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37:守るもの
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バージルはセドリックを抱っこして、コーネリーと一緒に走りに出かけたアルフレッドを見送った。一昨日の夜、初めて男の身体のアルフレッドとセックスをした。昨日は腰の痛みが酷く、流石に走るのは諦めていたが、アルフレッドは今日は走りに行った。無理をするなと言ったが、アルフレッドは『やらなくてはいけないことだ』と言って、よたよたと走って行った。普段はだらしなくズボラ極まりないが、自分の職務の為ならば、やるべきことをやる男だ。バージルは少々心配なのでついていくと言ったが、『お前のペースで走ったら俺達が死ぬ』とアルフレッドに断られた。コーネリーにも断られたので、バージルは仕方がなく2人についていくのは諦めた。セドリックとコーネリーの娘シェーラの世話を頼まれたので、戻ってくるまでは2人の相手をする。
居間のラグの上でオリビアと子供達と4人でぬいぐるみを使って遊んでいると、玄関の呼び鈴が鳴った。玄関に向かったマルタがすぐに戻って来て、困った顔をしてバージルに話しかけてきた。
「旦那様。ご実家の使いの方がお見えです。その……坊ちゃんを連れて今すぐ来いと」
「……分かった。セドリックは連れて行かない。俺1人で行ってくる。オリビアさん。子供達をお願いします」
「えぇ。いいわ。でも、貴方のご両親に私とアルも挨拶をした方がいいのでは?」
「不要です。貴女やアルフレッドが不快な思いをするだけですから」
「そう……貴方のことだから、色々と考えた上での発言でしょう。貴方が私達をご両親に会わせたくないのなら、無理を通す気はないわ」
「ありがとうございます。いってきます。すぐに戻ります」
「えぇ。気をつけていってらっしゃい」
バージルはオリビアと心配そうな顔をしているマルタに見送られて、家から出た。家の前には質素な馬車があり、実家に昔から使えている使用人が立っていた。愛想の欠片もない壮年の男の使用人が、無表情で口を開いた。
「お孫様をお連れください」
「息子は連れて行かない」
「必ず連れてくるようにと、旦那様から命じられております」
「少し風邪気味なんだ。外に出したくはない。悪化させて、何かあったらどうする」
「……それでは、馬車にお乗りください」
「あぁ」
バージルは馬車に乗り込んだ。すぐに動き始めた馬車の中で、バージルは小さく溜め息を吐いた。アルフレッドが妊娠した後に一度だけ報告をしにいったが、セドリックが生まれてからは実家に顔を出していない。両親が痺れを切らしたのだろう。両親のことは嫌いではないが、正直に言えば面倒くさい。旧家であるというプライドに凝り固まり、古臭い慣習を重んじるところがある。外聞を気にして、こちらの意に添わぬことに無理やり従わせようとするところもある。弟はそんな両親を嫌って、自由を求めて出奔した。弟の気持ちも分からないではない。育ててもらった恩は感じているし、騎士として父を尊敬しているが、最近は、気に食わないことがあれば威圧的に怒鳴ったりする父の相手がどうにも面倒に感じてしまう。
自分の家を出たばかりだが、早くも帰りたい。バージルはもう一度小さく溜め息を吐いた。
格式のある雰囲気の古い屋敷の前で、馬車が止まった。バージルは馬車から下りると、すたすたと歩いて玄関から屋敷の中に入り、家令の老翁に声をかけ、先触れをしてもらってから、両親がいるという居間へと向かった。
居間には父と母がいて、2人で紅茶を飲んでいた。バージルをずっと老けさせたような顔立ちの父が、眉間に深い皺を寄せて口を開いた。
「遅い。子供はどうした」
「申し訳ありません。息子は置いてきました。少々風邪気味なものですから」
「軟弱な。跡取りにふさわしい育て方をしていないからだ。すぐに連れてこい。我が家で育てる」
