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4:汚部屋
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玄関の呼び鈴が鳴った。だらしなく寝転がって本を読んでいたアルフレッドは、起き上がり、ベッドから下りた。床には本の塔がいくつもあり、脱ぎ散らかした服やゴミ、空になった酒の瓶などで足の踏み場もない。避けながら歩いていたが、本の塔に足が触れ、本が雪崩を起こした。アルフレッドは気にせず玄関に行き、ドアを開けた。ドアの前にはピシッとした清潔そうな白いシャツを着たバージルが立っていた。バージルはアルフレッドの顔を見るなり、眉間に深い皺を寄せた。
「なんだ。そのだらしない恰好は」
「あ?普通だろ」
アルフレッドは自分の身体を見下ろした。襟のない黄色いシャツは確かにちょっとよれて首回りが弛んでいるが、一応洗濯はしてある。男の身体の時は程良いサイズだったが、今はどうにもだぼっとしてしまい、鎖骨の辺りも見えている。シャツの下には何も着ていないので、乳房がシャツを押し上げていて露骨に乳首の位置が分かるが、そんなことは些事である。下は紺色のズボンを穿いており、ベルトで無理やり腹回りを締めている。ベルトをキツく締めないと、ずり落ちてきて勝手が悪い。裾は適当に捲り上げており、左右の高さが違っていて、右足だけ脛が半分見えている。靴はサイズが合っていないサンダルだ。ちなみにパンツは男の時のものを穿いている。縞柄のトランクスである。ズボンで押さえていないと、すぐにずり落ちる。アルフレッドは自分の今の服装を見て、うん、と頷いた。
「普通だな」
「貴殿の普通はおかしい。一度『普通』という言葉を辞書で調べなおせ」
「うるせぇ。細けぇこと気にしてんじゃねぇよ」
「全然細かくない。人を招くにあたり、最低限の礼儀というものがあるだろう」
「はいはい。まぁ、入れよ」
「……お邪魔する」
アルフレッドはバージルを招き入れた。アルフレッドの家は古い集合住宅の2階にあり、風呂トイレ台所以外にニ部屋ある。一部屋は居間兼書斎として使っており、もう一部屋は寝室にしている。短い廊下にも本や酒瓶、服や靴下、ゴミなどが散乱している。
居間に置いてある古ぼけたソファーの上にあったものを適当に床に落とし、アルフレッドはバージルを見て口を開いた。
「まぁ座れよ。珈琲でも淹れてくる。あ、それとも先に子作りするか?まどろっこしい前戯はいらねぇ。突っ込んだら3秒で出せよ」
「……アルフレッド・ターナー」
「なんだよ」
「……ぐぅっ……言いたいことが多すぎて、どれから言えばいいのか分からん!!まずは掃除だ!馬鹿野郎!!なんだこの汚部屋はっ!!こんな汚いところでセックスなんてできるかっ!不衛生極まりない!」
「細けぇことを気にしてんじゃねぇよ」
「全然細かくない!人間が住んでいい場所じゃないぞ!!」
「はぁ?普通に住んでますけどぉ?つーか、ちょっと散らかってるだけだろ。埃じゃ人は死なん」
「病気になるわ!ド阿呆!掃除だ!話し合いも何もかも、この汚部屋を人間が過ごしても大丈夫な環境にしてからだ!」
「えー。めんどくっさ。いいだろ別に。それよりさっさと種馬として働いてくれ。あ、ちゃんと3秒で出せよ」
「やかましい!掃除が先だ!ズボラ野郎!ゴミ袋を持ってこい!箒と塵取り、雑巾とバケツもだ!とっとと動け!痴女野郎!!」
「誰が痴女だ!嫌味野郎!!」
アルフレッドはすぐ側に落ちていた布の塊をキレた顔をしているバージルに投げつけた。布はバージルの顔面に当たる前に、バージルがキャッチした。手に掴んだ布を見下ろし、バージルが口もとを引き攣らせた。布は水玉模様のトランクスである。
「……これは使用済みか?」
「え?さぁ?」
「……洗濯はどうしている」
「制服は毎日洗濯屋に頼んでいる」
「……それ以外は」
「気が向いた時に洗う」
