8 / 56
8
しおりを挟む
「そういえば、母様は服選ばなくていいの?」
着替えながらそう聞くと、化粧品を選んで用意していた母が肩を竦めた。
「リーとチーファが選んでくれてるのよ。私が好みで選んだやつじゃ、悪くないけど地味なんだってさ」
「あらま」
「今回の旅行でチーファはお洒落に目覚めたみたい。風の国でも水の国でも、自分達そっちのけで私とアマーリエの服選んでたもの」
「リー様って服屋で働いていたって聞いてるけど、男性用じゃなくて女性用のお店だったの?」
「らしいわよ。女の子の服の方が華やかで見るのが好きなんだって」
「へぇ~」
「さ、椅子に座ってちょうだい。刺繍の色が緑だから、この淡い緑のアイシャドーはどうかしら?」
「よくわかんないから任せるわ」
「じゃあ、これね」
椅子に座って母に顔を弄られる。真剣な顔つきで化粧をしてくれてあるが、どことなく楽しそうである。
そういえば、母は自分は化粧も華やかな格好もしないくせに、ミーシャ達には可愛い格好をさせたがっていた。
(今が楽しいんだろうなぁ)
ちょうどミーシャの化粧が終わる頃にエーシャとアマーリエが部屋に入ってきた。二人とも服を着替えて、ミーシャが着ているようなワンピースを着ていた。
「母様の服も持ってきたよ」
「あら、ありがとう。ちょうど終わるから次はエーシャね」
「お願いしまーす」
「いいなぁ、ミィ姉様もエー姉様もお化粧できて」
「あと何年もしないうちにできるようになるわよ」
「アマーリエはまだ13歳だからね。16歳になったら、お化粧の仕方教えてあげるわよ」
「早く16歳にならないかなぁー」
「気がついたら、あっという間になってるわよ」
「そうかなぁ」
「さて、エーシャのアイシャドーはどうしようかしらね。ミーシャと同じ色でもいいけど、青い花の刺繍も入ってるから、青にする?」
「じゃあ、青でー」
「はーい。じゃあ、やるわよー」
「はーい」
マーサがエーシャに化粧をしている様子をアマーリエが興味津々といった体でじっと見ている。
背伸びしたいお年頃のお嬢さんを微笑ましく思う。
ーーーーーー
エーシャの化粧も終わり、母が黄色と赤の花が刺繍されたワンピースに着替えると、奥の部屋から出て、店内に戻った。
男性陣もそれぞれ買い物と着替えが済んだようで、店員に出してもらったであろう、椅子に腰掛け、話をしているようだ。他の国では服を買うのに、まるっと半日かかったそうだが、今日はまだ二時間もかかっていない。
マーサが楽しそうにマーシャルと話していたリーに声をかけた。
「もう皆終わったの?」
「うん。今日買うのは今日と明日の分だけだから。領地で着るのは向こうで買った方がいいでしょ」
「そうね。王都と領地じゃ、結構気候違うものね」
「うん。土の国の王都って風の国程じゃないけど、領地より涼しいね」
「本当ねー。私も数える位しか来たことないから、結構新鮮だわ」
「神子殿。ちょっと早いですけど、昼食に行きますか?その後、市場に行きましょう」
「そうね。はーい、じゃあ皆さん。お昼に行きましょー」
マーサが手をパンパン叩きながら言うと、皆それぞれ立ち上がって、ぞろぞろと出口へ向かった。
今日買ったものは、城に運ぶよう頼んでいるので、全員ほぼ手ぶらである。勿論、護衛の将軍達と騎士科に通うマーシャル達は帯剣している。
人数が多いため、複数に別れて馬車に乗り、昼食をとる店に向かう。
ミーシャは馬車では風の国ご一行と一緒になった。ジャン将軍も狩りが趣味だそうで、剣よりも弓の方が得意なのだそうだ。店に着くまでの短い時間、二人でずっと狩りの話をしていた。
そんなミーシャ達をフェリが微笑ましそうに見ていた。
ーーーーーー
昼食は、土の国内の様々な地域の料理が食べられる店で食べた。
ミーシャ達も食べたことがない料理が殆どで、少々お行儀が悪いけれど、皆で話ながら美味しい料理に舌づつみをうった。
昼食を終えた後は、店の近くの市場に行った。
領地ではあまり見ない食材や布地、装飾品等、様々なものがあり、あれは何だこれは何だ、と話ながら、本当に楽しく色んな店を見て回った。途中、甘味処に立ち寄りお茶とケーキを食べ、一息ついた後はまた市場を散策した。
