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第3章 魔法学院入学、“ゲーム”が始まりました
胎動するもの~エルフィン視点~
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「───来ると思ってたよ、エルフィン」
デュオに頼まれた補習授業の手伝いが終わってすぐ、私──エルフィンはクーシェの部屋を訪ねた。
どうやらクーシェは私が来ることを確信していたようだ。まぁ、あんなことがあった後だ、当然かもしれないが。
どうでもいいことだが、こいつの部屋、やたら植物が置かれている。地の精霊だからか?
「とりあえず座って。何か飲み物出すよ」
「いや、それには───」
「飲んだ方がいい。少なくとも、さっきキミが受け取ってしまった痛みを癒す効果はあるはずだ」
「───っ!?何………?」
及ばない、とまで言おうとしたところで、そんな言葉が被さってきて、私は思わず息を呑んだ。驚いて固まる私を余所に、クーシェは近くにある戸棚から茶葉らしきものを取り出し、カップに入れた。そして、用意してあったらしいポットから湯を注いだ。不思議な香りがする。
「はい、どうぞ」
私は目の前に置かれたカップをじっと眺めてみる。
「毒なんて入ってないよ?」
「そういうことを疑っているんじゃない。ろくな説明も無しに、いきなり飲め、と言われて飲むやつはいないぞ」
「…………それもそうか。まあ、簡単に説明すると、その茶葉には身に凝った邪気を払う効果を付与してあるんだよ」
「っ………!邪気、だと………?」
思いもよらない単語が出てきたことに更に驚いた。この学院には結界が張られているため、敷地内は清浄なはず。邪気など、入る余地もないと思っていたが……………
目の前のカップに視線を戻し、手に取って口に含んでみた。一口飲み込んでみると、途端にすっと身体が楽になった。それまで、いいしれない怠さがあったのに。
「あ……………」
「……身体、楽になっただろう?」
「ああ。しかし、邪気など浴びた記憶は無かったが……………」
もしかして、先程のあの痛みがそうか─────?
そこに扉をノックする音がした。
「デュオ?入ってきてもいいよ」
「失礼します」
そう言って入ってきたデュオを見て、また驚いた。何故かと言えば、彼はユフィを抱えていたからだ。ユフィは意識がないのか、デュオに抱えられるがままだ。心なしかぐったりしているような───何があった!?補習の手伝いをしていた時はそこまでじゃなかったはずだ!!
「クーシェ………どういうつもりだ………?」
私の纏う雰囲気が剣呑なものになっていることは分かるだろう。それでも彼は冷静だったが。
「もちろん、今の彼女に必要な措置をするためだよ」
「……措置?」
「デュオ、とりあえずそこにユフィリアを寝かせてくれるかい?」
そう言ってクーシェは四方に不思議な色合いをした水晶(植物の蔦が絡んでいる)の中心──床に見たこともない紋様の刻まれた、簡易ベッドの上を指し示した。
………というか、あの植物、もしかして───
指示通り、デュオはユフィをそこに横たえ、私の側に来た。クーシェはそのあと何やら床の紋様を書き足している。
「申し訳ありません、殿下」
「……………いつからだ?」
「え?」
「いつからクレイシェスと契約していたんだ?」
「………契約自体は……その、半年ほど前から、です……」
思わず天を仰いだ。半年前といえば、クーシェに会って間もなく、ということだな。
「申し訳──」
「謝る必要はない。よくよく考えれば、予想出来たことだ」
「……………」
「クレイシス侯爵家は、地の精霊クレイシェスと代々契約を交わしている一族………そうだろう?」
「!!──やはり、知っていらっしゃったんですね………」
「お前の家名と、あいつの名前が類似していることに気付いた時点で薄々は、な」
「……ボクは、父上から契約を引き継ぐ際に説明されました」
