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第五章 これまでの決着をつけます

学院祭・三日目 その一・コンテストは観戦するつもりでした 

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 ウィアナさんによって狂わされた日程を何とか消化し、二日目も何とか終わりました。
 ちなみに、デュオたちのグループは何の問題も起こらなかったそうだ。………まぁ、ウィアナさんが私たちの時に問題を起こして(結果的に)エルフィンたちに撃退され、去って行っているからか、午後の部では姿を現さないのだろう。頭があの状態だから、下手に纏わりつけないだけかもしれないけど。

 そして、いよいよ今日が学院祭最終日。作動確認も兼ねた結界の解除の日でもある。魔王・ケルニオが来るかもしれない。この二日間全く動きが見えなかった。警戒はしているけれど、出来れば何事も起こらないで欲しい………そう思うのは希望的観測でしかないかな……………

私の気のせいであって欲しいけど、何だか嫌な予感がする─────

 ウィアナさんの両親は魔王によって殺されている。なのに、彼女の家の周辺の人たちには何の被害もなかったとか。
 そうなると魔王はウィアナさんの両親をピンポイントで狙った、ということになる。『本人はそうと気づいていなくても、魔王側がに何らかの協力を持ちかけ、自分の欲望に忠実ながそれを了承してしまっていてもおかしくはない』と、エルフィンも言っていたし。その約束を果たせなかったから、“制裁”として両親が犠牲になったんじゃないか、とも。
 
 このエルフィンの推測にはみんな納得できた。いえ、できてしまった。何故かというと、両親の訃報を知らせたはずなのに家に帰ろうとしない彼女に、学院長は『学院を辞めて、ご両親を弔うべきではないか』と聞いたそうなのだけど。その話に彼女、『あんなやつらあたしの親じゃないわ!!あたしの親はフェルヴィティール公爵だもの!!』なんて言ったらしい。特に両親を一辺に亡くして悲しみに暮れることも殺した相手を憎むこともなかったそうだ。
 ちなみにこれ、昨日の時点での話。お父様本人に否定されたのにまだ信じてるとか……………ある意味凄いわね、見習いたくはないけど。

※※※※※※※※※※

 今日は私は午後の部の担当。午前中はなにしてようか。クラスの催し物を手伝おうとしたんだけど、『生徒会の方が大変だろうから』と言われ、ぽっかり時間が空いちゃったのよね。
 その時、何故だかクラスのみんなから、『私たちはユフィリアさんが優勝すると信じてるわ!!』と応援されたのだけど。何かあったっけ?

何か────────────────────
………………………………………あ。
 コンテスト……………………いやいや、私、エントリーしてないし。ウィアナさんのことがあるし、魔王側の動向も気になるし………
 今年のコンテスト、前世でいうところのミスコンなのよね……………学生間の娯楽扱いだから、身分問わず気軽に参加はできる。ただし、それには事前の申請が必須だ。

「あ、ユフィリア様!もうそろそろコンテスト始まりますよ!」
「シグルド?」

 そう声をかけてきたのはシグルドだった。一般解放されている日のためか、後ろには婚約者のルヴィカもいる。そっか、ルヴィカはまだ婚約者という立場だから、三日目にしかこれなかったのね。
 いえ、それよりも気になることが一つ───

「あの………シグルド?私、そもそもエントリーしていないのだけど…………」

 そう、それが一番の問題よ。大体、飛び入りは認められてないのだから─────

「あ、登録ならオレがしておきました!!推薦なら、本人が申請してなくてもいいって話だったんで!」
「……………………………」

 シグルド?何をしてくれてるの、貴方?

「シグルド………私、出るつもりはなかったのだけど……………」
「えッ……エルフィンが『せっかくだから二冠達成したかったのだが………』とか言ってたから、てっきり、登録を忘れていただけかと思ってやっちゃいました………」

 エルフィン………余計な呟きを……………!
 ちなみに、去年のコンテストは男子学生のみだった。『出来れば生徒会の方は参加して欲しい』と言われて、エントリーしていた。そして、見事優勝していたわね、エルフィンが。
 今年も言われなかったかって?学院生最後の年だから、記念に出てみる、と言っていたので、ラディ先輩がエントリーしていた。
 だから、私は出なくてすむわね、なんて内心ほっとしていたのに。

 まぁ、前にも言ったのだけど、なのよね、このコンテスト。しかも、ヒロインが攻略対象者たちの好感度を最もあげることができるもの。好感度を上げづらい真相解明ルートにおいては、最も落とすことのできないイベントでもある。このイベント如何で、エンディングが確定するのよね。

 イベント内容は──ひょんなことからコンテストに出ることになってしまったヒロイン。『平民のくせに』と嫌がらせをされながらも、見事優勝し、最も好感度の高い攻略対象者が壇上に上がってきて、キスをしてくる──ただし、唇ではなく頬に──というもの。ちなみにこのイベントの嫌がらせ、真相解明ルートだけでなく、全てのルートにおいて『ユフィリア』は嫌がらせをしない。
 個別ルートの場合は、エンディングにおいての嫌がらせ──という名の犯罪──のために、『ユフィリア』が関わってこないからだ。
 ただ、『ユフィリア』と対峙する際に、『平民如きがあの人からの口付けを受けるなんて───ッ!!』という絶叫するシーンがあることから、遠目には見ていたのだろう。

 エントリー名簿を見せて貰った時に、ウィアナさんの名前もあったし、優勝してみんなからのキスを狙っているの──逆ハーの場合は、みんなからキスされるから──だと思う。
 現実問題、事実上不可能だけど。万が一優勝できたとしても、現実のみんなからの好感度はマイナスを軽くぶっちぎっている状態だからね。
 
 ちなみに、採点方法は以下の通り。

・容姿が優れているか(これはある意味大前提な話。そもそも外見がある程度整っていないと、ミスコンの意味がないしね)
・教養をきちんと身に付けているか(主にテーブルマナーができているかどうかを見る。ここで、茶葉やお菓子がどの産地のものかまで当てられると、より好評価)
・自己アピールができているか(この場合、趣味や得意分野、あるいは今後の進路を述べても構わない。あからさまな投票の強要は禁止されている)

 この採点方法を元に、一般の人たちからも投票を募る。だから、学院内で評判がよかったとしても、学外からの投票率が高くなければ優勝などできない。

 うぅ。観戦に徹してラディ先輩を応援しようと思ってたのに。
 エントリーがされてしまっているのなら、仕方がない。


「午前の部にユフィリア様を入れなかったの、このためかと思ってたのですが……」

 ルヴィカがなんだか申し訳なさそうにしている。まさか、シグルドによる強制参加だとは思わなかったみたい。

「シグルドも悪気があったのではないもの、仕方ないわ。まぁ、優勝が駄目だったとしても、入賞できるよう、頑張るわね」
「「優勝はユフィリア様に決まってます!!」」

 二人から異口同音に力説された。
 別に私だって、ウィアナさんが優勝できるなんて思ってないけど、自分が確実に優勝!なんて自信満々なつもりもないのだけど。

 どうなるのかしらね、今年のコンテスト。


 
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