市場を一通り見終わる頃には、皆、大なり小なり荷物を抱えている状態だった。
「マーサ」
「なに?兄さん」
「荷物増えたし、歩き回ったから夕食まで休憩しないか?俺行きたい所あるんだけど」
「行きたい所ってどこ?」
「王都のミーシャ達の家」
「あぁ、神子殿。夕食の店は家から割と近いですから。予約の時間までまだ少しありますし、家に行きましょうよ」
「そうね、そうしようかしら」
ということで、フェリの要望でミーシャ達が住む家に行くことになった。
(掃除はこまめにしてるけど、大丈夫かしら……)
乗り気な面子を余所に、ミーシャは少々不安であった。
キレイ好きな母に怒られる程散らかってはいないと思う。
……多分。
着替えながらそう聞くと、化粧品を選んで用意していた母が肩を竦めた。
「リーとチーファが選んでくれてるのよ。私が好みで選んだやつじゃ、悪くないけど地味なんだってさ」
「あらま」
「今回の旅行でチーファはお洒落に目覚めたみたい。風の国でも水の国でも、自分達そっちのけで私とアマーリエの服選んでたもの」
「リー様って服屋で働いていたって聞いてるけど、男性用じゃなくて女性用のお店だったの?」
「らしいわよ。女の子の服の方が華やかで見るのが好きなんだって」
「へぇ~」
「さ、椅子に座ってちょうだい。刺繍の色が緑だから、この淡い緑のアイシャドーはどうかしら?」
「よくわかんないから任せるわ」
「じゃあ、これね」
椅子に座って母に顔を弄られる。真剣な顔つきで化粧をしてくれてあるが、どことなく楽しそうである。
そういえば、母は自分は化粧も華やかな格好もしないくせに、ミーシャ達には可愛い格好をさせたがっていた。
(今が楽しいんだろうなぁ)
ちょうどミーシャの化粧が終わる頃にエーシャとアマーリエが部屋に入ってきた。二人とも服を着替えて、ミーシャが着ているようなワンピースを着ていた。
「母様の服も持ってきたよ」
「あら、ありがとう。ちょうど終わるから次はエーシャね」
「お願いしまーす」
「いいなぁ、ミィ姉様もエー姉様もお化粧できて」
「あと何年もしないうちにできるようになるわよ」
「アマーリエはまだ13歳だからね。16歳になったら、お化粧の仕方教えてあげるわよ」
「早く16歳にならないかなぁー」
「気がついたら、あっという間になってるわよ」
「そうかなぁ」
「さて、エーシャのアイシャドーはどうしようかしらね。ミーシャと同じ色でもいいけど、青い花の刺繍も入ってるから、青にする?」
「じゃあ、青でー」
「はーい。じゃあ、やるわよー」
「はーい」
マーサがエーシャに化粧をしている様子をアマーリエが興味津々といった体でじっと見ている。
背伸びしたいお年頃のお嬢さんを微笑ましく思う。
ーーーーーー
エーシャの化粧も終わり、母が黄色と赤の花が刺繍されたワンピースに着替えると、奥の部屋から出て、店内に戻った。
男性陣もそれぞれ買い物と着替えが済んだようで、店員に出してもらったであろう、椅子に腰掛け、話をしているようだ。他の国では服を買うのに、まるっと半日かかったそうだが、今日はまだ二時間もかかっていない。
マーサが楽しそうにマーシャルと話していたリーに声をかけた。
「もう皆終わったの?」
「うん。今日買うのは今日と明日の分だけだから。領地で着るのは向こうで買った方がいいでしょ」
「そうね。王都と領地じゃ、結構気候違うものね」
「うん。土の国の王都って風の国程じゃないけど、領地より涼しいね」
「本当ねー。私も数える位しか来たことないから、結構新鮮だわ」
「神子殿。ちょっと早いですけど、昼食に行きますか?その後、市場に行きましょう」
「そうね。はーい、じゃあ皆さん。お昼に行きましょー」
マーサが手をパンパン叩きながら言うと、皆それぞれ立ち上がって、ぞろぞろと出口へ向かった。
今日買ったものは、城に運ぶよう頼んでいるので、全員ほぼ手ぶらである。勿論、護衛の将軍達と騎士科に通うマーシャル達は帯剣している。
人数が多いため、複数に別れて馬車に乗り、昼食をとる店に向かう。
ミーシャは馬車では風の国ご一行と一緒になった。ジャン将軍も狩りが趣味だそうで、剣よりも弓の方が得意なのだそうだ。店に着くまでの短い時間、二人でずっと狩りの話をしていた。