「……このっ、汚物野郎!!全部洗うぞ!馬鹿野郎!」
「えぇー。めんどくっさ」
「黙れ。俺はこの空間にいることが堪えがたい」
バージルがブチ切れた顔で床に落ちている服を拾い集め始めた。アルフレッドはやる気のない顔で、耳に指を突っ込み、耳クソを穿った。
「おい。洗っても干す場所なんてねぇぞ。うちのベランダ狭いからな」
「俺は風魔法が得意だ。全部風魔法で乾かす」
「あっそ」
「魔導洗濯機は脱衣所か?洗剤はあるのだろうな。水回り用の洗剤はあるのか」
「あ?あー。切れてなけりゃあるんじゃねぇの」
「今すぐ着替えて買ってこい。その間に掃除を進めておく」
「マジかよ。めんどくせぇ」
「黙れ。とっとと動く!!」
「はいはい。うっざぁ」
アルフレッドは嫌々そこら辺に落ちていた上着を手に取った。床に落ちているものを踏まないようにして寝室に移動し、財布を上着のポケットに突っ込む。寝室から出ると、鬼のような顔をしているバージルからメモ帳を渡された。
「書いてあるものを全て買ってこい」
「……ブラジャーって書いてあるんだが」
「買ってこい。そして着用しろ。痴女野郎」
「ブラジャーなんて着けたら、とんだ変態野郎じゃねぇか」
「黙れ。最低限必要な身だしなみだろうが。まずは服屋に行ってブラジャーとちゃんとしたパンツを買ってこい。それに身体に合った服もだ」
「はぁ?ブラジャーがどんだけの値段か知らねぇけど、そこまで今は金持ってねぇぞ。昨日、本を買ったばっかだし」
「金は貸す。だから今すぐ行ってこい。ちゃんとした格好で戻らなかったら家には入れん」
「此処、俺ん家ですけど」
「煩い。さっさと行け」
「はいはーい。うっざぁ」
アルフレッドはげんなりした顔でバージルから財布を受け取り、渋々家から出た。普段行く安い服屋は女物も扱っている。確か下着や靴も扱っているので、そこで全部揃えればいいだろう。ブラジャーなんかしたくないが、キレ散らかしているバージルが心底面倒くさいので、とりあえず今はブラジャーを着けることにする。アルフレッドの乳房は大きい方ではないが、それでも歩いたり動いたりすると、微妙に揺れて邪魔くさい。地味なストレスになっている。ブラジャーでそれが軽減されるのなら、妥協に妥協を重ねて着けるしかない。バージル以外の種馬を探すのも一苦労なので、とりあえずは大人しくバージルに従うことにした。アルフレッドは溜め息を吐きながら、たらたらとした足取りで服屋を目指した。
アルフレッドは狭いベランダでうんこ座りをして、煙草を吹かしていた。家の中ではバージルが忙しなく動き回っている。部屋の空中では、洗濯物がバージルの風魔法によって、くるくると回っている。買い物から帰ったアルフレッドは、邪魔だからとベランダに追いやられた。もうそろそろ空が茜色に染まり出す頃だ。バージルが家に来たのは午前中の割と早い時間で、バージルは昼食も食べずに掃除を続けている。掃除をしているバージルを放置して1人だけ昼食を食べる訳にもいかず、アルフレッドも昼食を食べていない。かなり空腹である。暇潰しに持ってきた本は読み終えてしまった。退屈を煙草で誤魔化していると、バージルから声をかけられた。振り向けば、ベランダに続く窓の近くに腕まくりをしたバージルが立っていて、眉間に深い皺を寄せてアルフレッドを見下ろしていた。
「ある程度終わったから中に入っていい。洗濯物を畳むのを手伝え」
「へいへい」
「それから煙草はやめろ。腹の中の子供に悪影響だと聞いたことがある」
「はぁー?」
「子供が流れやすくなったり、早産の可能性が高まるとか。妊娠中はただでさえ棺桶に片足を突っ込んでいる状態らしい。僅かでも危険なものは遠ざけるべきだ」
「……分かったよ」
アルフレッドはぶすっとした顔で煙草を灰皿に押しつけて火を消した。元々そんなに吸う方じゃない。吸わない時は2、3か月吸わないこともある。煙草を止めるのは、多分それほどキツくはないだろう。確実に子供を産みたい。その為ならば致し方ない。