「そうか……別に怒っているわけではないぞ?浅からず付き合いがあるのに、事後的にしか知ることが出来ないことが、悔しかっただけだ」
「!……殿下──」
「だから、気に病むな。私も、もう気にしない。なにかしらあれば頼ってくれたら、とは思うがな?」
「ふふっ………それはボクがいう台詞ですよ」
私たちの会話を余所に、クーシェは何やら作業を続けている。
「……まぁ、キミならいずれ気がつくんじゃないかと思ってたよ、エルフィン」
「今度は驚かないんだな?」
「あの時は、自分の正体を言い当てられたからだよ。人間になりきれていると思ってたからね」
「…………お前、さっきから何をやってるんだ?」
「あー、まあ……気になるよね、やっぱり」
「クーシェ、殿下なら大丈夫ですよ。ボクが前世の話を伝えた時も、信じてくれましたから。それに──」
「黙ってるのはフェアじゃない………か」
「はい」
そうこうしている内にクーシェは作業を終えたらしい。
「先にやってしまってからでいいかな。そこまで時間はかからないから」
「……………ユフィに害は無いんだな?」
「むしろ、今後に備えるなら必要なことかな」
「?」
「あ、エルフィン」
「なんだ」
「最後の仕上げにキミの協力が必要になるから、よろしくね」
「は?」
状況が今一つ飲み込めない私をおいて、クーシェは魔方陣の縁までくると、精霊羽を展開させた。両手を広げると、水晶に絡んだ植物の蔦が彼の腕とユフィの身体にも絡み付く。
クーシェは静かに眼を閉じた。そして、魔方陣に魔力を流し込み始めた。魔方陣を囲む水晶が光を放ち、その中心に横になるユフィへ流れ込んでいく。────その時だ。ユフィの口から声が漏れ始める。私がユフィにマナを流し込む施術の時のような感覚がしているのだろうか。
「ぁ…………っ………ぁあっ………あ…………うぁ………ぁ……………」
「おい、クーシェ、ユフィはだい───────っ!?………っあ……くぁ…………ぁ………っ?」
クーシェに問い掛けようとした私の声はそれ以上言葉にならなかった。ユフィが声を漏らし始めてすぐに、私の身体にも、言い様のない感覚が襲ってきたからだ。椅子からずり落ち──る前にデュオが支えてくれた。またか……!何故、私にも同じことが起きてるんだ…………!?
「……………ふむ。やっぱりか」
「!?………っ…………クー…………ぁくっ…………シェ………ぁ………っは………どういう………ぁ………こと………」
「ちょっとクるものがあると思うけど、もう少し耐えてね」
何やら確信めいた言葉を口にしたクーシェへ、何とか声を絞り出したものの、彼から返された返答は非情なものだった。(私とユフィにとってはだが)ユフィからも未だに悩ましい声が出てるしな。ミラは───あぁ、いるな。外壁の側にある木に留まってこちらを心配そうに視ている。視線が合うと、『くるるっ?』と鳴いているように見えた。彼女なりに私たちのことを案じてくれているらしい。
「ん。そろそろかな……………」
終わりか?やっと終わるのか?これ。
「エルフィン、出番だよ。ユフィリアのところまで行って」
お前は鬼か。(いや、精霊なのは知っているが)ユフィと同じ感覚に苛まれている私に、そこまで歩けと!?
「あの、殿下………ボクが支えて行きますから………」
クーシェを恨みがましい目で睨んでいたら、デュオがそう声をかけてくれた。そうして、デュオに支えられながら、ユフィの側まで辿り着いた。デュオはすぐさまその場から離れた。
「っ………っは………何を………くぁ…………すれば………ふぅっ………いいんだ……?」
「じゃ、キスして」
………………こいつは私の忍耐力の限界に挑んでくるつもりらしい。この状態の私が、この状況のユフィに口づけろと?
「大丈夫だって。それさえ済めば楽になるはずだから」
「本当…………ぅ…………だろう………ぁ…………な………」
クーシェの指示通りにしなければ終わらないようだ。これでルティウスからまた説教されたら、クーシェのせいだと言ってやる……………!
