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22:うきうきデートの準備
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ウーゴは機嫌よく服を選んでいた。今日はなんとセオとデートである。
エドガーが帰って来た翌週の休日は家族全員で祖父の家に行ったのでセオとは会えなかった。その更に翌週の休日である今日はセオと2人で芝居を観に行く。思いきって誘ってみてよかった。セオは快く了承してくれた。今日は土曜日で、セオは午前中まで仕事だから、午後からセオの家にセオを迎えに行って昼食を劇場近くの店で食べてから、劇場で午後の部の芝居を観る予定である。明日は丸1日ウーゴもセオも休みだから、今夜はセオの家に泊まりたい。そんでもってイチャイチャしたい。ウーゴは締まりのない顔でお気に入りの紺色のセーターを衣装箪笥から引っ張り出して、ごちゃごちゃ物が散乱しているベッドの上に放り投げた。
鼻歌を歌いながら寝間着のズボンと下着を脱いで新品のパンツを穿き、ズボンに足を通そうとした瞬間、ノックもなしに自室のドアが勢いよく開いた。
「兄上っ!!」
何故か裸の上に大きなバスタオルだけ巻いたアイーダが下着片手に立っていた。
「え?は?なに?ていうか何その格好?」
「下着選ぶの手伝って!」
「は?普通に嫌だよ。何が悲しくて妹の下着なんか選ばなきゃいけないんだよ」
「今日ロムルスさんとデートなの!初デート!」
「よかったな」
「まぁね。……じゃなくて!どんな下着着けていけばいいのかしら!?」
「下着より服を選べよ」
「服はもう選んでる。清楚に白いワンピースにしといたわ」
「あっそ。ていうか俺着替え中なんだけど」
「兄上の裸なんて心底どうでもいいわ」
「俺もお前の下着なんて心底どうでもいいわ」
「初デートってどんな下着がいいのかしら。可愛い系?色っぽい系?」
「聞けよ」
「色っぽい系も一応持ってるけど、これ殆んど生地が透けてるのよね……あと紐パンだし。可愛い系はレースフリフリで可愛いけど、色が赤だから白いワンピース着たらなんか透けそうだし」
「普通のでいいだろ。別に見せるわけじゃないんだから。あ、普段使いのよれっよれのやつは流石にやめとけよ。あとせめてブラジャーとパンツの色とデザインは揃えとけ。こないだ全部色もデザインも違うお前の下着の山見てセオが不思議そうにしてたし」
「うっそ!そ、そ、そ、それ……ロムルスさんも見た?」
「さあ?畳んでる時に見たんじゃないか?」
「うっそでしょぉぉぉぉぉ!!!」
「なんかもう今更だろ。諦めろ。むしろ早めにお前のズボラなところが分かって逆によかったんじゃないか?」
「それもそうね」
「納得するのかよ」
「過ぎたことを悔やんでも時間は戻らないのよ、兄上」
「あっそ」
「んー。新品の普通の下着にしとくかぁ」
「そうしろよ」
「あら?兄上も出掛けるの?そこにあるの、お洒落着のセーターよね」
「まぁな。セオと芝居観に行ってくる」
「あら。私もロムルスさんと芝居なの」
「……午後の部?」
「午後の部」
「…………うっそだろっ!」
「ううん。マジ。デート被っちゃったわね。セオドールさんとデートのつもりなんでしょ?兄上的には?」
「……そうですけどなにか?」
「ふふっ。ま、兄上も頑張ってね?私セオドールさんなら義理のお兄さんになっても全然いいわよ?」
「……あっそ」
「さて、下着も決まったし着替えてこよーっと。あ、兄上。髪結ってよ」
「自分でやれよ」
「兄上がやってくれた方がキレイにできるもの」
「父上は?」
「父様と寝室でイチャイチャしてんじゃないの?」
「あー……もぅー、しょうがないな」
「ふふっ。よろしく!」