アルフレッドは口を縛っていないゴミ袋に半分以上中身が残っている煙草の箱と溜まった吸い殻を入れると、ゴミ袋の口を縛った。
部屋の中を見回せば、床が見えている上に埃1つ落ちていない。大量の洗濯物の山があるが、あちこちに散乱していた本は1か所にきっちり纏められており、空の酒瓶も別の場所に並べられていた。
アルフレッドは洗濯物を畳み始めたバージルの正面に腰を下ろし、キレイに乾いているタオルを手に取って、畳み始めた。きっちりと丁寧にアルフレッドのズボンを畳みながら、バージルが口を開いた。
「ゴミの量が多いから、この後ゴミ収集業者に引き取りを頼みに行く。確か空瓶も引き取ってくれた筈だ。本は本棚にはとてもじゃないが入りきらないから諦める。定位置を決めておくから、読んだら必ず元あった場所に戻せ。畳んだ洗濯物は全て寝室の衣装箪笥に収納するから、こちらも洗濯したら必ず元あった位置に戻せ。洗濯は毎日しろ。不衛生極まりない」
「うるせぇ。お母さんか」
「誰がお母さんだ。食事はどうしている。かなり汚かったから台所を使ってはいるのだろう」
「気が向いた時は料理をするが、普段は殆ど自炊はしていない。近所に安い定食屋があるから、其処で済ませることが多いな。家を留守にすることが多いから、食材の買い溜めとかできないし」
手際よくアルフレッドのシャツを畳んでいるバージルが、意外そうな顔でアルフレッドを見た。
「まさか料理ができるのか?」
「なんだ。その顔。人並みにできるわ」
「そうか。俺はできない。新人の時から、遠征の時でも調理に一切関わるなと厳命されている。貴重な食糧がゴミ以下になるからと」
「何をやらかしたんだよ」
「別に。そんなに突飛なことはしていない筈だ」
「自覚がないタイプのメシマズか。やべぇな」
「通いの家政婦からも台所立ち入り禁止令が出されているから、自宅でも料理をしたことがない」
「ふーん。これ終わったら先に飯を食いに行こうぜ。腹が減った」
「あぁ」
殆どの洗濯物をてきぱきとバージルが畳み、寝室の衣装箪笥にきっちりとキレイに収納した。寝室も見違える程キレイになっていた。どこにどれを入れるかを説明してくるバージルに生返事をしながら、アルフレッドはこの後使うであろう整えられたベッドから視線を逸らした。
「なんだ。そのだらしない恰好は」
「あ?普通だろ」
アルフレッドは自分の身体を見下ろした。襟のない黄色いシャツは確かにちょっとよれて首回りが弛んでいるが、一応洗濯はしてある。男の身体の時は程良いサイズだったが、今はどうにもだぼっとしてしまい、鎖骨の辺りも見えている。シャツの下には何も着ていないので、乳房がシャツを押し上げていて露骨に乳首の位置が分かるが、そんなことは些事である。下は紺色のズボンを穿いており、ベルトで無理やり腹回りを締めている。ベルトをキツく締めないと、ずり落ちてきて勝手が悪い。裾は適当に捲り上げており、左右の高さが違っていて、右足だけ脛が半分見えている。靴はサイズが合っていないサンダルだ。ちなみにパンツは男の時のものを穿いている。縞柄のトランクスである。ズボンで押さえていないと、すぐにずり落ちる。アルフレッドは自分の今の服装を見て、うん、と頷いた。
「普通だな」
「貴殿の普通はおかしい。一度『普通』という言葉を辞書で調べなおせ」
「うるせぇ。細けぇこと気にしてんじゃねぇよ」
「全然細かくない。人を招くにあたり、最低限の礼儀というものがあるだろう」
「はいはい。まぁ、入れよ」
「……お邪魔する」
アルフレッドはバージルを招き入れた。アルフレッドの家は古い集合住宅の2階にあり、風呂トイレ台所以外にニ部屋ある。一部屋は居間兼書斎として使っており、もう一部屋は寝室にしている。短い廊下にも本や酒瓶、服や靴下、ゴミなどが散乱している。
居間に置いてある古ぼけたソファーの上にあったものを適当に床に落とし、アルフレッドはバージルを見て口を開いた。
