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2章 「永遠の罪」
72話 「姉妹のような」
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メルトと向かい合った瞬間、ルナは緊張した心が緩んでいくのを感じて、自分で驚く。何度か話して結構打ち解けているつもりではいたが、何せファルベに「呪い」をかけた張本人だ。
いつまでもそれに引っ張られるほど根に持つタイプではなくとも、安心するような、心が落ち着く相手になるなんて予想もしていなかった。
とはいえそんな心境はおくびにも出さず、ルナはいつも通りに話しかける。
「時間ですか……はい、大丈夫ですよ。ししょーが出てくるのはもう少し経ってからですし」
「そっか、ありがとう。でもここだと誰かに話を訊かれちゃいそうだし、場所変えよっか。あ、いや別に人に聞かれちゃまずいこととか、変なこと話すわけじゃないよ。一応、念のためだから」
話す内容に関しては、おおよその検討は付いている――というより、今日この瞬間、この時間で話す内容など、一つしかない。
ただ、ルナには一つ違和感を覚えるところがあった。ルナの前に立つ彼女――メルトは、「冒険者狩り」という存在に対して並々ならぬ感情を抱いている。
それは、冒険者狩りが処刑されたという情報を受けても尚、この世のどこかに存在していると信じ込み、他国に渡ってまで復讐を果たしに来る程に。
そんな彼女が、ルナの前だからとはいえ、冒険者狩りの話題でこんなに平常心を保っていられるのだろうか。普通に、普段通りに接してこれるものなのか。
まして、この村に冒険者狩りが来ていると聞いた上で、だ。
「念のため、ですか。ルナは全然大丈夫ですよ。それでは、どこにしましょうか」
「そうだね……どこにしよっか。ごめん、私から提案したのに何も考えてなかった……。うーん、取り敢えず広場からそんなに遠く離れたくはないし、できるだけ近くであんまり人目につきにくい場所……」
広場に集まる人だかりは増えていくばかりで、減る様子はない。そんな中で人目につきにくい場所なんてそうそう思いつかない。この村に詳しいメルトですらすぐには見つからないのだから、ルナなら尚更だ。
少しの間、悩ましそうに腕を組み、首を揺らしていたが、突然何か思いついたかのように「あっ!」と声を出すと、
「そうだ!私の家に来ない?この広場からもそんなに遠くないし、部屋の中だから他の人に聞かれないし、お菓子とかお茶とか用意できるよ。あ、でも……ルナちゃん次第だけど……」
ルナとしてもファルベが出てくるまではやることがない。集まった村の人と話して交流を広めておくのも大切だろうが、メルトに付いて行った方が良いような気がする。
そうだ。特に意味はないが、行った方が良い気がする。何となく、ただの気分で、他意はない。他意はないのだ、本当に。
「お菓子に釣られたわけじゃないですから……」
「ん? ルナちゃん、何か言った?」
「いえ、何でもないですよ~」
吹けない口笛を吹いて、乾いた音を立てる。自然と目が泳ぎ、見るからにやましいことを隠しているような子供っぽい仕草ではあるが、本人はそれに気づいていない。もしかしたら、上手く誤魔化せていると思っている可能性すらあるのがルナらしいところではあるが。
そんな思惑があったりなかったり、メルトに付いていくことに決めたルナは、元気よく頷く。
特にルナが何かをするわけでもなく、主役は師匠であるファルベのはずなのに、下手をすると本人以上に緊張していたルナにはちょうどいい息抜きだ。
メルトもルナの考えを知ってかしらずか、優しく微笑むと、
「ありがとう! じゃあ、付いてきて!」
と、そんなことを言いつつ、ルナの手を引いて歩く。
「いえ、ルナは自分で歩きますから……」
別にそれが不快だったわけでもないが、突然の出来事に理解が追いつかず、思わず否定してしまう。むしろ、ルナはこうして接してくれるような人間など、これまでに経験したことはなかったので物珍しく、嬉しいという気持ちもあったりするのだが、
「あ、ごめんね! 迷惑だったかな」
「そんなことはないですよ。ルナとしては、嬉しいくらいですので……お姉さんができたみたいで」
ルナに姉も妹もいないが、こうして手を引いてくれるメルトは側から見ると、姉妹のように見えるのだろうか。
そう見られたとしてもルナは迷惑なんかじゃない。だから、
「だから、ルナの方からお願いしますね」
優しく触れるように握るメルトの手をキュッと柔らかく握り返し、微笑む。
「――!」
メルトは驚いたような顔をして、その後顔を真っ赤に染めると、コクコクと頷いて、再び歩き出す。
二人は、どこか気恥ずかしいながらも、仲睦まじい姉妹のような雰囲気で、メルトの家に向かっていった。
いつまでもそれに引っ張られるほど根に持つタイプではなくとも、安心するような、心が落ち着く相手になるなんて予想もしていなかった。
とはいえそんな心境はおくびにも出さず、ルナはいつも通りに話しかける。
「時間ですか……はい、大丈夫ですよ。ししょーが出てくるのはもう少し経ってからですし」
「そっか、ありがとう。でもここだと誰かに話を訊かれちゃいそうだし、場所変えよっか。あ、いや別に人に聞かれちゃまずいこととか、変なこと話すわけじゃないよ。一応、念のためだから」
話す内容に関しては、おおよその検討は付いている――というより、今日この瞬間、この時間で話す内容など、一つしかない。
ただ、ルナには一つ違和感を覚えるところがあった。ルナの前に立つ彼女――メルトは、「冒険者狩り」という存在に対して並々ならぬ感情を抱いている。
それは、冒険者狩りが処刑されたという情報を受けても尚、この世のどこかに存在していると信じ込み、他国に渡ってまで復讐を果たしに来る程に。
そんな彼女が、ルナの前だからとはいえ、冒険者狩りの話題でこんなに平常心を保っていられるのだろうか。普通に、普段通りに接してこれるものなのか。
まして、この村に冒険者狩りが来ていると聞いた上で、だ。
「念のため、ですか。ルナは全然大丈夫ですよ。それでは、どこにしましょうか」
「そうだね……どこにしよっか。ごめん、私から提案したのに何も考えてなかった……。うーん、取り敢えず広場からそんなに遠く離れたくはないし、できるだけ近くであんまり人目につきにくい場所……」
広場に集まる人だかりは増えていくばかりで、減る様子はない。そんな中で人目につきにくい場所なんてそうそう思いつかない。この村に詳しいメルトですらすぐには見つからないのだから、ルナなら尚更だ。
少しの間、悩ましそうに腕を組み、首を揺らしていたが、突然何か思いついたかのように「あっ!」と声を出すと、
「そうだ!私の家に来ない?この広場からもそんなに遠くないし、部屋の中だから他の人に聞かれないし、お菓子とかお茶とか用意できるよ。あ、でも……ルナちゃん次第だけど……」
ルナとしてもファルベが出てくるまではやることがない。集まった村の人と話して交流を広めておくのも大切だろうが、メルトに付いて行った方が良いような気がする。
そうだ。特に意味はないが、行った方が良い気がする。何となく、ただの気分で、他意はない。他意はないのだ、本当に。
「お菓子に釣られたわけじゃないですから……」
「ん? ルナちゃん、何か言った?」
「いえ、何でもないですよ~」
吹けない口笛を吹いて、乾いた音を立てる。自然と目が泳ぎ、見るからにやましいことを隠しているような子供っぽい仕草ではあるが、本人はそれに気づいていない。もしかしたら、上手く誤魔化せていると思っている可能性すらあるのがルナらしいところではあるが。
そんな思惑があったりなかったり、メルトに付いていくことに決めたルナは、元気よく頷く。
特にルナが何かをするわけでもなく、主役は師匠であるファルベのはずなのに、下手をすると本人以上に緊張していたルナにはちょうどいい息抜きだ。
メルトもルナの考えを知ってかしらずか、優しく微笑むと、
「ありがとう! じゃあ、付いてきて!」
と、そんなことを言いつつ、ルナの手を引いて歩く。
「いえ、ルナは自分で歩きますから……」
別にそれが不快だったわけでもないが、突然の出来事に理解が追いつかず、思わず否定してしまう。むしろ、ルナはこうして接してくれるような人間など、これまでに経験したことはなかったので物珍しく、嬉しいという気持ちもあったりするのだが、
「あ、ごめんね! 迷惑だったかな」
「そんなことはないですよ。ルナとしては、嬉しいくらいですので……お姉さんができたみたいで」
ルナに姉も妹もいないが、こうして手を引いてくれるメルトは側から見ると、姉妹のように見えるのだろうか。
そう見られたとしてもルナは迷惑なんかじゃない。だから、
「だから、ルナの方からお願いしますね」
優しく触れるように握るメルトの手をキュッと柔らかく握り返し、微笑む。
「――!」
メルトは驚いたような顔をして、その後顔を真っ赤に染めると、コクコクと頷いて、再び歩き出す。
二人は、どこか気恥ずかしいながらも、仲睦まじい姉妹のような雰囲気で、メルトの家に向かっていった。
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