ご機嫌なアイーダが部屋のドアを閉めていった。今から着替えるのだろう。ウーゴもズボンを穿いて、青と緑のチェックのシャツを着てから紺色のセーターを着た。鞄は小さめの肩掛け鞄にしておく。財布とハンカチ、ちり紙、あと念のため歯ブラシも入れておく。携帯通信具はコートのポケットに入れる予定である。少し前にセオから返してもらったマフラーも用意して、準備万端である。1階の居間にも台所にも誰もいなかったので、朝食は適当に魔導冷蔵庫に入っていたパンにチーズをのせて焼いて食べることにする。自分用に珈琲も淹れた。先週祖父の家に行った時に大量に貰ったクッキーと干した果物がゴロゴロ入ったパウンドケーキもいくつか皿に出した。全部居間に運んでローテーブルの上に置き、ソファーにゆったり座って優雅に朝食を楽しむ。正直量が全然足りないが、自分で台所で朝食を作るとなると、まだ修羅場の疲れが抜けきっていないエドガーが更に疲れることになるので止めておいた。待ち合わせはセオの家なので、少し早めに行って街で何か少し食べればいい。
熱々のチーズがおいしいパンにかぶりついていると、パタパタと白いワンピースに着替えたアイーダが居間にやって来た。
「あ、いいもの食べてるー。私にもちょーだい」
「むぐっ。自分で作れよ」
「えー。じゃあ珈琲淹れてよ」
「えー……って、あ。俺の珈琲飲みきっちゃった。しょうがないな。珈琲だけだぞ。お代わりついでなんだからな」
「ふふー。ありがと、兄上」
アイーダの分の珈琲も淹れてやり、自分でチーズをのせたパンを焼いて、クッキーなどを皿に盛ったアイーダと居間に移動してから、続きを食べ始める。
「兄上、いつ頃家出るの?」
「ん?これ食ってお前の髪を結ったら出るよ」
「ちょっと早くない?お昼前までロムルスさん達仕事じゃない」
「朝ご飯食べ足りないから、街で食って本屋あたりで適当に時間潰す」
「あら。それいいわね」
「お前、どこに集合なんだよ」
「劇場の前よ」
「お昼ご飯は?」
「近くに美味しいお店があるんですって」
「ふーん」
「兄上と一緒に出て、私も街で何か食べようかな。これだけじゃお昼まで絶対にもたないもの」
「じゃあ、さっさと食べて髪を結うぞ。化粧は?」
「終わってる。あ、兄上。この口紅ちょっと濃くない?」
「んー?別にいいんじゃないか?今そういう色が流行ってるんだろ?」
「まぁ、そうなんだけど。女の子の間で流行ってる色と男の人が好きな色って違うじゃない」
「まぁな。俺達が子供の頃さ、一時期、何故か青とか緑とか流行ったじゃん。あれ見て『頭おかしい』って思ったもんな」
「あー……あったわね、そういえば」
「それに比べたら全然いいよ」
「比べる対象悪すぎない?」
2人で話しながらあっという間に少ない朝食を食べ終えてしまったので、ウーゴはアイーダの髪をきっちり結い上げてやって、祖父から貰ったというアイーダがお気に入りの髪飾りを着けてやった。
2人ともコートとマフラーでしっかり防寒してから家を出て、各々の愛馬に跨がり、中央の街の入り口を目指して軽く走らせる。
街の入り口に着いたら馬小屋に馬を預けて、歩いて街の中に入った。とりあえず屋台が集中している中央広場を目指す。中途半端に食べたからか、逆にかなりお腹が空いている。今は午前のお茶の時間より少し前だ。そこそこガッツリ食べても、セオとの昼食までには余裕で空腹になる。ウーゴとアイーダは足早に中央広場へ向かった。
中央広場の屋台で好きなだけ買い食いし、そこそこ満腹の腹を抱えて2人は中央広場を出た。本屋に向かって歩いていると、くいっとアイーダに袖を引かれた。
「なに?アイーダ」
「兄上。あそこの店行ってみたい」
「服屋?」
「うん。次のデートで何着たらいいか悩んでて。参考にならないかなって。あとできればデート用の下着買いたい」
「お前、下着片手にデートすんの?」
「ダメかな?」
「ダメだろ」
「んー……じゃあ下着は明日アンジーに付き合ってもらう」
「そうしろよ」
アンジーことアンジェラはウーゴの1つ年下の叔母である。アンジェラとアイーダは仲がいい。たまに2人で遊びに出掛けたりもしている。アンジェラは街中の美容院で働いている。いずれは自分の店を開きたいので、現在修行中なのだそうだ。
アイーダにせがまれて、女性服専門店に入った。華やかな色彩に溢れた空間は男の身ではなんとも居心地が悪い。
アイーダがマネキンに着せられた服を見ながら、難しそうな顔をした。
「……兄上」
「なに?」
「ロムルスさんって可愛い系が好きなのかしら。それとも清楚系?意外と色っぽい系?」
「いや、知らないし」
「おっぱいデカい方が好きなのかしら……残念ながら私のおっぱいはかなり控えめなんだけど……」
「だから知らないよ」
「もぉー。兄上も一応男でしょ!何な参考になりそうなこと言ってよ!」
「何だその無茶振り。えー?」
「妹の結婚がかかってるのよ!」
「んーーー。あ、あれは?俺はあんな感じのが好き」
「どれ?」
ウーゴが指を指したのは、とてもシンプルなデザインのワンピースだった。落ち着いた色合いの青色で、なんとなく大人っぽい。この色はセオに似合いそうだな、と思いながら、ウーゴはワンピースを眺めた。
「んーーー私に似合うと思う?」
「さぁ?」
「むぅ」
「ていうか、服もアンジーに選んでもらえよ。それか帰ってきてたらおばあ様。俺じゃよく分かんないし」
「はぁー。そうね。そうしようかしら……」
「よし。じゃあ本屋に行くぞ。お勧めの本を買ってセオにプレゼントする予定なんだよ、俺は」
「あら、そうなの?」
「うん」
「私もロムルスさんに本の好み聞いとけばよかったわぁ」
「……そういえば、アイーダよ」
「え?なに?」
「ロムルスさんとマジで結婚する気なのか?」
「うん」
「マジか」
「だって素敵な人じゃない。めちゃくちゃ料理上手だし、爽やかだし、優しい感じだし。顔も男前で格好いいわよね」
「まあな」
「それに一緒にいて楽しいもの。まだ会ったの2回だけだけど」
「それは大事だな」
「でしょ?兄上は?」
「ん?」
「セオドールさんと結婚したいんでしょ?」
「うっ……結婚っていうか、その、まずは恋人になりたい、かな」
「ふーん。じゃあ頑張らなきゃね」
「うん」
なんとなくお互い頑張ろうと肩を叩きあって、ウーゴとアイーダは服屋を出た。本屋に行き、ウーゴが1番好きな冒険小説シリーズの1冊目を買い、本屋を出た。
そろそろ各々移動しないと待ち合わせの時間に遅れてしまうかもしれない。
ウーゴはアイーダと本屋の前で別れて、足取り軽くセオの住む官舎を目指して歩いた。
エドガーが帰って来た翌週の休日は家族全員で祖父の家に行ったのでセオとは会えなかった。その更に翌週の休日である今日はセオと2人で芝居を観に行く。思いきって誘ってみてよかった。セオは快く了承してくれた。今日は土曜日で、セオは午前中まで仕事だから、午後からセオの家にセオを迎えに行って昼食を劇場近くの店で食べてから、劇場で午後の部の芝居を観る予定である。明日は丸1日ウーゴもセオも休みだから、今夜はセオの家に泊まりたい。そんでもってイチャイチャしたい。ウーゴは締まりのない顔でお気に入りの紺色のセーターを衣装箪笥から引っ張り出して、ごちゃごちゃ物が散乱しているベッドの上に放り投げた。
鼻歌を歌いながら寝間着のズボンと下着を脱いで新品のパンツを穿き、ズボンに足を通そうとした瞬間、ノックもなしに自室のドアが勢いよく開いた。
「兄上っ!!」
何故か裸の上に大きなバスタオルだけ巻いたアイーダが下着片手に立っていた。
「え?は?なに?ていうか何その格好?」
「下着選ぶの手伝って!」
「は?普通に嫌だよ。何が悲しくて妹の下着なんか選ばなきゃいけないんだよ」
「今日ロムルスさんとデートなの!初デート!」
「よかったな」
「まぁね。……じゃなくて!どんな下着着けていけばいいのかしら!?」
「下着より服を選べよ」
「服はもう選んでる。清楚に白いワンピースにしといたわ」
「あっそ。ていうか俺着替え中なんだけど」
「兄上の裸なんて心底どうでもいいわ」
「俺もお前の下着なんて心底どうでもいいわ」
「初デートってどんな下着がいいのかしら。可愛い系?色っぽい系?」
「聞けよ」
「色っぽい系も一応持ってるけど、これ殆んど生地が透けてるのよね……あと紐パンだし。可愛い系はレースフリフリで可愛いけど、色が赤だから白いワンピース着たらなんか透けそうだし」
