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42【エドワルド視点】
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【エドワルド視点】
久しぶりに学園に来た。当たり前だが、全然変わっていないな。
今日は今年卒業する生徒に向けた、進路の説明会の為に来ている。いつもなら、父親か父親の側近のどちらかが来るのだが今日は両親にお前が行ってこいと無理やり送り出された。
毎年、数人はエイガ公爵領の騎士団で働きたいという者がいる。自分の剣の腕をもっと磨きたいといったものもいれば、家を継がない者たちが生計をたてるために、魔物討伐という稼ぎのいい仕事を求めてくる者もいる。まぁ、一番多いのは外見に難のあるものがエイガ公爵領でなら、周りの目が気にならないからと来る者がほとんどだが。
両親に送り出される際に『時間があればミリアリア様とお話してきたらいいんじゃない。学校が始まってしまっては、なかなか会えないでしょう。チャンスがあるときに会わないとね』と、少し前までこの婚約を解消しようとしていた二人には見えない反応を示す。
婚約の契約書にサインをした翌日の朝までは『あくまでこれは仮の婚約でしょうから、ちゃんと弁えておかないとね。期待してはダメよ』なんて言っていたのに、その日の夜になる頃には『ミリアリア様が我が家に嫁いできてくれるなんてねぇ。なんて幸せなのかしら。今から、お部屋を整えておかないとね。どんな家具が好みかしら。ああ、庭園の花もミリアリア様がお好きな花を植えて差し上げましょう。準備が楽しみだわ』なんて、凄い変わりようだった。
内心、その準備は無駄になるだろうから止めさせてほうがいいと父親を見れば『そうだな! こうしちゃいられない。明日にでも商人を呼ぼう』なんて言い始めた。
おいおい、期待してはダメって言ってた口が何を言ってる。あんたたちこそ期待しすぎだろ。どうせ、ミリアリア様と結婚なんて無理に決まってるんだから。
今まで使用人たちもこの婚約を真に受けてはいないようだったが、両親の変わりようを見てこれは本当に本当かもと、まるでお祭り騒ぎのように次の日からバタバタとミリアリア様のための準備をし始めた。
まかり間違って、本当に結婚するとしても、あと三年は先の話だぞ。早すぎるだろう。
家令には『坊っちゃん、いいですか。婚約者となったなら、今後ミリアリア様が邸に来ることも増えましょう。嫁いで来る女性は、婚家の方々にどのような態度を取られるか不安を感じられる方がほとんどです。ですから、お迎えする私達は最大限の歓迎のおもてなしをいたします。将来自分の部屋になる場所に自分好みの家具があり、庭には好きな花が植えられている。自分は歓迎されているのだと安心されること間違いなしです』なんて言われた。
いや、むしろ怖いだろう。そんなに前から用意されていたら【絶対に逃さない】という強い意志を感じて恐怖しかないだろ。
それに、リンダ嬢の時とやってること違うよな。リンダ嬢の時には『私達が好みではないものをご用意するより、リンダ様が嫁いでこられたときに好みのものを用意いたします』と言って、まったく準備していなかったよな。まぁ、家令や使用人たちはあの女の本性に気づいていたのだろう。みんな雑に扱ったりはしなかったが、とても余所余所しい態度だった。
そんなことを振り返りながら、学園内を歩いているとなにやら騒がしくなってきた。
久しぶりに学園に来た。当たり前だが、全然変わっていないな。
今日は今年卒業する生徒に向けた、進路の説明会の為に来ている。いつもなら、父親か父親の側近のどちらかが来るのだが今日は両親にお前が行ってこいと無理やり送り出された。
毎年、数人はエイガ公爵領の騎士団で働きたいという者がいる。自分の剣の腕をもっと磨きたいといったものもいれば、家を継がない者たちが生計をたてるために、魔物討伐という稼ぎのいい仕事を求めてくる者もいる。まぁ、一番多いのは外見に難のあるものがエイガ公爵領でなら、周りの目が気にならないからと来る者がほとんどだが。
両親に送り出される際に『時間があればミリアリア様とお話してきたらいいんじゃない。学校が始まってしまっては、なかなか会えないでしょう。チャンスがあるときに会わないとね』と、少し前までこの婚約を解消しようとしていた二人には見えない反応を示す。
婚約の契約書にサインをした翌日の朝までは『あくまでこれは仮の婚約でしょうから、ちゃんと弁えておかないとね。期待してはダメよ』なんて言っていたのに、その日の夜になる頃には『ミリアリア様が我が家に嫁いできてくれるなんてねぇ。なんて幸せなのかしら。今から、お部屋を整えておかないとね。どんな家具が好みかしら。ああ、庭園の花もミリアリア様がお好きな花を植えて差し上げましょう。準備が楽しみだわ』なんて、凄い変わりようだった。
内心、その準備は無駄になるだろうから止めさせてほうがいいと父親を見れば『そうだな! こうしちゃいられない。明日にでも商人を呼ぼう』なんて言い始めた。
おいおい、期待してはダメって言ってた口が何を言ってる。あんたたちこそ期待しすぎだろ。どうせ、ミリアリア様と結婚なんて無理に決まってるんだから。
今まで使用人たちもこの婚約を真に受けてはいないようだったが、両親の変わりようを見てこれは本当に本当かもと、まるでお祭り騒ぎのように次の日からバタバタとミリアリア様のための準備をし始めた。
まかり間違って、本当に結婚するとしても、あと三年は先の話だぞ。早すぎるだろう。
家令には『坊っちゃん、いいですか。婚約者となったなら、今後ミリアリア様が邸に来ることも増えましょう。嫁いで来る女性は、婚家の方々にどのような態度を取られるか不安を感じられる方がほとんどです。ですから、お迎えする私達は最大限の歓迎のおもてなしをいたします。将来自分の部屋になる場所に自分好みの家具があり、庭には好きな花が植えられている。自分は歓迎されているのだと安心されること間違いなしです』なんて言われた。
いや、むしろ怖いだろう。そんなに前から用意されていたら【絶対に逃さない】という強い意志を感じて恐怖しかないだろ。
それに、リンダ嬢の時とやってること違うよな。リンダ嬢の時には『私達が好みではないものをご用意するより、リンダ様が嫁いでこられたときに好みのものを用意いたします』と言って、まったく準備していなかったよな。まぁ、家令や使用人たちはあの女の本性に気づいていたのだろう。みんな雑に扱ったりはしなかったが、とても余所余所しい態度だった。
そんなことを振り返りながら、学園内を歩いているとなにやら騒がしくなってきた。
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