崩れ落ちそうになる足を叱咤し、何とかユフィに自分の顔を近付け、彼女に口づけた。その途端、どくんっと心臓が波打ったかと思うと、身体の熱がいくらか楽になった。まだぞわぞわする感覚はあるものの、一時程ではない。私は彼女から唇を離した。すると──────────
「ぁっ……………ああ……………ぁ……………あ、あぁあぁぁァぁぁーーーーッ!!!」
ユフィの叫び声と同時に、彼女の背から精霊羽が出現した。しかも三対の。改めて、ユフィは本来精霊なんだと認識することにはなった。何故だか私の背中も熱くなったような感覚がしたが。
「───!!っあ…………」
「……………殿下!?」
「……気にするな、“誓約の紋様”が少々疼いただけだ………」
「そう、ですか………。クーシェ……ユフィリア様は………」
「大丈夫。少し覚醒のスピードを早めたんだ。これで、浄化は出来るようになるはずだよ」
「どういうことだ?ユフィはラピスフィアに覚醒した、ということか………?」
「ううん。これは、『精霊契約』を交わして貰うための儀式でもあるから、まだ完全覚醒ではないよ」
「は?誰と…………………!!まさか!」
ああ。デュオ、言わなくてもそこは分かる。
「私が契約者………だな?」
「キミの場合はそのさらに上の共鳴者だよ」
「共鳴者?契約者とは違うのか?」
「うん。精霊の力を最大限引き出すことができ、なおかつ感覚までも共有するほど相性のいい相手のことをそういうんだ。今じゃ、そこまで深く繋がり合う人と精霊は現れなくなってたけどね」
成程な……………感覚を共有する………ね。私とユフィに起きていたあれこれは、その一端だったわけか。ユフィはというと──彼女の方も苛んでいたものは落ち着いたらしい。呼吸は穏やかなものになっていた。クーシェに説明をしてもらおうと、身体の向きを変えて、ふと気が付いた。………というか、水晶に映る私の瞳の色、変わってないか?デュオも気づいたようだ。驚愕に眼を見開いた。
「っ………殿下の瞳の色が変わっているのも、その影響ですか」
「ん………蒼くなってるね。あいつの色と同じだ───」
私の目を視て、クーシェは懐かしそうに眼を細めた。その意味するものは、やはり───
「始祖竜と同じ……………か」
「遅かれ早かれ、キミの中の始祖竜の血は、覚醒していただろう。だからこそ、ユフィリア──ラピスフィアの力で安定させる必要があったからね。デュオがやっていたあの施術を、キミがやるって言い出してるのを視た時は、まさに運命の巡り合わせだって思ったよ」
「!?」
「エルフィン、不思議に思ったことはなかった?何故自分だけ魔力喰いという特殊な技能を持って生まれたのか」
「………何が言いたい」
「キミはおそらく──ううん、間違いなく始祖竜の継承者だよ。あ、もちろん直系だからこそってのもあるけど」
初めて会った時のユフィじゃないが、私も現実逃避したくなった。そうでなくても知らなかった真実が次々と明らかになって、さすがに頭がパンクしそうなんだが。
「何故ユフィには何も明かさないんだ?」
「ラピスフィアとしての記憶が戻ってないだけで、ユフィリアは知ってることだからね。いずれ、思い出すよ」
「─────デュオ、お前は……?」
「あ………クレイシェスとの契約以外はさすがに知りませんでした」
「そうか………───っ」
「殿下!?先程からお辛そうですが………」
「大丈夫だ……まだ覚醒とらやに身体が馴染んでいないだけだろう」
そうは言ったが、彼は気付いているだろうな。以前にも増して、身体に魔力が漲っているのが分かる───まあ、前から魔力量は多い方だったが。
ふと、魔力以外にも身体を巡るものがあることにも気付いた。これは────マナ………か?そこで、クーシェと目があった。
「共鳴者は、精霊と正式に契約を交わすことで、徐々に身体が精霊寄りになっていくそうだよ」
やはり、そういうことか。おそらく、契約した精霊の力に感化され、身体が変質していくのだろう。……………相手がユフィならそれもいいか、なんて思っただけで、不思議と恐怖や嫌悪感は欠片も無かった。
「本題に入ってもらおうか、クーシェ。お前は──いや、お前たち精霊は何に備えているんだ?」
後で父上たちに話さなければ──と思いつつも、クーシェが儀式前に言っていたことの答えを聞こうと、彼に向き直った。
「……………キミたちは、魔族の侵攻のその後は知っているかい?」
「………ある程度は。伝承が正しいなら、魔王が討伐された後、生き残った魔族たちは人の手の及ばぬ未開の地へ姿を消した、となっているが……」
「姿を消した彼らは、侵攻を諦めたわけではなかったみたいでね。討伐された魔王の魂だけは回収していったんだよ」
「「!!」」
「精霊は本来、現世のことには不干渉を貫く。けれど、ボクや主は、かつて共に戦った人間たちの子孫のことは気にかけてたんだ。でも、ある時を境に、その子孫の中に不穏な噂が立ち始めた一族が現れた」
「ハルディオン公爵家───か?」
「そう。今はまだ、魔族の接触はないけど………魔族は負の力がご馳走なんだ、そう間を置かずにあの家は穢れに呑まれるだろうね」
「もう……どうにもならないのか?」
