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第74話 「敗戦処理」
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小さな振動が、身体に伝わってくる。視界は真っ暗で、ホコリと灰の混じった空気が鼻に入ってくる。
「けほっ、けほっ……あれ、ここは……」
「ふん、ようやく起きたか。全く、世話のかかるやつじゃな」
どうやらわたしは今、エリザベスさんの背中にいるみたいです。
頭がボーッとして、視界もぼやけているから、判断材料は声だけでした。
「なんで、エリザベスさん……わたしはなんで、ここに……?」
「記憶が混濁しているようだな。それも仕方ないか。起きたのであれば、早く自分を回復してやれ。酷い傷であるぞ」
「傷……」
だんだん意識がはっきりしてきて、わたしは全身の痛みを感じ始めました。
そして、これまでの経緯を思い出せたのです。
「あぁ、そうですね……わたしは、止められなかったんですね……」
邪神との戦いでカルード帝国の騎士と共に戦いましたが、神の力は圧倒的でした。
攻撃一つ一つの規模が大きいので、巻き添えで沢山の人が傷つき、倒れていきました。
都市部まで攻め込まれた時点で、勝敗は決していたと言っても過言ではないです。
「そろそろ良いだろう。妾も疲れたのでな」
エリザベスさんが、わたしの身体をゆっくりと下ろしました。
そういえば傷ついていたんでした。早く治さないと。
わたしはスキルを発動させて、治療をします。
足が折れてしまっていたようで、治療は遅々として進みませんでした。
「エリザベスさん、わたしが動けなかったから背負ってくれたんですね。ありがとうございます」
「礼など良い。お主は自分の身体を心配しろ」
言葉遣いは厳しいですけど、やっぱり優しい人ですね。
治療が終わった後は、エリザベスさんの傷も治しました。
エリザベスさんはわたしよりずっと傷が少なくて……当たり前ですけど、わたしよりずっと強い方です。
「わたしもはっきり記憶が蘇ってきました。わたしたち、かなり遠くまで飛ばされちゃったみたいですね」
「忌々しいことにな。だが、戻るのはそう難しくない」
「そうなんですか?」
「掴まるが良い。振り落とされても知らぬからな」
わたしを俵のように抱えたエリザベスさんは地面を蹴ります。
宙に浮いた直後、突風がエリザベスさんの身体を持ち上げます。
「わぁ、すごい……」
そういえばエリザベスさんは風を操る能力があったんでした。
本人曰く、それはスキルとかじゃないらしいですけど……
高速で空を飛んで、カルード帝国の帝都まで戻ってくるのは数分後でした。
「本当にすぐ戻ってこれましたね。エリザベスさんすごいです!」
「万全であればこの程度はさしたる労でもない。だが……問題はこの後だな」
「負傷者を助けないと……って、邪神はどこに行ってしまったんでしょう」
吹き飛ばされた間にいなくなっていました。流石に戦いながら治療をするのは無理があるので、良かったと言えば良かったのですが……
「違う場所に行ったなら、追いかけないと……次の被害が出る前に」
「あやつは次なる鍵を解放できたところで去っていったようだな。城こそ破壊され尽くしているが、死傷者は少ないと見える」
邪神は死人をあまり出さないようにしている……わけないですよね。
殺す価値すらないって判断されただけなのでしょう。
致命傷になりそうな傷を負った人たちを優先的に治療して、邪神を追いかけようとしたところで、イオリさんとフィオナさんが合流しました。
「ナナちゃん、無事で良かった!」
「イオリさんも、お怪我はありませんでしたか」
「フィオナちゃんが守ってくれたからね。全然余裕だよ、余裕」
そんなことを言いながら、イオリさんにも少なくない傷が見えました。
イオリさんはアイドルだから、笑顔を作るのが上手です。傷が隠れていたらきっと誤魔化されていたと思います。
