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第四章 長期休暇中もやることは一杯です
貴族社会は策謀が渦巻いていたようです
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フォルティガによる地獄のしごき───違った、修行が始まって早二週間。長期休暇の半分を消化したことになる。
詳しく語りたいのは山々なのだけど………私、彼らの修行、ちらっとしか見れなかったのよね。何でかって言うと、フォルティガが修行中、結界を張っておいてくれれば構わないって。それも最高硬度のものを張ってくれと頼まれた。……あれ?私は参加しちゃ駄目なの?結界だけ張って出ていけ、と?
何をするつもりなのか物凄く気になったのだけど………ちら、とクーシェをみたら小刻みに顔を横に振られた。え?知らぬが仏?
私も攻撃術の特訓をしたかったのだけど………そう言ったら、フォルティガに、『お前の人としての生家の人間に教わった方がいい』と言われたのだ。
それ、フェルヴィティール公爵家よね?エルフィンに話を聞いたところ、どうやらお父様──次期当主のユリウス様だ──が、光属性の魔術に高い適性があるとのこと。そんな訳で、エルフィンたちが王宮にある騎士の訓練施設で修行している間、私はフェルヴィティール公爵家に帰ることになった。(ちなみに護衛はソールとルヴィカだった。二人とも、『大役を仰せつかり、光栄の極みです!!』と気合いが入りまくっていた)
………エルフィン、二週間も会えないのは耐えられなかったのか、『たまに顔を出してくれ』と懇願してきた。私も寂しいので、二・三日おきに様子を見に行った。
それが、冒頭での感想になる。うん。あれは確かに地獄だったかも。エルフィンたちも何とか食らいついていたけど、あちこち傷だらけだった。様子を見に行く度、彼らの休憩の合間に治癒術で怪我の治療を行った。ちなみにシグルドだけは常に目が輝いていた。───本当に楽しそうね、シグルド。
ルティウスはフォルティガ自身の加護がある分、特に厳しくされたみたい。それでも戦意だけは失わなかったようで、フォルティガが『面白い。初代ハルディオン公爵を名乗ったあいつ以来だ』と彼の方から契約を持ちかけられるくらい気に入られたみたい。
デュオは、王国随一の魔術師ヴァイス様の手解きを受けて育ったためか、善戦していた。フォルティガが半ば本気になりかけるくらいには。デュオ曰く、『一瞬でも気を抜いたら死にますね、これ』だそうだ。
クーシェはって?地属性って水属性とは相性がいいはず。と、思っていたら、フォルティガは真っ先にクーシェを狙い打ちにしていたらしく、壁にめり込んで伸びていた。本当に容赦ないわね、フォルティガ。スフィアラも参戦していたのだから、奮戦した方ではあったみたい。まぁ、クーシェは魔族との交戦経験があるから、本当はフォルティガの特訓、受ける必要無かったんだけど。シグルドという共鳴者が見つかった以上、制御面も安定しているそうだし。
余談ではあるけど、治療の際、フォルティガに『あれは本当に人間か?』と聞かれた。ちなみに言うと、エルフィンではない。エルフィンは、始祖竜カイセルギウスの後継者で、なおかつ私──光の精霊ラピスフィアの共鳴者であるため、既に人並み外れた強さはあるらしく、あとは実戦経験さえ積めば問題ないとのこと。そういえば、五人の中で一番傷が浅かった……………自分の婚約者ながら、エルフィンが改めてチートな人だと再認識しました。
で、誰のことかというと………やはりというか、シグルドのことだった。私は詳しいところは見ていなかったから、フォルティガの私見によるけど、『純粋な戦闘力だけなら、カイセルギウスに迫るだろう』とのことだった。カイセルギウスは、人型の時は魔術より剣術を好んでいたのよね。エルフィンは総体的に能力が高いけど、シグルドは身体機能に殆ど傾いているらしい。
さすが脳筋。純粋種の竜であるカイセルギウスの戦闘力と同列扱いとか。性格的な面だけでなく、本当に戦闘に特化していたらしい。
私の方は修行は順調だった。お父様が修行に託つけて私を構い倒せて幸せそうだったけど。(お父様、先頃当主の座をお祖父様から継いだそう。近々就任披露パーティーを開くそうだ)お兄様たちが理由をつけては現れ、構い倒してきたけど。お母様もそれに便乗して、構い倒してきたけど。
─────まぁ、要するに一家総出で構い倒されました。使用人の皆さん、それを微笑ましく眺めるだけで助けてくれなかったけど。何だか王宮で王家の皆様との日々を思い出した。うん、あの時と一緒だったね!