「──残念だけど…………どうにかなるなら、キミのお父上でも処断出来たはずだ。それが現状無理ならば、諦めた方がいい。どちらにしても、いずれあの家は断罪されるしね。それに……あの公爵が、ラピスフィアの精霊核を実験に使ったこと、魔族側には筒抜けだったみたい。だから、連中にはユフィリアがラピスフィアの転生体だってバレてる」
「っ!?すぐに箝口令を敷いたはずだが……」
「ハルディオン公爵家側の人間には、してないでしょう?どうにも、そこから漏れたみたいでね」
「何故お前はそこまで知っている………?」
「全ての魔族が魔王の下、再び覇権を手に!なんて考えているわけじゃないみたいでね。裏切者呼ばわりを覚悟の上で、接触してきた子がいる」
「その者は誰だ?」
「………長期休暇の時に会わせようか、って考えてたから、それまで待っててもらっていい?」
「分かった。ユフィは………」
「まぁ………さすがに、魔族関連は話した方がいいだろうね。“ゲームシナリオ”でも、ラピスフィアを狙って魔族が仕掛けてくる展開はあるみたいだし……………そうだろう、デュオ?」
ルティウスと共に罪の証を集めていたあの家──まさかデュオが言っていた“ゲーム”のシナリオ通りとはな………。デュオをちらりと見ると、彼は悔しそうな表情をしていた。こうなるのではないかと分かっていて、何の手も打てなかったことに申し訳なさがあるのだろう。
「ええ…………現実はだいぶシナリオが変わってますが……学園の結界を歪めて侵入してくるシナリオがあります」
「いつ頃だ?」
「少なくとも、学園祭後──冬が来る前辺りだったかと」
「─────向こう半年は猶予があるわけか………」
猶予と言っても、ゲームそのままにはならないのだから、多少のズレはあるだろうが───長期休暇中に何処まで鍛えられるかが、今後の鍵になりそうだな……………
「エルフィン、今の内にルティウスをあの家から引き剥がした方がいい。彼はフォルティガの加護があるから、そうそう呑まれはしないと思うけど、この先は危険だよ」
「───っ!!………分かった、それも含めて父上へご報告する」
「少なくとも、長期休暇中──ううん、もうハルディオン公爵家には帰らせない方がいいだろう。潜入捜査はルティウス本人ではなく、専門の諜報員を使った方がいいだろうね」
「………だろうな。となると、ユフィの“断罪エンドのための嫌がらせ”はもう意味がなくはないか?」
そもそもあの自称ヒロイン、色々酷すぎる。態度は淑やかどころか、猛獣のようだし、演技は大根だし、台詞も間違えてるしな。シナリオ通りにしたいなら、余計な口は慎むべきだろうに。
そもそもが話の進行的に、デュオのいう真相解明ルートだろうしな、今の状況は。そうなると、ゲームの『ユフィリア』は、ヒロインに嫌がらせをしないらしいしな。
「んー………嫌がらせは確かに意味はないけど………あのウィアナって子、諦めないんじゃない?」
「──ユフィが嫌がらせを辞めても、向こうは絡んでくる、ということか」
「長期休暇中に、ユフィリアにある程度説明した方がいいかもね、ゲームの方もさ」
「そう……だな。デュオ、お前もユフィにきちんと説明しろよ?」
「はい、今後どうなるかがおおよそでしか分からない以上、隠し立てする気はありませんから」
私は意識が戻らないユフィをちら、と見て、今後の対策をどうすべきか、考えを巡らせた。
「あ………殿下、先程のことで、気になる点が一つ」
「ん?他に何かあったのか?」
「ユフィリア様と殿下が、苦しまれる直前、アレ──ウィアナ・キューレが何かを持っていたのを見たんです」
「何か?どんなものかは分からなかったのか?」
「残念ながら。掌に握り込めるくらい、小さな物のようだったのですが………」
どうにも気になるな、その何かが。
「憶測の段階で疑念を向けるべきではなかろうが──」
「こちらにとっては、あの子の方が“悪役”にしか見えないもんねぇ………当面は、彼女の動作に注意しておくしかないかな」
「はぁ……………つくづく面倒な存在だな、あの自称ヒロインは」
溜め息しか出ないな、アレのことを考えると。ユフィの“嫌がらせ”も今のところ、他の生徒たちからは『不作法で失礼極まりない平民の生徒を、矢面に立って副会長が注意してくれている』と認識されているようだ。本当にユフィは嫌がらせとか向かないな。嫌われるどころか、尊敬の念を集めてるしな。
「クーシェ、そういえば、魔族は魔王の魂を回収していった、と言っていたな?」
「ん?そうだけど………」
「その魂がどうなったかは分からないのか?」
「────間違いなく、転生はしてる」
「何!?」
「………っ!!誰だかは解らないのですか?」
「どうにも、反応が追えないんだよ。少なくとも、ボクらやその家族内にはいないのは確かなんだけど………」
「アレは───」
「ああ、ウィアナって子なら違うよ。っていうか、アレが魔王だったら、かつてのボクらの苦労はなんだったのさ」
「……………そうだな、すまない」
「つい、言葉に出ました………申し訳ありません、クーシェ」
「───まぁ、気持ちは分からなくはないけどね………ボクも彼女に迷惑してるし……………」
そうなると、一体誰が魔王の転生体だというんだ─────?