「息子は俺の家で育てます。父上達に会わせる気はありません」
「なに?お前っ!親に向かってなんだ!その口のきき方は!!我が家の跡取りを庶民ごときに育てさせる気か!!」
「バージル。私達の孫ですよ。私達の家で育てることが当然でしょう。乳母や教育係の手配は既にしています。すぐに連れてきなさい。風邪気味だというのなら尚更。庶民が出入りするような家では病気になって当然です」
「お断りします」
「ふん。男に誑かされたか。バージル。今すぐ子供を連れてこい。お前には我が家にふさわしい嫁を用意してある。結婚をして、早く子供をつくれ。男が産んだ子供なんて気持ちが悪い。更には世間体も悪い。とはいえ、一応孫になる。次の子供が生まれるまでは跡取りとして扱ってやる」
「貴方の相手は、器量も家柄も申し分ない娘です。いつまでも男と暮らすだなんて……子供が生まれたらすぐに追い出すだろうと静観していたのに、その様子がないだなんて信じられないわ。すぐに屋敷に子供と共に戻りなさい。あのみっともない小さな家は手切れ金として男に渡すといいわ」
「……父上。母上。俺は結婚する気などありません。俺にはもう家族がいる。俺が守るべきは世間体などではない。アルフレッドとセドリックだけだ」
「馬鹿を言うなっ!!男を家族だと!?下らん!しかも庶民の!浄化の腕はいいようだが、所詮それだけの部下の管理もできないような使えない男ではないか!!さっさと目を覚ませ!この馬鹿者っ!!」
「あんな者と一緒にいるから、そんなことを言い出すのです。バージルは優しいから情が湧いてしまったのでしょう?今すぐあの男を追い出すか、貴方がこちらに戻りなさい。男と『家族ごっこ』をしたところで、益にはなりませんよ」
「そうだ!よもや、その男を『愛している』とは言わんだろう。お前は、釣り合いのとれた家柄の女と結婚をして、きちんとした跡取りをつくることが幸せなのだ。正しい形で生まれた子供でないと、幸せになれる訳がない」
「父上のおっしゃる通りです。男から生まれた子供が普通な訳ないでしょう?ねぇ。旦那様。当家で育てると言いましたが、それもやめませんか?気持ちが悪い生まれの子など、我が屋敷には入れたくありませんわ。バージルに早くまともな結婚をさせて、ちゃんとした跡取りを産んでもらいましょう」
「それもそうだな。それがいい。バージル。男と子供はとっとと捨てろ。相手の男も働いているのだ。養育費なんぞいらんだろう。即刻縁を切れ。明後日に見合いの場を設けている。断れると思うな」
「……父上。母上」
「なんだ」
「なにかしら」
「……縁を切るのはこちらの方だ。俺の家族はアルフレッドとセドリックだけだ。貴方方はもう家族でもなんでもない。育ててもらった恩は十分返しただろう。貴方方が望む生き方をずっとしていた。俺は……俺には、俺だけの家族を守る責任と権利がある。アルフレッドもセドリックも手放さない。誰が何を言おうと、俺にとってはあの2人が家族だ。俺が身命を賭して守りたいものだ。誰にも邪魔はさせない。それがたとえ、貴方方でも」
「バージルッ!!」
「勘当してください。二度と関わり合いになりたくない。俺の家族に近寄らせるつもりもない。アルフレッド達を害してみろ。俺は全力でこの家を潰す。物理的にも社会的にも」
「貴様っ!!貴様はこの家の跡取りなのだぞ!!無責任なことばかりを言うなっ!!この馬鹿者っ!!」
「家など継ぎたいものに継がせればいい。俺は興味などない。俺はっ!……俺はアルフレッドとセドリックを守ると心に決めた。2人と生きていくと心に誓った。自分自身で決めたことを翻す気はない。俺は俺の心を裏切らない」
「バージル!貴方は騙されているのよ!!その子供が本当に貴方の子供かも分からないじゃない!!目を覚ましなさい!!」
