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ディリオはクインシーを連れて、仕事が終わった後に最近気に入っている飲食店に来ていた。
ナイルは今日は夜遅くまで小隊長会議があり、その後は締め切り間近の急ぎの書類がいくつかあるので邸に帰りつくのは日付が変わる頃になるだろう。
ナイルがいないので、ディリオはいい機会だとクインシーを誘って個室がある店に入った。この店は狭いが個室があり、値段が高いがメニューの種類が豊富で味もいい。酒も品揃えがよく、たまにナイルと2人で食べに来ている。
クインシーと向かい合って座り、頼んだ大量の料理を食べながら、ディリオは口を開いた。
「なんか俺、最近ナイルとセックスしまくってんだけど」
「…………へぇ」
「どう思う?」
「好きにやりまくればいいんじゃないんすか」
「いや、そういうんじゃなくて」
「…………何か最近こういう会話した気がするぅ……」
「ん?」
「……何でもねぇっす」
「何で俺ナイルとセックスしてんのかね」
「愛してるからでしょ」
「は?」
「副隊長が。小隊長を。愛してる」
「……いやいやいやいやいや」
「いやいやいやいやいや」
「え?だってナイルだよ?完全にド普通なナイルだよ?負けず嫌い選手権があったら、ぶっちぎりで優勝しちゃうくらい負けず嫌いで可愛げがないナイルだよ?アナニー大好きナイルだよ?」
「そういう趣味なんじゃないんすか?」
「えぇー。なんかやだぁー」
「やだぁー、じゃないっす。例えばっすよ」
「うん」
「小隊長が違う奴を自分の副隊長にしようとします。さぁ、どうします?」
「全力でそいつを潰す」
「小隊長がある日突然、副隊長と離婚して結婚するって男か女を連れてきます。さぁ、どうします?」
「とりあえず男は物理的に潰す。女は社会的に潰す」
「小隊長がある日突然『お前とは2度とセックスしない』って言い出しました。さぁ、どうします?」
「土下座してお願いして撤回してもらう」
「ほらぁ!」
「え?何よ」
「執着心と独占欲が半端ない!めちゃくちゃセックスしたい!つーか、死ぬまで小隊長と離れる気がない!結論!副隊長は小隊長を愛してる!以上!解散!お疲れ様っした!俺帰るっ!」
「いやいや待て待て。席を立つな。お前にしか相談できないんだって!1番高い酒頼んでいいから!」
「ボトルで?」
「容赦ないなお前。……クッソ、しょうがねぇ!」
「あざーっす」
「百万歩譲ってそうだとして、だ。どうしたらいいと思う?」
「別に。もう結婚してるし子供もいるし。普通にセックスして夫婦生活満喫すりゃいいんじゃないんすかぁー」
「マジか」
「マジっす」
「えぇー。えぇー。えぇー?」
「腹割って1回話し合えば済むことっしょ。んで、『愛してる』って言えばそれで終わりっす」
「マジか」
「マジっす」
「いやでもさぁ……俺とナイルだよ?」
「一生離婚する気ないんでしょー?」
「ないな」
「仕事でも離れる気ないんでしょー?」
「あり得んな。ナイルの下から動くくらいなら国軍辞める」
「ほらぁー。もう完全に小隊長なしじゃ生きられない感じじゃないっすかー」
「まーじーかー」
「まーじーっすー」
ディリオは思わず頭を抱えた。クインシーに指摘されたことがぐるぐる頭の中を回っている。混乱しすぎて、なんかもう酒でも飲んで誤魔化したい。でも外で酒を飲むのは危険だし、そもそも禁止されている。詰んでる。
ぐるぐるしているディリオをクインシーが呆れた顔で見た後、疲れた顔をしてぼそっと小さく呟いた。
「似た者夫婦マジ面倒くせぇ」
ーーーーーー