デュオに頼まれた補習授業の手伝いが終わってすぐ、私──エルフィンはクーシェの部屋を訪ねた。
どうやらクーシェは私が来ることを確信していたようだ。まぁ、あんなことがあった後だ、当然かもしれないが。
どうでもいいことだが、こいつの部屋、やたら植物が置かれている。地の精霊だからか?
「とりあえず座って。何か飲み物出すよ」
「いや、それには───」
「飲んだ方がいい。少なくとも、さっきキミが受け取ってしまった痛みを癒す効果はあるはずだ」
「───っ!?何………?」
及ばない、とまで言おうとしたところで、そんな言葉が被さってきて、私は思わず息を呑んだ。驚いて固まる私を余所に、クーシェは近くにある戸棚から茶葉らしきものを取り出し、カップに入れた。そして、用意してあったらしいポットから湯を注いだ。不思議な香りがする。
「はい、どうぞ」
私は目の前に置かれたカップをじっと眺めてみる。
「毒なんて入ってないよ?」
「そういうことを疑っているんじゃない。ろくな説明も無しに、いきなり飲め、と言われて飲むやつはいないぞ」
「…………それもそうか。まあ、簡単に説明すると、その茶葉には身に凝った邪気を払う効果を付与してあるんだよ」
「っ………!邪気、だと………?」
思いもよらない単語が出てきたことに更に驚いた。この学院には結界が張られているため、敷地内は清浄なはず。邪気など、入る余地もないと思っていたが……………
目の前のカップに視線を戻し、手に取って口に含んでみた。一口飲み込んでみると、途端にすっと身体が楽になった。それまで、いいしれない怠さがあったのに。
「あ……………」
「……身体、楽になっただろう?」
「ああ。しかし、邪気など浴びた記憶は無かったが……………」
もしかして、先程のあの痛みがそうか─────?
そこに扉をノックする音がした。
「デュオ?入ってきてもいいよ」
「失礼します」
そう言って入ってきたデュオを見て、また驚いた。何故かと言えば、彼はユフィを抱えていたからだ。ユフィは意識がないのか、デュオに抱えられるがままだ。心なしかぐったりしているような───何があった!?補習の手伝いをしていた時はそこまでじゃなかったはずだ!!
「クーシェ………どういうつもりだ………?」
私の纏う雰囲気が剣呑なものになっていることは分かるだろう。それでも彼は冷静だったが。
「もちろん、今の彼女に必要な措置をするためだよ」
「……措置?」
「デュオ、とりあえずそこにユフィリアを寝かせてくれるかい?」
そう言ってクーシェは四方に不思議な色合いをした水晶(植物の蔦が絡んでいる)の中心──床に見たこともない紋様の刻まれた、簡易ベッドの上を指し示した。
………というか、あの植物、もしかして───
指示通り、デュオはユフィをそこに横たえ、私の側に来た。クーシェはそのあと何やら床の紋様を書き足している。
「申し訳ありません、殿下」
「……………いつからだ?」
「え?」
「いつからクレイシェスと契約していたんだ?」
「………契約自体は……その、半年ほど前から、です……」
思わず天を仰いだ。半年前といえば、クーシェに会って間もなく、ということだな。
「申し訳──」
「謝る必要はない。よくよく考えれば、予想出来たことだ」
「……………」
「クレイシス侯爵家は、地の精霊クレイシェスと代々契約を交わしている一族………そうだろう?」
「!!──やはり、知っていらっしゃったんですね………」
「お前の家名と、あいつの名前が類似していることに気付いた時点で薄々は、な」
「……ボクは、父上から契約を引き継ぐ際に説明されました」
「そうか……別に怒っているわけではないぞ?浅からず付き合いがあるのに、事後的にしか知ることが出来ないことが、悔しかっただけだ」
「!……殿下──」
「だから、気に病むな。私も、もう気にしない。なにかしらあれば頼ってくれたら、とは思うがな?」
「ふふっ………それはボクがいう台詞ですよ」
私たちの会話を余所に、クーシェは何やら作業を続けている。
「……まぁ、キミならいずれ気がつくんじゃないかと思ってたよ、エルフィン」
「今度は驚かないんだな?」
「あの時は、自分の正体を言い当てられたからだよ。人間になりきれていると思ってたからね」
「…………お前、さっきから何をやってるんだ?」
「あー、まあ……気になるよね、やっぱり」
「クーシェ、殿下なら大丈夫ですよ。ボクが前世の話を伝えた時も、信じてくれましたから。それに──」
「黙ってるのはフェアじゃない………か」
「はい」
