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71.マイルール、大事

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 ドオォォォン!!!

 都心のオフィス街に響く、轟音。

 「きゃあ!」

 「なんだなんだ!?」

 混雑する朝の道路。ひっくりかえる黒塗りの高級車。慌てふためく人々。でも、これはテロではない。
 テロリストが狙うのは不特定多数の市民。

 でも俺が狙っているのは――クソバカカスの幼馴染ただ一人だから。

 「じんじんじ~~~~~ん! 落ち着いて! ここ公道! 」

 「安心しろ。こっちは昨日まで39度の熱出してた病み上がりの身だ。殺しはしない」

 幸い、発熱は1日で収まった。
 ならば俺がまずすべきことは……一輝をフルボッコにする事。

 「仁坊ちゃん! 乱暴はやめてください!」

 俺の腕をつかんで懇願する、運転手の向井さん。

 「向井さん、下がっててください」

 向井さんに危害は加えたくない。だから、車が到着した後……俺の為にドアを開けようと、向井さんが運転席から出たのを見計らって、車を横転させたんだ。

 一輝の胸ぐらをつかみ、天地のひっくりかえった車内から、引きずり出す。
 割れた窓ガラスが突き刺さって、俺の手と、一輝のあちこちから血が滴った。

 「いってぇ! なにも~ガンギレじゃん! もしや……全部バレちゃった?」

 「ああ、そうだよその通りだよ。お前が唯に何を言ったか、全部聞いたっ」

 吐き捨てるように言って、一輝を道路わきにぶん投げる。
 と同時に響く、向井さんの悲鳴。
 
 「も~……唯ちゃん口軽いんだから……」

 「ぼ、ぼ、坊ちゃん! 大丈夫ですか!!」

 頬を伝う血を手の甲で拭いながら上体を起こす、憎き幼馴染。と、そのそばに慌てて駆け寄る向井さん。

 「お前が唯を快く思ってないのは知ってる。でも……能力ちからを使えだなんて……言っていい事と悪い事の区別くらいつけろ!」

 「つけてるよ。俺の中では……亜種には何言ってもいいし、何してもいいっていうルールがあるから」

 にやけ顔で発せられた一輝の言葉に、一層急上昇する血圧。
 俺の気迫で、横転した車はさらにベコっと凹み、全ての窓ガラスは粉砕した。

 「ちょいちょい、落ち着けって! SSSがこんなとこで暴れたら、大惨事……」

 「お前とは縁を切る! 二度と俺や唯に近付くな!! わかったか!!」

 そう啖呵を切って、俺は地面に座り込んだままの一輝に、背を向けた。
 が……ハッとして振り返り、一礼する。

 「向井さん、お騒がせしてすいませんでした。今までお世話になりました。どうかお元気で」

 「え、あ、はい、恐れ入ります……っ」

 無関係の人は傷付けない。最低限の礼は払う。

 でも……唯を傷つけるものには、毛ほどの情けもかけない。

 それが、俺のルールだから。
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