ただ、トラブルがあったといえばあった。公爵家に帰って来た途端、また補習授業のときのような痛みが襲ってきたから、急いで浄化を行った。これは何かあったと思った私は、『時間が空いたから』とお茶に誘いにきたレイヴィス兄様に尋ねてみた。すると、顔を歪めて嫌々ながら語ってくれた。(嫌々なのは私に対してではなくて、その時のことを思い出したから、だったらしい)
長期休暇が始まって一週間ほど経った頃、平民の少女が突然屋敷に押し掛けてきて、『あたしはこの家の娘なの!お父様に会わせなさい!!』と叫んだらしい。その時の様子を聞いて、嫌な予感がした。まさかとは思うけど───そう思って、その女の子の特徴を聞いてみたら………案の定、ウィアナさんだった。たまたま家にいたらしいレイヴィス兄様が、門番から連絡を受け、不穏当なことを言っているのでとりあえず話を聞くだけでも………そう思って客間に通したらしい。すぐに後悔することになったようだけど。
レイヴィス兄様は、『我が家の令嬢は妹のユフィリアだけだ。何か勘違いしているのではないのか?』と言ったところ、ウィアナさんの返答は『はぁ!?あの悪役令嬢がこの家の子供なわけないじゃない。本物のフェルヴィティール公爵令嬢はあたしよ?モブがいい加減なこと言ってんじゃないわよ!!とっっととあの性悪女を追い出して、あたしを引き取るべきなのよ!』と失礼極まりなかったのだとか。
ウィアナさん………何てことを言ってるの。私のことだけなら、学院での揉め事による逆恨みか?と思われるだけで済んだでしょうに。平民の身分で、貴族を真っ向から侮辱したら、不味いどころじゃない。
彼女の態度にカチンときた兄様は、『話にならないな。訳の分からない言葉で私を侮辱したことには目を瞑ってやる。だが、苦労をかけ通していたユフィリアを侮辱するような者など私の妹であるわけがない。早々に立ち去るのだな』そう言い放って、ウィアナさんをつまみ出したそうだ。(門番の方も、ウィアナさんの言い分が本当なら公爵家の名に傷がつくのでは?と悩んだ結果、とりあえず公爵家の家人に確認しようとして、通してしまったらしい)今後も罪に問う気はないとのこと。相手をすると余計面倒なことになりそうだと思ったのだとか。─────英断ね、兄様。
『スピ愛』のゲームには兄様たちは名前さえ出てこないから、家名だけが分かる程度。あの乙女ゲーム、学院が主な舞台だったからか、その辺りの説明はされてなかった。だからと言って、“モブ”扱いはアウトだけど。
たぶんウィアナさん、長期休暇イベントのフラグ回収をしようとしていたのだろう。真相解明ルートでは、長期休暇中にフェルヴィティール公爵家に帰省したらしい記述があったから。
彼女が言った通り、ゲームでのフェルヴィティール公爵令嬢はウィアナだ。でも、ここはあの乙女ゲーム、『スピ愛』の世界観に酷似しているだけの世界。似てはいても、“同じ”じゃない。
クーシェやスフィアラ曰く、前世の世界で『スピ愛』を制作した開発者は、夢で見た物を参考に、(異世界の知識などを夢などで受けとる人は稀にいるらしい)自分なりの解釈を元にして“乙女ゲーム”として作ったのだろう、と言っていた。ゲームって、制作者の好みが反映されやすいって聞いたことあるから、おそらくは受け取った知識通りにせずに、『こんな設定にすれば面白い』と考えてアレンジした部分があったのだろう。そのいじられた箇所が、フェルヴィティール公爵家にまつわる部分だと思う。
なんでかというと、この時知った事実からそう思わざるを得なかったからだ。
ここで、兄様たちの歳をいうと、長男で次期当主となったレイヴィス兄様は二十歳。次男のコーディアル兄様が一つ下の十九歳。三男のシルディオ兄様はコーディアル兄様より二つ下の十七歳だ。………あれ?兄様たちの歳、私とそんなに離れてない?というか、私の年齢、シルディオ兄様と同い年………!──お父様、浮気したことにならない?私がそんな感じでぐるぐるしていたのが分かったのか、お茶会に合流してきたコーディアル兄様とシルディオ兄様が『あー、まぁ普通は疑うよな』と苦笑していた。
そして、私は衝撃的な真実を知らされました。
なんと私とシルディオ兄様は双子だったそうです。あれ?ということは、シルフィーナお母様は本物のお母様?あれ?ちょっと待って?