そうこうしている内にクーシェは作業を終えたらしい。
「先にやってしまってからでいいかな。そこまで時間はかからないから」
「……………ユフィに害は無いんだな?」
「むしろ、今後に備えるなら必要なことかな」
「?」
「あ、エルフィン」
「なんだ」
「最後の仕上げにキミの協力が必要になるから、よろしくね」
「は?」
状況が今一つ飲み込めない私をおいて、クーシェは魔方陣の縁までくると、精霊羽を展開させた。両手を広げると、水晶に絡んだ植物の蔦が彼の腕とユフィの身体にも絡み付く。
クーシェは静かに眼を閉じた。そして、魔方陣に魔力を流し込み始めた。魔方陣を囲む水晶が光を放ち、その中心に横になるユフィへ流れ込んでいく。────その時だ。ユフィの口から声が漏れ始める。私がユフィにマナを流し込む施術の時のような感覚がしているのだろうか。
「ぁ…………っ………ぁあっ………あ…………うぁ………ぁ……………」
「おい、クーシェ、ユフィはだい───────っ!?………っあ……くぁ…………ぁ………っ?」
クーシェに問い掛けようとした私の声はそれ以上言葉にならなかった。ユフィが声を漏らし始めてすぐに、私の身体にも、言い様のない感覚が襲ってきたからだ。椅子からずり落ち──る前にデュオが支えてくれた。またか……!何故、私にも同じことが起きてるんだ…………!?
「……………ふむ。やっぱりか」
「!?………っ…………クー…………ぁくっ…………シェ………ぁ………っは………どういう………ぁ………こと………」
「ちょっとクるものがあると思うけど、もう少し耐えてね」
何やら確信めいた言葉を口にしたクーシェへ、何とか声を絞り出したものの、彼から返された返答は非情なものだった。(私とユフィにとってはだが)ユフィからも未だに悩ましい声が出てるしな。ミラは───あぁ、いるな。外壁の側にある木に留まってこちらを心配そうに視ている。視線が合うと、『くるるっ?』と鳴いているように見えた。彼女なりに私たちのことを案じてくれているらしい。
「ん。そろそろかな……………」
終わりか?やっと終わるのか?これ。
「エルフィン、出番だよ。ユフィリアのところまで行って」
お前は鬼か。(いや、精霊なのは知っているが)ユフィと同じ感覚に苛まれている私に、そこまで歩けと!?
「あの、殿下………ボクが支えて行きますから………」
クーシェを恨みがましい目で睨んでいたら、デュオがそう声をかけてくれた。そうして、デュオに支えられながら、ユフィの側まで辿り着いた。デュオはすぐさまその場から離れた。
「っ………っは………何を………くぁ…………すれば………ふぅっ………いいんだ……?」
「じゃ、キスして」
………………こいつは私の忍耐力の限界に挑んでくるつもりらしい。この状態の私が、この状況のユフィに口づけろと?
「大丈夫だって。それさえ済めば楽になるはずだから」
「本当…………ぅ…………だろう………ぁ…………な………」
クーシェの指示通りにしなければ終わらないようだ。これでルティウスからまた説教されたら、クーシェのせいだと言ってやる……………!
崩れ落ちそうになる足を叱咤し、何とかユフィに自分の顔を近付け、彼女に口づけた。その途端、どくんっと心臓が波打ったかと思うと、身体の熱がいくらか楽になった。まだぞわぞわする感覚はあるものの、一時程ではない。私は彼女から唇を離した。すると──────────
「ぁっ……………ああ……………ぁ……………あ、あぁあぁぁァぁぁーーーーッ!!!」
ユフィの叫び声と同時に、彼女の背から精霊羽が出現した。しかも三対の。改めて、ユフィは本来精霊なんだと認識することにはなった。何故だか私の背中も熱くなったような感覚がしたが。
「───!!っあ…………」
「……………殿下!?」
「……気にするな、“誓約の紋様”が少々疼いただけだ………」
「そう、ですか………。クーシェ……ユフィリア様は………」
「大丈夫。少し覚醒のスピードを早めたんだ。これで、浄化は出来るようになるはずだよ」
「どういうことだ?ユフィはラピスフィアに覚醒した、ということか………?」
「ううん。これは、『精霊契約』を交わして貰うための儀式でもあるから、まだ完全覚醒ではないよ」
「は?誰と…………………!!まさか!」
ああ。デュオ、言わなくてもそこは分かる。
「私が契約者………だな?」
「キミの場合はそのさらに上の共鳴者だよ」
「共鳴者?契約者とは違うのか?」
「うん。精霊の力を最大限引き出すことができ、なおかつ感覚までも共有するほど相性のいい相手のことをそういうんだ。今じゃ、そこまで深く繋がり合う人と精霊は現れなくなってたけどね」
