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3章 「正義と信じた戦い」
103話 「逆転の目」
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「きゃあ!」
腕を切られたというのに、女は随分と可愛らしい悲鳴をあげて飛び退る。
女はまるで腕を切られた痛みが快感にでも変わっているかのような、光悦した表情を浮かべて、
「ああっ、いいわ! 今の一撃は効いたわ!」
自分の身が傷付けられたことも気にせず女は歓喜の言葉を告げる。
「なんだよ、こいつ……」
信じられない反応にファルベは驚きを通り越してドン引きする。
今まで重傷を負っても気にせず戦いを挑んでくる人間はいた。だが、傷を負ったことを喜ぶ人間などいたことはない。というかいていいはずがない。
「あら、怖がらせちゃったかしら? 大丈夫よ。だって私、この程度の傷は昔からよくついていたもの」
そう言うと、女は左腕を前に突き出し、力を込める。すると、
「嘘、だろ……」
腕の切断面から新しい腕が生えてきた。そして、流れ出ていたはずの血も止まり、腕についた血を拭き取ればそこには色白な肌の無傷な腕があった。
攻撃が全くの無意味と化した現実を受け止めきれないファルベは一瞬思考が停止する。
「あはは、驚いた顔も可愛いわね。わざと切られてあげた甲斐があったわ」
「わざと……?」
「そうよ。あなたじゃ私に勝てないって事実を伝えたくって。一番わかりやすいのがこれだったの。実際、あなた今絶望してるでしょう? せっかく届いた攻撃がなんの意味もなさずに終わってしまったことに」
女は慈愛に満ちた微笑みを浮かべながら、さっきの出来事の真相を話す。
正直なところ、ファルベ自身もおかしいとは思っていた。ファルベが全力で走ったところで彼女の高速移動には追いつけないし、超えることは尚更できない。
それなのにあれほどあっさり攻撃を当てられたというのは、やはりどこかおかしかった。
女は、長い金髪を指先で弄びながら、
「あなたより素早く動けて、あなたより遠くから攻撃できて、あなたにない治癒能力も持ってる。むしろあなたの優れているところを探す方が難しいわ」
優しく、ファルベに勝ち目がないことを伝えてくる。
直後、女はファルベの目の前まで迫る。目で追えないほどの速度で距離を詰めてきたのだ。そして、その場から動かないファルベの顔に自身の顔を近づけ、もはや鼻の先同士が接触するのではというところまできて、
「なあ、ひとつだけ言ってもいいか」
「なあに?」
ファルベは、片手を持ち上げると言った。
「どんだけ戦意のなさそうな相手でも、迂闊に近づかない方がいいぜ」
持ち上げた手を女の眼球に向けて、
「この距離なら、外さない」
その確信を得た。直後、女の目は黒く塗りつぶされ、完全にその役割を放棄した。
腕を切られたというのに、女は随分と可愛らしい悲鳴をあげて飛び退る。
女はまるで腕を切られた痛みが快感にでも変わっているかのような、光悦した表情を浮かべて、
「ああっ、いいわ! 今の一撃は効いたわ!」
自分の身が傷付けられたことも気にせず女は歓喜の言葉を告げる。
「なんだよ、こいつ……」
信じられない反応にファルベは驚きを通り越してドン引きする。
今まで重傷を負っても気にせず戦いを挑んでくる人間はいた。だが、傷を負ったことを喜ぶ人間などいたことはない。というかいていいはずがない。
「あら、怖がらせちゃったかしら? 大丈夫よ。だって私、この程度の傷は昔からよくついていたもの」
そう言うと、女は左腕を前に突き出し、力を込める。すると、
「嘘、だろ……」
腕の切断面から新しい腕が生えてきた。そして、流れ出ていたはずの血も止まり、腕についた血を拭き取ればそこには色白な肌の無傷な腕があった。
攻撃が全くの無意味と化した現実を受け止めきれないファルベは一瞬思考が停止する。
「あはは、驚いた顔も可愛いわね。わざと切られてあげた甲斐があったわ」
「わざと……?」
「そうよ。あなたじゃ私に勝てないって事実を伝えたくって。一番わかりやすいのがこれだったの。実際、あなた今絶望してるでしょう? せっかく届いた攻撃がなんの意味もなさずに終わってしまったことに」
女は慈愛に満ちた微笑みを浮かべながら、さっきの出来事の真相を話す。
正直なところ、ファルベ自身もおかしいとは思っていた。ファルベが全力で走ったところで彼女の高速移動には追いつけないし、超えることは尚更できない。
それなのにあれほどあっさり攻撃を当てられたというのは、やはりどこかおかしかった。
女は、長い金髪を指先で弄びながら、
「あなたより素早く動けて、あなたより遠くから攻撃できて、あなたにない治癒能力も持ってる。むしろあなたの優れているところを探す方が難しいわ」
優しく、ファルベに勝ち目がないことを伝えてくる。
直後、女はファルベの目の前まで迫る。目で追えないほどの速度で距離を詰めてきたのだ。そして、その場から動かないファルベの顔に自身の顔を近づけ、もはや鼻の先同士が接触するのではというところまできて、
「なあ、ひとつだけ言ってもいいか」
「なあに?」
ファルベは、片手を持ち上げると言った。
「どんだけ戦意のなさそうな相手でも、迂闊に近づかない方がいいぜ」
持ち上げた手を女の眼球に向けて、
「この距離なら、外さない」
その確信を得た。直後、女の目は黒く塗りつぶされ、完全にその役割を放棄した。
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