「母上。アルフレッドはいつぞやの女と違い、俺を絶対に裏切らない。信用も信頼もしている。背中を預けるのに、これ以上頼もしい相手はいない。アルフレッドは自らの職務に強い信念を持ち、過酷な瘴気の浄化の任務を、その信念を元に着実に遂行している。敬意を払うべき男だ。男として認めているし、尊敬もしている。そして今は、俺の大事な家族だ。アルフレッドと離れる気などない。アルフレッドが命がけで産んでくれた息子は、確かに俺の子供だ。俺の愛おしい子供だ。何度でも言う。俺は俺だけの家族を守る。貴方方の好きにはさせない」
「くっ…聞いていれば好き勝手にベラベラと……頭を冷やせ!!」
父が紅茶のカップをバージルに投げつけた。投げられた高級なカップは、バージルの額に強く当たり、割れて落ちた。温い紅茶と熱い液体が額から垂れ落ちていく。割れたカップの破片で額が切れたようだ。じくじくと痛み始めた額を無視して、バージルは努めて冷静な声を出した。
「父上。母上。育ててもらった御恩は忘れません。しかし、今後一切関わらないでいただきたい。アルフレッドとセドリックに何かしてみろ。俺は親殺しの汚名を被ることすら躊躇わない」
「なっ……」
「父上のことは騎士として尊敬しておりました。今は騎士というものからかけ離れた醜い生き物に成り下がっているようですが。母上のことも敬愛しておりました。今はその醜悪な様を見るのも堪えがたい」
「バージルッ!!貴様っ!!」
「これにて、親子の縁を切らせていただく。俺はこの家の家名を名乗ることもしない。二度と俺の家族に近寄るな。俺は俺の家族の為だけに生きる。失礼します。さようなら。二度と会いません。葬式にも参列いたしません。俺の家族を侮辱し、俺から取り上げようとしたこと、みじめに1人で死ぬ時に悔やむがいい」
「き、貴っ様ぁぁぁぁぁぁ!!」
父が立ち上がり、居間の壁に飾っていた剣を取り、バージルに切りかかってきた。バージルが幼かった昔はともかく、今は老いた父など相手にもならない。年齢を除いても、バージルは騎士として、とうの昔に父を超えている。バージルは切りかかってきた父の剣をかわし、父の剣を持つ手元を握ると、そのまま父の手首を手加減抜きで力任せに握り締めた。父の顔が驚愕に歪み、今は痛みに耐える表情をしている。
「今回は見逃す。だが、二度目はない。次に俺と俺の家族に剣を向けた時は、俺は必ず貴方を殺す」
バージルは父の目を真っすぐに見つめて、そう言い切った。
父の手首を離し、これ以上切りかかってこないことを確認すると、バージルは無言で居間からも屋敷からも出た。馬車を使う気はない。アルフレッドとセドリックが待つ家まで走ればいい。バージルは今すぐ2人に会いたくて、全速力で駆けだした。
居間のラグの上でオリビアと子供達と4人でぬいぐるみを使って遊んでいると、玄関の呼び鈴が鳴った。玄関に向かったマルタがすぐに戻って来て、困った顔をしてバージルに話しかけてきた。
「旦那様。ご実家の使いの方がお見えです。その……坊ちゃんを連れて今すぐ来いと」
「……分かった。セドリックは連れて行かない。俺1人で行ってくる。オリビアさん。子供達をお願いします」
「えぇ。いいわ。でも、貴方のご両親に私とアルも挨拶をした方がいいのでは?」
「不要です。貴女やアルフレッドが不快な思いをするだけですから」
「そう……貴方のことだから、色々と考えた上での発言でしょう。貴方が私達をご両親に会わせたくないのなら、無理を通す気はないわ」
「ありがとうございます。いってきます。すぐに戻ります」
「えぇ。気をつけていってらっしゃい」
バージルはオリビアと心配そうな顔をしているマルタに見送られて、家から出た。家の前には質素な馬車があり、実家に昔から使えている使用人が立っていた。愛想の欠片もない壮年の男の使用人が、無表情で口を開いた。
「お孫様をお連れください」
「息子は連れて行かない」
「必ず連れてくるようにと、旦那様から命じられております」
「少し風邪気味なんだ。外に出したくはない。悪化させて、何かあったらどうする」
「……それでは、馬車にお乗りください」
「あぁ」
