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第60話 「『本』の真相」
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気づくと、目の前にはナナの顔があった。
「――カイリ様!」
俺が起きたと知るや否やすぐさま抱きついてくる。
ずっと水中みたいな浮遊感で包まれていたから、物理的に触れるのがなんだか新鮮に感じる。
「カイリ様、お身体は大丈夫ですか。どこも怪我はないですか。気分悪いところとかないですか」
「ナナは過保護な親かよ。――大丈夫だ。心配してくれてありがとな」
「でも、安静にしててくださいね。もうわたしを心配させないでください」
ナナがほっぺを膨らませてる。こんな表情を見るのも久しぶりに感じるな。
「了解……って、素直に言いづらいな。これから神と戦うかもしれねえのに。あ、そうだ。あいつ……俺の中にいた邪神はどこ行ったんだ? てっきり起きたらいるもんだと思ってた」
辺りを見回しても見えてくるのは瓦礫の山と傷ついた人間ばかり。
「アレは、カナさんの身体を乗っ取って、どこかへ去っていきました。恐らく……他の国の王族を排除しに行ったのかと」
「なるほどな、確かにそうするか。誰が鍵かも分からねえしな」
「……カイリ様、今の説明で理解できたんですか? もう少し補足をしようと思っていたんですけど」
「いや、今ので十分だろ。どうせエリザベスを狙ったりしたんだろ」
「それは、確かにそうなんですけど……どうして分かるんですか? カイリ様は見てなかったはずですけど……もしかして、起きてらっしゃいました?」
「違うよ。ちゃんと気絶してたよ。ただ、あいつは絶対にエリザベスを見逃さねえと思ったんだ。エリザベスはいないけど……逃げ切れなかったか……」
「その点に関しては問題ないです。わたしとイオリさんでエリザベスさんと共闘して、邪神を追い払いました」
「すげえな!? そんなに強かったのかよ!?」
まさかエリザベスが神を追い払うくらい強いとは思わなかった。
ナナとイオリも協力したとはいえ、神の力は規格外だ。それを、俺は実体験で知っている
「エリザベスさんももちろんすごいですけど、カイリ様もすごいですよ。なんでわたしの情報だけで分かっちゃうんですか」
「話さねえといけないことが多そうだな、とにかく」
身体を起こして、
「みんなを呼びに行こう。話さなきゃいけないことがあるんだ」
◇
「カイリだ~! 本物だ~! イオリちゃんのアイドルが良き吸ってる~。立ってる~」
「珍動物を見るような目で俺を見るな。やめろ、くっつくな」
「そういって突き放さない辺り、アイドルにくっつかれて嬉しいんだね~。そういう素直なところ、かーわいいっ!」
もう神の力がないから異世界人を突き放せるほどの腕力がないんだよ……
異世界人は大体の人が俺より力強い。俺、鍛えてはないけどそこまで貧弱な身体じゃないのに。
「そんなことより、話をしなきゃいけないって言ってんだろ」
「その話は、妾をここに留めるほどの理由があるのか? 妾はすぐにでも神を自称する不届き者を滅しに行かねばならんのだが」
「お気に召すかは分かんねえけど……興味は示すだろうぜ」
「余興にもならん戯言をほぁけば即座にそっ首叩き落すぞ」
マジでやりそうなの怖いんだけど。なんでこんなに殺気立ってんのこの人。
「怖いこと言うなって。でも、大事な話だからやっておかないとって……。まあいいや、本題に入るぞ」
無駄話してると本当に首を落とされそうだから早速切り込んでいく。
「俺はアウスト王国の王城で、一冊の本を読んだ。宝箱に入ってたその本なんだけど、ただの本じゃなかったんだ。それを読んだ俺は――」
恐らく、俺以外の人間が見ても白紙のページだけの気味の悪い本だろう。だけど、俺は……
「――千年前の、追体験をしたんだ」
「――カイリ様!」
俺が起きたと知るや否やすぐさま抱きついてくる。
ずっと水中みたいな浮遊感で包まれていたから、物理的に触れるのがなんだか新鮮に感じる。
「カイリ様、お身体は大丈夫ですか。どこも怪我はないですか。気分悪いところとかないですか」
「ナナは過保護な親かよ。――大丈夫だ。心配してくれてありがとな」
「でも、安静にしててくださいね。もうわたしを心配させないでください」
ナナがほっぺを膨らませてる。こんな表情を見るのも久しぶりに感じるな。
「了解……って、素直に言いづらいな。これから神と戦うかもしれねえのに。あ、そうだ。あいつ……俺の中にいた邪神はどこ行ったんだ? てっきり起きたらいるもんだと思ってた」
辺りを見回しても見えてくるのは瓦礫の山と傷ついた人間ばかり。
「アレは、カナさんの身体を乗っ取って、どこかへ去っていきました。恐らく……他の国の王族を排除しに行ったのかと」
「なるほどな、確かにそうするか。誰が鍵かも分からねえしな」
「……カイリ様、今の説明で理解できたんですか? もう少し補足をしようと思っていたんですけど」
「いや、今ので十分だろ。どうせエリザベスを狙ったりしたんだろ」
「それは、確かにそうなんですけど……どうして分かるんですか? カイリ様は見てなかったはずですけど……もしかして、起きてらっしゃいました?」
「違うよ。ちゃんと気絶してたよ。ただ、あいつは絶対にエリザベスを見逃さねえと思ったんだ。エリザベスはいないけど……逃げ切れなかったか……」
「その点に関しては問題ないです。わたしとイオリさんでエリザベスさんと共闘して、邪神を追い払いました」
「すげえな!? そんなに強かったのかよ!?」
まさかエリザベスが神を追い払うくらい強いとは思わなかった。
ナナとイオリも協力したとはいえ、神の力は規格外だ。それを、俺は実体験で知っている
「エリザベスさんももちろんすごいですけど、カイリ様もすごいですよ。なんでわたしの情報だけで分かっちゃうんですか」
「話さねえといけないことが多そうだな、とにかく」
身体を起こして、
「みんなを呼びに行こう。話さなきゃいけないことがあるんだ」
◇
「カイリだ~! 本物だ~! イオリちゃんのアイドルが良き吸ってる~。立ってる~」
「珍動物を見るような目で俺を見るな。やめろ、くっつくな」
「そういって突き放さない辺り、アイドルにくっつかれて嬉しいんだね~。そういう素直なところ、かーわいいっ!」
もう神の力がないから異世界人を突き放せるほどの腕力がないんだよ……
異世界人は大体の人が俺より力強い。俺、鍛えてはないけどそこまで貧弱な身体じゃないのに。
「そんなことより、話をしなきゃいけないって言ってんだろ」
「その話は、妾をここに留めるほどの理由があるのか? 妾はすぐにでも神を自称する不届き者を滅しに行かねばならんのだが」
「お気に召すかは分かんねえけど……興味は示すだろうぜ」
「余興にもならん戯言をほぁけば即座にそっ首叩き落すぞ」
マジでやりそうなの怖いんだけど。なんでこんなに殺気立ってんのこの人。
「怖いこと言うなって。でも、大事な話だからやっておかないとって……。まあいいや、本題に入るぞ」
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「俺はアウスト王国の王城で、一冊の本を読んだ。宝箱に入ってたその本なんだけど、ただの本じゃなかったんだ。それを読んだ俺は――」
恐らく、俺以外の人間が見ても白紙のページだけの気味の悪い本だろう。だけど、俺は……
「――千年前の、追体験をしたんだ」
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