「まぁ座れよ。珈琲でも淹れてくる。あ、それとも先に子作りするか?まどろっこしい前戯はいらねぇ。突っ込んだら3秒で出せよ」
「……アルフレッド・ターナー」
「なんだよ」
「……ぐぅっ……言いたいことが多すぎて、どれから言えばいいのか分からん!!まずは掃除だ!馬鹿野郎!!なんだこの汚部屋はっ!!こんな汚いところでセックスなんてできるかっ!不衛生極まりない!」
「細けぇことを気にしてんじゃねぇよ」
「全然細かくない!人間が住んでいい場所じゃないぞ!!」
「はぁ?普通に住んでますけどぉ?つーか、ちょっと散らかってるだけだろ。埃じゃ人は死なん」
「病気になるわ!ド阿呆!掃除だ!話し合いも何もかも、この汚部屋を人間が過ごしても大丈夫な環境にしてからだ!」
「えー。めんどくっさ。いいだろ別に。それよりさっさと種馬として働いてくれ。あ、ちゃんと3秒で出せよ」
「やかましい!掃除が先だ!ズボラ野郎!ゴミ袋を持ってこい!箒と塵取り、雑巾とバケツもだ!とっとと動け!痴女野郎!!」
「誰が痴女だ!嫌味野郎!!」
アルフレッドはすぐ側に落ちていた布の塊をキレた顔をしているバージルに投げつけた。布はバージルの顔面に当たる前に、バージルがキャッチした。手に掴んだ布を見下ろし、バージルが口もとを引き攣らせた。布は水玉模様のトランクスである。
「……これは使用済みか?」
「え?さぁ?」
「……洗濯はどうしている」
「制服は毎日洗濯屋に頼んでいる」
「……それ以外は」
「気が向いた時に洗う」
「……このっ、汚物野郎!!全部洗うぞ!馬鹿野郎!」
「えぇー。めんどくっさ」
「黙れ。俺はこの空間にいることが堪えがたい」
バージルがブチ切れた顔で床に落ちている服を拾い集め始めた。アルフレッドはやる気のない顔で、耳に指を突っ込み、耳クソを穿った。
「おい。洗っても干す場所なんてねぇぞ。うちのベランダ狭いからな」
「俺は風魔法が得意だ。全部風魔法で乾かす」
「あっそ」
「魔導洗濯機は脱衣所か?洗剤はあるのだろうな。水回り用の洗剤はあるのか」
「あ?あー。切れてなけりゃあるんじゃねぇの」
「今すぐ着替えて買ってこい。その間に掃除を進めておく」
「マジかよ。めんどくせぇ」
「黙れ。とっとと動く!!」
「はいはい。うっざぁ」
アルフレッドは嫌々そこら辺に落ちていた上着を手に取った。床に落ちているものを踏まないようにして寝室に移動し、財布を上着のポケットに突っ込む。寝室から出ると、鬼のような顔をしているバージルからメモ帳を渡された。
「書いてあるものを全て買ってこい」
「……ブラジャーって書いてあるんだが」
「買ってこい。そして着用しろ。痴女野郎」
「ブラジャーなんて着けたら、とんだ変態野郎じゃねぇか」
「黙れ。最低限必要な身だしなみだろうが。まずは服屋に行ってブラジャーとちゃんとしたパンツを買ってこい。それに身体に合った服もだ」
「はぁ?ブラジャーがどんだけの値段か知らねぇけど、そこまで今は金持ってねぇぞ。昨日、本を買ったばっかだし」
「金は貸す。だから今すぐ行ってこい。ちゃんとした格好で戻らなかったら家には入れん」
「此処、俺ん家ですけど」
「煩い。さっさと行け」
「はいはーい。うっざぁ」
アルフレッドはげんなりした顔でバージルから財布を受け取り、渋々家から出た。普段行く安い服屋は女物も扱っている。確か下着や靴も扱っているので、そこで全部揃えればいいだろう。ブラジャーなんかしたくないが、キレ散らかしているバージルが心底面倒くさいので、とりあえず今はブラジャーを着けることにする。アルフレッドの乳房は大きい方ではないが、それでも歩いたり動いたりすると、微妙に揺れて邪魔くさい。地味なストレスになっている。ブラジャーでそれが軽減されるのなら、妥協に妥協を重ねて着けるしかない。バージル以外の種馬を探すのも一苦労なので、とりあえずは大人しくバージルに従うことにした。アルフレッドは溜め息を吐きながら、たらたらとした足取りで服屋を目指した。
