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222.もう心配してやらないんだからねって当てつけのように思ってるうちはまたすぐ心配しちゃう
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元夫は見た。の、舞台となった喫茶店で。
電話から戻ってきた蓮さんはすぐに七瀬さんと共に店を出て。
そろそろ俺達も社に戻ろうかと、会計をしようとした時、店員から知らされた。『お代はすでに、お連れ様にお支払いいただいております』と。
マジかよ。かっこよ。大物芸能人か。
つーか、俺らが聞き耳立ててるのバレバレだったとか、恥ずかしすぎる。
なんて思いつつも……俺は帰宅してすぐに、お礼の電話を掛けた。
『そんなの、わざわざいいのに』
「いえ、すいませんでした、挨拶もしないで……」
『いいよ。仕事でもなければ、俺と関わりたくないのは当然だから』
「そんな事は……」
ある。でも今回のは、そういうわけじゃないんだけど。
「あの、七瀬さん、どうですか? 仕事」
『うん。よくやってくれてるよ。良い人を紹介して貰えてよかった。美琴さんにもよろしく伝えて』
良い人……なのか。少なくとも蓮さんにとっては。でも、本当にそれで大丈夫なんだろうか?
「ゆ……」
唯ともうまくやってますか。
唯は七瀬さんのせいで嫌な想いしてませんか。
唯からの電話、用件は何でしたか。体調不良とかじゃないですか。
口から出そうになるのは、全部唯の事。
でも、根性で飲み込んだ。とはいえ、一文字だけ漏れ出てしまったけど。
『……唯の事、嫌じゃなければ、話すよ? 近況』
そんな俺の様子を察したらしい蓮さんはそう言ってくれるけど。
「いいです。俺、ホントにもう大丈夫なんで」
そうだ。俺はもう唯とは無縁の世界で生きてる。ちゃんと充実した日々を送って、ちゃんと幸せになってる。
だから七瀬さんの事も……忠告したり、しない。
『……うん、そっか。わかった』
「それじゃ。今日はありがとうございました。また……」
あえて落ち着き払った調子で、通話終了ボタンをタップしようとした時――
『ねぇ蓮ちゃん、バナナの黒い所って妊娠中に食べても……あっ、ごめんなさい! 電話中だったんだね』
向こう側から聞こえて来た、可愛い声。
その後すぐに、電話は切れた。
「バナナの……黒い所……」
すぐに、スマホで検索する。
バナナは妊婦にとって多くのビタミンやミネラルを摂取でき、安心して食べられる果物。
皮が黒い場合は大抵の場合食べても大丈夫。実が黒い場合は食べない方が無難。
持った時に自立しない程柔らかくなっているのは劣化しているので、食べない方が良い。
「何してんだ俺は」
ひとしきりの情報を得てから、全てのタブを閉じる。
もう、俺の役目じゃない。必要ともされてない。必要としてもない。
わかってはいるんだけど、なんともやるせない気持ちになってしまって。
俺は泣きそうになりながら、美琴がアロマオイルをこぼしたせいでヌルヌルになった風呂場の床を、掃除するのだった。
電話から戻ってきた蓮さんはすぐに七瀬さんと共に店を出て。
そろそろ俺達も社に戻ろうかと、会計をしようとした時、店員から知らされた。『お代はすでに、お連れ様にお支払いいただいております』と。
マジかよ。かっこよ。大物芸能人か。
つーか、俺らが聞き耳立ててるのバレバレだったとか、恥ずかしすぎる。
なんて思いつつも……俺は帰宅してすぐに、お礼の電話を掛けた。
『そんなの、わざわざいいのに』
「いえ、すいませんでした、挨拶もしないで……」
『いいよ。仕事でもなければ、俺と関わりたくないのは当然だから』
「そんな事は……」
ある。でも今回のは、そういうわけじゃないんだけど。
「あの、七瀬さん、どうですか? 仕事」
『うん。よくやってくれてるよ。良い人を紹介して貰えてよかった。美琴さんにもよろしく伝えて』
良い人……なのか。少なくとも蓮さんにとっては。でも、本当にそれで大丈夫なんだろうか?
「ゆ……」
唯ともうまくやってますか。
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唯からの電話、用件は何でしたか。体調不良とかじゃないですか。
口から出そうになるのは、全部唯の事。
でも、根性で飲み込んだ。とはいえ、一文字だけ漏れ出てしまったけど。
『……唯の事、嫌じゃなければ、話すよ? 近況』
そんな俺の様子を察したらしい蓮さんはそう言ってくれるけど。
「いいです。俺、ホントにもう大丈夫なんで」
そうだ。俺はもう唯とは無縁の世界で生きてる。ちゃんと充実した日々を送って、ちゃんと幸せになってる。
だから七瀬さんの事も……忠告したり、しない。
『……うん、そっか。わかった』
「それじゃ。今日はありがとうございました。また……」
あえて落ち着き払った調子で、通話終了ボタンをタップしようとした時――
『ねぇ蓮ちゃん、バナナの黒い所って妊娠中に食べても……あっ、ごめんなさい! 電話中だったんだね』
向こう側から聞こえて来た、可愛い声。
その後すぐに、電話は切れた。
「バナナの……黒い所……」
すぐに、スマホで検索する。
バナナは妊婦にとって多くのビタミンやミネラルを摂取でき、安心して食べられる果物。
皮が黒い場合は大抵の場合食べても大丈夫。実が黒い場合は食べない方が無難。
持った時に自立しない程柔らかくなっているのは劣化しているので、食べない方が良い。
「何してんだ俺は」
ひとしきりの情報を得てから、全てのタブを閉じる。
もう、俺の役目じゃない。必要ともされてない。必要としてもない。
わかってはいるんだけど、なんともやるせない気持ちになってしまって。
俺は泣きそうになりながら、美琴がアロマオイルをこぼしたせいでヌルヌルになった風呂場の床を、掃除するのだった。
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