私、お父様と侍女をしていたお母様の間に生まれた庶子ではなかったの?
少なくともハルディオン公爵家にいた頃はそう教えられていた話と“ゲーム”の情報を照らし合わせて、こういう事情だろう、とエルフィンたちとも話し合っていた。
でもここは現実の世界だ。もしかしたら、私やデュオが知らない真実もあるのかもしれない、なんて思っていたこともあるけど、どうやらそれが現実になったようだ。レイヴィス兄様が当時のことを話してくれた。成人した後、お父様とお母様が話してくれたそうだ。王家からの指示で養女として引き取った娘は、自分たちの本当の子供なのだと。
ことのあらましはおよそ十七年前。出産間近のお母様とお父様は、突然訪ねてきたハルディオン公爵から、奇妙な提案をされた。曰く、生まれてくる双子のうち、娘の方を養女として引き取らせてくれないか、と。
当然のことながら、お父様たちはその提案を突っぱねた。その当時、ハルディオン公爵家直径の子供はいなかった。縁戚から養子を、と考えても不思議ではない。フェルヴィティール公爵家は、ハルディオン公爵の妻の親戚筋ではあったため、こちらに来たのは決しておかしな話ではない。だけど、生まれてもいないのに何故双子だと断定できたのか。仮に彼の言う通りなのだとしても、何故女児のほうなのか。
そうでなくとも、ハルディオン公爵家は黒い噂の絶えない家。言い知れない不気味さを感じ、『例え貴殿の言う通りに双子が生まれたとしても、そちらの養子になどしない』と、きっぱり断ったそうだ。
それから間もなく、シルディオ兄様と私が生まれた。教会の洗礼を受けさせるため、乳母とその護衛が教会へ向かった。(お母様は、産後、体調を崩して静養していた)無事洗礼を受け、その帰路でそれは起こった。フェルヴィティール公爵家に帰りついたのは、傷だらけの護衛の一人と、彼に大事そうに抱えられ、泣き喚いているシルディオ兄様だけだった。他の護衛は残念ながら、命を落としたそうだ。
乳母と私の行方は全く掴めなかったそうだ。ハルディオン公爵の関与も疑ったものの、証拠がなく追及出来なかったらしい。まぁ、実際はハルディオン公爵が雇った輩の仕業でしょうね。そうでなかったら、私があの公爵家にいた説明がつかないもの。
もしかしてあの侍女は、私と一緒に連れ去られた乳母だったのかな。
養女どころか、お母様の本当の娘だったんだ、私。初めてお父様に会ったとき、言いかけていた台詞の続きが分かった気がした。
後日、エルフィンたちにもその話をした。衝撃を受けるんじゃないか、と心配したルティウスは、以外にも一番冷静だった。あの子に言わせると、『エルフィン様と姉上が結婚すれば、どちらにしろ僕の姉上ですから』とのこと。………本当にブレないわ、ルティウス。
詳しく語りたいのは山々なのだけど………私、彼らの修行、ちらっとしか見れなかったのよね。何でかって言うと、フォルティガが修行中、結界を張っておいてくれれば構わないって。それも最高硬度のものを張ってくれと頼まれた。……あれ?私は参加しちゃ駄目なの?結界だけ張って出ていけ、と?
何をするつもりなのか物凄く気になったのだけど………ちら、とクーシェをみたら小刻みに顔を横に振られた。え?知らぬが仏?
私も攻撃術の特訓をしたかったのだけど………そう言ったら、フォルティガに、『お前の人としての生家の人間に教わった方がいい』と言われたのだ。
それ、フェルヴィティール公爵家よね?エルフィンに話を聞いたところ、どうやらお父様──次期当主のユリウス様だ──が、光属性の魔術に高い適性があるとのこと。そんな訳で、エルフィンたちが王宮にある騎士の訓練施設で修行している間、私はフェルヴィティール公爵家に帰ることになった。(ちなみに護衛はソールとルヴィカだった。二人とも、『大役を仰せつかり、光栄の極みです!!』と気合いが入りまくっていた)
………エルフィン、二週間も会えないのは耐えられなかったのか、『たまに顔を出してくれ』と懇願してきた。私も寂しいので、二・三日おきに様子を見に行った。
それが、冒頭での感想になる。うん。あれは確かに地獄だったかも。エルフィンたちも何とか食らいついていたけど、あちこち傷だらけだった。様子を見に行く度、彼らの休憩の合間に治癒術で怪我の治療を行った。ちなみにシグルドだけは常に目が輝いていた。───本当に楽しそうね、シグルド。
ルティウスはフォルティガ自身の加護がある分、特に厳しくされたみたい。それでも戦意だけは失わなかったようで、フォルティガが『面白い。初代ハルディオン公爵を名乗ったあいつ以来だ』と彼の方から契約を持ちかけられるくらい気に入られたみたい。
デュオは、王国随一の魔術師ヴァイス様の手解きを受けて育ったためか、善戦していた。フォルティガが半ば本気になりかけるくらいには。デュオ曰く、『一瞬でも気を抜いたら死にますね、これ』だそうだ。
クーシェはって?地属性って水属性とは相性がいいはず。と、思っていたら、フォルティガは真っ先にクーシェを狙い打ちにしていたらしく、壁にめり込んで伸びていた。本当に容赦ないわね、フォルティガ。スフィアラも参戦していたのだから、奮戦した方ではあったみたい。まぁ、クーシェは魔族との交戦経験があるから、本当はフォルティガの特訓、受ける必要無かったんだけど。シグルドという共鳴者が見つかった以上、制御面も安定しているそうだし。
余談ではあるけど、治療の際、フォルティガに『あれは本当に人間か?』と聞かれた。ちなみに言うと、エルフィンではない。エルフィンは、始祖竜カイセルギウスの後継者で、なおかつ私──光の精霊ラピスフィアの共鳴者であるため、既に人並み外れた強さはあるらしく、あとは実戦経験さえ積めば問題ないとのこと。そういえば、五人の中で一番傷が浅かった……………自分の婚約者ながら、エルフィンが改めてチートな人だと再認識しました。
で、誰のことかというと………やはりというか、シグルドのことだった。私は詳しいところは見ていなかったから、フォルティガの私見によるけど、『純粋な戦闘力だけなら、カイセルギウスに迫るだろう』とのことだった。カイセルギウスは、人型の時は魔術より剣術を好んでいたのよね。エルフィンは総体的に能力が高いけど、シグルドは身体機能に殆ど傾いているらしい。
さすが脳筋。純粋種の竜であるカイセルギウスの戦闘力と同列扱いとか。性格的な面だけでなく、本当に戦闘に特化していたらしい。
私の方は修行は順調だった。お父様が修行に託つけて私を構い倒せて幸せそうだったけど。(お父様、先頃当主の座をお祖父様から継いだそう。近々就任披露パーティーを開くそうだ)お兄様たちが理由をつけては現れ、構い倒してきたけど。お母様もそれに便乗して、構い倒してきたけど。
─────まぁ、要するに一家総出で構い倒されました。使用人の皆さん、それを微笑ましく眺めるだけで助けてくれなかったけど。何だか王宮で王家の皆様との日々を思い出した。うん、あの時と一緒だったね!