「普通のでいいだろ。別に見せるわけじゃないんだから。あ、普段使いのよれっよれのやつは流石にやめとけよ。あとせめてブラジャーとパンツの色とデザインは揃えとけ。こないだ全部色もデザインも違うお前の下着の山見てセオが不思議そうにしてたし」
「うっそ!そ、そ、そ、それ……ロムルスさんも見た?」
「さあ?畳んでる時に見たんじゃないか?」
「うっそでしょぉぉぉぉぉ!!!」
「なんかもう今更だろ。諦めろ。むしろ早めにお前のズボラなところが分かって逆によかったんじゃないか?」
「それもそうね」
「納得するのかよ」
「過ぎたことを悔やんでも時間は戻らないのよ、兄上」
「あっそ」
「んー。新品の普通の下着にしとくかぁ」
「そうしろよ」
「あら?兄上も出掛けるの?そこにあるの、お洒落着のセーターよね」
「まぁな。セオと芝居観に行ってくる」
「あら。私もロムルスさんと芝居なの」
「……午後の部?」
「午後の部」
「…………うっそだろっ!」
「ううん。マジ。デート被っちゃったわね。セオドールさんとデートのつもりなんでしょ?兄上的には?」
「……そうですけどなにか?」
「ふふっ。ま、兄上も頑張ってね?私セオドールさんなら義理のお兄さんになっても全然いいわよ?」
「……あっそ」
「さて、下着も決まったし着替えてこよーっと。あ、兄上。髪結ってよ」
「自分でやれよ」
「兄上がやってくれた方がキレイにできるもの」
「父上は?」
「父様と寝室でイチャイチャしてんじゃないの?」
「あー……もぅー、しょうがないな」
「ふふっ。よろしく!」
ご機嫌なアイーダが部屋のドアを閉めていった。今から着替えるのだろう。ウーゴもズボンを穿いて、青と緑のチェックのシャツを着てから紺色のセーターを着た。鞄は小さめの肩掛け鞄にしておく。財布とハンカチ、ちり紙、あと念のため歯ブラシも入れておく。携帯通信具はコートのポケットに入れる予定である。少し前にセオから返してもらったマフラーも用意して、準備万端である。1階の居間にも台所にも誰もいなかったので、朝食は適当に魔導冷蔵庫に入っていたパンにチーズをのせて焼いて食べることにする。自分用に珈琲も淹れた。先週祖父の家に行った時に大量に貰ったクッキーと干した果物がゴロゴロ入ったパウンドケーキもいくつか皿に出した。全部居間に運んでローテーブルの上に置き、ソファーにゆったり座って優雅に朝食を楽しむ。正直量が全然足りないが、自分で台所で朝食を作るとなると、まだ修羅場の疲れが抜けきっていないエドガーが更に疲れることになるので止めておいた。待ち合わせはセオの家なので、少し早めに行って街で何か少し食べればいい。
熱々のチーズがおいしいパンにかぶりついていると、パタパタと白いワンピースに着替えたアイーダが居間にやって来た。
「あ、いいもの食べてるー。私にもちょーだい」
「むぐっ。自分で作れよ」
「えー。じゃあ珈琲淹れてよ」
「えー……って、あ。俺の珈琲飲みきっちゃった。しょうがないな。珈琲だけだぞ。お代わりついでなんだからな」
「ふふー。ありがと、兄上」
アイーダの分の珈琲も淹れてやり、自分でチーズをのせたパンを焼いて、クッキーなどを皿に盛ったアイーダと居間に移動してから、続きを食べ始める。
「兄上、いつ頃家出るの?」
「ん?これ食ってお前の髪を結ったら出るよ」
「ちょっと早くない?お昼前までロムルスさん達仕事じゃない」
「朝ご飯食べ足りないから、街で食って本屋あたりで適当に時間潰す」
「あら。それいいわね」
「お前、どこに集合なんだよ」
「劇場の前よ」
「お昼ご飯は?」
「近くに美味しいお店があるんですって」
「ふーん」
「兄上と一緒に出て、私も街で何か食べようかな。これだけじゃお昼まで絶対にもたないもの」
「じゃあ、さっさと食べて髪を結うぞ。化粧は?」
「終わってる。あ、兄上。この口紅ちょっと濃くない?」
「んー?別にいいんじゃないか?今そういう色が流行ってるんだろ?」
「まぁ、そうなんだけど。女の子の間で流行ってる色と男の人が好きな色って違うじゃない」
「まぁな。俺達が子供の頃さ、一時期、何故か青とか緑とか流行ったじゃん。あれ見て『頭おかしい』って思ったもんな」