成程な……………感覚を共有する………ね。私とユフィに起きていたあれこれは、その一端だったわけか。ユフィはというと──彼女の方も苛んでいたものは落ち着いたらしい。呼吸は穏やかなものになっていた。クーシェに説明をしてもらおうと、身体の向きを変えて、ふと気が付いた。………というか、水晶に映る私の瞳の色、変わってないか?デュオも気づいたようだ。驚愕に眼を見開いた。
「っ………殿下の瞳の色が変わっているのも、その影響ですか」
「ん………蒼くなってるね。あいつの色と同じだ───」
私の目を視て、クーシェは懐かしそうに眼を細めた。その意味するものは、やはり───
「始祖竜と同じ……………か」
「遅かれ早かれ、キミの中の始祖竜の血は、覚醒していただろう。だからこそ、ユフィリア──ラピスフィアの力で安定させる必要があったからね。デュオがやっていたあの施術を、キミがやるって言い出してるのを視た時は、まさに運命の巡り合わせだって思ったよ」
「!?」
「エルフィン、不思議に思ったことはなかった?何故自分だけ魔力喰いという特殊な技能を持って生まれたのか」
「………何が言いたい」
「キミはおそらく──ううん、間違いなく始祖竜の継承者だよ。あ、もちろん直系だからこそってのもあるけど」
初めて会った時のユフィじゃないが、私も現実逃避したくなった。そうでなくても知らなかった真実が次々と明らかになって、さすがに頭がパンクしそうなんだが。
「何故ユフィには何も明かさないんだ?」
「ラピスフィアとしての記憶が戻ってないだけで、ユフィリアは知ってることだからね。いずれ、思い出すよ」
「─────デュオ、お前は……?」
「あ………クレイシェスとの契約以外はさすがに知りませんでした」
「そうか………───っ」
「殿下!?先程からお辛そうですが………」
「大丈夫だ……まだ覚醒とらやに身体が馴染んでいないだけだろう」
そうは言ったが、彼は気付いているだろうな。以前にも増して、身体に魔力が漲っているのが分かる───まあ、前から魔力量は多い方だったが。
ふと、魔力以外にも身体を巡るものがあることにも気付いた。これは────マナ………か?そこで、クーシェと目があった。
「共鳴者は、精霊と正式に契約を交わすことで、徐々に身体が精霊寄りになっていくそうだよ」
やはり、そういうことか。おそらく、契約した精霊の力に感化され、身体が変質していくのだろう。……………相手がユフィならそれもいいか、なんて思っただけで、不思議と恐怖や嫌悪感は欠片も無かった。
「本題に入ってもらおうか、クーシェ。お前は──いや、お前たち精霊は何に備えているんだ?」
後で父上たちに話さなければ──と思いつつも、クーシェが儀式前に言っていたことの答えを聞こうと、彼に向き直った。
「……………キミたちは、魔族の侵攻のその後は知っているかい?」
「………ある程度は。伝承が正しいなら、魔王が討伐された後、生き残った魔族たちは人の手の及ばぬ未開の地へ姿を消した、となっているが……」
「姿を消した彼らは、侵攻を諦めたわけではなかったみたいでね。討伐された魔王の魂だけは回収していったんだよ」
「「!!」」
「精霊は本来、現世のことには不干渉を貫く。けれど、ボクや主は、かつて共に戦った人間たちの子孫のことは気にかけてたんだ。でも、ある時を境に、その子孫の中に不穏な噂が立ち始めた一族が現れた」
「ハルディオン公爵家───か?」
「そう。今はまだ、魔族の接触はないけど………魔族は負の力がご馳走なんだ、そう間を置かずにあの家は穢れに呑まれるだろうね」
「もう……どうにもならないのか?」
「──残念だけど…………どうにかなるなら、キミのお父上でも処断出来たはずだ。それが現状無理ならば、諦めた方がいい。どちらにしても、いずれあの家は断罪されるしね。それに……あの公爵が、ラピスフィアの精霊核を実験に使ったこと、魔族側には筒抜けだったみたい。だから、連中にはユフィリアがラピスフィアの転生体だってバレてる」
「っ!?すぐに箝口令を敷いたはずだが……」
「ハルディオン公爵家側の人間には、してないでしょう?どうにも、そこから漏れたみたいでね」
「何故お前はそこまで知っている………?」
「全ての魔族が魔王の下、再び覇権を手に!なんて考えているわけじゃないみたいでね。裏切者呼ばわりを覚悟の上で、接触してきた子がいる」
「その者は誰だ?」