「そんなことないじゃないですか。ちょっとそこに座っててください」
「はーい」
瓦礫の上に腰かけたイオリさんに手をかざして、傷を癒します。
「あの邪神、イオリちゃんが見る限り、弱点とか無さそう。攻撃も避けるとか避けないとかそういう次元じゃないし……死んでないのが奇跡的だって思うくらい強かったね」
「強いのは、最初から分かってたことです。それでも、カイリ様や、みんなの為にも戦わないと」
「だよね~。カイリのため、だもんね」
わたしたちが比較的軽傷で済んでいるのは、イオリさんの力あってのものです。
初見の攻撃もすぐさま見きってくれるので、ダメージを最小限に抑えることができています。
「カイリ殿は果報者だな。こうも想ってくれる人がいるのは」
「フィオナさん……は、だいぶ綺麗ですね。傷とか無さそうです」
「伊達に騎士団長を名乗っていない……と、言いたいところだが、イオリのお陰だ。イオリが見てくれていたから、敵の攻撃を捌きやすかった」
フィオナさんは厄災の時も討伐隊隊長に任命されてましたし、実力が突出しています。
「おおよそ攻撃は把握できた。次こそは有効打をいれてくれよう」
わたしたちの中で邪神に攻撃を当てられるのはエリザベスさんか、フィオナさんしかいません。
主戦力たるフィオナさんがそう言ってくれるのは頼もしさしかないです。
「それで、奴は一体どこへ行ったのだろうな。全く見当もつかな――」
「アウスト王国、だよ。邪神はそっちの方面に向かっていった」
イオリさんが邪神の行く先を見てくれていたようでした。
それにしても、誰がどこへ向かったのかも見分けられる、「心眼」は本当にすごいです。
「行ったり来たり……大変ですね。――って、アウスト王国に向かったのでしたら、カイリ様が危険です!」
「それこそが、奴の狙いなんだろうな。アウスト王国で邪神から狙われそうなのは……カイリ殿くらいしかいない」
それなら急いで戻らないと。カイリ様を守るために戦いに来たのに……カイリ様を失うなんて、そんなこと絶対にさせません!
わたしたちは傷を治しきる間もなく、アウスト王国へと向かうのでした。
「けほっ、けほっ……あれ、ここは……」
「ふん、ようやく起きたか。全く、世話のかかるやつじゃな」
どうやらわたしは今、エリザベスさんの背中にいるみたいです。
頭がボーッとして、視界もぼやけているから、判断材料は声だけでした。
「なんで、エリザベスさん……わたしはなんで、ここに……?」
「記憶が混濁しているようだな。それも仕方ないか。起きたのであれば、早く自分を回復してやれ。酷い傷であるぞ」
「傷……」
だんだん意識がはっきりしてきて、わたしは全身の痛みを感じ始めました。
そして、これまでの経緯を思い出せたのです。
「あぁ、そうですね……わたしは、止められなかったんですね……」
邪神との戦いでカルード帝国の騎士と共に戦いましたが、神の力は圧倒的でした。
攻撃一つ一つの規模が大きいので、巻き添えで沢山の人が傷つき、倒れていきました。
都市部まで攻め込まれた時点で、勝敗は決していたと言っても過言ではないです。
「そろそろ良いだろう。妾も疲れたのでな」
エリザベスさんが、わたしの身体をゆっくりと下ろしました。
そういえば傷ついていたんでした。早く治さないと。
わたしはスキルを発動させて、治療をします。
足が折れてしまっていたようで、治療は遅々として進みませんでした。
「エリザベスさん、わたしが動けなかったから背負ってくれたんですね。ありがとうございます」
「礼など良い。お主は自分の身体を心配しろ」
言葉遣いは厳しいですけど、やっぱり優しい人ですね。
治療が終わった後は、エリザベスさんの傷も治しました。
エリザベスさんはわたしよりずっと傷が少なくて……当たり前ですけど、わたしよりずっと強い方です。
「わたしもはっきり記憶が蘇ってきました。わたしたち、かなり遠くまで飛ばされちゃったみたいですね」
「忌々しいことにな。だが、戻るのはそう難しくない」