ただ、トラブルがあったといえばあった。公爵家に帰って来た途端、また補習授業のときのような痛みが襲ってきたから、急いで浄化を行った。これは何かあったと思った私は、『時間が空いたから』とお茶に誘いにきたレイヴィス兄様に尋ねてみた。すると、顔を歪めて嫌々ながら語ってくれた。(嫌々なのは私に対してではなくて、その時のことを思い出したから、だったらしい)
長期休暇が始まって一週間ほど経った頃、平民の少女が突然屋敷に押し掛けてきて、『あたしはこの家の娘なの!お父様に会わせなさい!!』と叫んだらしい。その時の様子を聞いて、嫌な予感がした。まさかとは思うけど───そう思って、その女の子の特徴を聞いてみたら………案の定、ウィアナさんだった。たまたま家にいたらしいレイヴィス兄様が、門番から連絡を受け、不穏当なことを言っているのでとりあえず話を聞くだけでも………そう思って客間に通したらしい。すぐに後悔することになったようだけど。
レイヴィス兄様は、『我が家の令嬢は妹のユフィリアだけだ。何か勘違いしているのではないのか?』と言ったところ、ウィアナさんの返答は『はぁ!?あの悪役令嬢がこの家の子供なわけないじゃない。本物のフェルヴィティール公爵令嬢はあたしよ?モブがいい加減なこと言ってんじゃないわよ!!とっっととあの性悪女を追い出して、あたしを引き取るべきなのよ!』と失礼極まりなかったのだとか。
ウィアナさん………何てことを言ってるの。私のことだけなら、学院での揉め事による逆恨みか?と思われるだけで済んだでしょうに。平民の身分で、貴族を真っ向から侮辱したら、不味いどころじゃない。
彼女の態度にカチンときた兄様は、『話にならないな。訳の分からない言葉で私を侮辱したことには目を瞑ってやる。だが、苦労をかけ通していたユフィリアを侮辱するような者など私の妹であるわけがない。早々に立ち去るのだな』そう言い放って、ウィアナさんをつまみ出したそうだ。(門番の方も、ウィアナさんの言い分が本当なら公爵家の名に傷がつくのでは?と悩んだ結果、とりあえず公爵家の家人に確認しようとして、通してしまったらしい)今後も罪に問う気はないとのこと。相手をすると余計面倒なことになりそうだと思ったのだとか。─────英断ね、兄様。
『スピ愛』のゲームには兄様たちは名前さえ出てこないから、家名だけが分かる程度。あの乙女ゲーム、学院が主な舞台だったからか、その辺りの説明はされてなかった。だからと言って、“モブ”扱いはアウトだけど。
たぶんウィアナさん、長期休暇イベントのフラグ回収をしようとしていたのだろう。真相解明ルートでは、長期休暇中にフェルヴィティール公爵家に帰省したらしい記述があったから。
彼女が言った通り、ゲームでのフェルヴィティール公爵令嬢はウィアナだ。でも、ここはあの乙女ゲーム、『スピ愛』の世界観に酷似しているだけの世界。似てはいても、“同じ”じゃない。
クーシェやスフィアラ曰く、前世の世界で『スピ愛』を制作した開発者は、夢で見た物を参考に、(異世界の知識などを夢などで受けとる人は稀にいるらしい)自分なりの解釈を元にして“乙女ゲーム”として作ったのだろう、と言っていた。ゲームって、制作者の好みが反映されやすいって聞いたことあるから、おそらくは受け取った知識通りにせずに、『こんな設定にすれば面白い』と考えてアレンジした部分があったのだろう。そのいじられた箇所が、フェルヴィティール公爵家にまつわる部分だと思う。
なんでかというと、この時知った事実からそう思わざるを得なかったからだ。
ここで、兄様たちの歳をいうと、長男で次期当主となったレイヴィス兄様は二十歳。次男のコーディアル兄様が一つ下の十九歳。三男のシルディオ兄様はコーディアル兄様より二つ下の十七歳だ。………あれ?兄様たちの歳、私とそんなに離れてない?というか、私の年齢、シルディオ兄様と同い年………!──お父様、浮気したことにならない?私がそんな感じでぐるぐるしていたのが分かったのか、お茶会に合流してきたコーディアル兄様とシルディオ兄様が『あー、まぁ普通は疑うよな』と苦笑していた。
そして、私は衝撃的な真実を知らされました。
なんと私とシルディオ兄様は双子だったそうです。あれ?ということは、シルフィーナお母様は本物のお母様?あれ?ちょっと待って?
