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126.何も知らないくせに口を出すのもな…って迷ってる位なら今後も絶対口出さない方がいい

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 「おかえりなさい! 今日もお疲れ様でした!」

 いつもの玄関で。いつも通り、笑顔で俺を出迎えてくれる唯。

 俺が持っている鞄を受け取り、両手を広げる。
 最近始まった、お帰りのギューをする為に。

 でも……ダメだ。幸せすぎる習慣なのに、今日は……そんな気分にはなれない。

 「仁ちゃん? どうしたの?」

 俯く俺の顔を、唯は心配そうにのぞき込む。

 「今日、蓮さんに会った」

 「そうなんだ? お仕事で? あ……そっか、今度本社に異動になるんだもんね。色々準備とかあるのかな?」

 やっぱ知ってるんだ。
 俺だけだ。何も知らないのは、いつも……。

 「唯と今後も会いたいって、言われた」

 「あ……そうなの。私もその事を仁ちゃんに相談したいと思」

 「なんで、あんな奴に会いたいの?」

 唯の言葉をかき消すように、訊ねる。

 「え……? あんな奴って……」

 「聞いたんだ。蓮さんは……唯の、仕事の相手だったんだろう?」

 俺がそう言うと、唯の表情が一気に強張った。

 「驚いたよ。あんな……清廉潔白が服を着てるような人間が……自分の利益の為に、そんな事をする男だったなんて」

 「仁ちゃん、違うの。確かに蓮ちゃんはお仕事の相手だったんだけど、それは」

 「違わない!!」

 玄関に響く怒鳴り声。
 肩をびくつかせる唯。でも、止められない。

 「俺は今でも唯を買った奴ら全員殺してやりたいと思ってる! あいつもその一人だったって事だろ!? なのにこれからも会いたいとか……意味がわからない!」

 「買っ……違うよ! 蓮ちゃんはそんな事してない! 私はちゃんと合意の上で」

 「合意!? なんだよやっぱやってんじゃねぇかよ! だとしたら余計理解出来ない! なんであいつなんだよ! 栄光だの何だのの為に金で女を買うようなクズと、どうして」

 「蓮ちゃんはクズなんかじゃない!!」

 小さな体からは想像もできない、大声量。
 今度は俺の方が驚いてしまう。

 「どうしてそんな酷い事言うの!? 仁ちゃんは何も知らないじゃない! 蓮ちゃんがどれだけ私を救ってくれたか……私達がどんな想いでお別れしたか!!」

 「ああ知らねぇよ! 自分の嫁さんと他の男がちちくりあってた過去なんて、知りたくも無い!!」

 バン!!!

 唯の投げた鞄が、顔面にメガヒット。
 SSSのくせに、避ける事も出来なかった。

 「そうだよね! どうせ偽物のお嫁さんだもんね!」

 そう言い残して、唯は出て行った。

 俺はジンジンと痛む顔に手を当てながら……やり場のない感情におかしくなりそうな自分を、一生懸命に抑え込んでいた。
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