「そうなんですか?」
「掴まるが良い。振り落とされても知らぬからな」
わたしを俵のように抱えたエリザベスさんは地面を蹴ります。
宙に浮いた直後、突風がエリザベスさんの身体を持ち上げます。
「わぁ、すごい……」
そういえばエリザベスさんは風を操る能力があったんでした。
本人曰く、それはスキルとかじゃないらしいですけど……
高速で空を飛んで、カルード帝国の帝都まで戻ってくるのは数分後でした。
「本当にすぐ戻ってこれましたね。エリザベスさんすごいです!」
「万全であればこの程度はさしたる労でもない。だが……問題はこの後だな」
「負傷者を助けないと……って、邪神はどこに行ってしまったんでしょう」
吹き飛ばされた間にいなくなっていました。流石に戦いながら治療をするのは無理があるので、良かったと言えば良かったのですが……
「違う場所に行ったなら、追いかけないと……次の被害が出る前に」
「あやつは次なる鍵を解放できたところで去っていったようだな。城こそ破壊され尽くしているが、死傷者は少ないと見える」
邪神は死人をあまり出さないようにしている……わけないですよね。
殺す価値すらないって判断されただけなのでしょう。
致命傷になりそうな傷を負った人たちを優先的に治療して、邪神を追いかけようとしたところで、イオリさんとフィオナさんが合流しました。
「ナナちゃん、無事で良かった!」
「イオリさんも、お怪我はありませんでしたか」
「フィオナちゃんが守ってくれたからね。全然余裕だよ、余裕」
そんなことを言いながら、イオリさんにも少なくない傷が見えました。
イオリさんはアイドルだから、笑顔を作るのが上手です。傷が隠れていたらきっと誤魔化されていたと思います。
「そんなことないじゃないですか。ちょっとそこに座っててください」
「はーい」
瓦礫の上に腰かけたイオリさんに手をかざして、傷を癒します。
「あの邪神、イオリちゃんが見る限り、弱点とか無さそう。攻撃も避けるとか避けないとかそういう次元じゃないし……死んでないのが奇跡的だって思うくらい強かったね」
「強いのは、最初から分かってたことです。それでも、カイリ様や、みんなの為にも戦わないと」
「だよね~。カイリのため、だもんね」
わたしたちが比較的軽傷で済んでいるのは、イオリさんの力あってのものです。
初見の攻撃もすぐさま見きってくれるので、ダメージを最小限に抑えることができています。
「カイリ殿は果報者だな。こうも想ってくれる人がいるのは」
「フィオナさん……は、だいぶ綺麗ですね。傷とか無さそうです」
「伊達に騎士団長を名乗っていない……と、言いたいところだが、イオリのお陰だ。イオリが見てくれていたから、敵の攻撃を捌きやすかった」
フィオナさんは厄災の時も討伐隊隊長に任命されてましたし、実力が突出しています。
「おおよそ攻撃は把握できた。次こそは有効打をいれてくれよう」
わたしたちの中で邪神に攻撃を当てられるのはエリザベスさんか、フィオナさんしかいません。
主戦力たるフィオナさんがそう言ってくれるのは頼もしさしかないです。
「それで、奴は一体どこへ行ったのだろうな。全く見当もつかな――」
「アウスト王国、だよ。邪神はそっちの方面に向かっていった」
イオリさんが邪神の行く先を見てくれていたようでした。
それにしても、誰がどこへ向かったのかも見分けられる、「心眼」は本当にすごいです。
「行ったり来たり……大変ですね。――って、アウスト王国に向かったのでしたら、カイリ様が危険です!」
「それこそが、奴の狙いなんだろうな。アウスト王国で邪神から狙われそうなのは……カイリ殿くらいしかいない」
それなら急いで戻らないと。カイリ様を守るために戦いに来たのに……カイリ様を失うなんて、そんなこと絶対にさせません!
わたしたちは傷を治しきる間もなく、アウスト王国へと向かうのでした。
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