そんなミーシャ達をフェリが微笑ましそうに見ていた。
ーーーーーー
昼食は、土の国内の様々な地域の料理が食べられる店で食べた。
ミーシャ達も食べたことがない料理が殆どで、少々お行儀が悪いけれど、皆で話ながら美味しい料理に舌づつみをうった。
昼食を終えた後は、店の近くの市場に行った。
領地ではあまり見ない食材や布地、装飾品等、様々なものがあり、あれは何だこれは何だ、と話ながら、本当に楽しく色んな店を見て回った。途中、甘味処に立ち寄りお茶とケーキを食べ、一息ついた後はまた市場を散策した。
市場を一通り見終わる頃には、皆、大なり小なり荷物を抱えている状態だった。
「マーサ」
「なに?兄さん」
「荷物増えたし、歩き回ったから夕食まで休憩しないか?俺行きたい所あるんだけど」
「行きたい所ってどこ?」
「王都のミーシャ達の家」
「あぁ、神子殿。夕食の店は家から割と近いですから。予約の時間までまだ少しありますし、家に行きましょうよ」
「そうね、そうしようかしら」
ということで、フェリの要望でミーシャ達が住む家に行くことになった。
(掃除はこまめにしてるけど、大丈夫かしら……)
乗り気な面子を余所に、ミーシャは少々不安であった。
キレイ好きな母に怒られる程散らかってはいないと思う。
……多分。
0
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
【R-18】逃げた転生ヒロインは辺境伯に溺愛される
吉川一巳
恋愛
気が付いたら男性向けエロゲ『王宮淫虐物語~鬼畜王子の後宮ハーレム~』のヒロインに転生していた。このままでは山賊に輪姦された後に、主人公のハーレム皇太子の寵姫にされてしまう。自分に散々な未来が待っていることを知った男爵令嬢レスリーは、どうにかシナリオから逃げ出すことに成功する。しかし、逃げ出した先で次期辺境伯のお兄さんに捕まってしまい……、というお話。ヒーローは白い結婚ですがお話の中で一度別の女性と結婚しますのでご注意下さい。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
腹黒王子は、食べ頃を待っている
月密
恋愛
侯爵令嬢のアリシア・ヴェルネがまだ五歳の時、自国の王太子であるリーンハルトと出会った。そしてその僅か一秒後ーー彼から跪かれ結婚を申し込まれる。幼いアリシアは思わず頷いてしまい、それから十三年間彼からの溺愛ならぬ執愛が止まらない。「ハンカチを拾って頂いただけなんです!」それなのに浮気だと言われてしまいーー「悪い子にはお仕置きをしないとね」また今日も彼から淫らなお仕置きをされてーー……。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
[完結]18禁乙女ゲームのモブに転生したら逆ハーのフラグを折ってくれと頼まれた。了解ですが、溺愛は望んでません。
紅月
恋愛
「なに此処、18禁乙女ゲームじゃない」
と前世を思い出したけど、モブだから気楽に好きな事しようって思ってたのに……。
攻略対象から逆ハーフラグを折ってくれと頼まれたので頑張りますが、なんか忙しいんですけど。
騎士団長の欲望に今日も犯される
シェルビビ
恋愛
ロレッタは小さい時から前世の記憶がある。元々伯爵令嬢だったが両親が投資話で大失敗し、没落してしまったため今は平民。前世の知識を使ってお金持ちになった結果、一家離散してしまったため前世の知識を使うことをしないと決意した。
就職先は騎士団内の治癒師でいい環境だったが、ルキウスが男に襲われそうになっている時に助けた結果纏わりつかれてうんざりする日々。
ある日、お地蔵様にお願いをした結果ルキウスが全裸に見えてしまった。
しかし、二日目にルキウスが分身して周囲から見えない分身にエッチな事をされる日々が始まった。
無視すればいつかは収まると思っていたが、分身は見えていないと分かると行動が大胆になっていく。
文章を付け足しています。すいません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる