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21:青天の霹靂
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飲み会の翌朝にケリーはいい気分で家へと帰った。ご機嫌に鼻歌を歌いながら玄関を開けると、パーシーがもう出かける準備をしていた。
「「おかえり」」
「ただいまー」
ニコニコ上機嫌に笑いながら、テーブルの所に座っているカーラの元に行き、むぎゅっと後ろからカーラを抱き締めた。
「酒くっさ」
「はははっ」
「もぉー。寝るよ。おっちゃん」
「おー。パーシー。もう出るか?」
「はい。いってきます」
「いってらっしゃーい。気をつけてな」
「ありがとうございます」
ケリーが笑顔で手を振ると、パーシーがちょっと笑ってから、玄関へと向かって歩いていった。ケリーはカーラをぬいぐるみのように抱っこして、そのまま自室へとご機嫌に戻った。カーラを抱えたまま、部屋の空調をつけてからベッドに寝転がる。ふわふわして気持ちがいい。カーラの子供体温も心地よい。ケリーは大きく欠伸をした。
「おっちゃんさー」
「んー?」
「昨日誰かに何か言われた?」
「あー?んー……あぁ。そういやよ、また姪っ子と見合いしてみねぇかって言われたわ」
「マジかっ!?」
「おー。一応断っといたけどな。ほらよー。俺金は持ってっけど、今無職だろー?やっぱよー。その状態で女と結婚はどうかと思うんだよなー」
「そうだなっ!」
「ま。ぼちぼち街にも慣れてきたし、そろそろ適当な仕事探すかねぇ」
「おっちゃん、1人で通勤できんの?」
「それなー。それが1番問題なんだよなー」
「つーかさ。どうやってカサンドラまで来たわけ?1人旅だったんだろ?」
「んー?あぁ。デカい街同士を繋ぐ街道は一本道だしよ。あとは途中で寄った所では全部でお前さんに声かけたみたいに案内してくれる奴をその場で雇ってたんだわ」
「なるほど」
「んあー。ねっみぃ」
「寝ろよ」
「おー。あ、そういやよ」
「なに?」
「お前さん、またちょっと背が伸びてんだろ?」
「うん。ズボンがちょっと短くなってる」
「明後日パーシー休みだしよー。買いに行こうぜ」
「その日はケビンと1日遊ぶ約束してる。弁当持参で」
「お。マジか。んー……じゃあパーシーが特に買うもんなかったら、明々後日行くかー」
「うん。バレッタに合うのが欲しい。そろそろ髪もちょっと伸びたし」
「バレッタに合うやつ……スカート?」
「えぇー」
「パーシーがめちゃくちゃビックリドッキリするな」
「面白そうだから1枚だけ買う」
「おー」
話していると本格的に眠くなってきた。ケリーは抱き抱えているカーラの柔らかい髪に鼻先を埋めて、深い眠りに落ちた。
ーーーーーー
翌々日の朝。
朝食の後に、ケリーはカーラの髪を結ってやっていた。カーラが買った本に載っている、編み込みをするというケリーには難易度が高いものに挑戦中である。なんとか苦心して、それなりに上手くできた。少し伸びた髪を編み込んで結い上げていると、普段は少年のようなカーラも少し大人びた女の子に見える。
「これ楽」
「やるのは少し難しいがな」
「首が涼しい」
「ケビンが驚くんじゃねぇの?」
「かもね」
カーラはご機嫌に弁当を入れた鞄を持って出かけていった。それを見送ると、朝食で使った皿を片付けているパーシーを手伝い、2人で洗濯を済ませ、掃除までした。今日もよく晴れている。洗濯物も昼頃には乾くだろう。
「ケリーさん」
「んー?」
「あの、今日はちょっと遠出しませんか?えっと、カーラもいないし」
「お、いいな。資料館……は遠出って程でもねぇな。わりとよく行ってるし」
「そうですね。よかったら街の外に行きませんか?あー……暑いから、小川のある所とか」
