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33:もんもんもんもん

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シコリたい。めちゃくちゃシコりたい。お気に入りのエロ小説を片手にしこたまシコリたい。
アルフレッドは包丁で野菜を刻みながら、小さく溜め息を吐いた。

セドリックが生まれて半年が過ぎた。セドリックは元気に育っており、少し前から離乳食が始まった。セドリック用の食事は、マルタに教えてもらったり、育児書に載っているものを試したりしている。経験者が何人も側にいるのが本当にありがたい。セドリックは食べることを嫌がらないので助かっている。食べない子供は本当に食べないらしい。ミルクもよく飲んでくれるし、たまに2日くらいうんこがでない時があるが、苦しくて泣いたりするレベルではなく、順調にぷくぷくと大きくなっている。寝返りをうち、手足をばたつかせて1人で遊んでいることが多い。はいはいもするようになった。セドリックは小さなひよこのぬいぐるみがお気に入りで、自分の近くにないと、めちゃくちゃ泣く。口に咥えたり、舐めたりするので毎日洗濯しているが、洗濯と風魔法での乾燥、日干しの間は大変機嫌が悪い。セドリックが寝ている隙を狙って洗っているが、起きた時に自分の側になかったら、こっちが泣きたくなるくらい泣く。寝ぐずりが割と多い。特に夜だと、下手すれば2時間近く泣いていることも割とある。バージルが家にいる時は、時間によってはバージルを自室で先に寝かせて、アルフレッドは消音魔導具を起動させた自分の部屋でセドリックをあやし、寝かしつけている。バージルは王都で仕事をしている時も日常的に訓練や鍛錬をしている。本人は王都にいる時は夜のセドリックの世話もする気満々だし、実際に最初の頃はやっていたが、アルフレッドが叱り飛ばして、翌日が仕事の日は必ず1人で自室で寝かせるようにした。訓練は厳しいものだし、なにより訓練や鍛錬は、魔物討伐で無事に生き残る為に必要不可欠なものだ。バージル達は、常に浄化課の者を守りながら闘わなくてはいけない。自分だけを守ることができればいいという職務内容ではない。寝不足の状態で訓練や任務に参加するなど、言語道断である。本人もそれは分かっているので、ものすごく渋い顔をしていたが、1人で寝るようになった。

毎日が寝不足である。経験者が何人も周りにいるとはいえ、赤ん坊の世話なんて初めてのアルフレッドは、ずっと気を張っている状態が続いている。そろそろ本気で疲れてきた。昼間は乳母のアイネが母乳を飲ませてくれるし、オリビアもマルタも積極的に手伝ってくれる。かなり恵まれているというか、世間一般の普通の家庭の母親に比べたら、本当に格段に楽をさせてもらっている。セドリックは目の中に入れてぐりぐりしまくっても痛くない程可愛い。が、疲れるものは疲れるし、溜まるものは溜まる。ストレスや性欲が。

バージルとは男の身体に戻ってから、キスもしていない。女の身体の時も基本的にセックスをする時しかキスはしていなかった。男の身体に戻った以上、する必要性はまるでない。ないのだが、全くしなくなると、正直釈然としないものがあるというか、あん?とメンチを切りたくなってしまうような心境になる。手は何故か繋いでくるし、体調が完全に復活した後もたまに抱き上げられて運ばれたりするが、それくらいのものだ。バージルが翌日休みの日は一緒に寝ているが、アルフレッドはベッドに寝転がったら即寝落ちるので、本当に何もしていない。常に寝不足だし、起きている間は気を張っているので仕方がないのだが、なんとも複雑というか、自分でも上手く言葉にできないもやっと感がある。
自分で抜こうにも、風呂はセドリックと一緒だし、夜にこっそり……は寝落ちてしまって無理だ。トイレはオリビアも一緒に暮らしているから気まずくて無理だし、本当に抜く間も余裕もない。溜まる一方だ。世の中の夫婦はどうやって赤ん坊がいる状態でセックスをしているのだろうか。セックスをしなくてもいいから、とにかく抜きたい。本も中々読めないし、ストレスと性欲を発散させることが難しい。セドリックは本当に可愛いのだ。心底、これ以上ないアルフレッドの宝物だと思っている。が、疲れるものは疲れるし、溜まるものは溜まる。
男の身体でやる必要性は全くないし、そもそもバージルがその気にならないので無理なのだが、セックスがしたい。シコるだけでなく、いっそのことセックスがしたい。バージルと1年近くセックスをしていたので、不本意ながらバージルに抱かれることに慣れきっている。女の身体の時にアナルセックスも何度かしたことがあるし、本当に今更感があるというか、男の身体でも抱かれることに特に抵抗を感じない。バージルとセックスがしたい。
アルフレッドは悶々としながら、昼食を作った。