私、お父様と侍女をしていたお母様の間に生まれた庶子ではなかったの?
少なくともハルディオン公爵家にいた頃はそう教えられていた話と“ゲーム”の情報を照らし合わせて、こういう事情だろう、とエルフィンたちとも話し合っていた。
でもここは現実の世界だ。もしかしたら、私やデュオが知らない真実もあるのかもしれない、なんて思っていたこともあるけど、どうやらそれが現実になったようだ。レイヴィス兄様が当時のことを話してくれた。成人した後、お父様とお母様が話してくれたそうだ。王家からの指示で養女として引き取った娘は、自分たちの本当の子供なのだと。
ことのあらましはおよそ十七年前。出産間近のお母様とお父様は、突然訪ねてきたハルディオン公爵から、奇妙な提案をされた。曰く、生まれてくる双子のうち、娘の方を養女として引き取らせてくれないか、と。
当然のことながら、お父様たちはその提案を突っぱねた。その当時、ハルディオン公爵家直径の子供はいなかった。縁戚から養子を、と考えても不思議ではない。フェルヴィティール公爵家は、ハルディオン公爵の妻の親戚筋ではあったため、こちらに来たのは決しておかしな話ではない。だけど、生まれてもいないのに何故双子だと断定できたのか。仮に彼の言う通りなのだとしても、何故女児のほうなのか。
そうでなくとも、ハルディオン公爵家は黒い噂の絶えない家。言い知れない不気味さを感じ、『例え貴殿の言う通りに双子が生まれたとしても、そちらの養子になどしない』と、きっぱり断ったそうだ。
それから間もなく、シルディオ兄様と私が生まれた。教会の洗礼を受けさせるため、乳母とその護衛が教会へ向かった。(お母様は、産後、体調を崩して静養していた)無事洗礼を受け、その帰路でそれは起こった。フェルヴィティール公爵家に帰りついたのは、傷だらけの護衛の一人と、彼に大事そうに抱えられ、泣き喚いているシルディオ兄様だけだった。他の護衛は残念ながら、命を落としたそうだ。
乳母と私の行方は全く掴めなかったそうだ。ハルディオン公爵の関与も疑ったものの、証拠がなく追及出来なかったらしい。まぁ、実際はハルディオン公爵が雇った輩の仕業でしょうね。そうでなかったら、私があの公爵家にいた説明がつかないもの。
もしかしてあの侍女は、私と一緒に連れ去られた乳母だったのかな。
養女どころか、お母様の本当の娘だったんだ、私。初めてお父様に会ったとき、言いかけていた台詞の続きが分かった気がした。
後日、エルフィンたちにもその話をした。衝撃を受けるんじゃないか、と心配したルティウスは、以外にも一番冷静だった。あの子に言わせると、『エルフィン様と姉上が結婚すれば、どちらにしろ僕の姉上ですから』とのこと。………本当にブレないわ、ルティウス。
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