「………長期休暇の時に会わせようか、って考えてたから、それまで待っててもらっていい?」
「分かった。ユフィは………」
「まぁ………さすがに、魔族関連は話した方がいいだろうね。“ゲームシナリオ”でも、ラピスフィアを狙って魔族が仕掛けてくる展開はあるみたいだし……………そうだろう、デュオ?」
ルティウスと共に罪の証を集めていたあの家──まさかデュオが言っていた“ゲーム”のシナリオ通りとはな………。デュオをちらりと見ると、彼は悔しそうな表情をしていた。こうなるのではないかと分かっていて、何の手も打てなかったことに申し訳なさがあるのだろう。
「ええ…………現実はだいぶシナリオが変わってますが……学園の結界を歪めて侵入してくるシナリオがあります」
「いつ頃だ?」
「少なくとも、学園祭後──冬が来る前辺りだったかと」
「─────向こう半年は猶予があるわけか………」
猶予と言っても、ゲームそのままにはならないのだから、多少のズレはあるだろうが───長期休暇中に何処まで鍛えられるかが、今後の鍵になりそうだな……………
「エルフィン、今の内にルティウスをあの家から引き剥がした方がいい。彼はフォルティガの加護があるから、そうそう呑まれはしないと思うけど、この先は危険だよ」
「───っ!!………分かった、それも含めて父上へご報告する」
「少なくとも、長期休暇中──ううん、もうハルディオン公爵家には帰らせない方がいいだろう。潜入捜査はルティウス本人ではなく、専門の諜報員を使った方がいいだろうね」
「………だろうな。となると、ユフィの“断罪エンドのための嫌がらせ”はもう意味がなくはないか?」
そもそもあの自称ヒロイン、色々酷すぎる。態度は淑やかどころか、猛獣のようだし、演技は大根だし、台詞も間違えてるしな。シナリオ通りにしたいなら、余計な口は慎むべきだろうに。
そもそもが話の進行的に、デュオのいう真相解明ルートだろうしな、今の状況は。そうなると、ゲームの『ユフィリア』は、ヒロインに嫌がらせをしないらしいしな。
「んー………嫌がらせは確かに意味はないけど………あのウィアナって子、諦めないんじゃない?」
「──ユフィが嫌がらせを辞めても、向こうは絡んでくる、ということか」
「長期休暇中に、ユフィリアにある程度説明した方がいいかもね、ゲームの方もさ」
「そう……だな。デュオ、お前もユフィにきちんと説明しろよ?」
「はい、今後どうなるかがおおよそでしか分からない以上、隠し立てする気はありませんから」
私は意識が戻らないユフィをちら、と見て、今後の対策をどうすべきか、考えを巡らせた。
「あ………殿下、先程のことで、気になる点が一つ」
「ん?他に何かあったのか?」
「ユフィリア様と殿下が、苦しまれる直前、アレ──ウィアナ・キューレが何かを持っていたのを見たんです」
「何か?どんなものかは分からなかったのか?」
「残念ながら。掌に握り込めるくらい、小さな物のようだったのですが………」
どうにも気になるな、その何かが。
「憶測の段階で疑念を向けるべきではなかろうが──」
「こちらにとっては、あの子の方が“悪役”にしか見えないもんねぇ………当面は、彼女の動作に注意しておくしかないかな」
「はぁ……………つくづく面倒な存在だな、あの自称ヒロインは」
溜め息しか出ないな、アレのことを考えると。ユフィの“嫌がらせ”も今のところ、他の生徒たちからは『不作法で失礼極まりない平民の生徒を、矢面に立って副会長が注意してくれている』と認識されているようだ。本当にユフィは嫌がらせとか向かないな。嫌われるどころか、尊敬の念を集めてるしな。
「クーシェ、そういえば、魔族は魔王の魂を回収していった、と言っていたな?」
「ん?そうだけど………」
「その魂がどうなったかは分からないのか?」
「────間違いなく、転生はしてる」
「何!?」
「………っ!!誰だかは解らないのですか?」
「どうにも、反応が追えないんだよ。少なくとも、ボクらやその家族内にはいないのは確かなんだけど………」
「アレは───」
「ああ、ウィアナって子なら違うよ。っていうか、アレが魔王だったら、かつてのボクらの苦労はなんだったのさ」
「……………そうだな、すまない」
「つい、言葉に出ました………申し訳ありません、クーシェ」
「───まぁ、気持ちは分からなくはないけどね………ボクも彼女に迷惑してるし……………」
そうなると、一体誰が魔王の転生体だというんだ─────?
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