昼食を終え、一休みした頃合いに、コーネリーが娘のシェーラを連れて家に来た。セドリックとシェーラをオリビア達に頼んでから、庭で柔軟運動をしっかりした後、2人で走り始める。休職するのは産後1年間だけだ。約半年後には復職し、再び浄化の仕事をする。女の身体になった時から王都詰めで、更に妊娠・出産をしたので、身体が酷く鈍っている。旅をして浄化をするのに、不安しか感じない。少し前から、コーネリーと2人で、体力を取り戻し、足腰を鍛えなおす為に毎日走るようになった。家がある街中を抜け、街外れにある少し小高い丘の上まで走る。正直かなりしんどいが、どうしても必要なことだ。
並んで走りながら、コーネリーが口を開いた。


「課長ー」

「なんだ」

「子供を産んでからセックスしてます?」

「してねぇ」

「実は僕もなんですよー。めちゃくちゃしたいんですけど、余裕が全然なくてー」

「抜くのも無理だよなー」

「無理ですねぇ。家族がいるし、ちょっとでも時間に余裕がある時は寝ちゃうし」

「それなー。風呂は子供と一緒だし、トイレは気まずいし。抜く隙がねぇ」

「もう僕、溜まり過ぎて金玉爆発しそうですよぉ」

「セックスしてぇー」

「セックスしたーい」

「バージルがその気にならねぇっぽいから無理だけどな」

「えー?課長とバージル班長、めちゃくちゃ仲良しじゃないですか」

「そうでもねぇよ」

「いやいやいやいや。バージル班長、めちゃくちゃ課長のこと大事にしてるじゃないですかー」

「……まぁ……未だにちょっと過保護だけど……」

「単に課長が疲れてるからじゃないんですか?」

「はぁー?キスもしてこねぇんだぞ。男とは無理なんだろ」

「えー!マジですか。キスしないんですか?」

「……男に戻ってからしてねぇ」

「したいなら課長からすればいいじゃないですか」

「は?普通に嫌だ」

「どっちですか。キスしたいんじゃないんですか」

「……したくない訳じゃないけど、自分からするのは嫌」

「えー。何でですかぁ」

「……なんとなく……」

「前々から思ってましたけど、課長ってバージル班長にはめちゃくちゃ素直じゃないですよね」

「俺は常に自分に素直に生きている」

「じゃあ、キスしたらいいじゃないですか」

「……いやだって。あいつが嫌がるかもっていうか……」

「嫌がられるのが嫌なんですね」

「……別に……」

「課長。今後のこともありますし、ちゃんとそこらへんをバージル班長と話し合った方がいいですよぉ。僕も確かにセックスはしてませんけど、キスは普通にしてますし。おはようとー、いってらっしゃいとー、おかえりとー、おやすみのキスは絶対してます。クラークさんからも普通にしてくれますし」

「惚気か」

「惚気です」

「この野郎」

「羨ましいなら話し合いですよ!いっそ押し倒してもいいんじゃないですか?眠気に負けなければ」

「眠気に勝てる気がしねぇ」

「今のところ、僕は全敗ですね。中々疲れがとれなくて……」

「俺達さぁ、かなり楽してる訳だろ。子育てをめちゃくちゃ手伝ってもらってて、家事も殆どやってもらってるし。それなのに、この状態だろ。一般家庭のお母さん、マジでヤバくないか」

「かなりヤバいですね。年子とか、本当にどうやってつくるんですかね。セックスはマジでしたいけど、ぶっちゃけ、それよりも寝たいですもん。僕」

「俺もだ。あと、本を読みたい。1日だけでいいから、とにかく本を貪り読みたい」

「絵本しか読まないですもんねぇ。今」

「辛うじて育児書をチラッと読むくらいだな」

「僕はデートがしたいですねぇ。2人っきりで。シェーラは僕の天使ですけど、マジで天使ですけど、この世に舞い降りし天使ですけど。たまには前みたいにクラークさんを独り占めしたいですー。クラークさん、家にいる時はシェーラ中心なんだもん」

「それはそれでいいことだけどな。無関心とかより」

「そうなんですけどぉ。もうちょい構ってほしいと言うかぁ」

「お前も話し合いしろよ」

「そうします。ところで課長」

「なんだ」

「きつ過ぎて吐きそうです」

「奇遇だな。俺もだ」

「走ってる時に喋るのダメ絶対……」

「脇腹死にそう」

「上り坂マジで死ぬぅ」

「あとちょっと頑張れ」

「ふぁーい」


ぜぇぜぇと荒い息を吐きながら、それでも走りながら喋っていたアルフレッド達は間違いなく馬鹿である。それでも、こんなこと走っている時くらいにしか喋れない。愚痴みたいなものだ。アルフレッドは丘の上まで駆け上がると、丘の上でコーネリーと柔軟をしてから、また走って家へと帰った。

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