バージルは馬車に乗り込んだ。すぐに動き始めた馬車の中で、バージルは小さく溜め息を吐いた。アルフレッドが妊娠した後に一度だけ報告をしにいったが、セドリックが生まれてからは実家に顔を出していない。両親が痺れを切らしたのだろう。両親のことは嫌いではないが、正直に言えば面倒くさい。旧家であるというプライドに凝り固まり、古臭い慣習を重んじるところがある。外聞を気にして、こちらの意に添わぬことに無理やり従わせようとするところもある。弟はそんな両親を嫌って、自由を求めて出奔した。弟の気持ちも分からないではない。育ててもらった恩は感じているし、騎士として父を尊敬しているが、最近は、気に食わないことがあれば威圧的に怒鳴ったりする父の相手がどうにも面倒に感じてしまう。
自分の家を出たばかりだが、早くも帰りたい。バージルはもう一度小さく溜め息を吐いた。
格式のある雰囲気の古い屋敷の前で、馬車が止まった。バージルは馬車から下りると、すたすたと歩いて玄関から屋敷の中に入り、家令の老翁に声をかけ、先触れをしてもらってから、両親がいるという居間へと向かった。
居間には父と母がいて、2人で紅茶を飲んでいた。バージルをずっと老けさせたような顔立ちの父が、眉間に深い皺を寄せて口を開いた。
「遅い。子供はどうした」
「申し訳ありません。息子は置いてきました。少々風邪気味なものですから」
「軟弱な。跡取りにふさわしい育て方をしていないからだ。すぐに連れてこい。我が家で育てる」
「息子は俺の家で育てます。父上達に会わせる気はありません」
「なに?お前っ!親に向かってなんだ!その口のきき方は!!我が家の跡取りを庶民ごときに育てさせる気か!!」
「バージル。私達の孫ですよ。私達の家で育てることが当然でしょう。乳母や教育係の手配は既にしています。すぐに連れてきなさい。風邪気味だというのなら尚更。庶民が出入りするような家では病気になって当然です」
「お断りします」
「ふん。男に誑かされたか。バージル。今すぐ子供を連れてこい。お前には我が家にふさわしい嫁を用意してある。結婚をして、早く子供をつくれ。男が産んだ子供なんて気持ちが悪い。更には世間体も悪い。とはいえ、一応孫になる。次の子供が生まれるまでは跡取りとして扱ってやる」
「貴方の相手は、器量も家柄も申し分ない娘です。いつまでも男と暮らすだなんて……子供が生まれたらすぐに追い出すだろうと静観していたのに、その様子がないだなんて信じられないわ。すぐに屋敷に子供と共に戻りなさい。あのみっともない小さな家は手切れ金として男に渡すといいわ」
「……父上。母上。俺は結婚する気などありません。俺にはもう家族がいる。俺が守るべきは世間体などではない。アルフレッドとセドリックだけだ」
「馬鹿を言うなっ!!男を家族だと!?下らん!しかも庶民の!浄化の腕はいいようだが、所詮それだけの部下の管理もできないような使えない男ではないか!!さっさと目を覚ませ!この馬鹿者っ!!」
「あんな者と一緒にいるから、そんなことを言い出すのです。バージルは優しいから情が湧いてしまったのでしょう?今すぐあの男を追い出すか、貴方がこちらに戻りなさい。男と『家族ごっこ』をしたところで、益にはなりませんよ」
「そうだ!よもや、その男を『愛している』とは言わんだろう。お前は、釣り合いのとれた家柄の女と結婚をして、きちんとした跡取りをつくることが幸せなのだ。正しい形で生まれた子供でないと、幸せになれる訳がない」
「父上のおっしゃる通りです。男から生まれた子供が普通な訳ないでしょう?ねぇ。旦那様。当家で育てると言いましたが、それもやめませんか?気持ちが悪い生まれの子など、我が屋敷には入れたくありませんわ。バージルに早くまともな結婚をさせて、ちゃんとした跡取りを産んでもらいましょう」
「それもそうだな。それがいい。バージル。男と子供はとっとと捨てろ。相手の男も働いているのだ。養育費なんぞいらんだろう。即刻縁を切れ。明後日に見合いの場を設けている。断れると思うな」
「……父上。母上」
「なんだ」
「なにかしら」
