのだ。女王の地位を奪われたアリエルは復讐を決意……なーんてするわけもなく!
ちょうどいい機会だし、このままセカンドライフを送ろう!
彼女はむしろ喜んだ。
【完結】地味令嬢の願いが叶う刻
白雨 音
恋愛
男爵令嬢クラリスは、地味で平凡な娘だ。
幼い頃より、両親から溺愛される、美しい姉ディオールと後継ぎである弟フィリップを羨ましく思っていた。
家族から愛されたい、認められたいと努めるも、都合良く使われるだけで、
いつしか、「家を出て愛する人と家庭を持ちたい」と願うようになっていた。
ある夜、伯爵家のパーティに出席する事が認められたが、意地悪な姉に笑い者にされてしまう。
庭でパーティが終わるのを待つクラリスに、思い掛けず、素敵な出会いがあった。
レオナール=ヴェルレーヌ伯爵子息___一目で恋に落ちるも、分不相応と諦めるしか無かった。
だが、一月後、驚く事に彼の方からクラリスに縁談の打診が来た。
喜ぶクラリスだったが、姉は「自分の方が相応しい」と言い出して…
異世界恋愛:短編(全16話) ※魔法要素無し。
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!
ユウ
恋愛
10歳の頃から伯爵家の嫁になるべく厳しい花嫁修業を受け。
貴族院を卒業して伯爵夫人になるべく努力をしていたアリアだったが事あるごと実娘と比べられて来た。
実の娘に勝る者はないと、嫌味を言われ。
嫁でありながら使用人のような扱いに苦しみながらも嫁として口答えをすることなく耐えて来たが限界を感じていた最中、義妹が出戻って来た。
そして告げられたのは。
「娘が帰って来るからでていってくれないかしら」
理不尽な言葉を告げられ精神的なショックを受けながらも泣く泣く家を出ることになった。
…はずだったが。
「やった!自由だ!」
夫や舅は申し訳ない顔をしていたけど、正直我儘放題の姑に我儘で自分を見下してくる義妹と縁を切りたかったので同居解消を喜んでいた。
これで解放されると心の中で両手を上げて喜んだのだが…
これまで尽くして来た嫁を放り出した姑を世間は良しとせず。
生活費の負担をしていたのは息子夫婦で使用人を雇う事もできず生活が困窮するのだった。
縁を切ったはずが…
「生活費を負担してちょうだい」
「可愛い妹の為でしょ?」
手のひらを返すのだった。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。