アルフレッドは狭いベランダでうんこ座りをして、煙草を吹かしていた。家の中ではバージルが忙しなく動き回っている。部屋の空中では、洗濯物がバージルの風魔法によって、くるくると回っている。買い物から帰ったアルフレッドは、邪魔だからとベランダに追いやられた。もうそろそろ空が茜色に染まり出す頃だ。バージルが家に来たのは午前中の割と早い時間で、バージルは昼食も食べずに掃除を続けている。掃除をしているバージルを放置して1人だけ昼食を食べる訳にもいかず、アルフレッドも昼食を食べていない。かなり空腹である。暇潰しに持ってきた本は読み終えてしまった。退屈を煙草で誤魔化していると、バージルから声をかけられた。振り向けば、ベランダに続く窓の近くに腕まくりをしたバージルが立っていて、眉間に深い皺を寄せてアルフレッドを見下ろしていた。
「ある程度終わったから中に入っていい。洗濯物を畳むのを手伝え」
「へいへい」
「それから煙草はやめろ。腹の中の子供に悪影響だと聞いたことがある」
「はぁー?」
「子供が流れやすくなったり、早産の可能性が高まるとか。妊娠中はただでさえ棺桶に片足を突っ込んでいる状態らしい。僅かでも危険なものは遠ざけるべきだ」
「……分かったよ」
アルフレッドはぶすっとした顔で煙草を灰皿に押しつけて火を消した。元々そんなに吸う方じゃない。吸わない時は2、3か月吸わないこともある。煙草を止めるのは、多分それほどキツくはないだろう。確実に子供を産みたい。その為ならば致し方ない。
アルフレッドは口を縛っていないゴミ袋に半分以上中身が残っている煙草の箱と溜まった吸い殻を入れると、ゴミ袋の口を縛った。
部屋の中を見回せば、床が見えている上に埃1つ落ちていない。大量の洗濯物の山があるが、あちこちに散乱していた本は1か所にきっちり纏められており、空の酒瓶も別の場所に並べられていた。
アルフレッドは洗濯物を畳み始めたバージルの正面に腰を下ろし、キレイに乾いているタオルを手に取って、畳み始めた。きっちりと丁寧にアルフレッドのズボンを畳みながら、バージルが口を開いた。
「ゴミの量が多いから、この後ゴミ収集業者に引き取りを頼みに行く。確か空瓶も引き取ってくれた筈だ。本は本棚にはとてもじゃないが入りきらないから諦める。定位置を決めておくから、読んだら必ず元あった場所に戻せ。畳んだ洗濯物は全て寝室の衣装箪笥に収納するから、こちらも洗濯したら必ず元あった位置に戻せ。洗濯は毎日しろ。不衛生極まりない」
「うるせぇ。お母さんか」
「誰がお母さんだ。食事はどうしている。かなり汚かったから台所を使ってはいるのだろう」
「気が向いた時は料理をするが、普段は殆ど自炊はしていない。近所に安い定食屋があるから、其処で済ませることが多いな。家を留守にすることが多いから、食材の買い溜めとかできないし」
手際よくアルフレッドのシャツを畳んでいるバージルが、意外そうな顔でアルフレッドを見た。
「まさか料理ができるのか?」
「なんだ。その顔。人並みにできるわ」
「そうか。俺はできない。新人の時から、遠征の時でも調理に一切関わるなと厳命されている。貴重な食糧がゴミ以下になるからと」
「何をやらかしたんだよ」
「別に。そんなに突飛なことはしていない筈だ」
「自覚がないタイプのメシマズか。やべぇな」
「通いの家政婦からも台所立ち入り禁止令が出されているから、自宅でも料理をしたことがない」
「ふーん。これ終わったら先に飯を食いに行こうぜ。腹が減った」
「あぁ」
殆どの洗濯物をてきぱきとバージルが畳み、寝室の衣装箪笥にきっちりとキレイに収納した。寝室も見違える程キレイになっていた。どこにどれを入れるかを説明してくるバージルに生返事をしながら、アルフレッドはこの後使うであろう整えられたベッドから視線を逸らした。
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