「んじゃ、アニーに乗っていくか。そういや、パーシーはまだ乗ったことないだろ?」
「あ、はい。あ、でも大丈夫ですか?タンデムですよね?」
「アニーは丈夫だから問題ない。パーシーは背が高いが細くて軽いし。ちょっと待ってろ。鞍つけてくるわ」
「あ、はい。お願いします。カーラの分を作るついでに僕達のおにぎりも作ったので、水筒を用意してきますね」
「おー。今日は天気がいいからな。外で食うと気持ちいいだろうな」
「えぇ」
パーシーが微笑んで、嬉しそうに厨房へと向かった。ケリーはアニーの準備をしに馬小屋へと向かう。パーシーとは食料品の買い出しや資料館にはよく行くが、街の外へと出かけたことは殆んどない。多分カーラの遠足の時だけだと思う。パーシーもたまにはのんびり街の外にでも出かけたいのだろう。パーシーとのんびり話しながらアニーに乗るのも楽しそうだ。
ケリーは機嫌よくアニーに声をかけ、アニーの首筋を優しく撫でてやってから、鞍をつけた。
弁当と水筒を入れた鞄を持ったパーシーを後ろに乗せ、のんびりとアニーを歩かせる。日射しは強いが風があるし、頭にはタオルを巻いているので結構快適である。パーシーがカサンドラの街の歴史を話してくれる。カサンドラにもマーサは何度も訪れていたようで、伝わっている面白い逸話を楽しそうに話してくれるのを、ケリーは時折笑いながら聞いた。パーシーは本当に博識である。特に歴史や文化に詳しい。ケリーはパーシーの話を聞くのが好きだ。パーシーは話し上手で、聞いていて全然飽きがこない。資料館に2人で行くと、展示を見ながら、いつも時間を忘れて夢中になっている。
のんびりと進んでいたアニーが止まった。小川に着いたのだ。パーシーが降りた後にケリーも降りた。アニーから鞍を外してやって、ポンポンと優しく首筋を叩いてやると、心得たようにアニーが小川に水を飲みに行った。
風があるとはいえ、暑いしそれなりに汗をかいている。ケリーはその場で軍用ブーツと靴下を脱いだ。素足の裏に柔らかい草の感触がする。
「ケリーさん?」
「水に足をつけとこうぜ。こないだカーラと来たときもやったんだよ。水が冷たくて気持ちいいぜ」
「ははっ。いいですね」
パーシーも笑って、その場で靴と靴下を脱いだ。ズボンの裾を捲ると、パーシーの細い足が見える。パーシーは本当に細長い。足も多分ケリーの半分くらいの太さしかない。それでも筋ばった男の足をしている。ケリーもズボンの裾を捲った。適当な小川のすぐ側にある大きな石に腰かけて、素足を水につける。冷たい小川の水に足を撫でられ、とても気持ちがいい。すぐ隣にパーシーも座り、同じように足を水につけて、気持ち良さそうに目を細めた。
「……長閑ですねぇ」
「ここら辺は畑もないしな。カーラがな、ここの絵を描いたんだ。夏休みの宿題でよ。よく描けてたよ。見たか?」
「いえ。まだです」
「見せてもらうといい。カーラは絵が上手い」
「僕の父が絵が上手だったんです。1階に飾ってある絵があるでしょう?あれは父が描いたものなんです。もしかしたら似てるのかもしれませんね」
「すげぇな、親父さん。料理人でもあったんだろ?」
「はい。器用な人でしたね。なんでもそつなくこなせる感じで。縫製や編み物もしてたんですよ。カーラが小さい時は、よく夜なべしてカーラの服を作ってました。母はそこまで手先が器用な方ではなくて。僕は母に似たんでしょうね」
「へぇー。手先が器用だといいよなぁ。俺も不器用な方だし。針なんて全然だ」
「料理はかなり上達してるじゃないですか。朝ご飯がいつも美味しいです」
「カーラに手伝ってもらってるからな。まぁ、自分で作るのも楽しいけどよ。パーシーが作るもんの方が旨いわ」
「そうですか?」
「おう」
「…………ケリーさん」
「んー?」
「僕と結婚してくれませんか?」
「……は?」
「貴方が好きです。僕と、僕達と本当に家族になってもらえませんか?」