「あー……あったわね、そういえば」
「それに比べたら全然いいよ」
「比べる対象悪すぎない?」
2人で話しながらあっという間に少ない朝食を食べ終えてしまったので、ウーゴはアイーダの髪をきっちり結い上げてやって、祖父から貰ったというアイーダがお気に入りの髪飾りを着けてやった。
2人ともコートとマフラーでしっかり防寒してから家を出て、各々の愛馬に跨がり、中央の街の入り口を目指して軽く走らせる。
街の入り口に着いたら馬小屋に馬を預けて、歩いて街の中に入った。とりあえず屋台が集中している中央広場を目指す。中途半端に食べたからか、逆にかなりお腹が空いている。今は午前のお茶の時間より少し前だ。そこそこガッツリ食べても、セオとの昼食までには余裕で空腹になる。ウーゴとアイーダは足早に中央広場へ向かった。
中央広場の屋台で好きなだけ買い食いし、そこそこ満腹の腹を抱えて2人は中央広場を出た。本屋に向かって歩いていると、くいっとアイーダに袖を引かれた。
「なに?アイーダ」
「兄上。あそこの店行ってみたい」
「服屋?」
「うん。次のデートで何着たらいいか悩んでて。参考にならないかなって。あとできればデート用の下着買いたい」
「お前、下着片手にデートすんの?」
「ダメかな?」
「ダメだろ」
「んー……じゃあ下着は明日アンジーに付き合ってもらう」
「そうしろよ」
アンジーことアンジェラはウーゴの1つ年下の叔母である。アンジェラとアイーダは仲がいい。たまに2人で遊びに出掛けたりもしている。アンジェラは街中の美容院で働いている。いずれは自分の店を開きたいので、現在修行中なのだそうだ。
アイーダにせがまれて、女性服専門店に入った。華やかな色彩に溢れた空間は男の身ではなんとも居心地が悪い。
アイーダがマネキンに着せられた服を見ながら、難しそうな顔をした。
「……兄上」
「なに?」
「ロムルスさんって可愛い系が好きなのかしら。それとも清楚系?意外と色っぽい系?」
「いや、知らないし」
「おっぱいデカい方が好きなのかしら……残念ながら私のおっぱいはかなり控えめなんだけど……」
「だから知らないよ」
「もぉー。兄上も一応男でしょ!何な参考になりそうなこと言ってよ!」
「何だその無茶振り。えー?」
「妹の結婚がかかってるのよ!」
「んーーー。あ、あれは?俺はあんな感じのが好き」
「どれ?」
ウーゴが指を指したのは、とてもシンプルなデザインのワンピースだった。落ち着いた色合いの青色で、なんとなく大人っぽい。この色はセオに似合いそうだな、と思いながら、ウーゴはワンピースを眺めた。
「んーーー私に似合うと思う?」
「さぁ?」
「むぅ」
「ていうか、服もアンジーに選んでもらえよ。それか帰ってきてたらおばあ様。俺じゃよく分かんないし」
「はぁー。そうね。そうしようかしら……」
「よし。じゃあ本屋に行くぞ。お勧めの本を買ってセオにプレゼントする予定なんだよ、俺は」
「あら、そうなの?」
「うん」
「私もロムルスさんに本の好み聞いとけばよかったわぁ」
「……そういえば、アイーダよ」
「え?なに?」
「ロムルスさんとマジで結婚する気なのか?」
「うん」
「マジか」
「だって素敵な人じゃない。めちゃくちゃ料理上手だし、爽やかだし、優しい感じだし。顔も男前で格好いいわよね」
「まあな」
「それに一緒にいて楽しいもの。まだ会ったの2回だけだけど」
「それは大事だな」
「でしょ?兄上は?」
「ん?」
「セオドールさんと結婚したいんでしょ?」
「うっ……結婚っていうか、その、まずは恋人になりたい、かな」
「ふーん。じゃあ頑張らなきゃね」
「うん」
なんとなくお互い頑張ろうと肩を叩きあって、ウーゴとアイーダは服屋を出た。本屋に行き、ウーゴが1番好きな冒険小説シリーズの1冊目を買い、本屋を出た。
そろそろ各々移動しないと待ち合わせの時間に遅れてしまうかもしれない。
ウーゴはアイーダと本屋の前で別れて、足取り軽くセオの住む官舎を目指して歩いた。
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