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4章 「魔物の王」
162話 「たまには平和な日常回」
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「それで、先生たちはユリアちゃんになんのようだったんですか~? 先生のためならなんでもしますよ~」
「俺が付与術師に興味があったってだけだ。ルナとメルトはそれに付き合ってくれてるだけで」
「そうなんですか~で、見たいものは見れました~?」
「十分わかったよ」
廃墟のような様相を見せていた小屋がきらびやかな応接間に変化した時点でユリアの実力は理解できた。
「それなら良かった~あ、ついでに魔道具なんかあげましょうか?」
「そんなご近所付き合いみたいな軽いノリで渡していいもんなのか……?」
「周りの人はユリアちゃんのこと凄い凄い言ってますけど~ユリアちゃんからしたら大したことはしてないのでね~どうせ使わないなら渡しちゃおうかと」
ユリアは自分の評価を理解できていない様子だった。シャルが使っていた魔道具のような超強力な武器を量産できる可能性があるとすればそれあ凄いなんて言葉では表現できないレベルのものだ。周囲がユリアを持ち上げるのも分かる。
「なにか欲しいものありますか~? この小屋にある分だけですけど、好きなの持ってっちゃっていいですよ~」
周りを見ると、枝や石で作ったらしい魔道具や剣や斧などの武器の形をした魔道具など、様々な商品が置かれていた。
「ユリアちゃんのおすすめはこれですよ~! 光る小刀! なんとただ発光するだけ! ピカピカなのでどこにいても一発で見つけられますね~!」
「誰が使うんだよ」
どうやら、なんの役にも立たない魔道具も作っていたようだ。ユリアが小刀に魔力を込めた直後、まばゆい光が部屋に満ちる。
だが、先ほどみたいに部屋が綺麗になったり、変化が起きたりはしていない。
「使わないんですか!? 最大発光時間約一日! いつでもどこでも光源を確保できる優れものですよ!?」
「使わねえよ。つーか、なんで刀の形にしちゃったんだよ。そのせいで余計使いづらいわ」
戦闘中に光を発しても効果はないし、日常生活に使うには刀の形である必要はない。どこに使うにしても中途半端で使いにくい奇跡みたいな廃棄物だ。
「そんなこと言わずに~。持ってても損はないんですから、ぜひぜひ~」
ユリアに無理やり渡される。流れで受け取ってしまったが、使い道が特にないことに変わらないので、隣に立っているルナに押し付ける。
「ル、ルナですか!? ルナに持たされても使わないかなーって思うんですけど……」
「先生にそんなゴm……いや、作品を渡すなんてとんでもない!」
「お前今ゴミって言いかけてただろ」
まさかの満場一致のゴミだった。作った本人ですらそう認識しているのは予想外すぎる。
「ししょー、どうします?」
「俺はもう愛刀があるから、ルナが持っておいてくれ。……せっかく貰ったんだから捨てるわけにも売るわけにもいかなしな」
「し、ししししし師匠ですか~! せ、先生の師匠……! あわわわわわわわ」
ルナの発言を聞いた瞬間にユリアが口から泡を吹く。
「すみませんでしたー! 先生にさらに上の師匠がいたなんて……ユリアちゃん大変失礼な態度を~!」
「大丈夫だよ。ていうか、土下座はやめてくれ。はたから見たら俺の悪役感が凄い」
地面に勢いよく頭をぶつけて綺麗な土下座を披露するユリア。立ち姿から土下座に変化するまでコンマ一秒。気持ちいいぐらい姿勢が良い土下座だが、ここまでして謝らせているファルベの立場的にはとても気まずい。というか、メルトからの視線が痛い。
「またなんかやったの? ファルベ」
「一部始終を見てたなら俺が悪くないことは分かるはずだけどな。……そろそろ頭を上げてくれよ。だんだん心が痛くなってきた」
大の大人が土下座をしている姿を見るのは心苦しい。多少無理やりにでもユリアの身体を起こさせる。
「別に俺はそんな大それた人間じゃねえから気にすんなよ」
「分かりました」