ケリーは驚きすぎて、その場に勢いよく立ち上がり、小川の小さな石に滑って勢いよく小川に頭から突っ込んだ。
「「おかえり」」
「ただいまー」
ニコニコ上機嫌に笑いながら、テーブルの所に座っているカーラの元に行き、むぎゅっと後ろからカーラを抱き締めた。
「酒くっさ」
「はははっ」
「もぉー。寝るよ。おっちゃん」
「おー。パーシー。もう出るか?」
「はい。いってきます」
「いってらっしゃーい。気をつけてな」
「ありがとうございます」
ケリーが笑顔で手を振ると、パーシーがちょっと笑ってから、玄関へと向かって歩いていった。ケリーはカーラをぬいぐるみのように抱っこして、そのまま自室へとご機嫌に戻った。カーラを抱えたまま、部屋の空調をつけてからベッドに寝転がる。ふわふわして気持ちがいい。カーラの子供体温も心地よい。ケリーは大きく欠伸をした。
「おっちゃんさー」
「んー?」
「昨日誰かに何か言われた?」
「あー?んー……あぁ。そういやよ、また姪っ子と見合いしてみねぇかって言われたわ」
「マジかっ!?」
「おー。一応断っといたけどな。ほらよー。俺金は持ってっけど、今無職だろー?やっぱよー。その状態で女と結婚はどうかと思うんだよなー」
「そうだなっ!」
「ま。ぼちぼち街にも慣れてきたし、そろそろ適当な仕事探すかねぇ」
「おっちゃん、1人で通勤できんの?」
「それなー。それが1番問題なんだよなー」
「つーかさ。どうやってカサンドラまで来たわけ?1人旅だったんだろ?」
「んー?あぁ。デカい街同士を繋ぐ街道は一本道だしよ。あとは途中で寄った所では全部でお前さんに声かけたみたいに案内してくれる奴をその場で雇ってたんだわ」
「なるほど」
「んあー。ねっみぃ」
「寝ろよ」
「おー。あ、そういやよ」
「なに?」
「お前さん、またちょっと背が伸びてんだろ?」
「うん。ズボンがちょっと短くなってる」
「明後日パーシー休みだしよー。買いに行こうぜ」
「その日はケビンと1日遊ぶ約束してる。弁当持参で」
「お。マジか。んー……じゃあパーシーが特に買うもんなかったら、明々後日行くかー」
「うん。バレッタに合うのが欲しい。そろそろ髪もちょっと伸びたし」
「バレッタに合うやつ……スカート?」
「えぇー」
「パーシーがめちゃくちゃビックリドッキリするな」
「面白そうだから1枚だけ買う」
「おー」
話していると本格的に眠くなってきた。ケリーは抱き抱えているカーラの柔らかい髪に鼻先を埋めて、深い眠りに落ちた。
ーーーーーー
翌々日の朝。
朝食の後に、ケリーはカーラの髪を結ってやっていた。カーラが買った本に載っている、編み込みをするというケリーには難易度が高いものに挑戦中である。なんとか苦心して、それなりに上手くできた。少し伸びた髪を編み込んで結い上げていると、普段は少年のようなカーラも少し大人びた女の子に見える。
「これ楽」
「やるのは少し難しいがな」
「首が涼しい」
「ケビンが驚くんじゃねぇの?」
「かもね」
カーラはご機嫌に弁当を入れた鞄を持って出かけていった。それを見送ると、朝食で使った皿を片付けているパーシーを手伝い、2人で洗濯を済ませ、掃除までした。今日もよく晴れている。洗濯物も昼頃には乾くだろう。
「ケリーさん」
「んー?」
「あの、今日はちょっと遠出しませんか?えっと、カーラもいないし」
「お、いいな。資料館……は遠出って程でもねぇな。わりとよく行ってるし」
「そうですね。よかったら街の外に行きませんか?あー……暑いから、小川のある所とか」
「んじゃ、アニーに乗っていくか。そういや、パーシーはまだ乗ったことないだろ?」
「あ、はい。あ、でも大丈夫ですか?タンデムですよね?」
「アニーは丈夫だから問題ない。パーシーは背が高いが細くて軽いし。ちょっと待ってろ。鞍つけてくるわ」