ナイルとディリオの間には、ここ最近妙な緊張感が漂っていた。仕事でも1日一緒、邸でも一緒、寝るのも一緒、なんならセックスもしている。しかし、どこかお互いの腹を探り合うような雰囲気があった。
2人のそんな雰囲気を敏感に察したのは2人の子供達であった。
「お父さん。父様」
「ん?」
「何だ?オフィーリア。あ、腹減ったか?」
「お腹は空いてるけど今はいいわ」
「何か食べるか……ヴィリオは?腹具合」
「空いてるけど今はいい」
「ん?どうした?2人とも」
「どうした?って言いたいのはこっちよ。お父さんも父様も喧嘩でもしてるわけ?最近なんかおかしいわよ」
「「え?」」
「喧嘩はダメだよ」
「そうよ。早く仲直りしてよね」
「仲直りするまで、こっち来ちゃダメー」
「そういうことだから。はい。じゃあ今日は帰ってー。さよーならー。仲直りするまで来ないでくださーい」
「ばーいばーい」
「「……えぇっ!?」」
約2週間ぶりに会った天使達に問答無用で王都に帰された2人は、ショック過ぎて、転移陣のある部屋の前の廊下で崩れ落ちた。
「え?なに?反抗期?反抗期?」
「何でだ。本当に何でだ」
「……喧嘩なんてしてねぇし」
「……してないな」
ナイルとディリオは顔を見合わせて、ちょっと見つめあってから、そっと同じタイミングで目を反らした。
別に喧嘩なんてしていない。ただ頭がずっと混乱している上に、なんかちょっと気まずいだけだ。ナイルは小さく唇を尖らせた。
すぐに隣にいるディリオが大きな溜め息を吐いて、ガリガリ自分の頭を掻いた。
「んーーーーー……ナイル」
「なんだ」
「……ちょっと部屋で腹割って話しましょうか」
「…………あぁ」
いよいよ白黒つける時がきてしまったのかもしれない。ナイルは腹をくくる為に1度大きく深呼吸をして、ディリオと共に自室へと向かった。
ナイルは今日は夜遅くまで小隊長会議があり、その後は締め切り間近の急ぎの書類がいくつかあるので邸に帰りつくのは日付が変わる頃になるだろう。
ナイルがいないので、ディリオはいい機会だとクインシーを誘って個室がある店に入った。この店は狭いが個室があり、値段が高いがメニューの種類が豊富で味もいい。酒も品揃えがよく、たまにナイルと2人で食べに来ている。
クインシーと向かい合って座り、頼んだ大量の料理を食べながら、ディリオは口を開いた。
「なんか俺、最近ナイルとセックスしまくってんだけど」
「…………へぇ」
「どう思う?」
「好きにやりまくればいいんじゃないんすか」
「いや、そういうんじゃなくて」
「…………何か最近こういう会話した気がするぅ……」
「ん?」
「……何でもねぇっす」
「何で俺ナイルとセックスしてんのかね」
「愛してるからでしょ」
「は?」
「副隊長が。小隊長を。愛してる」
「……いやいやいやいやいや」
「いやいやいやいやいや」
「え?だってナイルだよ?完全にド普通なナイルだよ?負けず嫌い選手権があったら、ぶっちぎりで優勝しちゃうくらい負けず嫌いで可愛げがないナイルだよ?アナニー大好きナイルだよ?」
「そういう趣味なんじゃないんすか?」
「えぇー。なんかやだぁー」
「やだぁー、じゃないっす。例えばっすよ」
「うん」
「小隊長が違う奴を自分の副隊長にしようとします。さぁ、どうします?」
「全力でそいつを潰す」
「小隊長がある日突然、副隊長と離婚して結婚するって男か女を連れてきます。さぁ、どうします?」
「とりあえず男は物理的に潰す。女は社会的に潰す」
「小隊長がある日突然『お前とは2度とセックスしない』って言い出しました。さぁ、どうします?」
「土下座してお願いして撤回してもらう」
「ほらぁ!」
「え?何よ」