ファルベが気を遣った直後には立ち上がって何事もなかったようにケロッとした表情を浮かべる。
「切り替えはええな!?」
「ユリアちゃんの取り柄です! どやあ」
「どやあではない」
ポジティブすぎるユリアに振り回されつつ、ルナに光る廃棄物を押し付けることに成功したファルベ。そんな三人をしり目にメルトは魔道具を真剣な目つきで選別している。
「ユリアさん、これってどういうものなんですか?」
「あ~それはローブ型の魔道具だね~」
「服にも付与スキルって発動するんですね」
「石とか枝にできる時点でもはやなんでもありな感じはあるある~!」
自分の魔道具に興味を持ってくれたのが嬉しかったのか、ただでさえ高いテンションがさらに高くなっている。
「このローブには『魔力抑制』のスキルを付与してて、スキルとか、外部からの魔力の影響を受けにくいって性質があるんだ~。例えば、スキルで生み出した炎を全身で受けても燃え移らないって感じ。だけど、本物の炎は防げないけどね~。防げるのはあくまで魔力で生み出したものだけだから」
「なるほど。じゃあこれ貰っていってもいいですか?」
「いいよ~他にも欲しいのあったら勝手に取ってっちゃってもいいからね~」
「ありがとうございます……これは?」
「それ杖は……うーん、端的に言うと失敗作だね~」
「失敗作?」
メルトが不思議そうに小首を傾げる。今まで自分の魔道具を楽し気に語っていたユリアが、それだけは少しだけ嫌そうな顔をしていたからだ。
「ユリアちゃんが先生のスキルを初めて付与しようとしたときに作ったやつなんだけど……先生のスキルが強力すぎてその魔道具を発動したら持ち主も含めて周囲に電撃が走るという欠陥があるんだよね~杖って基本的には手で持つでしょ? そしたら本人も感電しちゃうし、周りには被害出るしでもはやどうしようもないよね~ってことで封印してたんだ~だからあんまり触らない方がいいと思うよ~?」
メルトの身の危険を危惧して、ユリアがそれを回収しようとする。だけど、メルトはその杖から手を離そうとしない。
「……どうしたの? 一応魔力を込めないと起動しないとはいえ、危ないよ~?」
「これ……」
メルトがふと呟く。
「これをください!」
「俺が付与術師に興味があったってだけだ。ルナとメルトはそれに付き合ってくれてるだけで」
「そうなんですか~で、見たいものは見れました~?」
「十分わかったよ」
廃墟のような様相を見せていた小屋がきらびやかな応接間に変化した時点でユリアの実力は理解できた。
「それなら良かった~あ、ついでに魔道具なんかあげましょうか?」
「そんなご近所付き合いみたいな軽いノリで渡していいもんなのか……?」
「周りの人はユリアちゃんのこと凄い凄い言ってますけど~ユリアちゃんからしたら大したことはしてないのでね~どうせ使わないなら渡しちゃおうかと」
ユリアは自分の評価を理解できていない様子だった。シャルが使っていた魔道具のような超強力な武器を量産できる可能性があるとすればそれあ凄いなんて言葉では表現できないレベルのものだ。周囲がユリアを持ち上げるのも分かる。
「なにか欲しいものありますか~? この小屋にある分だけですけど、好きなの持ってっちゃっていいですよ~」
周りを見ると、枝や石で作ったらしい魔道具や剣や斧などの武器の形をした魔道具など、様々な商品が置かれていた。
「ユリアちゃんのおすすめはこれですよ~! 光る小刀! なんとただ発光するだけ! ピカピカなのでどこにいても一発で見つけられますね~!」
「誰が使うんだよ」
どうやら、なんの役にも立たない魔道具も作っていたようだ。ユリアが小刀に魔力を込めた直後、まばゆい光が部屋に満ちる。
だが、先ほどみたいに部屋が綺麗になったり、変化が起きたりはしていない。
「使わないんですか!? 最大発光時間約一日! いつでもどこでも光源を確保できる優れものですよ!?」
「使わねえよ。つーか、なんで刀の形にしちゃったんだよ。そのせいで余計使いづらいわ」
戦闘中に光を発しても効果はないし、日常生活に使うには刀の形である必要はない。どこに使うにしても中途半端で使いにくい奇跡みたいな廃棄物だ。