「あ、はい。お願いします。カーラの分を作るついでに僕達のおにぎりも作ったので、水筒を用意してきますね」
「おー。今日は天気がいいからな。外で食うと気持ちいいだろうな」
「えぇ」
パーシーが微笑んで、嬉しそうに厨房へと向かった。ケリーはアニーの準備をしに馬小屋へと向かう。パーシーとは食料品の買い出しや資料館にはよく行くが、街の外へと出かけたことは殆んどない。多分カーラの遠足の時だけだと思う。パーシーもたまにはのんびり街の外にでも出かけたいのだろう。パーシーとのんびり話しながらアニーに乗るのも楽しそうだ。
ケリーは機嫌よくアニーに声をかけ、アニーの首筋を優しく撫でてやってから、鞍をつけた。
弁当と水筒を入れた鞄を持ったパーシーを後ろに乗せ、のんびりとアニーを歩かせる。日射しは強いが風があるし、頭にはタオルを巻いているので結構快適である。パーシーがカサンドラの街の歴史を話してくれる。カサンドラにもマーサは何度も訪れていたようで、伝わっている面白い逸話を楽しそうに話してくれるのを、ケリーは時折笑いながら聞いた。パーシーは本当に博識である。特に歴史や文化に詳しい。ケリーはパーシーの話を聞くのが好きだ。パーシーは話し上手で、聞いていて全然飽きがこない。資料館に2人で行くと、展示を見ながら、いつも時間を忘れて夢中になっている。
のんびりと進んでいたアニーが止まった。小川に着いたのだ。パーシーが降りた後にケリーも降りた。アニーから鞍を外してやって、ポンポンと優しく首筋を叩いてやると、心得たようにアニーが小川に水を飲みに行った。
風があるとはいえ、暑いしそれなりに汗をかいている。ケリーはその場で軍用ブーツと靴下を脱いだ。素足の裏に柔らかい草の感触がする。
「ケリーさん?」
「水に足をつけとこうぜ。こないだカーラと来たときもやったんだよ。水が冷たくて気持ちいいぜ」
「ははっ。いいですね」
パーシーも笑って、その場で靴と靴下を脱いだ。ズボンの裾を捲ると、パーシーの細い足が見える。パーシーは本当に細長い。足も多分ケリーの半分くらいの太さしかない。それでも筋ばった男の足をしている。ケリーもズボンの裾を捲った。適当な小川のすぐ側にある大きな石に腰かけて、素足を水につける。冷たい小川の水に足を撫でられ、とても気持ちがいい。すぐ隣にパーシーも座り、同じように足を水につけて、気持ち良さそうに目を細めた。
「……長閑ですねぇ」
「ここら辺は畑もないしな。カーラがな、ここの絵を描いたんだ。夏休みの宿題でよ。よく描けてたよ。見たか?」
「いえ。まだです」
「見せてもらうといい。カーラは絵が上手い」
「僕の父が絵が上手だったんです。1階に飾ってある絵があるでしょう?あれは父が描いたものなんです。もしかしたら似てるのかもしれませんね」
「すげぇな、親父さん。料理人でもあったんだろ?」
「はい。器用な人でしたね。なんでもそつなくこなせる感じで。縫製や編み物もしてたんですよ。カーラが小さい時は、よく夜なべしてカーラの服を作ってました。母はそこまで手先が器用な方ではなくて。僕は母に似たんでしょうね」
「へぇー。手先が器用だといいよなぁ。俺も不器用な方だし。針なんて全然だ」
「料理はかなり上達してるじゃないですか。朝ご飯がいつも美味しいです」
「カーラに手伝ってもらってるからな。まぁ、自分で作るのも楽しいけどよ。パーシーが作るもんの方が旨いわ」
「そうですか?」
「おう」
「…………ケリーさん」
「んー?」
「僕と結婚してくれませんか?」
「……は?」
「貴方が好きです。僕と、僕達と本当に家族になってもらえませんか?」
ケリーは驚きすぎて、その場に勢いよく立ち上がり、小川の小さな石に滑って勢いよく小川に頭から突っ込んだ。
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