231 / 273
231.やっぱり死別が一番つらい
しおりを挟む
『初めまして、唯子です』
『仁ちゃん、おはよう、起きれる?』
『仁ちゃんに出会ってから、たくさんの“知らない”を知れた』
なんだこりゃ。走馬灯? 違うよな、死にかけてるの俺じゃねぇし。
『どこでもいいし、何でもいいの。仁ちゃんと出かけられるなら』
『ねえ仁ちゃん、話しを……ちゃんとしない?』
でも止まらない。唯とのなにげない会話が、場面が、すごいスピードで頭の中で再生されてて。
『ありがとう、仁ちゃん』
『私、仁ちゃんの奥さんになれて……本当によかった』
ダメダメ、無理無理、やめろやめろ。泣いちゃう泣いちゃう。
「いやもうすでに、泣いてるけど……っ」
大量の涙と鼻水を垂れ流しながら、ビルからビルへと飛び移る。
いいんだ、ハンカチで拭ったりしなくても、疾風に飛ばされてしまうから。
「唯……っ!」
蓮さんから教えてもらった病院に到着。
受付で身分証明書を提示して、家族だと主張。病室を教えてもらう。こういう時、同じ苗字だと便利だ。
「唯、唯、唯……!!」
「あっ、廊下は歩いて頂くようお願いします!」
病院スタッフに叱られながら、院内を疾走。
唯がいるという病室に辿り着いた。
「仁様!?」
「ここから先はお通しできません!」
逃〇中? とツッコミたくなるような黒ずくめの男達が、俺の行く手を阻む。
「どけ!」
しかしこちとらSSS。
右手に力を込めて、十束剣を取り出す。
SSSになって以来、ランク判定試験でしか使った事のない、スサノオノミコトの愛剣。
日常生活では使う事が無さ過ぎて、俺自身、どう扱っていいかよくわからん。
「な……っ」
「じ、仁様、落ち着いて! ここは病院――」
「どけ!!!」
俺の気迫にたじろぐ黒ずくめ達を肘でどかし、病室に入る。
「……そんな……」
VIP用なんだろうか。広い病室。でも、唯はいなかった。
荷物も花も無い。ベッドにはシーツも枕も掛け布団も無い。空っぽの部屋。
「おい! 唯は!? どうして誰もいないんだよ!?」
黒ずくめの一人の胸ぐらをつかんで、問いただす。
「どうしても何も……唯子様は……もう……」
言葉に詰まり、視線をそらす黒ずくめ。
「もう……って……嘘だろ……」
全身から力が抜け、膝から崩れ落ちた。
唯はもういない。この世にいない。
「う……ううぅ……っ」
忘れようとしている間に、二度と会えない人になってしまった。
「唯ぃいい……っ!」
俺の人生も、幸せも……今度こそ、終わった。
床に額をすりつけながら、そう絶望している時だった。
「あれ……? 仁ちゃん?」
小さな足音と、可愛らしい声。
「へ……?」
信じられない気持ちで顔をあげると……
「え? え? こんなとこで何してるの?」
キョトン顔で目の前に立っていたのは、俺が世界一大好きで、忘れようにも忘れられない……元妻だった。
『仁ちゃん、おはよう、起きれる?』
『仁ちゃんに出会ってから、たくさんの“知らない”を知れた』
なんだこりゃ。走馬灯? 違うよな、死にかけてるの俺じゃねぇし。
『どこでもいいし、何でもいいの。仁ちゃんと出かけられるなら』
『ねえ仁ちゃん、話しを……ちゃんとしない?』
でも止まらない。唯とのなにげない会話が、場面が、すごいスピードで頭の中で再生されてて。
『ありがとう、仁ちゃん』
『私、仁ちゃんの奥さんになれて……本当によかった』
ダメダメ、無理無理、やめろやめろ。泣いちゃう泣いちゃう。
「いやもうすでに、泣いてるけど……っ」
大量の涙と鼻水を垂れ流しながら、ビルからビルへと飛び移る。
いいんだ、ハンカチで拭ったりしなくても、疾風に飛ばされてしまうから。
「唯……っ!」
蓮さんから教えてもらった病院に到着。
受付で身分証明書を提示して、家族だと主張。病室を教えてもらう。こういう時、同じ苗字だと便利だ。
「唯、唯、唯……!!」
「あっ、廊下は歩いて頂くようお願いします!」
病院スタッフに叱られながら、院内を疾走。
唯がいるという病室に辿り着いた。
「仁様!?」
「ここから先はお通しできません!」
逃〇中? とツッコミたくなるような黒ずくめの男達が、俺の行く手を阻む。
「どけ!」
しかしこちとらSSS。
右手に力を込めて、十束剣を取り出す。
SSSになって以来、ランク判定試験でしか使った事のない、スサノオノミコトの愛剣。
日常生活では使う事が無さ過ぎて、俺自身、どう扱っていいかよくわからん。
「な……っ」
「じ、仁様、落ち着いて! ここは病院――」
「どけ!!!」
俺の気迫にたじろぐ黒ずくめ達を肘でどかし、病室に入る。
「……そんな……」
VIP用なんだろうか。広い病室。でも、唯はいなかった。
荷物も花も無い。ベッドにはシーツも枕も掛け布団も無い。空っぽの部屋。
「おい! 唯は!? どうして誰もいないんだよ!?」
黒ずくめの一人の胸ぐらをつかんで、問いただす。
「どうしても何も……唯子様は……もう……」
言葉に詰まり、視線をそらす黒ずくめ。
「もう……って……嘘だろ……」
全身から力が抜け、膝から崩れ落ちた。
唯はもういない。この世にいない。
「う……ううぅ……っ」
忘れようとしている間に、二度と会えない人になってしまった。
「唯ぃいい……っ!」
俺の人生も、幸せも……今度こそ、終わった。
床に額をすりつけながら、そう絶望している時だった。
「あれ……? 仁ちゃん?」
小さな足音と、可愛らしい声。
「へ……?」
信じられない気持ちで顔をあげると……
「え? え? こんなとこで何してるの?」
キョトン顔で目の前に立っていたのは、俺が世界一大好きで、忘れようにも忘れられない……元妻だった。
1
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。
あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。
そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。
翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。
しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。
**********
●早瀬 果歩(はやせ かほ)
25歳、OL
元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。
●逢見 翔(おうみ しょう)
28歳、パイロット
世界を飛び回るエリートパイロット。
ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。
翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……?
●航(わたる)
1歳半
果歩と翔の息子。飛行機が好き。
※表記年齢は初登場です
**********
webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です!
完結しました!
前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】
迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。
ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。
自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。
「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」
「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」
※表現には実際と違う場合があります。
そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。
私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。
※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。
※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる