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第13話 やめてあげて、彼等の好感度はもう下がりようが無いわ②
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クリス先輩の話はこうだった。
サラディナーサの系列店の雑貨屋の前で、ショーウィンドウを見ている可愛い女の子。ここ数日、良く見かけるなぁと思い、声をかけようとドアをあけたらしい。
するとクリス先輩に気が付いた彼女は駆け寄るとこう言った。
「私をここで働かせてくれるよね!!」
え??である。就業できるような年齢でも無い子がいきなり雇ってくれて当然!みたいな態度で来たらそりゃ戸惑うよねぇ……。
ちなみに設定だと、母親の誕生日にプレゼントがしたい――けれど、あげたいものはお小遣いで買うには高すぎて……。
幾日もショーウィンドウに張り付いているヒロインに気が付いたクリス先輩は彼女から事情を聞くのだ。
ヒロインの家は裕福では無くて、母親は住み込みの仕事でいつも大変そう。
クリス先輩に「おかあさん、いつもありがとう」の気持ちと共に誕生日プレゼントをあげたいの――とヒロインは一所懸命に説明するのだ。
それから、ヒロインは最初はジュエリーショップに行ったものの、そちらは門前払い。ここの髪飾りなら――と思ったけれど、貯めているお小遣いだとまだ足りない。誰か買って行ってしまわないかと、毎日見に来ていると説明する。
『幾らくらい貯められたの??』
そうクリス先輩が確認すれば、髪飾りの半分位は貯められたらしい。クリス先輩はお店の店長に事情を話し、ヒロインにお店のお手伝いをお願いする。
そうして、誕生日当日――ヒロインは可愛らしいお花の髪飾りを手に入れるのだ。クリス先輩は更に、母親とデザインが一緒のヘアピンをヒロインにプレゼントする――。それが、ゲームでの設定。
じゃあ実際はどうなったのかと言うと。
「いきなりそんな事を言われても、雇う訳にもいかないですしね。断ったら、それから毎日店に押しかけて来まして……」
出禁――というか、店の周囲に近寄る事を禁止と言う状況になったらしいです。
なんでそうなったかって言えば、出禁にした後、店の周りで騒ぎ続けたらしい。母親が土下座する勢いで謝りに来たらしくって、私はそのお母さんにも同情した。
「禁止した後も暫く、煩かったんですけどね、その子の義弟が物凄い顔をして引きずって帰ってました」
「義弟?」
「えぇ、義弟は再婚相手の連れ子らしいですね。何でも再婚相手が事故で亡くなってしまい、母親は実家の伝手を頼って二人を養う為に住み込みの仕事を始めたとか。義弟の方は優秀だし、ちゃんとした常識人ですよ。母親の方もしっかりした人に見えたのですが……正直、彼女がなんであんな性格になったのか理解できないですね」
ですよねー。中身が転生者だからと言えない私は、曖昧に苦笑した。
それにしても、フラグと好感度をベキベキと折ってくなぁ……。確定イベントだからって何も考えて無かったのかもしれないけれど。
本来だったら、声をかけて貰ってから始まるイベントの筈なのにクリス先輩の時も、ベルナドット様の時もガンガン行こうぜ!って感じで行動しちゃってるし……。
首席合格の時と同じで、どう行動しても結果は変わらないと思ってたんだろうなぁ。ここまで来るとヒロインをやりたくないからフラグを折ってまわってるんじゃないかとすら思える。
万が一そうだった場合は中身がレイナじゃない事が確定する訳ですが……。
「……」
クリス先輩の話を聞いた後、その場は沈黙に包まれた。満場一致でヒロインが危険物として認識された瞬間だったと思います。えぇ……。
アルは考え込むような様子を見せた後、クリス先輩に声を掛けた。
「義弟を優秀と言う位なら、交流があるのだろうか?」
「――はい。というか、義姉の方にバレないようにしながら友人として付き合っています」
義弟の名前はダグ・ネージュ。義姉と違い魔力が無い為、同い年の彼は学園の一般学部に通っているらしい。将来は会計士を希望しているらしく、サラディナーサの系列店でアルバイトをしているらしい。
この学園は魔力があるか無いかで授業のカリキュラムが大分変わるために校舎は別――こちらの校舎には、勝手に魔術を使えないような結界が張ってあったり、暴発を防ぐ対策が取られてるからね。
文化祭のように合同でするイベントもあるにはあるけど、基本的に一般学部とあまり交流は無い。
「その義弟を紹介して貰う事はできるかな……?あぁ、咎めたり文句を言いたい訳じゃない――彼女のあの感じと君達の話を考えると、このまま諦めてもらえなさそうな気がして……。その彼に対処法がもしあれば教えて欲しいと思ってね……」
「――分かりました。アルフリード殿下のご予定に合わせます。いつが良いでしょう?」
「出来るだけ早く――あぁ、でも無理はしないでくれ。こちらは相談する側だしね」
分かりました――とクリス先輩は返事をした。
そうして私とアルは後日――ヒロインの義弟、ダグ・ネージュに会う事となる。
___________________________________________________________________________________
おはようございます。
次から2、3話予定ですが、「一之瀬 昴」と「北小路 レイナ」の閑話が入ります。
宜しくお願いします。
今日が、良い一日になりますように!
サラディナーサの系列店の雑貨屋の前で、ショーウィンドウを見ている可愛い女の子。ここ数日、良く見かけるなぁと思い、声をかけようとドアをあけたらしい。
するとクリス先輩に気が付いた彼女は駆け寄るとこう言った。
「私をここで働かせてくれるよね!!」
え??である。就業できるような年齢でも無い子がいきなり雇ってくれて当然!みたいな態度で来たらそりゃ戸惑うよねぇ……。
ちなみに設定だと、母親の誕生日にプレゼントがしたい――けれど、あげたいものはお小遣いで買うには高すぎて……。
幾日もショーウィンドウに張り付いているヒロインに気が付いたクリス先輩は彼女から事情を聞くのだ。
ヒロインの家は裕福では無くて、母親は住み込みの仕事でいつも大変そう。
クリス先輩に「おかあさん、いつもありがとう」の気持ちと共に誕生日プレゼントをあげたいの――とヒロインは一所懸命に説明するのだ。
それから、ヒロインは最初はジュエリーショップに行ったものの、そちらは門前払い。ここの髪飾りなら――と思ったけれど、貯めているお小遣いだとまだ足りない。誰か買って行ってしまわないかと、毎日見に来ていると説明する。
『幾らくらい貯められたの??』
そうクリス先輩が確認すれば、髪飾りの半分位は貯められたらしい。クリス先輩はお店の店長に事情を話し、ヒロインにお店のお手伝いをお願いする。
そうして、誕生日当日――ヒロインは可愛らしいお花の髪飾りを手に入れるのだ。クリス先輩は更に、母親とデザインが一緒のヘアピンをヒロインにプレゼントする――。それが、ゲームでの設定。
じゃあ実際はどうなったのかと言うと。
「いきなりそんな事を言われても、雇う訳にもいかないですしね。断ったら、それから毎日店に押しかけて来まして……」
出禁――というか、店の周囲に近寄る事を禁止と言う状況になったらしいです。
なんでそうなったかって言えば、出禁にした後、店の周りで騒ぎ続けたらしい。母親が土下座する勢いで謝りに来たらしくって、私はそのお母さんにも同情した。
「禁止した後も暫く、煩かったんですけどね、その子の義弟が物凄い顔をして引きずって帰ってました」
「義弟?」
「えぇ、義弟は再婚相手の連れ子らしいですね。何でも再婚相手が事故で亡くなってしまい、母親は実家の伝手を頼って二人を養う為に住み込みの仕事を始めたとか。義弟の方は優秀だし、ちゃんとした常識人ですよ。母親の方もしっかりした人に見えたのですが……正直、彼女がなんであんな性格になったのか理解できないですね」
ですよねー。中身が転生者だからと言えない私は、曖昧に苦笑した。
それにしても、フラグと好感度をベキベキと折ってくなぁ……。確定イベントだからって何も考えて無かったのかもしれないけれど。
本来だったら、声をかけて貰ってから始まるイベントの筈なのにクリス先輩の時も、ベルナドット様の時もガンガン行こうぜ!って感じで行動しちゃってるし……。
首席合格の時と同じで、どう行動しても結果は変わらないと思ってたんだろうなぁ。ここまで来るとヒロインをやりたくないからフラグを折ってまわってるんじゃないかとすら思える。
万が一そうだった場合は中身がレイナじゃない事が確定する訳ですが……。
「……」
クリス先輩の話を聞いた後、その場は沈黙に包まれた。満場一致でヒロインが危険物として認識された瞬間だったと思います。えぇ……。
アルは考え込むような様子を見せた後、クリス先輩に声を掛けた。
「義弟を優秀と言う位なら、交流があるのだろうか?」
「――はい。というか、義姉の方にバレないようにしながら友人として付き合っています」
義弟の名前はダグ・ネージュ。義姉と違い魔力が無い為、同い年の彼は学園の一般学部に通っているらしい。将来は会計士を希望しているらしく、サラディナーサの系列店でアルバイトをしているらしい。
この学園は魔力があるか無いかで授業のカリキュラムが大分変わるために校舎は別――こちらの校舎には、勝手に魔術を使えないような結界が張ってあったり、暴発を防ぐ対策が取られてるからね。
文化祭のように合同でするイベントもあるにはあるけど、基本的に一般学部とあまり交流は無い。
「その義弟を紹介して貰う事はできるかな……?あぁ、咎めたり文句を言いたい訳じゃない――彼女のあの感じと君達の話を考えると、このまま諦めてもらえなさそうな気がして……。その彼に対処法がもしあれば教えて欲しいと思ってね……」
「――分かりました。アルフリード殿下のご予定に合わせます。いつが良いでしょう?」
「出来るだけ早く――あぁ、でも無理はしないでくれ。こちらは相談する側だしね」
分かりました――とクリス先輩は返事をした。
そうして私とアルは後日――ヒロインの義弟、ダグ・ネージュに会う事となる。
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おはようございます。
次から2、3話予定ですが、「一之瀬 昴」と「北小路 レイナ」の閑話が入ります。
宜しくお願いします。
今日が、良い一日になりますように!
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