「執着心と独占欲が半端ない!めちゃくちゃセックスしたい!つーか、死ぬまで小隊長と離れる気がない!結論!副隊長は小隊長を愛してる!以上!解散!お疲れ様っした!俺帰るっ!」
「いやいや待て待て。席を立つな。お前にしか相談できないんだって!1番高い酒頼んでいいから!」
「ボトルで?」
「容赦ないなお前。……クッソ、しょうがねぇ!」
「あざーっす」
「百万歩譲ってそうだとして、だ。どうしたらいいと思う?」
「別に。もう結婚してるし子供もいるし。普通にセックスして夫婦生活満喫すりゃいいんじゃないんすかぁー」
「マジか」
「マジっす」
「えぇー。えぇー。えぇー?」
「腹割って1回話し合えば済むことっしょ。んで、『愛してる』って言えばそれで終わりっす」
「マジか」
「マジっす」
「いやでもさぁ……俺とナイルだよ?」
「一生離婚する気ないんでしょー?」
「ないな」
「仕事でも離れる気ないんでしょー?」
「あり得んな。ナイルの下から動くくらいなら国軍辞める」
「ほらぁー。もう完全に小隊長なしじゃ生きられない感じじゃないっすかー」
「まーじーかー」
「まーじーっすー」
ディリオは思わず頭を抱えた。クインシーに指摘されたことがぐるぐる頭の中を回っている。混乱しすぎて、なんかもう酒でも飲んで誤魔化したい。でも外で酒を飲むのは危険だし、そもそも禁止されている。詰んでる。
ぐるぐるしているディリオをクインシーが呆れた顔で見た後、疲れた顔をしてぼそっと小さく呟いた。
「似た者夫婦マジ面倒くせぇ」
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ナイルとディリオの間には、ここ最近妙な緊張感が漂っていた。仕事でも1日一緒、邸でも一緒、寝るのも一緒、なんならセックスもしている。しかし、どこかお互いの腹を探り合うような雰囲気があった。
2人のそんな雰囲気を敏感に察したのは2人の子供達であった。
「お父さん。父様」
「ん?」
「何だ?オフィーリア。あ、腹減ったか?」
「お腹は空いてるけど今はいいわ」
「何か食べるか……ヴィリオは?腹具合」
「空いてるけど今はいい」
「ん?どうした?2人とも」
「どうした?って言いたいのはこっちよ。お父さんも父様も喧嘩でもしてるわけ?最近なんかおかしいわよ」
「「え?」」
「喧嘩はダメだよ」
「そうよ。早く仲直りしてよね」
「仲直りするまで、こっち来ちゃダメー」
「そういうことだから。はい。じゃあ今日は帰ってー。さよーならー。仲直りするまで来ないでくださーい」
「ばーいばーい」
「「……えぇっ!?」」
約2週間ぶりに会った天使達に問答無用で王都に帰された2人は、ショック過ぎて、転移陣のある部屋の前の廊下で崩れ落ちた。
「え?なに?反抗期?反抗期?」
「何でだ。本当に何でだ」
「……喧嘩なんてしてねぇし」
「……してないな」
ナイルとディリオは顔を見合わせて、ちょっと見つめあってから、そっと同じタイミングで目を反らした。
別に喧嘩なんてしていない。ただ頭がずっと混乱している上に、なんかちょっと気まずいだけだ。ナイルは小さく唇を尖らせた。
すぐに隣にいるディリオが大きな溜め息を吐いて、ガリガリ自分の頭を掻いた。
「んーーーーー……ナイル」
「なんだ」
「……ちょっと部屋で腹割って話しましょうか」
「…………あぁ」
いよいよ白黒つける時がきてしまったのかもしれない。ナイルは腹をくくる為に1度大きく深呼吸をして、ディリオと共に自室へと向かった。
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