「そんなこと言わずに~。持ってても損はないんですから、ぜひぜひ~」
ユリアに無理やり渡される。流れで受け取ってしまったが、使い道が特にないことに変わらないので、隣に立っているルナに押し付ける。
「ル、ルナですか!? ルナに持たされても使わないかなーって思うんですけど……」
「先生にそんなゴm……いや、作品を渡すなんてとんでもない!」
「お前今ゴミって言いかけてただろ」
まさかの満場一致のゴミだった。作った本人ですらそう認識しているのは予想外すぎる。
「ししょー、どうします?」
「俺はもう愛刀があるから、ルナが持っておいてくれ。……せっかく貰ったんだから捨てるわけにも売るわけにもいかなしな」
「し、ししししし師匠ですか~! せ、先生の師匠……! あわわわわわわわ」
ルナの発言を聞いた瞬間にユリアが口から泡を吹く。
「すみませんでしたー! 先生にさらに上の師匠がいたなんて……ユリアちゃん大変失礼な態度を~!」
「大丈夫だよ。ていうか、土下座はやめてくれ。はたから見たら俺の悪役感が凄い」
地面に勢いよく頭をぶつけて綺麗な土下座を披露するユリア。立ち姿から土下座に変化するまでコンマ一秒。気持ちいいぐらい姿勢が良い土下座だが、ここまでして謝らせているファルベの立場的にはとても気まずい。というか、メルトからの視線が痛い。
「またなんかやったの? ファルベ」
「一部始終を見てたなら俺が悪くないことは分かるはずだけどな。……そろそろ頭を上げてくれよ。だんだん心が痛くなってきた」
大の大人が土下座をしている姿を見るのは心苦しい。多少無理やりにでもユリアの身体を起こさせる。
「別に俺はそんな大それた人間じゃねえから気にすんなよ」
「分かりました」
ファルベが気を遣った直後には立ち上がって何事もなかったようにケロッとした表情を浮かべる。
「切り替えはええな!?」
「ユリアちゃんの取り柄です! どやあ」
「どやあではない」
ポジティブすぎるユリアに振り回されつつ、ルナに光る廃棄物を押し付けることに成功したファルベ。そんな三人をしり目にメルトは魔道具を真剣な目つきで選別している。
「ユリアさん、これってどういうものなんですか?」
「あ~それはローブ型の魔道具だね~」
「服にも付与スキルって発動するんですね」
「石とか枝にできる時点でもはやなんでもありな感じはあるある~!」
自分の魔道具に興味を持ってくれたのが嬉しかったのか、ただでさえ高いテンションがさらに高くなっている。
「このローブには『魔力抑制』のスキルを付与してて、スキルとか、外部からの魔力の影響を受けにくいって性質があるんだ~。例えば、スキルで生み出した炎を全身で受けても燃え移らないって感じ。だけど、本物の炎は防げないけどね~。防げるのはあくまで魔力で生み出したものだけだから」
「なるほど。じゃあこれ貰っていってもいいですか?」
「いいよ~他にも欲しいのあったら勝手に取ってっちゃってもいいからね~」
「ありがとうございます……これは?」
「それ杖は……うーん、端的に言うと失敗作だね~」
「失敗作?」
メルトが不思議そうに小首を傾げる。今まで自分の魔道具を楽し気に語っていたユリアが、それだけは少しだけ嫌そうな顔をしていたからだ。
「ユリアちゃんが先生のスキルを初めて付与しようとしたときに作ったやつなんだけど……先生のスキルが強力すぎてその魔道具を発動したら持ち主も含めて周囲に電撃が走るという欠陥があるんだよね~杖って基本的には手で持つでしょ? そしたら本人も感電しちゃうし、周りには被害出るしでもはやどうしようもないよね~ってことで封印してたんだ~だからあんまり触らない方がいいと思うよ~?」
メルトの身の危険を危惧して、ユリアがそれを回収しようとする。だけど、メルトはその杖から手を離そうとしない。
「……どうしたの? 一応魔力を込めないと起動しないとはいえ、危ないよ~?」
「これ……」
メルトがふと呟く。
「これをください!」
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