「……縁を切るのはこちらの方だ。俺の家族はアルフレッドとセドリックだけだ。貴方方はもう家族でもなんでもない。育ててもらった恩は十分返しただろう。貴方方が望む生き方をずっとしていた。俺は……俺には、俺だけの家族を守る責任と権利がある。アルフレッドもセドリックも手放さない。誰が何を言おうと、俺にとってはあの2人が家族だ。俺が身命を賭して守りたいものだ。誰にも邪魔はさせない。それがたとえ、貴方方でも」
「バージルッ!!」
「勘当してください。二度と関わり合いになりたくない。俺の家族に近寄らせるつもりもない。アルフレッド達を害してみろ。俺は全力でこの家を潰す。物理的にも社会的にも」
「貴様っ!!貴様はこの家の跡取りなのだぞ!!無責任なことばかりを言うなっ!!この馬鹿者っ!!」
「家など継ぎたいものに継がせればいい。俺は興味などない。俺はっ!……俺はアルフレッドとセドリックを守ると心に決めた。2人と生きていくと心に誓った。自分自身で決めたことを翻す気はない。俺は俺の心を裏切らない」
「バージル!貴方は騙されているのよ!!その子供が本当に貴方の子供かも分からないじゃない!!目を覚ましなさい!!」
「母上。アルフレッドはいつぞやの女と違い、俺を絶対に裏切らない。信用も信頼もしている。背中を預けるのに、これ以上頼もしい相手はいない。アルフレッドは自らの職務に強い信念を持ち、過酷な瘴気の浄化の任務を、その信念を元に着実に遂行している。敬意を払うべき男だ。男として認めているし、尊敬もしている。そして今は、俺の大事な家族だ。アルフレッドと離れる気などない。アルフレッドが命がけで産んでくれた息子は、確かに俺の子供だ。俺の愛おしい子供だ。何度でも言う。俺は俺だけの家族を守る。貴方方の好きにはさせない」
「くっ…聞いていれば好き勝手にベラベラと……頭を冷やせ!!」
父が紅茶のカップをバージルに投げつけた。投げられた高級なカップは、バージルの額に強く当たり、割れて落ちた。温い紅茶と熱い液体が額から垂れ落ちていく。割れたカップの破片で額が切れたようだ。じくじくと痛み始めた額を無視して、バージルは努めて冷静な声を出した。
「父上。母上。育ててもらった御恩は忘れません。しかし、今後一切関わらないでいただきたい。アルフレッドとセドリックに何かしてみろ。俺は親殺しの汚名を被ることすら躊躇わない」
「なっ……」
「父上のことは騎士として尊敬しておりました。今は騎士というものからかけ離れた醜い生き物に成り下がっているようですが。母上のことも敬愛しておりました。今はその醜悪な様を見るのも堪えがたい」
「バージルッ!!貴様っ!!」
「これにて、親子の縁を切らせていただく。俺はこの家の家名を名乗ることもしない。二度と俺の家族に近寄るな。俺は俺の家族の為だけに生きる。失礼します。さようなら。二度と会いません。葬式にも参列いたしません。俺の家族を侮辱し、俺から取り上げようとしたこと、みじめに1人で死ぬ時に悔やむがいい」
「き、貴っ様ぁぁぁぁぁぁ!!」
父が立ち上がり、居間の壁に飾っていた剣を取り、バージルに切りかかってきた。バージルが幼かった昔はともかく、今は老いた父など相手にもならない。年齢を除いても、バージルは騎士として、とうの昔に父を超えている。バージルは切りかかってきた父の剣をかわし、父の剣を持つ手元を握ると、そのまま父の手首を手加減抜きで力任せに握り締めた。父の顔が驚愕に歪み、今は痛みに耐える表情をしている。
「今回は見逃す。だが、二度目はない。次に俺と俺の家族に剣を向けた時は、俺は必ず貴方を殺す」
バージルは父の目を真っすぐに見つめて、そう言い切った。
父の手首を離し、これ以上切りかかってこないことを確認すると、バージルは無言で居間からも屋敷からも出た。馬車を使う気はない。アルフレッドとセドリックが待つ家まで走ればいい。バージルは今すぐ2人に会いたくて、全速力で駆けだした。
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