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 宰相、ごめんなさい。勘違いしてました。
 お兄様を謹慎にするなんて!   って、思ってたけど、諸悪の根源、私から守るためだったのね……
 よっぽど、ヤバい子どもだと思われてたのね、私って。



 お兄様が謹慎されている、西の塔の部屋の前に着いて、一呼吸。
 私の後ろには、ライザと宰相がいる。宰相は、おそらく本当に私が謝るだけなのか確認するためだろう。
 信用ないのは、今までの私からしたら仕方がない。これからは、怖がられないように、信用されるように努力しないと。

 コンコン。扉をノックすると、どうぞ。と、お兄様の声が返ってきた。

 失礼します、と声をかけて部屋の中へ入る。
 お兄様は、私がここまで来たことにとても驚いたみたい。驚いた拍子に、大きな目がこれ異常ないほど見開かれている。

 良かった、お顔に傷はないみたいだし、お元気そうだわ。
 あー、やっぱりお兄様って、イケメン。眼福眼福。と、見惚れていると、お兄様は居心地が悪そうな表情を浮かべる。

「ミリアリア、目を覚ましたんだね。良かった。ここまで来るなんて、どうしたの?   僕は謹慎の身なのだけれど」

 まずい、ここへ来た目的を果たさなければ。
 ふと、お兄様の手の甲をみると包帯が巻かれていた。
 これって、あの時の傷のせいよね……そう思うと、自然と涙が零れてきた。
 お兄様は、私が泣き始めてしまいギョッとした顔をされた。

「ごめ、ごめんなさい、お兄様ーーー。わた、し、わたしのせいでお兄様がお怪我をされ、されて。ほんとに、ほんとうにごめんなさーーーーーい」

 謝罪の言葉とともに、さっきの比ではないほどの涙がダバダバ流れ出す。

 まさか私が謝り、泣くとは思っていなかったのだろう。お兄様はオロオロして、大丈夫だよ。大した傷じゃない。念の為、包帯を巻いているだけだから。と、包帯を外して傷を見せてくれた。

 大した傷ではない、と言っているが、私からしてみれば、そこそこ大きな傷に見えた。
 それなのに、大丈夫、大丈夫だよ。と、泣き止まない私の背中を優しくさすってくれる。
 優しすぎます、お兄様。私のせいだし、今までお兄様のことを馬鹿にするような態度ばかりしていた私を、危険から庇っただけではなく、今もこうして慰めてくれるなんて。

「ミリアリア、本当に大したことないんだよ。剣の稽古でも、それなりに怪我はするから」

 そう言って、笑ってみせるお兄様。
 そこで私はまた、ブワッと涙が吹き出す。

「ど、どうしたの」

「お兄様は、もう私のことをミリーとは呼んでくれないのですか?   私から言ったことだけど……でも、またミリーって呼んでほしいです」

 またも驚いた顔をするお兄様。

「いいのかい?」

「わた、わたしのこと、き、嫌いになりましたか?」

「嫌いになるわけ無いだろう。ミリーは僕のたった一人の妹なんだから」

 遠慮がちに私のことを抱きしめてくれたお兄様に、私からひしっと抱きつくと、背中をポンポンと優しく叩いてくれた。

「お兄様、ここを出ましょう。宰相には、私の自業自得なのだから、お兄様の謹慎を解いてってお話をしたの」

「そうだったのか。宰相、色々と迷惑をかけた」

 私の後ろにいた宰相に声をかけると、とんでもないです。と、頭を下げる宰相。

 そこでふと周りをみると、ライザと宰相の他にも人がいることに気がつく。
 そう、エドワルド様もお兄様とご一緒だったのだ。
 え、待って、待って。あんなみっともなく泣いていた顔を、エドワルド様にも見られたってこと……?

 ぎゃーーーーーーーーー


 



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